十九話 凱旋
すみません。だいぶ間が空いてしまいましたがよろしくお願いします。
「この戦我々、王族派の勝利だ! 皆の者、勝鬨の声をあげよ!」
「うおおおおぉぉぉ!!!」
第一王子アレックスが勝利宣言し、兵たちがそれに応える。のちの歴史書に『ガルティモアの戦い』と語られるこの王族派と貴族派の戦いはたったの一日で王族派の圧勝にて幕を閉じた。
貴族派総大将の第二王子ダニエルは逃げようとしたところをアリスン達に行く手を阻まれ捕らえられる。シュヴェールト公爵も王族派の兵に捕らえられ、レイナードは騎士団の混乱に巻き込まれ戦死したようだ。デュークはフェイトに討たれ、クヴァンは生死不明。貴族派は完全に崩壊した。
アレックスは『ガルティモアでの勝利が我ら王族派に正義がある動かぬ証。国王を暗殺した第二王子ダニエル率いる貴族派である』との触れを王都に送った。国王が死して喪に服している今、さすがに勝利を祝う凱旋のパレードを行うような事はしないが、大々的に国王の国葬を執り行うことで、自らの存在感をアピールするつもりの様だ。
命がけの兄弟喧嘩に、国民の人気取りと、王族に生まれるのも考えものだなと、俺は内心ため息を漏らしながらも王都に向う。
まあ、一応俺は今回の戦いの第一戦功者。さすがに待遇は改善されており、行きとは違って、帰りは馬車での従軍だ。しかも王族専用の馬車に王子と王女と同席となった。さすがにジークフリートは同席を拒否し、別の馬車に乗ている。まあ、俺に合わせる顔が無いだろうしな。相当睨まれたけど。
「本陣から見ていましたが、フェイト様。すごいです。三万の兵をあんな少数で翻弄するなんて」
「いえ、策がうまくはまっただけです。それに俺の仲間と、獣人たちもよく戦ってくれました」
花が咲いたような笑顔を見せるマイア王女。うん。普通にこうして見るとカワイイです。
「いや、謙遜することはない。フェイト殿がいなければ我々は間違いなく負けていただろう。本当に感謝する」
「あ、いや。恐縮です」
うーむ。馬車に乗れたのはいいんだが、これはこれで気を使って落ち着けない。できれば自力で走って王都に帰りたいんだけど……そっちの方が絶対早いし楽だ。
「まあ、論功行賞は楽しみにしていてくれ。相応のものは用意するつもりだ」
「え、ああ。分かりました」
それから王子と王女に代わる代わる色々話しかけられたが、俺は適当に相槌を打つ事に専念した。うう……疲れる。
《響介さんへのご褒美ですか……もしかして妹のマイアを貰ってくれって展開になるんでしょうかね》
《おいコラやめろ。ホントにそうなりそうで怖いって。断りにくいし、マジで嫌だから》
《まあ、それはともかく。王子達にとってはこれですべて解決、万々歳ってとこなんでしょうけど。私達は全然スッキリしませんねぇ》
《それはともかくって、お前な……まあ、全くの成果なしだからな。ダイオメドの行方どころか、その目的も掴めずじまいだ。この戦でヤツは何がしたかっのか》
《そうですねぇ。早くシグルーンちゃんを助けてあげたいのですが……》
《それにはダイオメドをなんとかしないとな。でもヤツの狙いは俺であることは間違いないんだ。いずれ必ずヤツの方から仕掛けてくる……と思うんだけど》
《気長に待つしかないんでしょうか》
《悔しいけど、手がかりがない以上はそうなるよな》
勝利に酔う王子に王女、一方でもやもやとして気分が晴れないフェイト。そんな対象的な空気を乗せた馬車は王都に向けてゆっくりと進んでいくのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
うう……やっと屋敷に帰ってきた。王都までの二日間の道程、めっちゃしんどかったわ。途中で王女が寝て、シルヴィアが代わりに話し相手になってくれたのは正直助かった。シルヴィアはアノ日以来、刺々しさがなくなったので結構気楽に話せる様になったんだよな。話題も戦術とか魔法とか戦闘技術とか、王子がなかなか話に入ってこれない内容だったのもポイントが高かった。
《こうやってシルヴィアちゃんも、響介さんに落とされていくんですね》
《こら、そこで遠い目すんな。見えないけど、なんとなくしてる気がする》
久々に屋敷の扉を開ける。まあ、自分の屋敷ではないのだが、もうすっかり馴染んでしまったため、懐かしさすら感じる。
「あ、おかえりフェイト。今帰ったの? お疲れ様」
「フェイトやっと帰ってきたのか」
「ああ……なんか妙な式典みたいなものにつき合わされて疲れた」
……はやいとこディアナたん成分を補給しないとマジで死ぬ。
