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十二話 そんな装備で大丈夫か?


「三人揃って朝帰りとは……なかなかやりますわね」


 俺はカレナリエンからやっと開放され屋敷にたどり着きドアを開けた。するとそこで出迎えてくれたのは、腕組みをして仁王立ちしたレティシアだった。


「いや、なんか誤解があるみたいだけど、レティシアが思っているような事は何もなかったから。宮廷魔術師のカレナリエンに魔法のレクチャーをしていたらこんな時間になっただけだ」

「そ、そうよ。何もなかったから」


「ふーん。まあそういうことにしておきましょう。とりあえず大事なくて良かったですわ」

「うう……心配させて悪かった」


 ため息を吐き、安堵の表情を見せるレティシア。まさか心配してずっと待っていてくれていたのか? 意外と可愛い所あるじゃないかこいつ。


《ふむふむ、これがギャップ萌えってやつですねぇ。バカな男はこういうのに騙されるんですよね》

《俺がそのバカな男って言いたいのか?》


 とりあえず徹夜明けの俺は部屋で休ませてもらうことにした。

 それにしてもカレナリエンの研究、学習意欲はすごかった。俺の持っている知識、ノウハウはほとんど教え尽くしてしまった。後は実戦、トレーニングあるのみとなっている。


 というわけで俺はカレナリエンに幾つかの課題を残していった。課題といえば聞こえが良いが、ぶっちゃけ仕事を押し付けてきたに近い。


 俺はこれまでパーティメンバーの武器についてあまり気にしていなかったが、ディアナやエレーナは新人冒険者が使うような粗末な武器を未だに使用している。ドラ◯エで言うと『どうのつるぎ』か『てつのつるぎ』レベルの武器だ。ちなみにトリスタンは元々冒険者ランクが高かったので、そこそこの武器を使っているみたいだが……。


《そんな装備で大丈夫か? ってなりますよね》

《まあな、大丈夫だ、問題ない……とは言えないよな》

《邪神の使徒と戦うなら、いい装備は必要ですね》

《だよな》


 これまでディアナは魔法を付与して戦っていたし、エレーナは風魔法を併用して戦っていたから武器の性能の低さが表に出てなかった。でもできることなら一番いい武器を与えてやりたい。しかし、そんな魔法を駆使して戦う二人に合うモノを武器屋で扱っているわけがない。


 それなら、作るしかないよね?


 というわけで、三人の武器の設計図をカレナリエンと二人で作り、その武器への魔力回路の付与をカレナリエンに課した。まあそのベースとなる武器は、俺が錬金術モドキの魔法で生成したんだが。材質についても特別な金属を使っている。これなら十分な威力が期待できるだろう。


 カレナリエンはその錬金術モドキにも興味を示していたが、これは魔法の応用だからな。まずは魔力操作を完全にマスターしなければならない。後で教えると言って今回はお茶を濁した。


 さて、どんな感じの武器に仕上がるかって? それは完成してからのお楽しみってことで。


 それからあまり気が乗らなかったが、トリスタンの武器も作ってやることにした。あいつだけ仲間はずれにしたら泣いて鬱陶しいだろうからな。というわけで俺はさっさと休ませてもらう。徹夜明けで眠いんだ。俺は既にディアナが寝ているベッドの中に潜り込んだ。うん。あー癒される~。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「フェイ……、…起きて……」


 ん? 誰だろうか。俺を起こそうとする声が聴こえる。でもまだ全然寝た気がしない。昨日は徹夜だったんだ。まだ眠いんだけど……俺は寝返りを打って起きるのを拒否する。

 それでも声の主は俺を起こそうと、布団越しに俺の背中に手を置き揺すってくる。んーしつこいな。これは恐らくディアナだと思うんだけど、俺の安眠を妨害するとはいくらディアナと言えども許せん。よし、ここは一つお仕置きをしてやろう。


