十三話 蠢く闇
すみません。かなり短めです。
これで二章終了。次章からストーリーが動き始めます。
「まさか、ケルソが敗れた上にレッドドラゴンまで奪われるとはな」
年はいくつなのか、それどころか男なのか女なのかさえ分からない、不思議によく通る声が響く。
「エクリプス様、全くですね。ケルソは頭は悪いですが、腕っ節の強さは我々使徒の中でもトップでした。そのケルソがあっさり倒されるなど……とても人間の仕業とは思えません」
「なんでもそのケルソを倒したフェイトという男は、アストレイアの使徒と名乗ったそうじゃないか」
使徒と思われる男女がその声の持ち主、邪神エクリプスに応える。
「なるほど、女神アストレイアの使徒か。それならばケルソが敗れたのも納得がいくか。しかし、女神の力はもうほとんど残っていなかったのではなかったか」
「確かに五竜すべてを押さえ、女神の神通力を枯渇させる事には成功しましたが、女神は人々から受ける信仰により力を得ることが可能です。また女神の地球側の力はまだ健在です。これは推測ですが、そのフェイトという男、地球からこの世界に転生させてきた者ではないでしょうか?」
「ふむ。なるほど地球か。ありうる話だな。我らは地球とのつながりが無いため、地球については良くわからん。そのあたりにアストレイアの使徒の強さの秘密が、隠されておるのかもしれぬ」
「私の部下の話によると、ケルソ相手に今まで見たこともないような魔法をバンバン使っていたらしいよ」
「それは誠かキンツェムよ。そうか、やはり地球のことについて調べる必要があるようだな……その役目お主に任せてよいか? 手段は任せる」
「分かったわエクリプス様」
キンツェムと呼ばれた女性の使徒が、妖艶な笑みを浮かべる。
「さて、地球の事についてはキンツェムに任せるとして、女神の信仰とは厄介だな。我は邪神故、人間どもから信仰を得ることはできない。だがそれも過去の話だ。レヴモスよ例の件、首尾はどうだ?」
「……はい。滞りなく進んでおります。もう間もなくエクリプス様も信仰による力を得ることが可能になるかと」
レヴモスと呼ばれた三人目の使徒が答える。
「ご苦労だったなレヴモス。引き続き作業を進めてくれ」
「は、畏まりました」
「それと並行して、ダンテにはエレクトラの王都を混乱に落とし、住民どもの恐怖と不安を煽り続けろ」
「それは、承知しております。が、もし王都にアストレイアの使徒が来たらどのように対処致しましょう」
「ふむ……そうだな。ケルソを圧倒する相手に正面から戦いを挑むのは愚かだ。搦め手を駆使しやつを翻弄しろ。その間に力を蓄えるのだ。嵐竜を利用しても構わん」
「了解しました」
「さて、ケルソの件は少々予定外だったが、目的達成の大きな障害とはならんだろう。我は力を蓄えるためしばし眠りにつくが、そなたたちの働きに期待しているぞ」
「「「は、おまかせ下さいエクリプス様」」」
アストレイアとフェイトを追い詰めるべく策を練る邪神とその使徒達。フェイトはこのプライアスに蔓延る闇を払うことはできるのだろうか。
評価、ブクマありがとうございました(๑•̀ㅂ•́)و✧




