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堕女神の願い 叶えなきゃダメですか?  作者: 基山 和裕
二章 レーニアの英雄
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七話 パーティ名

感想頂きました。ありがとうございます。

地球ネタ、オマージュネタみたいなものはスキあらば突っ込んでいこうと思いますので、よろしくお願いします。

「もうそろそろパーティ名を決めてもいい頃じゃないか?」


 今朝のアストレイアのやり取りの後、朝食を食べ、リビングで寛いでいたら唐突にトリスタンがそんなことを聞いてきた。


 ちなみに昨夜トリスタンに宿屋に帰れと言ったら「俺だけ仲間はずれは嫌だ」とゴネて、無理やり屋敷に泊まりやがった。このままなし崩し的に屋敷に住みこむつもりなのだろう。俺の屋敷に野郎が入り込む余地などないのだが……まあ仕方あるまい。


「パーティ名? 別にいいんじゃないのか。今のままでも特に問題ないし」


「いや、でもよ。それじゃ締まらないじゃないか。メンバーも四人になったわけだし。チームワークや一体感を増すためにも、な?」


 なぜトリスタンはそんなにパーティ名に拘るんだろう。俺はパーティ名とか中二ぽいから嫌なんだけど。


《響介さんは中二そのものじゃないですか》

《いや、それは断固として認めん》


「そこまで言うんならお前、いい案持ってるのか?」


 俺はトリスタンにパーティ名案の提示を求めてみた。ダサい名前だったらはっ倒す。


「おお、任せてくれ。お前はレッドドラゴンを倒しただろ? ここはやっぱりパーティ名はドラゴンスレイヤーしかないんじゃないか?」


 いや、悪いなトリスタン。俺の目的はドラゴンを倒すことじゃなくて開放することだからな。それは却下だ。リディルや他のドラゴン達を不快にさせてしまうかもしれない。


「いや、それは安直すぎんだろ。他にマシな案はないのか?」


 俺がそう言うとトリスタンは露骨に不満そうな顔をする。と言っても本当の理由は言えないしなぁ。


「いや、カッコイイと思うんだけどダメなのか?」

「ドラゴンスレイヤーって竜殺しだからな。俺は先の件でただでさえ皆から恐れられるかもしれなないのに、そんな物騒な名前は嫌だって」


「む……そうか。言われてみればそうだな」


 くるしい言い訳かなと思ったが……なんとか納得してもらえそうだ。

 まあ、実際。俺に関する変な噂が流れてるっぽいし、これ以上印象悪くされては敵わん。


「フェイトはオリジナルの雷魔法があるから、それから名前を考えるのはどう?」


 ディアナが新たな案を提案する。


「ん? 俺基準で考えていいの?」

「なに言ってるのよ。フェイトがこのパーティのリーダーでしょ?」


 呆れ顔でそう話すディアナ。そうだった俺がリーダーだよな。一番ランクが高いわけだし。


「まあ、皆がそれでいいって言うんなら別にいいけど……」


「それなら、フェイトの二つ名から取るか?」


 トリスタンが妙なことを言いだした。


「え? 二つ名とか初耳なんだけど? 俺一体なんて呼ばれてるの?」


「例えばな、雷帝とか雷神とか……」


 お? 雷帝フェイトか、結構まともそうな二つ名だな?


「後は魔法使いの王で魔王とか」

「げ! それだと魔族の王と勘違いされそうだから却下な」


 ただでさえ今でもマフィアのボスとか色々変な噂が立ってるのに、そんなパーティ名にしたら完全にアウトじゃないか。


「エレーナはなんかないのか?」


 俺はエレーナに振ってみるが、


「パーティ名、お金にならないから興味ない」


 相変わらずお金しか興味ないみたいだ。


 でもな、魔王は論外として、雷帝、雷神か……。雷に関連する地球の神様の名前とかどうなんだろうな。確か、インドの神様でインドラってあったよな。後は北欧神話のトールが有名だったと思う。他はわかんねーや。でも、この世界に全く縁もゆかりもない神様の名前を持ってきても、こっちの人たちにとってはなんの事か分からないだろうな。


