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二話 新たな力(2/2)

 ディアナ、トリスタン、エレーナはそれぞれの新しい武器の性能を試すべく、演習場で思い思いに自分のエモノを振り回す。


「あれだけ勿体ぶっただけあって、すごい性能ですわね」

「ああ、その通りだ。フェイト殿、あなたは一体何者なのだ?」


 レティシアとカガリが三人の武器の性能を見て唖然とした表情を見せる。


「まあ、アイデアと武器のベースは俺ですけど、仕上げたのはカレナリエンですからね。彼女も褒めてあげてくださいよ」

「そうですわね。たった数日でこれだけのものを。さすがは宮廷魔術師と言ったところですわね」

「ああ、そなたが味方になってくれて助かったよ」


 褒められたカレナリエンは一瞬喜んだ顔を見せたが、すぐに元の表情にもどる。


「うーん。師匠、褒めてもらえるのは嬉しんだけど。私の武器はないの? なんかこう、私にもカッコイイの欲しいんだけど」

「ああ、多分そうくると思ってな。昨日徹夜でこの設計図を書き上げたぞ!」


 俺はそう言って複数枚の設計図をカレナリエンに渡す。


「ふむふむ……ってこれは……いける! こんなの今まで見たことないよ。というか師匠のこの発想ってどこからくるの?」


 発想って言われても、某有名アニメ丸パクリなわけなんで、俺の完全オリジナルなわけじゃないんですが……。まあこの世界じゃ著作権とか関係ないからね。


「まあな。俺の手にかかれば、こんなものどうってことはない」


《カンニングしているようなものなのに、良くそんなにエラソーに言えますねぇ》

《いや、でもな。これが異世界転生者の特権ってやつじゃないの?》


「マジで? やっぱり師匠すごいよ。もう惚れた。というか濡れた!」

「だから、そういうのやめいって。とりあえずこの武器の設計の詳細説明して、ベースは俺が作るから後はお前が仕上げろよ」

「うん、分かった。師匠と私の愛の結晶がここに誕生するのね!」


 ……俺は無言のまま拳を握りしめ魔力を込める。


「わっ! ちょっとタンマ。それマジヤバイって死ぬ。絶対死ぬ。真面目にやるから許して」

「ったく、お前は……いいか、ここはだな……」





 設計談義に没頭する俺とカレナリエンの様子を、少し離れたところで傍観するレティシアとディアナ。


「ディアナさん。あの二人、あのままにしていいのかしら?」

「うーん。正直あまりいい気はしないんだけど、フェイトは昔からああいう事に夢中になると止まらなくなるからね。仕方ないのかな」


 魔法の開発している時とか、私が何度声をかけても気づかなかったし。


「ふーん。それは正妻としての余裕かしら?」

「そんなんじゃないんだけど、もうちょっとフェイトを信じてあげようかなと思って。これまで色々あったけど、結局フェイトは私を選んでくれたから」


「はぁ……まさかディアナさんの口から、惚気(のろけ)話を聞かされるとは思いませんでしたわ」


 がっくりと項垂(うなだ)れるレティシア。


惚気(のろけ)って、そんな……。レティシアちゃんは、フェイトのことを、その……どう思ってるの?」

「そうですわね。……わたくしに媚を売る様子は微塵もありませんし、あそこまで気楽に話ができる殿方は今まで会った事がありませんわ。……お父様がどうしてもと言うのなら拒否するつもりはありませんわね」


「レティシアちゃんだったら、私は別にいいんだけどね」

「もし、そうなったらお互いフェイト様の愚痴で盛り上がるかもしれませんわね」

「そうね。その時はよろしくね」


 レティシアちゃんとなら、ずっと仲良く、フェイトを支えていけると思うな。




 !? あれ? なんだろう……。今背中に物凄い悪寒が走った気がするが、もしかして邪神の使徒がこの近くに? ……んなわけないか、とりあえずさっさとカレナリエンへの説明終わらせよう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 一通りカレナリエンへの説明を終えると、カレナリエンは自分の研究室へと急いで帰って行った。相変わらず研究の虫なんだな。しかし、エルフってのはもっと森の中とかで静かに暮らしているもんじゃないのか? こんな社畜エルフとかイメージが崩壊するな……。

