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十三話 ガルティモアの戦い(2/3)

 そろそろ開戦の時刻だろうか。霧で戦場の様子が見えないけど、【サーチ】で敵の様子は分かる。敵の部隊の布陣は既に完了。今現在は待機している状況の様だ。


「あ、もしもし。向こうの軍隊が待機状態になった。もうそろそろ開戦かも知れん。皆気を引き締めろ」

『分かったわ。フェイト』

『おお、こっちはいつでも行けるぜ!』


 一応昨日の使者は朝8時に開戦と言っていたが、時計の魔道具はアーティファクト、貴重品であるので、戦場には持ってきていない。だから正確な時間は分からないため、いつ仕掛けてくるか分からない。


 でもまあ、向こうは最初突撃を仕掛けて混戦に持ち込もうとするだろうから、こっちはそれを待っていればいい。


 しばらく待っていると【サーチ】に反応あり。やがて前方から地鳴りのような馬の蹄の音が聞こえてきた。


「よし、奴らが突撃を仕掛けてきた。出鼻をくじくから、後は各自作戦通りに」

『『『『了解!』』』』


「カレナリエンはここで俺と待機な」

「分かった師匠」


 今、俺とカレナリエンが立っているのは戦場のど真ん中。今まさにクヴァン率いる騎士団が突撃をかけているその中心に二人だけで立っている。王族派の主力部隊は遥か後方だ。


「さて、そろそろセットするかな」


 俺は地面に手を置き、魔力を注入する。すると、目の前にあらかじめ直径3~4cm程の、先端を尖らせた丸太で組んでいた巨大な拒馬槍(きょばそう)が、地面から一斉に顔を出す。丸太の槍の数は万では効かない。びっしりと隙間なく槍を並べたこの拒馬槍(きょばそう)を横方向に数キロに渡って展開させる。横から回り込もうとしても無駄だ。


 というか、昨晩はこれの設置で大変だったんだよ。


「うわぁ。師匠やることがエグいですよ。霧で前が見えないところに拒馬槍(きょばそう)なんて……全力で突っ込んでくるからひとたまりもないですよ」

「まあ、あまり見ないほうが良いかもな」


「うん。でもこれが戦争なんだよね」

「まあな、敵に情けをかけていたら、こっちがすべてを奪われる事になる」


《悲しいけどこれ、戦争なのよね》

《お前な、それ絶対言うと思った……》


 程なくして一番先頭の騎馬が霧を抜け突っ込んでくる。


「霧を抜け……うおっ! これは!」


 拒馬槍(きょばそう) に気づき、手綱を引いてブレーキをかけようとするものの、勢い付いた騎馬が急に止まれるわけもない。そのまま槍の山に向けて突っ込んで行く。


「ぐべっ!」


 そのまま、馬もろとも拒馬槍に串刺しになり、絶命する。後続の騎馬も急に目の前に現れた拒馬槍に為す術もなく次々と突っ込み、命を散らしていく。


「前方に拒馬槍! 止まれ! 止まるんだ!」


 全軍の突撃を止めようと声を張り上げる者もいるが、一旦突撃状態に入った部隊がそう簡単に止まるわけがない。


「く……お、押すな。ま、前に槍が、ぐわあぁぁぁ!」


 後方にいる者は霧で前の状況が分からない。だが突撃を勝手に止めるわけにはいかないため、グイグイと前の兵を押す形となってしまう。結果、前方の者は槍に押し付けられる事に……。ゆっくりと槍が体に刺さっていく様はむごいとしか言い様がない。また、馬の下敷きになり圧死するものも居るだろう。


 群衆の中でドミノ倒しになり圧死したという事故のニュースを聞いたことがあるが、あれと同じだな。


 戦場となった平原には騎士団の断末魔の叫びが響き渡り、血で赤く染まる。むぅ、直接手を下していないとはいえ、この光景は結構くるものがあるな。まあ、乗り越えていくしかないんだろうけど。


「トリスタン、ディアナ。こちらはうまくいった。そっちも相手の脇腹に食らいつけ」

『分かったぜ!』

『了解!』



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



--クヴァン視点--


 前方で一体何が……俺は霧の向こうで何が起きているのか、それを確認するため馬を走らせる。


「どけっ! 邪魔だ!」


 既に突撃は完全に停止し、兵共は右往左往、混乱の極地だ。やがて霧の切れ目が見え、前方の様子が薄っすらと見えてくる。そこにあったものは、おびただしい数の兵士と軍馬が無数の槍に串刺しにされた姿だった。


「あれは拒馬槍か、バカな! あんなもの昨日の夜には無かった。一晩でこんな大規模な物を作れるわけがない!」


 できるとすれば、人知を超えた何か……!? この不自然な霧に、突如現れた拒馬槍。まさか!


