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十三話 月下の大捕り物(1/2)


「ドミニク、本当に行けるのか?」

「はい! 親分! 問題ありません。必ずやり遂げてみせます!」


 ドミニクのやる気はビシビシと伝わってくるのだが、うーん、大丈夫だろうか。


「短い期間ですがドミニクには私が隠密の技を仕込みましたので恐らく問題ありません」

「……さ、さいですか」


 もうアリスンさんについては大抵のことならば驚かないと決めていたのだが、隠密の技って……。後でレイモンドにアリスンの経歴を聞いてみよう。


「ドミニク達は先に持ち場に移動! 私はフェイト様に状況を説明した後すぐ追いつきます」

「「「はっ! 了解です姐御!」」」


 アリスンさんの号令を受け、部屋を出て行くドミニク、アーヴィン、ゴードンの三人。めちゃくちゃ統率の取れた機敏な動きだった。あれは相当アリスンさんにしごかれているな。

 それにしても、俺が親分でアリスンさんが姐御か……まるっきりヤクザじゃねーか。いつから俺は堅気じゃなくなったんだ?


「えっと、それじゃあ俺はどうしたら?」

「フェイト様はここから南にあるウラド港の第三倉庫に向かってください。私の情報網によるとそこで今夜ある大口の取引があるそうです」


 おお、第三倉庫とかなんか定番っぽいのが出てきたぞ。


「その大口の取引って内容までは分からないのか?」

「正確な情報ではないのですが、大人数の獣人奴隷の取引があるとか、またその奴隷の中には獣人国の姫君が含まれているとの情報があります」


「え? まじで? もしかしてその姫を助ければ」

「獣人達の協力が得られるかもしれませんね」


 いや、それってかなり貴重な情報なんじゃないの? 奴隷にされて貴族派の抑圧に苦しむ獣人達が蜂起する感じになったら、王族派もかなり有利になると思う。このタイミングでこんな情報を入手してくるアリスンさんって……有能すぎてちょっと怖い。


《そしてその獣人の姫にもフラグをおっ立てるというわけですね》

《だからカレナリエンの時もそうだったけど、それやめてくれる?》


「何! お姫様が囚えられているのか? その姫を俺が颯爽と助ければ、もしかして……」


 なんか脳内で変な妄想を展開するトリスタン。心配しなくてもソレはないって。たとえそれで第一印象を良くできても、そのうちお前のバカさ加減に気がついて幻滅していくだろうよ。


 それよりもちょっと気になることが……


「……もしかしてアリスンさんはこっちの方に行きたかったんじゃないの?」


 アリスンさんは獣人だ。その獣人の姫君には何か思うことがあるのかもしれない。


「いえ、私は獣人の国ヴィッドガルで生まれたわけではありませんので、そこまでの思い入れはありません。お気遣いありがとうございます」

「そうか、それならいいんだ。ではそこでレイナード財務大臣を不正な奴隷取引の現場を押さえて、奴隷達とお姫様を救出するってわけか。で、その取引相手は多分、南の……リプセット辺境伯だな?」


「ご明察、さすがですフェイト様」


 帝国に滅ぼされた獣人の国ヴィッドガルに近い、南方のリプセット辺境伯が獣人奴隷の供給源になっているんだろうな。


「よし、だいたい状況は分かった。それじゃ行こうか三人とも」

「ん。分かった」

「分かったわ、フェイト」

「おう、やってやるぜ!」


 気合バッチリのエレーナとディアナだが、トリスタンの方は顔が少しニヤけている。うーん、不安だ。先走りやしないだろうか。


「あと、一つレティシアに仕事を頼みたい」

「なんですの?」


「奴隷が状態化している現在の状況下において、奴隷の取引を一件潰したところで、あちらには対してダメージにはならないと思う。でも、救出した姫を旗印に、王族派が獣人奴隷の解放を謳ったらどうだろうか。アストレイア教の真の教えを取り戻すとでも言えば支持が集まるかもしれない。最終的には獣人の国ヴィッドガルの再興を支援するとでも宣言すれば各地の獣人達が決起し貴族派に打撃を与えられるだろう……とマイア王女を通じて王子様に進言してくれないか?」


「王女とはあまり顔を合わせたくはないのですが……分かりましたわ。なんとかやってみますわ」


 レティシアは渋々といった感じで俺の提案に同意してくれた。


「ありがとうございます。フェイト様。私はヴィッドガルの出ではありませんが、私達獣人にそこまで心を割いて下さって……感謝に耐えません。ここはこの不詳アリスン。命に変えてでも今回の作戦をーーー」

「いや、だからアリスンさん。お願いだから命は大事にね。アリスンさんが死んじゃったら俺が悲しむから」


「え? そんな……フェイト様……」


 そう言って俯き頬を染めるアリスンさん。そして突き刺さる三人の視線。あれ? 俺もしかしてやっちゃった?