 ……まあ、あの堕女神が作った世界だからな。いろいろおかしなところがあって当然なのかもしれない。


《ファンタジーっぽくなくてすみませんねー》

《いや、ある意味新鮮でいいかも知れんぞ》


「さてと、三人とカレナリエンの武器はなんとかなりそうだけど。次はカガリの方だな」

「そうだな。獣人族の仲間の件だが、私の家臣が王国の奴隷支配に対抗するために組織を作ったという話を聞いた。だが、私はずっと貴族派に囚えられていたから、その組織がどこにあるのか詳細は分からない。私が無事だということが伝われば、彼らは必ず味方になってくれると思うのだが……」


「なるほどな。レジスタンス組織みたいなものを作っているのか。でも、カガリが救出された事は王都中に広まっているから、出てきてもおかしくないと思うんだが……。あ、そうか。これは貴族派の流した偽情報だと疑って慎重になっているのかもな」


「ああ、そうかもしない。あいつはかなり慎重な男だった。だからこそ今まで組織が潰されずに持っていたのかもしれないがな」


「なんとか、場所が分かればいいんだがな」

「……あれだけ大口を叩いた挙句、この様な有様で申し訳ない」


 私が一声かければ馳せ参じる、カガリは以前そう言っていた。でも、現実はそううまくいかなかったわけだが、何かうまい手はないだろうか。カガリの落ち込みっぷりがひどくて正直見てられない。


「僭越ながらフェイト様」


 不意にアリスンさんから声をかけられる。まさか、アリスンさん。既にこの件にも手を回しているとかそんなことないですよね?


「え? またアリスンさん。何かの情報掴んじゃったりしてるんですか?」

「はい。その通りです。実は大臣達の近辺を洗っているついでに、獣人達の情報も収集していました。王都から少し北に行ったところの山岳地帯にアジトがあります」


 相変わらずアリスンさんの情報収集能力は凄まじい。神がかってるな。というかなんでこんな優秀な人が俺なんかに尽くしてくれるんだろう。恋愛感情……ではないと思う。アリスンさんから感じるのは痛いまでの忠誠心だ。これまで俺が何かしてあげたという事もないのに……。この忠誠心は一体どこからくるのだろう。


「アリスンとやら、それは本当か?」

「はい、私の部下に探らせましたが間違いありません」


 ドミニクおまえ、完全にアリスンさんの部下になったんだな。アリスンさんの事を姐御とか呼んでたし……。まあ、本人がそれで良いのなら別にいいんだけど。


「ならばフェイト殿。早速そのアジトに向かおう。シオン達も私のことを案じているはずだ。早く私の無事な姿を見せて安心させてあげたいのだ」


 シオンというのはカガリの家臣の名前かな?


「そうだな。善は急げと言うしな。早速移動しようか」


 ホバークラフトを使えばすぐ行けるだろう。


「あ、フェイト様。その必要には及びません。そのシオンという者に渡りをつける事に成功しましたので、今日の夕刻、ギルドの一室にて会談をする予定です。できればフェイト様、カガリ様にも同席して頂きたく……」


 なるほどな。ギルドからの使者であれば情報もある程度信用できるし、貴族派の罠である可能性も低い……と獣人達も判断してくれるだろう。それにしてもアリスンさん、相変わらず根回しが完璧すぎて怖いな。


「フェ、フェイト殿はこんな優秀な臣下を持っていて羨ましい限りだな」

「あ、いや。アリスンさんは家臣じゃないんですよ。ただのギルドの受付嬢ですよ」


 俺がそう言うと、カガリは心底呆れた顔を見せる。


「は? フェイト殿、冗談はよしてくれ。どこの世界にこんな情報収集、工作ができるギルドの受付嬢がいるのだ?」


 いやー。それが実際に目の前にいるんですよね。アリスンさんには謎な部分が多いんだけども。

 俺はそう考えながら、アリスンさんに視線を送る。


「はい、私はフェイト様の仰る通り、しがないギルドの受付嬢です。ただし、フェイト様専属の受付嬢であり、フェイト様への忠誠は絶対です」

「そ、そうか……。これからもよろしく頼む。フェイト殿の周りには面白い者が多くて退屈しないな」


 カガリみたいな『普通の人』は俺達と付き合うのは結構しんどいかもしれんな。


「まあ、そうかもな。とりあえず夕刻になったらギルドに向かおう」

「分かったよろしく頼む」


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