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4・小さなプライド、小さな誓い。




 活動拠点を決めてから5日が経過した。今の自分のステータスを確認してみる。朝食を食べながらステータスを確認するのもすっかり日常になってしまった。


『種族 ノスダムリトルリザード LV1


 ステータス

  HP:20/40

  MP:18/20

  物理攻撃:11

  物理防御:11

  魔法攻撃:2

  魔法防御:2

  命中精度:10(+1)

  回避能力:9(+1)


 フィニッシュムーブ

  「身体強化LV1」


 スキル

 「恐怖耐性LV4」「真理」「集中LV1」「視覚LV1」「暗視LV1」「嗅覚LV1」「聴覚LV1」「隠密LV5」「魔力感知LV1」「空間感知LV2」「気配感知LV2」「魔力操作LV1」』


 初日に比べたらいろいろ増えたと思う。最初に始めたのはランニングだった。

 拠点の巨木をグルグル走り続けるというだけのかなりシンプルなものなのだが意外にも効果があってHPの最大値が増えたのだ。

 

 次にMP。これは食べている草に魔力をほんの少し回復させる効果がありこれを主食にしていたから気付いたら増えていた。

 

 尻尾の使い方にも慣れるため巨木の同じ位置を尻尾で叩き続けたら物理攻撃と命中精度も向上。尻尾も打たれ強くなったのか物理防御まで上がった。どうやら身体の一部でも強くなれば全体的に反映されるらしい。

 四足歩行での反復横跳びをためすと回避能力の上昇した。


 要するに蜥蜴の身体に慣れようとした結果、ステータスの向上に繋がったということになる。更にはそれによりスキル「集中」「視覚」「嗅覚」「聴覚」まで手に入った。

 ちなみにステータスにプラスが付いている命中精度と回避能力は「集中」の効果によるものだ。


『スキル「集中」:命中精度と回避能力にスキルレベル分の補正が掛かる』


 このスキルは生存確率にかなり関わりそうだし積極的にスキル上げしていきたいところだが問題がある。そう、スキルレベルが上がり難いことこの上ないのだ。

 事実今日までに手に入れたスキルは「身体強化」以外は常にオンにしているにも拘わらず全くレベルが上がらないのだ。「感知」系がやっと1つ上がっただけ。やはり実戦じゃなきゃ上がり難いのかもしれない。


 現状問題点はたくさんある。

 スキルが上がり難いことに始まり、実戦でスキル上げしようにもステータスが弱すぎて勝てるビジョンが見えない。

 ステータスが上がりやすいのが唯一の救いだけど、この身体相当燃費が悪いのか身体を動かしているとすぐに空腹になってしまう。かといって食べれるのは魔力を含むがめちゃマズイ草しかない現実。

 

 一度どうしても肉が食べたくなって勝てそうな魔物を探してみたけど、どの魔物も平均ステータスが俺の3倍はあるし身体も大きい奴だらけなのだ。


 他の蜥蜴たちはどうやって生き延びているのだろうか。産んだ親がいる以上生き延びる手段があるはずなんだけど。

 そもそも蜥蜴について詳しくないしな。何を主食にしているのかさえしらないし。

 ただ本能が肉を求めていることだけは間違いない。その肉が自分より圧倒的に強いのが問題なのだが。

 

 だけど生きているだけならば問題ない。

 今の隠密生活なら敵に見つからず生きていける。草だってマズイが決して食べられない訳ではない。

 なんの面白みもないかもしれないが食われるよりはマシなはずだ。俺は生きていたい。


 気付けば朝食は食べきりMPも最大まで回復している。

 何はともあれ今日も特訓だ。生き延びるためには努力を欠かしてはならないのだから。

 そんなことを思いながらも軽く運動する位の気持ちで日課のランニングから始めたのだった。


 

 いつもと変わらぬ一日を終え眠りにつく。だが朝日が昇る前、まだ周囲が薄暗い中、俺は唐突に目覚めた。全身に悪寒が走る。


 何かが近づいてくるのを「感知」が捉えていることから原因は恐らくそいつだろう。でも俺は「隠密」で存在が認識しにくくなっているはずだ。

 もしかしたら昼間に俺を見つけていて寝静まった今を狙ってきたのかもしれない。


 「感知」系のレベルが上がって索敵範囲が伸びていなかったら危なかったかもしれない。なぜならそいつは真っ直ぐに俺を目指して近づいて来ているからだ。


 すぐにでもここから逃げなくてはいけない。作戦はいのちだいじにだ。逃げようと足を動かそうとしたが、なぜかピタリと止まった。

 確かに生き抜くことは目的であり最優先事項である。でもそれで良いのだろうか。そんな思いが俺の心をかき回す。

 周囲に怯えながら見つけた安住の地。俺だけの居場所。それを顔もわからない奴にいきなり奪われる。そんなことが簡単に許されて良いのだろうか。

 そしてそんな俺を俺自身は許せるのか? そう思い始めた。俺の身体は震え始める。それは蛇の時とは違う感情だった。

  さっきまでプライドなんかより生き抜くほうが余程大切だと思っていた。でも実際に奪われそうになってみれば俺は怒りに震えている。似たようなことは人間の時にもあった。

 

