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四話 王都到着


 初日はなんか変な出来事に巻き込まれてしまったが、その後は概ね順調に旅を続けられている。途中幾つかの街に立ち寄り、王都や貴族派についての情報収集をして分かったことがあった。


 まず、重税。三ヶ月程前から臨時徴収と称して、税率が大幅に引き上げられたそうだ。先のクレモーンの街で活気が無かったのもこの増税で経済が疲弊していたためだと思われる。王族派はその増税に反対したが、貴族派の財務大臣らが強引に押し切り決定してしまったらしい。


 恐らく増税で集めた金は、貴族派の勢力拡大のための資金として使われているのだろう。それならば大臣の屋敷に忍び込み、不正の帳簿を公開すれば失脚させられる可能性はあるのかもしれない。

 でも貴族派筆頭、宰相であるシュヴェールト公爵が握りつぶしてしまう可能性は否定できない。成功する可能性は未知数だが、何もやらないよりはマシか?


 あと、奴隷。残念ながら獣人の奴隷は訪れた街全てに存在した。奴隷制はエレクトラの法で一応は禁止されているものの、現在ほとんど形骸化しており、役人も領主も見て見ぬふりだ。


 それどころか、貴族派に属する貴族がこぞって奴隷を買っているようだ。用途は鉱山での労働力、土地の開墾、農作業への従事。そして愛玩用……らしい。


 また、この国で新たに商売を開始しようとする場合、役人への多額の賄賂を送ることが必須の条件となっている。この賄賂が新規商人の参入障壁になってしまい、一部の有力商人が貴族並みの権力を有するに至っている。

 完全に市場を独占し、価格の設定も思いのまま。故に王都では物価が上昇し、先の増税も相まって人々の暮らしは困窮を極めているらしい。


 正直ここまで王都の政治が腐りきっているとは思わなかった。道行く人々の目には生気がなく、絶望、諦めといった負の感情が映っている。これは邪神が狙ってやったことなのかもしれない。


 それにしてもレーニアとは大違いだ。レーニアはハルベルトの権力である程度の自治が認められていたため、ここまでひどい状況になっていない。王都から距離もあるしな。だからこそ邪神はケルソを使ってレーニアを潰そうとしたのかもしれない。


 早く王都に巣食う使徒を倒して、シグルーンを開放しないと大変なことになる。


 俺はそんな思いを抱きながら、ホバークラフトを走らせ、五日目の昼、とうとう王都に到着した。



「あれが王都オクスレイか。城壁には囲まれていないんだな」

「ええ、東西南北の辺境伯が有する城塞都市が他国からの侵攻、魔物の襲撃を排除しておりますから、王都には城壁が必要ないのですのよ」


 なるほど、辺境伯の役目は王都の防壁ということか、でもそうやって外をガチガチに固めても、その肝心要の中身……王都の政治自体が腐ってしまっては意味がないんだけどな。


「ふーん。そうなのか。とりあえず適当な場所に停めて、そこから徒歩か、馬車を手配して王都に入ろう」

「うん。わかったよフェイト」


 俺達はホバークラフトを降りて、王都に入った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 王都に入った、と言っても城壁が無いので、ここからが王都というような明確な境界線が分からないので、あまり実感がない。王女マイアが住む王都の城まではまだ距離があるので、馬車を借りて移動することにする。


「王都ってこんなに大きいとは思わなかったわ」

「そりゃ、この国の中心となる都市だからな。人口も多いし、城壁という制限もないからどんどん拡大していったんだろう」


 遠くに見える王城からは放射状にいくつもの街道が伸び、その街道に沿って多数の民家や商店が立ち並ぶ街が形成されている。その外周には麦を中心とした肥沃な穀倉地帯が展開しているのだが、それにしても広い。結局マイアの居城にたどり着いた時には日が落ち、すっかり夜になっていた。


 王城は遠めに見てもでかいと思ったが、間近で見ると更にその大きさ、荘厳さに圧倒される。

 でもここはまだ王城の玄関口に過ぎない場所らしい。王様が住む城の中心部に辿り着く迄にはまだ、城壁と堀、兵士達の詰め所などを越えて行かなくてはならない。いや、どんだけでかいんだよ。


「おかえりなさいませ。マイア王女様。レーニアに向かったとお聞きしておりますが……随分お早いお帰りですね」

「ただいま。スタンレイ。ちょっと急いで帰ってきたのよ」


 スタンレイと呼ばれた執事っぽい初老の男性が王女を出迎える。


「そちらのお方はどなたでしょうか?」

「こちらはレーニアの英雄と名高いフェイト様よ。丁重にお迎えして」

「この方があの……畏まりました。お客様用の離れのお屋敷にご案内します」


「あ、はい。お構いなく」


 俺達はそこで王女達と別れ、離れの屋敷に向い、それぞれの部屋に案内された。


「私は、フェイトと一緒の……部屋?」

「はい、ディアナ様はフェイト様の奥方様と伺っております故」

 

 正確にはまだ婚約の段階なんだけど。

 何を今更赤くなって固まってるんだよ、ディアナ。最近積極的になってきたディアナも奥様とか言われる事にはまだ免疫がないようだ。


「レティシアやエレーナと一緒の部屋の方がいいか?」

「う、ううん。フェイトと一緒がいい」


 うん。俺もあんまり免疫できてないや。ちょっと今のはときめいちゃったよ。


「あらあら、お熱くて羨ましいですわね。ではわたくしはエレーナとご一緒しましょうか」

「うん。ボクはそれでいい。レティシア一緒にいいことしよう」

「ふふ……そうですわね」


 え? いいことって、こいつら一体何やってんの? エレーナさんあんまり意味深なこと言わないでくれますかね?


「はぁ、俺は寂しく一人部屋か……」

「だから、相手探してやるって言ってるじゃないか」

「それは勘弁してくれって、お前絡みの女って碌なのいなさそうだし」


「「「それはどう言う意味ですの!?」」」


 あーあ、一番言っちゃいけないことを……。トリスタンは女性陣三人にボコボコにされた後、自分の部屋に放り込まれた。

 俺はその様子を見ながら、絶対この三人の機嫌を損なうことは言うまいと心に誓うのだった。



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