 俺は自分の背中に触れるディアナの手を掴んで引っ張り、ベッドの中へと引きずり込んだ。そしてディアナに抱きつき、その胸に顔を埋める。


「あっ! え……」


 ぐへへ……俺の眠りを妨げた罰としてあんなとこや、こんなとこを揉みしだいてやるもんね~。


「うっ! あ、あんっ! フェ、フェイトさ……ま!」


 そんな可愛い声を出しても許してやらないよ。……って、あれ? それにしてもディアナのやつ、いつの間にこんな女らしい体つきになったのだろうか。確かこんなに胸は大きくなかったような気がするし、それにお尻も鍛えられているからもっとハリがあったと思うんだけど、今日はプニプニ柔らかくて気持ちいい。それに何と言ってもこれだな。このモフモフの尻尾の手触りがたまらん!


 …………ん? 尻尾? ……しっぽおおぉぉぉぉ???!!!


 いつから! いつからディアナに尻尾が生えたんだ? まさか俺の魔法か? 俺のせいでディアナがこんな姿に……くっ、てそんなわけ無いよな? 俺は最悪の事態を想定し、顔を青ざめる。そして、ゆっくりと胸から顔を離し、抱きついた人が何者かを確認した。


 そこには恍惚とした表情をしたアリスンさんがベッドに寝そべっていた。


「……フェイト様。そんないきなりは……さすがに心の準備が」

「って、うわあああぁぁぁっ! アリスンさんっ!?」


 なんで、なんでアリスンさんが俺の部屋にいるんだよ?


「それに……奥方様もおられますし……ポッ」

「え”……」


 あああぁぁぁ、ヤバイ。今回は本当にヤバイ。シルヴィアの時はまだ不可抗力だったと言い訳ができるけど、今回のは完全に俺の落ち度だ。俺の後ろに殺意の篭ったオーラを放つディアナの気配がする。俺の人生終わった。間違いなく終わった。


「フェ・イ・ト・さーん?」

「は、はい。なんでございましょう」


 いつぞやの様にゴゴゴ……と音がしそうなどす黒い気配を放つディアナさん。怖くて後ろを振り向けない。


「随分お楽しみのようね?」

「い、いえ。そのような事はございませんよ?」


「モフモフの尻尾気持ちよかった?」

「そ、それはもう! ……じゃなかった。そんなことないです。はい」


 あぶねー。思わず反射的に答えてしまった。だが、モフモフは正義だ。


「はぁ……全くフェイトは、もう……。でも、さっきのは私だと思ってやったんだよね?」

「え? うん。まあ、そうだけど」


「それなら。なんか色々と納得いかないところもあるけど、許してあげる。その代わり次からは私だけにしてね」


 そう言って、後ろから抱きついてくるディアナ。


「お、おう。分かった」


 というか、マジ天使です。ディアナさん。一生ついていきます!


《けっ、結局元の鞘に収まりやがったか。このバカップルが》

《てめぇ。見てたんだったらちゃんと教えてくれよ!》

《えー、だって面白そうだったじゃないですかー。また修羅場が見られるかと思ってたのに。ぶぅ~》

《他人事だと思ってお前な~。そんなに修羅場が見たいんなら地球で昼ドラでも見てろ》


「え、あ。そう言えばアリスンさんなんでここに?」


「はい、そろそろ時間なので、お呼びしようかと」


 ん? 時間? 時間って……ああ! そうだった今日は大臣の取引現場を襲撃する日だった。


「ア、アリスンさん。ゴメン忘れてた。今何時くらいかな?」

「いえ、まだ夕方ですのでまだ時間的には余裕がありますが、そろそろ準備した方が良いと思います」


「ああ、そうか。ありがとうアリスンさん」

「いえ、どういたしまして」


 うーん。屋敷に帰ってきたの昼前だったから、まだ数時間しか寝れてないんだな。でもさっきの騒動ですっかり目が覚めちゃったよ。さあ、このまま張り切って大臣ぶっ飛ばしに行きましょうか。


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