九話 宮廷魔術師カレナリエン(1/2)
昨日はアリスンさんから大臣襲撃についての概要を聞いた後、休むことにした。この件についてはまだドミニク達が探りを入れている最中らしく、詳細内容については当日話すとの事だ。まあ、来る日に備えて心の準備だけはしておこう。
ちなみにトリスタンは昨日の夜遅くに帰ってきた。話を聞いてみると、王都でのナンパは尽く失敗。途方に暮れていたところに女の子から声をかけられて、それにのこのことついて行ったら、怖いお兄さんがわらわらと出てきて、因縁をつけられたそうだ。
というかそれ、思いっきり美人局やないか。
結局トリスタンはその怖いお兄さん達を蹴散らして逃げて来たそうだ。どうも俺とディアナにアテられて自分も彼女が欲しくなったらしいのだが、何やってんだよこいつは。早く相手を見つけないと俺に変な女を紹介されるという危機感もあるらしい。あれ冗談なのにな。
……まあ、トリスタンにもいい出会い。あると良いんだけどね。
とりあえず、アホのトリスタンの事は置いといて、今日は早速ローミオンの弟子の宮廷魔術師、カレナリエンに会いに行き、協力を取り付けよう思う。師匠であるローミオンの紹介状もあるから大丈夫だと思うが、交渉は慎重に進めよう。
《ほんとですよ。その方、名前からして女性ですよね? くれぐれもフラグだけは立てないようにしてくださいねー》
《だからやめろよ。そういうこと言うから変に意識するんだって》
そんなアストレイアの念話を振り払いつつ、俺は屋敷を後にする。あ、二人っきりで会うのはヤバそうなので、ディアナとエレーナも連れて行く事にする。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
宮廷魔術師の研究棟は王宮の中心にほど近いところにある。これは宮廷魔術師に王族のボディーガードとしての役目があるからだ。有事の際にすぐに駆けつける事ができなければ意味がないしな。でもそれは同時に宮廷魔術師の地位が非常に高い事も意味する。生半可な実力では宮廷魔術師にはなれないのだそうだ。
でも、しかしなぁ。あの暑苦しいローミオンの弟子だからな。実力はあるんだろうが、弟子は師匠に似るって言うし。やっぱりそいつも一癖も二癖もあるやつなんだろうか? 一抹の不安を抱えながらも俺は宮廷魔術師の研究棟のドアをノックする。
「あ、すみませーん。ローミオンさんの紹介で来ましたフェイトと言います。宮廷魔術師のカレナリエンさんはいらっしゃいますか?」
…………
ん? あれ? 無反応。一応三分程待ってみたが返事はない。
「留守……なのかな?」
「ローミオンがこの時間なら居るだろうって言ってたけど」
仕方ないもう一度ノックしてみよう。
「すみませーん。誰か居ませんか?」
すると、ドアがガチャっと開き、金髪ツインテールの女の子が出てきた。
「うるさい……徹夜明けなんだから、そんな大きな声出さないでくれる? それで、カレナリエンは私だけど、何か用?」
眠そうな顔でそうつぶやく女の子。うん。名前からある程度予想はついていたが、やはりカレナリエンはローミオンと同じエルフか。整った顔立ち、その尖った特徴的な耳ですぐ分かる。年はエルフなので良く分からないが若い方なのだろうか? 背はエレーナと同じくらい、150センチ程だと思う。
それにしても薄手のキャミソール姿でお出迎えとは……なかなかサービスが効いてますね。下着とか色々透けて見えてしまっているのですがこれは良いのだろうか? でもあれだ……悲しいくらいにペッタンコなのは残念である。もしかしてこの世界のエルフはみんなそうなのかな?
