二十話 嵐竜はどこに?
今回は章の区切りとなる、フェイトとアストレイアのだべり回です。
一応次の展開に関係するようなキーワードは含めていますが……駄文申し訳ない。
もうすっかり見慣れてしまった自室の天井を、ベッドに横になりながら見上げる俺。隣ではディアナがスヤスヤと気持ちよさそうに寝息をたてている。……と言っても、事後ではありません。いや、マイアに手配してもらった客用の屋敷でナニするのもね。さすがに不謹慎かなと。でも、そんなことを思いつつも、多少はイチャコラしましたけどね? さて……
《アストレイア! きさま! 見ているなっ!》
《ぐ……随分と見せつけてくれましたね》
《嫌なら見なきゃいいのにな》
《うう……でもなんか気になっちゃうじゃないですか……》
《まあ、お前の性癖なんかどうでもいいから置いといて……》
《ガーン!! 置いてかれた!》
《王都に来て随分経ったけど、嵐竜シグルーンの気配は掴めたか?》
俺達の目的はあくまで嵐竜シグルーンと使徒を倒すこと。王族派と貴族派の王位争いはオマケとは言わないけど、優先順位はどうしても下がる。本来の目的を見失っちゃだめだよね。
《えっと、それがですね……シグルーンちゃんは完全に封印されてしまっているのかもしれません。気配は薄っすらと感じるのですが、場所まではまだ特定できてないです》
《そうか、やはり一筋縄にはいかないか》
となると、シグルーンを探し出すよりも、先に使徒を炙り出した方がいいのかもしれないが、でも……
《うーん。王都に来て、王族派に取り入って、適当に暴れてたら使徒が出てくるだろうと単純に考えていたんだけど、その使徒の尻尾すら掴めない。結局俺がやってることって正しかったんだろうか……》
《……ごめんなさい。響介さん。私が不甲斐ないばかりに……》
ん? こいつが素直に謝るなんて珍しいな。
《いや、使徒の方が一枚上手なだけだろう。アストレイアのせいじゃない》
《……あれ? この役立たずの駄女神! くらいの罵声を浴びる覚悟はしていたんですが……妙に優しいですね。もしかして私に惚れちゃいました? うふふ……》
《いや、ハナから期待していなかっただけだ。勘違いするな》
《ガーン!! ひ、ひどい。最近私の扱いが酷くないですかぁ響介さーん。最近ディアナちゃんとうまくいってるからって冷たいじゃないですか……このぉリア充がぁ爆発しろ! 一旦上げてから落すなんてひどすぎる~!》
《おい、待て。落ち着けアストレイア。分かった。俺が悪かった。だから許してくれって》
確かに最近こいつに構ってやれてなかったからなぁ。フラストレーション溜まってたんだろうか。というか、今更だけど女神の威厳ゼロだよな。
《やです。全然心が込もってません。もっとこう……愛を囁やく様にお願いします!》
《愛ってお前な……言ってて恥ずかしくならないか?》
《私の目の前でイチャコラする響介さんほどじゃないですよ。さあ、来なさい。カモーン!》
……自分から雰囲気ぶち壊してどうするよ。はぁ、仕方ないな。
《今まで冷たくして悪かったなアストレイア。お前が頑張ってシグルーンの気配を探ってるのはなんとなく気配で分かってたから。その、ありがとうな》
《うーん。70点!》
《厳しいな!》
《でもまぁ、上辺だけの歯の浮くようなセリフじゃないだけマシかな。なんか照れながら言ってる様子がかわいかったです》
《あー、さいですか。それはようございましたね》
《でも、他の誰かにありがとうって言われたの、これまでの人生の中で初めてかも》
《おいおい、今までどれだけ寂しい人生送ってたんだよ。お前には信者がいるし、眷族のリディルとかもいるじゃないか》
人生というか神生って言った方がいいのか?
《信者さんたちのは……あれは女神って存在に対してだと思うし、リディルちゃん達は私とは主従の関係って感じですからね……そんなに気安くは話せないかな》
《そうか、結構お前寂しかったんだな》
天界で一人っきりで何千何万年も過ごす。人間である俺には想像もつかない世界だな。
《だから、ちょっとくらい地球でハメを外してもいいじゃないですか》
《いやそれは……同情の余地はないこともないけど、女神としてはアウトだろ》
《それは分かってたんですけどねー。一旦ハマったら抜け出せなくなったというか……これは、そうですよ。地球の、日本のサブカルチャーが悪い!》
《責任転嫁きたよ》
まあ俺も日本のサブカルにハマっていた身としては、アストレイアの気持ちも分からんでもないけどな。
《あと、話せる相手と言えば、聖女ちゃんくらいしかいないし……。でもあれは話すというよりも神託ですけどねー》
《聖女ちゃん?》
《お隣のアステローペ聖教国に、アストレイア教の総本山があるんですけど、そこに神……というか私に選ばれた聖女ちゃんが居るんですよ。その聖女ちゃんとなら信託で話せるんです》
《ふーん。枕元に立つって感じか? でも神託で世間話とかガールズトークするわけにもいかんしな》
女神と聖女が最近の恋愛事情や流行について話してる姿とか想像したらシュール過ぎるわ。
《そ、そうなんですよ! やたらと慈愛に満ちた、それでいて威厳のある声で話さなきゃならないんで、めっちゃ疲れるんですよ。キャッキャウフフできないんですよ》
《それはお前が背伸びした女神像を作っちまったからだろ、始めっから地で行けばよかったじゃないか》
まあ、それで信者がつくとは思えないけどな……。
《響介さん、それじゃだめです。神様家業、舐められたら終わりっすよ》
《いやいや、どこの世界の話だよそれ》
《はぁ、でもお前の心境が分かって良かったのかもな。これからは冷たくあしらったりしないから安心しろ》
《ああ、やっぱりなんだかんだ言っても響介さんは優しいですね。私も落とされちゃうかもしれません》
《怖こと言うなよ。それに『なんだかんだ』は余計だ》
こいつ、いつも一言多いから、ついからかっちまうんだよな。
《さて、話を戻すけど、シグルーンが見つからない以上、俺達がやるべきは使徒をあぶり出すこと……だな?》
《そうですね。その使徒の気配……邪気の濃さですが、やはり貴族派の方が臭いです》
《やっぱりそうだよな。獣人たちを奴隷にとか、やってることが邪だからな。そう考えると、王族派についたのは正解だったか》
《もっと、貴族派に嫌がらせを続けて、向こうがしびれ切らせてガーッと仕掛けてきた時に尻尾掴んじゃいましょう》
《そんな単純でいいのかなぁ……》
《難しく考えるのはよくないですよ~》
《ま、そん時はよろしく頼むわ》
《分かったわダーリン♡》
《調子に乗るな!》
《へーい》
これで四章終了。次章はいよいよ決戦です。
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