 俺は拒馬槍の向こう側に佇む人物をその目に捉える。あれが、あいつがフェイトか!



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 む、【サーチ】で見張っていたクヴァンが動いたな。前方の様子を確認しに来たんだろう、そろそろ次の行動に移ろうか。


 レーニアの戦いの時は、相手が魔物だった。魔物は知能が人間に比べ低く、基本上位の魔族には絶対服従、畏れを知らない。味方がいくらやられようがお構いなしに襲ってくる。だから殲滅するしかなかったが人間は違う。


 人は畏れる。恐怖する。恐怖は判断を誤らせる。誰だって死にたくはないからな。初手では相手の勢いをくじき、次はその心を折らせてもらおう。


 俺は腕を横に振り、戦場にかかっていた霧をすべて払って消滅させる。そして風属性の魔法応用した拡声魔法を使い声を戦場中に響き渡らせる。


「よく聞け! 貴族派の連中共! 俺はレーニアの英雄フェイトだ! お前らは俺を敵に回したことを後悔することになるだろう。とりあえずこれは挨拶代わりだ、受け取ってくれ!」


「よし、カレナリエンやるぞ!」

「ラジャー!」


 カレナリエンは、俺が設計した武器、というか兵器を起動する。これはアメリカ海軍が開発を断念したと噂されるロマン兵器レールガンだ。レールガンは二本のレールの間に射出する金属弾頭を挟み、そこに大電流を流して発生するローレンツ力で弾頭を加速、射出する。ただ、構造上の問題として電極となる二本のレールに弾頭が常に接触していなければならないので、摩擦による抵抗が大きい。だから電流量を上げればその分だけ弾頭の初速を上げられるというわけではないのだ。


 だが、俺には摩擦力をゼロにする魔法【ゼロフリクション】がある。【ゼロフリクション】の魔力回路をレールと弾頭に刻み、摩擦をゼロにすれば打ち出される弾頭の初速は、理論的には投入される電流量に正比例することになる。うん、完璧だ。俺は折角雷属性の魔法を開発した時から、是非ともレールガンを実現したいと思っていたのだ。


 摩擦を排することによって、必要になる弾頭の加速距離も短くでき、2メートルくらいのバズーカ砲サイズまで小型化することができた。


 でも、大電流を流す関係で、どうしてもレール部分が熱を持ってしまう。だから連射はできない。故に予備として余分に二基作ってたんだが……ローミオンすまんな。魔力って結構個人差があって、電力に変換するところの調整が必要なんだ。今度お前用に作ってやるから許してくれ。


 貴族派の連中はというと、急に霧が晴れ、目の前に巨大な拒馬槍が露わになり、その拒馬槍に仲間が百舌鳥(もず)早贄(はやにえ)に様に串刺しになっている様を見て、戸惑い、浮足立っている。


「なんだ、急に霧が晴れたぞ? それにあの声。まさか、あのレーニアの英雄が霧を操っていたのか?」

「もしかして、この拒馬槍もあの男のしわざか? こんなことが人間にできるのか?」

「まるで地獄だ。やつは、化物だ……」


 自然現象を操り、巨大な拒馬槍を一瞬で出現させた俺に恐怖する貴族派の兵達。


「エネルギー充填120%!」

「いや、そんなタメはいいから、さっさと撃てって。でもな、これはあくまで威嚇射撃だからな。直撃させるなよ?」

「へーい。じゃあ派手にいっちゃうよ」


「よし、放て!」

「よーそろー!」


 バチバチと砲身がスパークを始め、砲身から光の筋が打ち出される。その一条の光は貴族派軍の上をかすめ、敵本陣の一部を破壊し、平原の彼方へ消える。そして、轟音を響かせて、地平線の遥か先の山が一つ崩れ落ちるのが見えた。


「あ、ゴメン。ちょっと角度浅かったかも?」


 うわ、これはちょっとやりすぎたかな。


戦いの中、視点が結構動いてしまって分かり難くなるかもしれませんがご容赦を。

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