「!? フェイト! みちゃダメ!」
ディアナに手で目隠しをされた。ふっ、だがもう遅い。俺のオリジナル魔法【フォトグラフィックメモリー】で脳裏に映像を焼き付けたからな。
これでいつでも脳内で先程の映像を閲覧可能だ。
《また、無駄に高性能な魔法を……》
《これで暗記テストもバッチリだ》
「ん? これのこと? 別に減るもんじゃないしどうでもいい。それより用事は?」
そうつぶやいたカレナリエン。あまり見た目には頓着しない方なんでしょうか。
「ああ、用件についてはこれを見てくれ」
俺はディアナに目隠しをされたまま、ローミオンから預かっている手紙をカレナリエンに差し出す。カレナリエンはその手紙を受け取り、封を切る。そのまま精読しているのか沈黙がしばらく続く。ディアナに目を覆われているので様子が分からん。
……透視魔法とかできないものだろうか。
《それ、悪用する気まんまんですよね?》
《ん……まあ、それは男のロマンのひとつでもあるしな》
……アストレイアから返事がない。呆れてモノが言えなくなっているようだ。
「な! 無詠唱! あなたがもしかしてあの噂のレーニアの英雄? 私に無詠唱を教えてくれるの?」
「ああ、そうだな。ローミオンとそんな約束したし」
「分かった。早く入って」
「ちょ、ちょっとダメ。その前にちゃんと服着て」
カレナリエンが俺の手を引こうとするが、それにディアナが待ったをかける。
「あなたは誰?」
「私は、その……フェイトのフィ、フェイアンセよ!」
若干吃りながらそう言い放つディアナ。最近からかわれるのは慣れてきたのだが、自分から言う事についてはまだ耐性がないご様子。うん。初々しくて良うございます。
「なんなの? 研究棟に女連れで来るとはいい度胸ね。私なんか毎日毎日研究漬けで出会いなんか全然無いのに……」
師匠は全然手伝わないし……とかブツクサ文句を言うカレナリエン。なんだこいつも出会いに飢えているのか。俺の知り合いにも若干一名出会いに飢えまくっている奴に心当たりがある。よかったら紹介してやろうか? 少々アホなところはあるが、一応あいつも無詠唱ができるのでその辺は差っ引いて評価して欲しい。
実験対象としても役に立つと思うし、煮るなり焼くなり好きにしていいぞ。
「私だって、出会いさえあれば……出会いさえあれば……」
こいつもお胸を除いてモノは良いんだから、ちゃんと身なりを整えればそこそこいけそうな気がする……。あ、でもその口の悪さは減点対象かな?
結構課題多いな。頑張れカレナリエン。
「ローミオンはどうなんだよ。あいつも確か未婚って聞いたんだが」
「師匠ぉ? 師匠は魔法使いとしては一応尊敬はしてるけど、人としてはちょっとね……」
あらま。ローミオンさん。弟子にこんなこと言われてますよ。
「良くニヤニヤして含み笑いとか、高笑いしてるし、あれはちょっと引くわー。この間なんか自分の手が疼くとか言ってたし、正直キモすぎよ」
「……………」
なんだろう。批判されているのはローミオンのはずなのに、俺の精神にもダメージが……。封印していた中二時代の記憶がフラッシュバックする。ああ……俺の黒歴史を消す魔法が欲しい。
《さすがにこの子は脈はなさそうですね》
《あ、ああ。なんか釈然としない部分があるけどな……》
ほっと胸を撫で下ろす俺とアストレイア。だが、俺達は空気を読まない子、エレーナの存在を完全に忘れていた。
「じゃあカレナリエンもフェイトのフィアンセになればいい。フェイトは来る者は拒まず。ボクもフェイトのフィアンセ」
いや、ちょっと待てエレーナ。俺は拒むべきものは拒むって。
「ふーん。こいつストライクゾーンは広いのかな?」
「フェイトは悪球打ち。幼女から熟女までオールOK」
おい、この世界に野球なんて無いだろ? なんでそんな会話が成り立つんだよ?
「そうね。こんな格好も見られちゃったし、もう私お嫁に行けない……ちゃんと責任取ってもらおうかな?」
こらテメー、さっきどうでもいいとか言ってただろ? そんなもんに責任なんか発生しねーよ。
《どんな状況からでも強引にフラグを立てに行く響介さんパネーっす!》
《エレーナとカレナリエン。この二人は一緒にしたらあかんかもしれん》




