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七話 情報を制するものは戦を制す

 さてと、王族派と貴族派の衝突まで、あと10日くらいだと思うが、それまでに出来るだけの準備はしておこう。ちなみに俺はこの戦いで自重する気はまったくない。とは言っても、いきなり極大魔法を食らわせて敵を殲滅するなんて事はしない。それをやってしまうと、使徒をあぶり出すことができなくなるかもしれないし、後味が悪くなってしまう。


 これ以上の不本意な悪評、噂はもうコリゴリです。下手したら魔王認定されかねない。


 なので、ここは近代戦闘に近い手法を用い、相手を効率的に追い詰め、使徒が出て来ざるを得ないような状況を作ってやろうと思う。


 で、その近代戦闘において最も重要なのが情報だ。


 一個の部隊が情報を共有し、一つの意志の下、組織的に動く。これって相手から見たら恐怖でしかないよね。それに情報が行き渡っていればその部隊は混乱することも無いし、士気も下がりにくい。


 三国志や戦国時代でも、偽報一つで軍が混乱して壊滅したって話は良く聞くし、情報はそれだけ重要なんだよ。


 その点、俺には【サーチ】がある。だから戦場の味方や敵部隊の配置は戦略シミュレーションゲームの様に分かってしまうんだ。相手がどこに伏兵や罠を配置しようが俺には関係なし。敵が妙な動きを見せても即座に把握し対処できる。


 これは物凄いアドバンテージじゃないだろうか。というかあのジークフリートの野郎も変な意地を張らずに、俺に軍師をやらせれば簡単に勝たせてやったのにな。残念残念。


 また情報は得るだけではなく、伝達することも重要だ。この世界では遠方に素早く正確に情報を伝達する手段はほぼ皆無と言っていい。あるとすれば、早馬を走らせるか、狼煙、信号弾くらいだし。これに変わる近代的な通信手段を確立してしまえば、もう貴族派など恐れるに足らずだ。


 というわけで、俺は無線の通信機を作ってみることにした。


 通信機と聞いておそらく真っ先にイメージするのは携帯電話だと思う。でもね。この異世界においてそこまで高性能なモノは必要はなく、情報を伝える、シンプルにこの機能だけを実現すればいい。


 この世界は現代日本と違って、電波の周波数帯が専有されていないわけだから、電波の伝達効率の良いラジオの周波数帯を贅沢に使わせてもらおう。相手の携帯端末を呼び出して、端末同士の通信を確立するなんてまどろっこしい事もする必要なし。どうせ通信を傍受するようなヤツもこの世界にはいないんだから、ダダ漏れでOK。誰かが端末に話したら、その声がすべての端末で受信され、再生される。とりあえずはそんな仕様で十分。これなら10日でも作れる。



「というわけで、カレナリエン。通信機作るぞ」

「いきなり研究棟に押しかけてきて、というわけでって言われても何のことか分かんないけど、何かまた面白いもの作るのね?」


「ああ、これが完成すれば万の兵でも敵ではないぞ」

「マジで? そんな強力な超兵器作るの?」


 キラキラした期待のこもった目で俺を見るカレナリエン。こいつ案外物騒な性格してるな。ただ単に魔道具作成に興味があるだけかもしれんが。


「いや、今から作るのはそんな敵を蹴散らすものじゃない。でもうまく使えば、そんな単純な攻撃兵器を凌駕する効果を発揮できるんだ。とりあえずこれ構想をメモったやつ」


 俺は数枚の紙の束をカレナリエンに渡す。


「え? なにこれ……でんぱ? AMへんちょう? あんてな? すぴーかー? 全然わけわかんないんだけど?」

「まあ、とりあえず俺の言う通りにやればできるから、手伝ってくれ」


「うん。りょーかい。でも、これが……師匠との初めての共同作業ね♡」

「それはもういいから真面目にやれ」


 俺はもう様式美、お約束となりつつあるチョップをカレナリエンの脳天に食らわす。というか初めてってわけでもないだろう。


「あだっ! ……もう、師匠ったら照れ屋なんだから」


 あー、こいつ相手にしてたらキリがないや。さっさと作業始めよう。


「あと、お前の武器も仕上げる。時間があまりないから急ぐぞ」

「時間がないって?」


「ああ、そうか。お前は知らないか。あと10日後くらいに、王族派と貴族派の衝突がある」

「え? マジで? 戦争になっちゃうの?」


「だから、それを早期に終わらせるための武器と魔道具を作ろうってわけだ」

「分かった。そういうことなら協力するよ」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 とりあえず、通信機の構造、原理について概要をカレナリエンに説明する。


