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四話 不穏な動き

 あれから俺たちはギルドを後にして、屋敷に戻ってきた。

 それにしても、今日も色々あったな。というか、なんで俺はギルドに行く度にあんな騒動に巻き込まれるんだろうか。お陰で俺の王都でのイメージは、一体どうなっているのか分かったもんじゃない。


 ……ベッドに横になるが、苦笑いとため息しか出てこない。後でディアナたんに慰めてもらおう。


 それにしてもヴィッドガルの連中、なんであんなにヤクザっぽいのだろうか……。カガリにシオン、それにミオにゲンドウ。妙に名前も和風テイストだし、これはもしかしてアストレイアの影響だったりするのだろうか? あいつ地球で任侠モノのドラマや映画に手を出してたのか。


《違います。その系統は見てませんし、それにヴィッドガルはかなり昔から存在してましたから時間軸的にも合いませんよ》

《ん? そうなのか? 俺はてっきりお前の趣味かと思ってた》


《そんなわけ無いじゃないですか。理由は良く分かりませんが、自然発生的にあんな感じの文化になったんですよ》

《まあ、由来はどうでもいいんだけど、あいつらのせいで俺どんどんヤクザの組長っぽくなってきてるし、嫌なんだよな》


《トビーやドミニクたちもですよね》

《そうだよ。どこで間違ったのかな……》


 俺は堕女神の一件が片付いたら、気ままな異世界スローライフを堪能しようと思ってたのに。任侠ライフはちょっとな……無いよな。

 既に貴族にはなっちまったが、どこか田舎の領地貰って、のんびり領地経営ってのも良いかも知れんが。


《響介さん。あなたには女神の使徒として、私と一緒にこの世界を管理するという役目があることをお忘れなく》

《え? あれまだ生きてんの? 俺十分働いてるだろ? 異世界転生してまで社畜になるとかゴメンだぜ? 俺は逃げるぞ》


《ふっふっふ。私から逃げられるとは思わないことですね。その指輪のことはもうお忘れですか?》

《あ……しまった。そうかこいつがあったか……》


 この指輪、あれからいろいろな魔法を試してみたが全く外れる気配無し。何の材質でできているのか、それすらも分からない。なんでこんな謎スペックの指輪をこいつが持っていたのだろうか……。


《私と響介さんは一蓮托生、共犯ですから逃れることはできませんよ》

《というか俺はこの指輪でお前に強要されていたって言い訳できると思うぞ。それにもうこれだけ派手にドンパチやったら、さすがに主神も気付くんじゃないか?》


《えー、それはないですよ。主神に気づかれたらまずいのは邪神も同じですからね。あいつらがうまいことやってくれるでしょ》

《なんつー他力本願な……。これだから堕女神なんだよ》


 やっぱりこいつダメだ。早くなんとかしないと……ってあれ? なんだ? 【サーチ】に反応が。俺の部屋の前に誰か来たな。


《またシルヴィアちゃんの襲来?》

《いや、それはないって》


 しばらくして、ドアをノックする音とともに、聞き慣れた声が廊下から聞こえた。


「フェイト様、夜分すみません。少しよろしいでしょうか?」

「どうぞ、入ってアリスンさん」


《おお、今度はアリスンさんの夜這いですか? この間のモフモフの続きをって事ですかね?》

《いや、だからそこから離れろって》


「では、失礼します」

 アリスンさんがドアを開け部屋に入ってくる。


「何かあったんですか?」

「ええ、それがですね。ドミニク達に貴族派の動向を見張らせていたのですが、どうも貴族派が本格的に兵を集め、戦の準備に入っているようです」


 え? マジで?


「アリスンさん。それって本当?」

「はい、東南の辺境伯領から多数の兵が、王都方向に移動している事を確認しました」


 貴族派がとうとう動いた? しかし……


「奴らが動くにしては、ちょっと早すぎないですかね?」

「そうですね。この間の件で多少王族派が盛り返したとはいえ、まだまだ貴族派優勢な状況は変わりませんし」


 なにか解せないな。あちら側で何かあったか?


「うーん。正直次の手をどうしようかと悩んでいた所だったんだよな。なかなかいいアイデアがなくて、奴らを挑発して、出てきたところを叩いてやろうかと考えてたんだけど……」

「その挑発の必要もなく、相手の方から動いてくれたと……」


「うん。王都に来てからこっち、俺達の思惑通りに物事が進みすぎて、正直気持ち悪いんだよね。もちろん、アリスンさんのサポートがハマりすぎたお陰なのかもしれないけど」

「それは……もったいないお言葉。フェイト様ありがとうございます。しかし、言われてみれば確かに事がうまく進み過ぎのような気もします」


「俺が貴族派だったら、持っている政治力と財力を使って、じわじわと王族派の勢力を削ぐ策を採ると思う。短期決戦に打って出るのはリスクが大きすぎるんじゃないかな」


《向こうにはおそらく邪神の使徒がついてるから油断はできないけどな》

《そうですね。何か罠の匂いがプンプンします》


 罠か……これまで搦め手ばかり使ってた使徒が、一転して強硬策に出たのは気になるな。


「でも相手のことをあれこれ詮索しても仕方ないな。アリスンさん。このことを皆にも知らせて、今後の対策を練ろうと思う」

「はい。了解しました」


 俺はアリスンさんを連れて、屋敷のリビングに移動。皆を呼び集める。既に寝ていたトリスタンは叩き起こした。


「な!? 貴族派が仕掛けてくるのか?」

「随分急ですわね。でも一体どんな名目で攻めてくるのやら」


「理由なんてどうせでっち上げだろ? 戦の正当性なんて勝ってさえしまえば後でいくらでも取り繕えるし」

「勝てば官軍。歴史に習えばそうなりますわね」


 さすが辺境伯令嬢レティシア。良く分かってらっしゃる。


「それでどうするのフェイト?」

「とりあえず今日はもう遅いから、明日マイア王女を通してこのことを王子に報告するつもりだ」


「おう! ついに決戦か?」

「逸るなトリスタン。俺達は所詮賓客だからな。戦力としてどこまで組み込まれているか良くわからない。全ては王子の裁量にかかっているな」


 後はあの口うるさい嫉妬男(ジークフリート)しだいだけどな。なんか嫌な予感しかしない。


《絶対あいつ自分が手柄を挙げたいからって響介さんをないがしろにすると思いますよ》

《そうだよなぁ。あいつ邪魔しなければいいんだけど》


「あのいけ好かない男が黙っててくれればいいのですけどね」


 あ、やっぱレティシアもそう思います?


「まあ、そうなった時の事も考えて、俺も準備進めておくよ」

「ん。それ魔道具?」


 エレーナが期待の込もった目で俺を見る。よほどあの(パルティア)が気に入ったのだろうか。


「まあ、それ自体は攻撃能力は無いんだけど、こういう集団戦闘において抜群の効果を発揮するものがあるんだよな」


 俺はそう言って、わざとらしくニヤリと下卑た笑みを浮かべる。


「こんな時のフェイトって、なんかとんでもない物を作ったりするから正直怖いわ」

「またカッコイイのよろしく」


「まあ、期待して待っていてくれ」


評価ありがとうございますm(_ _)m

これであと10年は戦える!

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