《またそんな殺し文句を言って……》

《いや、でもこうでも言わないと暴走しちゃいそうだし》


 えい、もういいや。気を取り直してさっさと行こうか。


《というわけで、アストレイア、ナビ頼む》

《ぐ……私ってそんな役回りですか?》

《碌な加護ないんだから、ちょっとは役に立てって。王都初めてだから土地勘ないんだよ》

《うう……分かりましたよぅ。ナビすりゃいいんでしょナビすりゃ》



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「時間通りだな。リプセット辺境伯」

「ああ、重要な取引だからな。ちゃんと金は用意できているな?」


 場面は変わり、ここは例の第三倉庫の取引現場だ。ちなみに俺達は既に現場に到着し、身を潜めて大臣たちの様子を伺っている。光学系の認識阻害の魔法を使っているため、気づかれる事はないだろう。ちなみにこの倉庫は港の外れにあり普段は使用されていないそうだ。夜はおろか昼間でさえ人の気配はない。まあ、こういうマフィアが裏の取引をするのにとっておきというか、定番の場所だよな。


「本当に獣人国の姫は居るのか? それならば相応の対価は出すぞ。その姫を人質にすれば獣人共が歯向かうことはないだろうからな」


 ぶひぶひと、本当に豚にしか見えない男が醜い笑みを浮かべる。あれがレイナード財務大臣か。ぶくぶくと肥え太りやがって、相当贅沢な生活を送っているんだろうな。


「ああ、それは間違いない」


 ひょろっとしたちょび髭、白髪の男がそれに答える。こいつがジェイル=リプセット辺境伯だな。確かこいつの息子が魔術師団の団長やってるんだっけ? 南方の有力貴族だ。


「おい、例の姫を連れて来るんだ」

「はっ、畏まりました」


 リプセット辺境伯は部下に獣人族の姫を連れてくるように命令した。程なくして手を後ろで縛られ、猿ぐつわをされた娘が引きずられ、二人の前に連れてこられる。

 あれは猫? ……いや虎の獣人か。猫っぽい耳が頭からひょっこり出ているが、後ろから伸びている尻尾がトラ模様だ。ボリュームのある金色の髪を腰まで伸ばし、どこかワイルドな雰囲気を感じさせる。瞳も金色で、猿ぐつわをされて顔はよく分からないが、スタイルも良さそうで美人の部類に入ると思う。年は俺よりも少し上くらいか。


 縛られた姫は見下ろす二人をじっと睨んでいる。さすがは一国の姫君。肝は座っているようだ。


「ほほう……こいつが獣人の姫君か、これはなかなか……ただの人質として置いておくのは勿体無いな。どれどれ、ワシが後で可愛がってやろうか? ぐへへ……」


 豚大臣が下卑た笑みを浮かべる。隣でその様子を見ていたディアナが、ギリリと音が聞こえて来そうなくらいに歯を噛んでいる。まあ、気持ちは分かる。俺も今すぐ飛んでいってあの豚面に一発ぶちかましてやりたい気分だ。


「それはご随意に、私としては金さえ頂ければ、後は関知するところではありませんので」

「相変わらずそっけないなお前は」

「これはビジネスですからな。それでは金額の方ですがーーー」


 商談は順調に進む。さて、どう仕掛けるか……二人の護衛をしている兵士は五十人程度。俺とディアナの二人なら余裕だろう。ちなみにエレーナには少し離れた所に幽閉されている獣人奴隷達の救出を任せた。どこに隠しても俺の【サーチ】かかれば一発で分かる。警備している兵士の位置と人数も教えているので問題ないだろう。エレーナは身軽いし潜入に向いていからな。一応人を相手にするのは問題ないのかと聞いてみたが、エレーナは問題ないと即答した。冒険者になる時覚悟はしていたのかもしれない。


 よし、俺も覚悟を決めよう。

 ちなみにトリスタンは奴らを取り逃がさないように、俺とは反対側に待機させている。くれぐれも暴走すんなとは言ったけど……大丈夫かな。


「ディアナそろそろ動くぞ」

「うん。分かった。あいつら許せない」

「あくまで、救出が最優先だぞ。大臣達を殺すと後々面倒なことになりかねない」

「分かったわ」


 じゃあ、始めようか。


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