「んーなるほど。この電波ってのがイマイチよく分かんないけど、これで離れたとこにいる人にも言葉を飛ばせる様になるのかぁ」

「細かい原理まで今は理解する必要ないから、お前は俺が言う通りに回路刻めばいいだけだぞ」


 俺も現代物理学とか、この世界の人間にどこから説明したら良いのか分からん。


「その辺はまあいいや。師匠に任せる。私と師匠が組めばいいだけの話だからね〜。一蓮托生ってやつ? もう一生離さないんだから♡」

「そんなこと言っても、お前の方が寿命長いんだから、俺が先に死ぬぞ」


「ガーン。そうだった。私、エルフに生まれたことをこれ程恨んだことはないわ……」


 がっくりと項垂れるカレナリエン。こいつ、この先何百年も俺に寄生するつもりだったのか。


 あれ? そう言えば俺の寿命……魔力で細胞活性化できるんなら、細胞を若返らせる事もできるんじゃないの?

 それにDNAのキャップ、テロメアとかを補修してしまえば不老とかも実現できるかもしれない。……ひょっとして俺、とんでもない事に気付いちゃった?


《ふっふっふ……とうとう響介さんも、禁断の領域に足を踏み入れてしまった様ですね》

《え? もしかしてこれって禁忌だったりする? なんか神罰とかあんの?》


《いえ、これで響介さんは、未来永劫私の使徒として働き続ける事が決定致しました。おめでとうございます!》

《そっちかよ! 全然めでたくねーよ》


《疲れず、老いず、死なず。まさに究極の社畜》

《邪神の正体、実はお前なんじゃないかって思えてきた》


 俺がアストレイアと念話をしていると、カレナリエンがふらりと立ち上がるのが見えた。が、その手にはなぜかナイフが握られている。


「もうこうなったら師匠を殺して私も死ぬ!」

「いや、ちょっと待て! なんでそうなる。それなんとかなるかもしれないから、ちょっと落ち着け!」


 俺はカレナリエンの手首を握り、迫るナイフを止める。


「え? そうなの?」

「ああ、なんかよく考えてみたら魔法で寿命伸ばせそうだ……伸ばせるどころか不老になれるかもしれない」


 それを聞いたカレナリエンの手からナイフが落ち、床に刺さる。あぶねぇ。足に刺さりそうだった。


「不老……マジで? 師匠って……ホントに人間なの?」

「その事なんだがな……俺も最近自信なくなってきた」


 現代知識と魔法の融合ってヤバすぎませんかね?


「まあ、師匠が人間だろうが、魔族だろうが、ロリ変態だろうが、魔道具のアイデアと設計書を提供してくれればそれでいいんだけどね」

「人間辞めてるかもしれない事は認めるけど、ロリ変態は余計だ」


 だいぶ話が脱線してしまったが、早く通信機の作成に取り掛からないと……


「無駄話はもうこの辺にして、さっさと始めるぞ」

「え? そ、そんな…… まだこんなに日が高いのに……」


 両手で頬を押さえ、わざとらしくモジモジするカレナリエン。

 俺は無言でそのカレナリエンを睨みながら、床に刺さったナイフを抜く。


「お前、いっぺん、死んでみる? 死んだ直後なら俺の魔法で復活させられるかもしれないからさ。そしたら案外まともなエルフに生まれ変われるかもよ?」

「ちょ、ちょっとタンマ! 師匠! 目がマジです! 真面目にやります。真面目にやりますからぁ!」


 はぁ、先が思いやられるが、こいつ腕だけは確かだからな。まあなんとかなるだろう。


総合評価600pt突破。ブクマも200超えました。

評価&ブクマありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします!

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