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六話 訪問者

 うーん。一応ゴーレムの研究開発は進んではいるが、まだモノになるレベルにはなってない。もうすこし手を加える必要があるんだけど……研究ばかりに没頭している場合じゃないんだよな。


 たった一ヶ月でここまで王都を荒廃させるとは、マイアも無茶苦茶やってくれる。


 はやいとこ手を打たなければならないとは思ってるんだけど、全く使徒の尻尾がつかめない。あー、もうイライラする!


 使徒が裏でマイアを操ってるのは間違いないだろうから、もうこのまま王城に乗り込んでぶっ潰してしまおうか。


 今まで相手は国家、王族だからと遠慮していたんだけど、もうこれ非常事態だし、いけるんじゃね? 緊急避難ですよ。緊急避難。仕方がなかったんや〜で済ませられますよ。たぶん。


《もし、王城に乗り込んで、使徒が見つからなかったら。響介さんは完全なお尋ね者になっちゃいますね》

《だよなぁ。そのリスクがあるから今まで躊躇してたんだけど。もうこれ以上待っても状況が悪くなる一方だぞ》


《ここはアレですよ。中途半端にやるのが不味いんですよ。思い切って王国ごとぶっ潰して、響介さんが新たな国を立ち上げちまえばいいのではと。女神、創造神である私が許可します!》

《堕女神に許可されてもなぁ。国民が納得しないと意味ないぞ。お前の姿はもちろん、声も他のやつには聞こえないし。傍から見たら俺は単なる簒奪者だ》 


《うう……ですよねぇ》


 結局打つ手はないのか? こっちから使徒を探しにいける様な魔道具や、魔法スキルでもあればなぁ。


「フェイト様、よろしいでしょうか?」

「ん? どうしたの? アリスンさん」


 廊下からノックする音と共に、アリスンさんの声が聴こえた。


「失礼します。フェイト様、先程フェイト様にお客様がお見えになりました」

「俺に客? 一体誰だろう」


「はい。えっと、シルヴィア殿ですね」

「シルヴィアが?」


 ……ふむ。王城で何か動きでもあったかな。


「分かった。すぐ行くよ」

「畏まりました。シルヴィア殿は応接室にお通ししておりますので」


「分かった。ありがとうアリスンさん」


 さて、何が飛び出てくるか。会って話してみないことにはわからんな。





 俺は応接室のドアを開け中に入る。一応レティシアもついてきてもらった。


「あ、これは……フェイト殿。突然の訪問、申し訳ない」

「いや、それは構わないから。話を聞かせて貰えるか?」


 俺はシルヴィアにソファーへ座るように促し、その対面にレティシアと共に座る。


「え、ああ、そうだな。まずどこから話せば良いのか……。フェイト殿も王都の惨状は見ているだろう」

「まあな。たった一ヶ月でここまで荒れ果てさせるとは、驚きを通り越して呆れるくらいだ。あとついでに俺たちへの仕打ちもひどかったぞ。報酬の話はいつまで経っても来ないし、挙げ句の果てには屋敷まで追い出されてしまったしな」


 別に責めるつもりは無いが、少し嫌味を含めた口調で話しかける俺。


「う……それは。本当に返す言葉もない。誠に申し訳ない」

「いや、意地の悪い言い方をして悪かった。これはシルヴィアのせいではないからな。別に怒ってるわけじゃない」


「そう言ってもらえると助かる」


 俺の返事に安堵の声を漏らすシルヴィア。


「怒ってるわけじゃないんだが、ただ不可解だと思ってる。王城で何が起こってるんだ?」

「それなのだがな。私もわけが分からないのだ。いきなり王子殿下が亡くなったと聞いて。それでマイア様が王女になって、私は騎士団長にさせられて……この一ヶ月何が何やら……全く生きた心地がしなかった」


「マイア女王に何かあったのですの?」

「マイア様は……分からない。おかしくなった……のだろうか。以前はもっとお優しい方だと思っていたのに、マイア様に意見する臣下の者を次々と処罰している。傍から見ていて非常に恐ろしく感じてしまう」


 ……それってマイアの地が出ただけなんじゃないかな? と思ってしまった俺の心は曇っているのでしょうか……。


「王城の者はマイア様を恐れて何も意見できない。この様な事を言えた義理ではない事は重々承知している、だがもはや頼れるのはフェイト殿以外にいないのだ。マイア様を、この国をどうか救って欲しい。私に協力して頂けないだろうか?」


 すすり泣きながら俺に頭を下げるシルヴィア。


「……分かったシルヴィア。だから頭を上げて欲しい。俺としても今の惨状は見過ごすことはできないから、出来る限り力を貸そう。マイアの事については少々心当たりがある。決して悪いようにはしないと約束しよう」

