表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/147

十六話 魔杖カドケウス

お待たせしましたデュークとの対決です


 改めてデュークの杖を見るが……不気味というか、禍々しいと言った方がしっくり来るな。二匹の蛇が巻きついているようなデザインの杖だ。うん。どう見ても神聖な杖には見えない。しかもその杖を持つデュークはその黒い髪を逆立て、赤黒いオーラを放ち、瞳は真紅に染まっている。えー、もうこいつ人間じゃないよ。


《あれは……完全に杖の邪気に支配されていますね》

《やっぱりあの杖は邪神絡みなのか?》


《あの禍々しい邪気、間違いないと思います。デュークを倒せば使徒に繋がる手がかりが掴めるかもしれませんね》

《そういうことなら、いっちょぶっ飛ばしてきますかね》


《油断はしないで下さいね。何かまだ使徒が仕掛けてくるかもしれませんから》

《ああ、分かった。全力で行く》



「貴様がレーニアの英雄。フェイトか! よくも俺の部下を。死ね!」


 デュークは口上とも呼べない怒声を放ち、問答無用で魔法を起動する。掲げた杖が黒く怪しく光り、デュークの周りに10本程の【フレイムランス】が浮かぶ。


「【フレイムランス】10本同時か、カレナリエン後ろに下がってろ。狙いは俺だから」

「う、うん。そうさせてもらう」


 カレナリエンが下がったところで【フレイムランス】が飛来する。これらを一発一発消すのは面倒だ。俺は水属性中級の【マジックシェル】を発動、魔力で強化した身体能力を駆使し、【フレイムランス】を全てかわす。多少かすったとしてもダメージはない。


「よし、初手で倒す」


 【フレイムランス】をかわし切ったところで、右手に魔力を集中。


「くらえ! 【ブリューナク】」


 俺の十八番(おはこ)の技、【ブリューナク】をデューク目がけて放つ。先程のレールガンと同様に、視認できない程のスピードの光の筋がデュークを貫ぬ……かなかった。あの杖の放つ黒い邪気のオーラにより弾かれた【ブリューナク】は、その進行方向を上に逸らされ、空の遥か彼方にその光の軌跡だけを残して消えていった。


 な……。弾かれた。【ブリューナク】が初めて弾かれた。使徒ケルソも貫き、あのレッドドラゴンをも粉砕した【ブリューナク】が……俺はショックのあまり呆然と立ち尽くしてしまった。


「ぐ……これが【ブリューナク】か、なかなかの威力だがこの魔杖カドケウスなら防げる。ダイオメドの言っていた通りだ」


 ん? ちょっと待て。何か気になるキーワードが2つばかり出てきたぞ。


《あの杖の名前がカドケウスで、ダイオメドってのがもしかして使徒の名前か?》

《偽名……かもしれませんが、なんかそれっぽいですね。やっぱりデュークは使徒を知っています》


《でも、どうする。あの杖【ブリューナク】も弾いたぞ。他の魔法も多分効かないんじゃないのか?》

 

 となると物理的な手段で倒すか。あー、俺も何か武器っぽいの作ってれば良かったかなぁ。それか、魔法の物理っぽいやつ。土魔法で押しつぶすか、風の【エアハンマー】で押すか。


《いえ、大丈夫です。【ブリューナク】でいけます》

《いや、でもアストレイアもさっきの見ただろう? 弾かれていたぞ》


《さっきの【ブリューナク】は神気がこもっていない、ただの魔力だけの【ブリューナク】です。邪気で弾かれるのは当然ですよ》

《は? 神気? なにそれ?》


 神気? 初耳なんですけど。


《細かい説明は時間がないので今は無理です。でも、思い出して下さい。レーニアでリディルちゃんを開放した時に放ったあの【ブリューナク】を》


 リディルを開放した時に放った【ブリューナク】……。確かにあの時は邪気に支配されたリディルをなんとかしてやりたい。その一心で放った。


《そうです。響介さんには邪神の邪気を祓う事ができる神気が宿っているんです。あの時と同じように、邪気を祓うイメージを持って【ブリューナク】を放ってみて下さい》


 神気……確か神気は神が持つ神聖な(オーラ)だと聞いたことがある。でも、なんで俺なんかに神気が……。アストレイアの使徒だからか? いや、今のアストレイアはこの世界での神としての力を失っていたはず……。うーむ。でもこんな急に神気がどうたら言われても分かんねー、ここはひとまずアストレイアの言っている事を信じる。それに賭けるしかない。


「師匠大丈夫? なんかあいつ、師匠のものすごい魔法弾いちゃったけど?」

「んー、心配ない。ちょっと試したいことがあるから、カレナリエンは安全なところで待ってろ」


「う、うん。分かった。……戦場に赴いた夫の帰りを待つ妻ってこんな心境なのね」

「……悪いなカレナリエン。今はツッコミ入れる余裕が無いから、この戦いが終わった後たっぷりと……な?」


 俺のいつになく真剣な表情に、これは冗談を言っていい雰囲気じゃないと察したカレナリエンがそそくさと後ろに下がる。


「ひぃ……ごめん。真面目にやりまーす」


 ふっふっふ……喜べカレナリエン。この戦争が終わった後は研究漬けの毎日を送らせてやるからな。楽しみに待っていろ。


「うう……師匠なんか怖いよぉ。あれは絶対何か良からぬことを考えてる顔だぁ」


 カレナリエンがまだ何か言ってるが無視無視。さて、仕切り直しと行きましょうか。デュークさんよぉ。



「クックック……レーニアの英雄さんよぉ。自慢の魔法を防がれた心境はどうよ? いいザマだな。そこの女との別れはもう済ませたか? なんならもう少し待ってやってもいいぜ」


