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3・逃げたっていいじゃない。だって蜥蜴だもの。




 俺が茂みに身を隠してから少し経って気配の持ち主が現れた。そう先ほど俺に「恐怖耐性」をプレゼントしてくれた蛇だ。すかさず鑑定してみる。


『種族 ノスダムヴェノムパイソン LV6


 ステータス

  HP:366/366

  MP:56/56

  物理攻撃:252

  物理防御:257

  魔法攻撃:30

  魔法防御:113

  命中精度:152

  回避能力:143


 フィニッシュムーブ

  なし


 スキル

  「毒牙LV1」「毒耐性LV1」「暗視LV3」』


 はい? 一番低いステータスでも俺の10倍はあるんだが?

 軽く死ねるほどにステータスの差がある。


 まともにやりあっても勝てないんですがそれは?

 つか、そもそもステータスわかったところでまるで勝てないじゃないか!

 「真理」の意味ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!


 息を潜めながら心が叫ぶ。

 とにかく今見つかれば間違いなく命の保証はない。物音を立てないように必死に息を殺す。

 そんなことをしていたらまたも頭に声が響いた。


《熟練度が一定に達しました。スキル「隠密LV1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性LV1」が「恐怖耐性LV2」に上がりました》


 なにやら新しくスキルを獲得したみたいだ。早速確認してみる。


『スキル「隠密」:自分の存在を気づかれ難くする』


 なるほど、隠れて見つからないようにしていたから熟練度が貯まったのか。

 恐怖耐性も上がってくれたおかげで震えもさっきより抑えられているし、冷静に物事を考えられている。後は蛇が俺に気づかずにいなくなってくれることを祈るのみだ。


 蛇は周りを見渡すようにキョロキョロするとゆっくりと這いずり始める。そのお腹は兄弟たちが全て収まっているのかポッコリと膨れていた。

 顔から血の気が引いていくのがわかる。恐怖耐性を獲得できなければ俺も仲良くお腹の中に納まっていたのは間違いない。


《熟練度が一定に達しました。スキル「隠密LV1」が「隠密LV2」に上がりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性LV2」が「恐怖耐性LV3」に上がりました》


 不安になる俺を安心させるようにスキルが上がっていく。怖い思いをしたかいあってスキル上げは順調だ。

 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか蛇が近づいてくる。さすがに気が気じゃない。

 俺の隠れている茂みの真横を通っていく。心臓の鼓動が一気に大きく速くなる。


《熟練度が一定に達しました。スキル「隠密LV2」が「隠密LV3」に上がりました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性LV3」が「恐怖耐性LV4」に上がりました》


 スキルのレベルアップが完了すると同時に蛇は通り過ぎていった。確実に蛇がいなくなるのを確認するために蛇の気配をできるだけ探る。


《熟練度が一定に達しました。スキル「気配感知LV1」を獲得しました》

《熟練度が一定に達しました。スキル「空間感知LV1」を獲得しました》

 

 蛇に気を取られているうちにまた新しくスキルを獲得したみたいだ。やはりレベルが低いと使い勝手も悪いのか蛇の位置はなんとなくでしか掴めない。なんとなくでもわかる時点で十分便利なんだけども。

 レベルをカンストさせたらハッキリわかるようになるのだろうか? 「感知」系のスキルも常時オンにすることにしよう。


 蛇という脅威は去ったが正直気分は下がったままだ。あの蛇がここら辺のボスクラスならまだ希望が持てるが、もしも弱い部類に入るんだとすると俺の生存確率は大幅に減少すること待ったなしだ。


 絶望しながら自分のステータスを確認しているとあることに気付く。

 今まで手に入れたスキルを組み合わせて使えばエンカウントせずに済むのでは? と。

 「感知」系で常に警戒し、敵が近づいてきたら「隠密」で気配を消してやり過ごす。

 そうすれば最悪不意打ちは防げるし、寝るときは木の根っこの隙間とかに隠れて「隠密」かけっぱなしにしておけば気付くこともないと思う。というか気付かれたらその時点で詰むことになるけど。


 今後の方針が決まった所でお腹が鳴った。産まれてから何も食べてないんじゃ流石にお腹は空く。というかこれ以上空腹は我慢できそうにない。

 人間としての本能と蜥蜴としての本能、その両方が肉を求めているのがわかる。だが、今この場に食べられる肉など存在しない。目の前にあるのは生い茂る草ばかりだ。

 こうなったら草でも毒が無きゃ食べるしかない。鑑定で毒が無いことを確認する。


 いただきます!