 子供の頃、俺は親に頼み込んで大好きな人気ヒーローの人形を買ってもらった。それを持って公園で遊んでいたら年上の奴に無理矢理奪われたのだ。あの頃も力が弱く、年上に勝てるはずもなく顔をグチャグチャにしながら泣いていた。

 

 そんなことを思い出し、ますます俺の怒りのボルテージは上がっていく。もう大切な物を奪われるのはゴメンだ。この気持ちを捨てて逃げれば俺は生き延びることができるだろう。でも俺は理不尽に奪われる辛さを思い出してしまった。

 ここで逃げれば俺はもう前を向いて生きていけない。それは死んでいるのと変わらないことなのだ。今抱いている気持ちから逃げたくない。

 戦えば相手が何であれ俺は間違いなく死ぬだろう。それでも俺は諦めない。ここで死ぬのが俺の運命だとしても最後の瞬間まで抗ってやる。

 

 俺は覚悟を決め一歩ずつ敵を目指し歩み始める。近づいてくる敵の姿を視認して俺は瞳を大きく見開いた。


『種族 ノスダムリザード LV1


 ステータス

  HP:105/105

  MP:20/20

  物理攻撃:52

  物理防御:48

  魔法攻撃:10

  魔法防御:10

  命中精度:33

  回避能力:34


 フィニッシュムーブ

  なし


 スキル

  「暗視LV2」』


 俺によく似た種族名に姿、ただ大きさは5倍近くあるが間違いなくそいつは俺の進化系だった。

 蛇に比べれば全然大したことはないがそれでも俺からしたら圧倒的な戦力差だ。

 普通に考えれば俺に勝ち目なんてない。勝率は0%だろう。そう、普通に考えたならばだ。

 だけど俺には切り札がある。


『フィニッシュムーブ「身体強化」:スキルレベル×20分ステータスに補正を掛ける。使用中は常に魔力を消費する』


 このフィニッシュムーブによってステータスの差を出来る限り埋める。これが俺の切り札。

 特訓の最中にふと魔法を使えないかと思い練習し始めたのがきっかけで、魔力を全身に巡らせる訓練の最中に偶然覚えたまさかのフィニッシュムーブ。

 練習してみるものだ。蜥蜴でも魔法(物理)が使えるようになるとは。


 早速発動する。必殺技を簡単に使っていいのかとか細かいことは考えてはいけない。全身に魔力が行き渡っていくのを感じる。

 それと同時にかかってこいと言わんばかりに威嚇する。といってもキシャーーくらいしか声が出せないんだが。

 だがそれを聞いた先輩(蜥蜴)は躊躇うことなく突っ込んでくる。


 突っ込んでくる先輩をどう避けようか考える。すると突如頭にどう避ければ確実に避けられるかイメージが浮かんでくる。

 突然のことで困惑したが、迷っている暇はない。俺はイメージされた動きと同じように跳ぶ。ギリギリ避けることに成功したようだ。

 先輩がこちらを振り返る前に俺は素早く先輩の喉元に噛み付く。先輩に振り払われて軽く投げられるが受け身を取ってダメージを受け流す。

 先輩の喉元は赤くなっているようだが気にせず突っ込んでくる。それを俺はイメージに従い、ギリギリで回避し喉元に噛み付く。


 俺の狙いは喉を噛み千切ることでの失血死だ。

 セオリー通りの戦い方をするなら足を崩しに行くのが定石なのだろうが、俺にはそこまでの時間的余裕がない。

 理由は「身体強化」の継続時間が少ないことだ。発動している最中は常に魔力を消耗するため、あまり時間をかけた戦いができない。

 もしも魔力が尽きてしまえば大したダメージを与えられないどころか回避することすら出来なくなる。そうなれば俺は死を免れないだろう。


 しかし先輩はそんな俺の思惑に気付かないのか闇雲にひたすら突っ込んでくる。もはや戦闘はパターン化してしまった。

 こうなるといよいよ時間との戦いになる。一応パターンが変わって不意打ちを食らわないように警戒しながら攻撃を与えていく。そしてついにその時が来た。


 先輩に振り払われた俺の口の中には確かな感触があった。口の中にある肉を吐き捨てる。直後先輩の喉元からは激しい出血が。先輩のHPが一気に減っていく。

 俺は勝利を確信した。だが先輩は諦めずにこちらに突進してくる。それを俺は避ける。…はずだった。


 身体を不意に襲う脱力感。魔力が底をつき「身体強化」が切れてしまったのだ。


 ヤバイ!

 避けきれな…


 鈍い音と共に俺は吹き飛ばされる。幸い真正面ではなかったものの、「身体強化」が切れた俺にとっては致命的だった。

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