「ほ、本当か! すまない、感謝する」


 シルヴィアは泣きながら俺の手を取り感謝の意を述べる。

 

「全く、フェイト様はとんだお人好しですわね」

(まあ、一応女神の使徒だしな)


 レティシアの呆れた言葉にシルヴィアに聞こえないくらいの小声で返す俺。


 シルヴィアが再びソファーに座り、落ち着いたタイミングを見計らって、俺は気になっている事を聞いてみる。


「なあ、シルヴィア。王城内に今まで見たことないような怪しい人物とか見かけたりしてないか?」

「怪しい人物?」


「ああ、ちょっとした事でもいい。……それとも、マイアの発言の中で何か引っかかる様な事とかないか?」


 シルヴィアはしばらく考えるような素振りを見せた後、


「怪しい人物かどうか分からないが、マイア様がダンテという男の名を口にする事がある」

「ダンテ?」


 なんだそりゃ。ダイオメドとは別人か?


「ああ、ダンテがこう言っていたとか……ダンテが褒めてくれたとか、たまにそう仰っている。そのダンテが何者なのかは皆目見当がつかないのだが……」


「……その男、怪しいですわね。マイア王女がその男の名を口にしだしたのはいつ頃からですの?」


「いつ頃と言われても、はっきりと思い出せない。最近になってからのような気もするし、随分昔から言っていた様な気もする」


 ん? ダイオメドに対してクヴァンも似たようなことを言っていたな。


「でも、その男を王城で見たことはないのですね?」

「ああ、少なくとも私は見たことがない」


 マイアの従者であるシルヴィアすら見たことがない男をマイアが懇意にしている。うん。これビンゴじゃないかな。


《ダンテ、ダイオメド。どっちが本名でしょうか。それとも使徒が二人いるんでしょうか》

《いや、この陰気臭いやり方、おそらく同一人物じゃないかな》


「その男、怪しいな。ちょっと探りを入れるか」

「そうですわね」


「わ、私はどうすればいいのだ?」

「そうだな。俺が忍び込むとヤツは警戒して姿を表さないかもしれない。だが普段から王城にいるシルヴィアなら怪しまれないだろう。常にマイアを見張ってその男と接触している事実を掴んでくれないか。これはマイアの従者であるシルヴィアにしかできないことだ」


「わ、分かった。任せてくれ」

「でもな、相手が何者なのか分からない。くれぐれも無茶はするなよ。あまり深入りするとシルヴィアの命も危ないかもしれない」


「……ありがとう。肝に銘じておく」

「何かあったらまた連絡を」


 シルヴィアはコクリと頷き、屋敷を後にする。ダンテか……次こそはその首根っこ押さえてやる。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「マイア様、お話があります」

「どうしたの? ダンテ」


 ここは私の執務室。ダンテが何やら神妙な顔をして私に話しかけてきます。何があったのかな?


「実はフェイトが怪しい動きをしているという情報を小耳に挟みました」

「怪しい動き?」


「はい、どうやらシルヴィアがフェイトと接触したようです。こちらの情報をフェイトに流しているのかもしれません」

「なんですって!」


 どういうことシルヴィア? 一回抱かれたからって、あの男のことを? もしかしてもう何回も通ってるのかな。不潔よシルヴィア。私の国にそんな不浄なものは要らない。


「シルヴィア……裏切ったね」

「そうですね。ここは一つ、シルヴィア共々、あの目障りなフェイトを叩いておきましょうか」


「そんなことできるの?」

「はい、フェイトはああ見えて情に厚い男。シルヴィアはヤツをおびき寄せる餌としての価値はあると思います」


「シルヴィアを人質にするのね? でもそれだけであいつが来るかな?」

「ふむ。それならばレティシアも攫ってきましょう。レティシアは戦闘の心得がありませんし、攫うのは容易です。しかもフェイトはレティシアを懇意にしておりますので、必ずや食いつく事でしょう」


 レティシア……いつもいつも私に楯突くあの生意気な小娘。いい気味よ。


「うん。それは明暗ね。でも、あの男をおびき出して勝てるの? この間の戦い見たけど、とても人間とは思えない強さだったよ?」

「それは問題ありません。私は勝算のない戦いは致しません」


 ダンテってそんなに強いのかな? でもダンテならなんとかしてくれそうだし、もう任せちゃおうかな。


「分かった。ダンテに任せるよ」

「御意に。必ずや吉報をお届け致します」


次回の更新は10/25(水)を予定しています。

よろしくお願いします。

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