 ムシャムシャ。モグモグ。

 うーん、マズイ!


 お腹いっぱいになったら次はこの場所から移動だ。蛇が向かっていった方向とは反対側に進んでみる。蛇とはもう会いたくないからだ。

 スキルを最大活用しながら森を進んでいく。だが身体が小さいからか、歩けども全然進んでいる気がしない。だが、焦って動けば敵に見つかってしまうかもしれない。神経をすり減らしながら進む。

 

 気付けばもう周りは少しずつ薄暗くなっていた。暗くなってくるにつれて寒くなってきたように感じる。ちょうど直ぐそばに巨木があり、そこで一夜を過ごすことにした。「感知」系スキルと「鑑定」のお陰で安全も確認している。

 そして今日の晩御飯もさっきと同じ種類の草。というかそれ以外は毒持ちか、マズ過ぎてとても食べられないものだったのだ。草食の奴らならまだしも肉食の俺には草はあまり美味しいものに感じることができないのが残念だ。

 我慢してモシャモシャ食べ始める。前世での食事が懐かしい。

 今の現実と比べると目元が熱くなるが悲しんでもいられない。マズイ草を食べてでも俺は生き残らなきゃならないのだから。


 食事を済ませると急な眠気に襲われる。一日でこれほどいろいろあれば仕方ないことなのかもしれない。

 木の根っこに潜り込むと風を防いでくれるお陰か、割と寝やすい温度になっていた。そのことに安心すると俺は深い眠りについたのだった。


 ゆっくりと目が覚める。朝日が眩しく自分が無事に起きれたことに感動する。一応身体を確認してみたが残念ながら蜥蜴のままだった。

 それにしてもかつてこんな朝起きれることに感動したことがあっただろうか。いや、ない。

 前世じゃ朝安全に起きられるのは当たり前だった。こんなに極限の中寝ることなんて考えもしなかった。しかし疲れていたのか途中起きることもなく朝を迎えたみたいだ。

 寝る前に発動させたスキルが切れてないか確認するため自分のステータスを確認してみる。


『種族 ノスダムリトルリザード LV1


 ステータス

  HP:20/20

  MP:10/10

  物理攻撃:2

  物理防御:2

  魔法攻撃:2

  魔法防御:2

  命中精度:2

  回避性能:2


 フィニッシュムーブ

  なし


 スキル

 「恐怖耐性LV4」「真理」「隠密LV4」「空間感知LV1」「気配感知LV1」』


 スキルは全てオンになっている。あと「隠密」のレベルが一つ上がっているくらいで他のスキルはレベルアップしなかったみたいだな。

 最初のレベルの上がり方からして「感知」系のスキルは行動している間や寝ている間に上がっていてもおかしくないと思っていたのだが的が外れた。

 単純に「感知」系スキルが上がりにくいのか、それとも実戦じゃないから上がらなかったのか。とにかくスキル上げは思ったよりも大変そうだ。


 そこまで考えるとお腹が空腹を知らせる。とりあえず朝食だな。

 昨日食べたものと同じ草を食べ英気を養った。

 食べながら今後について考える。


 どこへ向かえばいいのかわからず森を彷徨うくらいならここを拠点にして自信を鍛えるほうがいいかもしれない。

 「感知」系で反応を探りながら行動するのもかなり疲れるし、動くだけ見つかるリスクは高まる。そもそもレベルの低さからして安心できるものではない。

 今の弱いままでは見つかったら逃げられない。せめて逃げ切れるくらいにはならないと。


 こうして生き残るためにここを拠点に活動することにした。

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