「一応フェイト様は勝利の立役者ですから、当然ですわね」
「まあそうなんだけど。とりあえず今日は休ませてもらうわ」
「おつかれフェイト。もうしばらくは王城に行かなくていいの?」
「んー、国王の国葬が明後日あるみたいだけど……出席は断った。なんとなく気が乗らないからな」
別に俺が出る義理も無いし、王子の茶番めいた安っぽい追悼の言葉を聞く気にもなれない。
「え? 国葬なのに出なくてもいいの?」
「……ディアナさん」
レティシアは首を軽く横に振りながら、ディアナの肩に手を置き、ディアナを諌める。レティシアは亡くなった国王に対して取った王子の態度を見ているからな。俺の心情を察してくれたのかもしれない。
《レティシアちゃんは気が利くいい娘ですねぇ。それに器量良し。どうですか旦那、今時こんな良い物件ありませんよ?》
《……土地屋かお前は》
まあ、堕女神の言う通り、レティシアは優しいし気が利くし、いい子だと思う。俺の事は悪くは思っていないみたいだし……最近ハルベルトの申し出、受けても良いかなとも思い始めている。
「ありがとうな。レティシア」
俺は一言そう言って、ひとっ風呂浴び。自分の寝室に向かう。【サーチ】で分かるんだけど、既に誰かがベッドで寝てる。ディアナが温めてくれているのだろうか。うむ。愛いやつよのぅ。どれどれ、俺が可愛がってやるぞ。
さて、ここはディアナた~ん!と叫びながら、空中で服を脱ぎ捨て、ベッドに飛び込むル○ンダイブを決めたいところだが、残念ながら俺はルパ○の様な高度な脱衣スキルを持ち合わせていない。
しかたなく普通にベッドに潜り込み布団の中の人物に背中から抱きつく……あれ? ディアナってこんなに細かったっけ?
「ん。フェイトおかえり」
「お、おう。ただいま……エレーナ」
ベッドの中に潜んでいたのはエレーナだった。
「……ボクじゃ不満?」
「いや、そんなわけじゃないんだが、珍しいなと思ってな」
「ボクだって、フェイトの婚約者。甘えたくなる時だってある」
「…………」
よく考えてみれば、今回エレーナにはかなり酷な役目を押し付けてしまった。淡々とやっている様に見えたが、あれは結構くるものがあるよな。……これはディアナも同様だ。俺は邪神を倒すことを考えるあまり、大切なものを見落としていたのかもしれない。
「すまんなエレーナ。将来の妻にひどいことをさせてしまった。俺は夫としてダメなのかな……」
「そんなことない。こうすればいい」
エレーナはそう言いながら、俺の方に向き直り、俺の胸に顔を埋め抱きついてくる。
「こうすれば落ち着く。安心する」
相変わらず語彙が少ないエレーナ。でも言いたいことは分かる。夫婦はお互い支え合って、心の隙間を補い合えばいいということなんだと思う。でも、エレーナの意外な一面が見れてなんか嬉しい。普段お金お金言ってるのは、ある種の照れ隠しなのかもしれないな。このかわいい奴め。
俺は黙ってエレーナを抱き返す。エレーナ一瞬驚いた顔をしたが、すぐに目を閉じ、俺に体を預けてきた。うん、これはいいな。使徒との戦いで荒んでいた心が癒やされていく……。
「ああ……出遅れちゃった。エレーナに先を越されるなんて」
って、この声はディアナか、不覚にも声をかけられるまで気配に気が付かなかった。
「ディアナもこっち来る」
「私も混ざっていいの?」
「え? ああ、俺はかまわないけど」
「それじゃあ、お邪魔しまーす」
そう言ってディアナはベッドに潜り込み、俺の背中にしがみついてきた。
「はぁ、こうしてると落ち着く。しばらくフェイトと離れてたから寂しかった」
「すまんディアナ。お前にも辛い役目を押し付けてしまった」
「ううん。それはいいの。ちゃんとこうしてフェイトが戻って来てくれれば。遠くに行ってしまわなければ、私はそれで十分だから」
「ああ、それは約束する。二人をおいて何処かに行ったりはしないから」
俺の答えを聞いたディアナがより強く俺を抱きしめてくる。ディアナもエレーナもええ子やな。これは男冥利に尽きるってもんだぜ。よし決めた。俺は国やこの世界のためとかそんなんじゃなくて、今この腕の中にある大切な人、そして俺の仲間を守るために使徒や邪神と戦う。
《えっと、その大切な人の中には当然私も含まれてますよねっ?》
《え? お前も?》
《ガーン!! そこは普通即答するところですよっ!!》
《悪い。冗談だって。アストレイアも、まあ妹みたいなものだって思ってるからさ》
《ぐ……なんか微妙なポジションですが、ひとまず良しとしましょうか……》
次の更新は10/7(土)の予定です。