 こちらの様子を眺めていたデュークが下卑た笑みを浮かべる。


「いや、それは必要ない。ここからが本番だからな。お前こそママとのお別れはもう済んだのか?」

「こいつ……どこまでも俺をバカにしやがて! これでもくらいやがれ!」


 魔杖カドケウスを通して魔力が練られる。あれは【エクスプロージョン】か、しかも三発。結構やるなこいつ。というかこれもあの杖の力か? 俺はいつもの【エクスプロージョン】封じを実行。【マインドアップ】で思考速度を加速させ、【エクスプロージョン】の爆心点を察知し、そこに窒素100%の空気を展開する。


「なっ! 【エクスプロージョン】が……。これが親父の言っていたやつか。なるほど厄介だな」


 とりあえず、デュークの魔法をいなしながら【ブリューナク】を打ち込むスキを伺おう。


「これならどうだ!」


 今度はデュークの頭上に直径10メートルほどの巨大な火球が出現する。っと。お次は火属性超級の【バーンフレア】ですか。人間でこれが使える者は数えるほどしかいないんじゃなかったっけ? これもあの杖、カドケウスの力だろうか? それにしてもこの火球、ケルソの時より大きいぞ。


「いくらお前でもこれは防げまい。後ろにいるお前の女ごと燃えつきろ!」


「え! 私、師匠の女なの!?」


 カレナリエン。そこは律儀に反応しなくていいって。でもこの【バーンフレア】の対処法はもうできている。


「【アブソリュートゼロ】」


 俺は原子、分子の熱振動を止めてしまうオリジナル魔法【アブソリュートゼロ】を発動し【バーンフレア】の熱エネルギーを消失させる。ただ【バーンフレア】レベルの熱量を消すにはかなりの魔力を投入しなくちゃいけないけどな……。


 すると俺の狙い通りデュークの放った【バーンフレア】は消失。その空間に絶対零度の空気の塊が出来たため、水蒸気が凍り、キラキラとダイヤモンドダストの様に光り輝く。


「うわぁ、キレイ。これなんて魔法なの?」

「終わったら教えてやるから。ちょっとお前黙ってろ」

「へーい」


「な……に? 【バーンフレア】を凍らせただと?」


 正確には凍らせてないんだけど、そこまで教えてやる義理はないか。俺はすかさず【エアロスラスト】を放ち、絶対零度の空気を巻き込ませてデュークにぶつける。


「ぐ、ぐおおお……こ、これは腕が、身体が凍りつく!」


 やはり、魔法的な攻撃は邪気である程度散らされる様だが、極低温という物理的な現象はそのまま通るようだ。さて、スキができたな。これでフィニッシュだ。


「さて、これで終わりだ【ブリューナク】!」

「それは効かない事は分かっているはずだ! 魔杖カドケウスよ! 俺に力をよこせ!」


 俺はありったけの魔力と一緒に邪気を祓うイメージを光の槍【ブリューナク】にこめて放つ。【ブリューナク】の光の筋は真っ直ぐに飛翔し、デュークが纏っていた邪気を弾き飛ばしてその土手っ腹に大穴を空けた。


「ば、バカな……なぜ……」


 デュークはその場にドサリと崩れ落ちる。


《ああ! 殺っちゃうと使徒について聞き出せないですよ》

《そうは言っても、手加減できないし、それにあの杖があれば使徒に辿り着けるんじゃないか?》

《そうですね。あの杖を押さえましょう》


 俺はすぐに駆け出し、デュークの立っていた場所にたどり着く。デュークは目を見開いたまま倒れ、事切れていたが、その目はもう真紅には染まっていなかった。やはりあの目は邪気の影響か。まあ、それはいい。早く杖を……、ってあった。デュークの側に転がっていた。俺はその杖を用心しながら、慎重に拾い上げたのだが……。


「あ! つ、杖が……」


 拾い上げた杖はボロボロに崩れ落ちて、跡形もなくなってしまった。くそっ、使徒の手がかりが。


《今回の使徒は徹底してますね。まさかこの戦いでも尻尾を出さないつもりでしょうか?》

《それは分からないが……なんとか引きずり出してやらないと》


 俺が一人デュークの遺体の側で悔しがっていると、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた。あれは……シオンか。


「シオンどうした」

「ハァハァ……お嬢から伝言を頼まれました。トリスタン殿が、敵の本陣に下がっていった騎士団長を単独で追っていったとの事。お嬢は持ち場を動けないからこのことを兄貴にお伝えしろと言われました」


「おいおい、トリスタン一人で突っ込んだのか……」


 ……あのバカ。早まりやがって。クヴァンは恐らく魔杖カドケウスと同等の武器、魔剣ミストルティンを持っている。邪気相手に生身の人間じゃきついだろう。早く救援にいかなければ!


9月30日までは連投継続しますのでよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