《エレクトロマスターでいいんじゃないですか?》

《んー、と言ってもレールガン使ってないからなぁ》


 俺があれこれ思案していると、トリスタンが半眼で睨んでいることに気づいた。


「お前、さっきから文句ばっか言ってるけど、何かいい案あるのかよ?」


 言い出しっぺのお前が碌な案持ってないからだろ? ……まあ、仕方ない。俺も考えてないことはなかったのだ。


「そうだな。良く考えてみると、俺を基準に名前を決めた場合、周りから俺のワンマンパーティだと思われるかもしれないよな。皆はそれでもいいのか?」


 俺のその意見に皆が考え込む。


「俺はそれは嫌だな。もう少し皆の特徴も加味した名前にしたいと思うんだが」


「俺達の特徴?」


 皆の視線が俺に集まる。


「そうだ。俺達が他のやつらと異なる点は、全員が無詠唱で魔法が使えることだと思うんだよな」


 皆がうんうんと頷く。


「それに使える魔法の属性も満遍なくバラけている。トリスタンは土、ディアナは火と風、エレーナは風と水、それから俺は全属性が使える」


「確かにな。俺達の特徴はまさにそれだな」

「うん。この間も三人でグリフォン倒せたし」


「らしいな。話は聞いた。たった三人でAランクの魔物を倒せる無詠唱魔法の力。これが他の連中には無い、俺たちのパーティだけの特徴だと思う」


 俺は一呼吸おき。皆を見回す。


「全員が無詠唱で魔法を使える。そしてパーティ全員で全属性の魔法を使える。だからパーティ名は……」


 皆が息を呑み、次に出てくる俺の言葉を待つ。


「すべての魔法の要素を備えているわけなんだから、エレメンタルマスターとかどう? 長かったらエレメンタラーとかでもいいかも」


「おお、エレメンタラーいい。カッコイイな」

「フェイトにしては上出来」

「私もそれでいいと思う」

《中二っぽくて響介さんらしいですね》

《さらっと混ざるなよ堕女神》


 俺が提案したパーティ名は意外にも好評だった。一部の堕女神を除いて。


「それじゃ、特に異存がなければこれでいこうか」

「うん。賛成」

「おう。俺はこれでいいぜ」

「ボクは別になんでもいい」


 じゃあ決まりかな。後でギルドにパーティ名の申請をしておこう。

 さて、これでパーティ名も一件落着。やれやれだぜと安堵していたところ、ロイドさんが俺に近づいてくるのが見えた。


「ご主人様。お寛ぎのところ申し訳ありません。お客様が見えになられておりますが、如何致しましょうか?」


 え? 俺に客? 誰だろう。


「来客の予定は確か無かったと思うけど……誰か分かりますか?」

「えっと、ご主人様の秘書だと仰っておりますが……」


 秘書? そんな人俺にはいないぞ? またハルベルトが人を寄越してきたのか?


「まあ、とりあえず会ってみるか。ロイドさんすみませんが、客間に通してください。すぐ伺いますので」

「畏まりました」


 ロイドさんはそう言って玄関の方に向かう。


「お前、秘書までいるのか?」

「いや、俺も知らないし……、とにかく俺に用事があるみたいだから客間に行ってくる。ちょっと待っててくれ」




 俺はリビングを後にし、客間に入った。

 で、その客間で待っていたのは……。


「アリスンさんじゃないですか……」


 まさかギルドの受付嬢やめて秘書になりますとかそんな話じゃないですよね?


「あ、フェイト様。おはようございます。朝早くに申し訳ありません」


 俺への敬称が『様』に昇格している……。でもこれは俺が貴族になったからなのかな。


「いや、それは構わないけど、要件は何でしょう?」

「はい、報告が幾つかあります。まず、フェイト様のパーティメンバーであるトリスタンさん、エレーナさん、ディアナさんのランクアップの件です」


 お、あいつらもランクアップか、結構城壁内で活躍したみたいだから当然なのかな。


「ランクアップってトリスタンとディアナがBランクで、エレーナがCランクなったんですか?」

「はい、そうです。おめでとうございます」


 BランクとCランクは、冒険者としては上位に位置する。あの三人の若さでは異例の高ランクなのだが、俺はそれを一足飛びに飛び越えてしまったので、いまいちすごいのかどうかどうか、よく分からない。


「わざわざ報告ありがとう。他にもあるんですか?」

「そうですね。もう一つは辺境伯様からギルドを通しての指名依頼があります。端的に申しますと、北方の魔物の領域に支配されてしまった地域の調査と開放です。魔物の残党もまだ残っているかもしれませんので、是非フェイト様のパーティにお願いしたいということです」


 確かにな。まだ北方は魔物が彷徨いているかもしれないから安心できないし、領主としては領土の回復を急ぎたいところだろう。俺もトルカナ村の様子が気になるし、悪い依頼ではない。


「分かった。俺としても北方の様子は気になるので、その依頼は受けようと思う」

「ありがとうございます。フェイト様。依頼の詳細についてはギルドにて行いたいと思いますので、後日またお迎えにあがります」


 え? お迎え? 日時さえ伝えてくれれば自分で行くのに。


「あ、あと、アリスンさん。ちょっと気になったんだけど、秘書ってどういうこと?」

「フェイト様はまだ暫定ですがSランクの冒険者となりましたので、今後様々な指名依頼が増えると思います。私がフェイト様の専任秘書官として対応致します」


 アリスンさんって仕事ができるキャリアウーマンみたいな感じだから、秘書もバッチリ似合っているんだけども。


「え? Sランクの冒険者ってそんな特典があるの?」

「いえ。普通はありませんよ。これは私が必要と判断しただけです。フェイト様にご迷惑をかけるわけには参りませんので」


 なんだろうこれ。アリスンさんから何やらビシビシと忠誠心みたいなものを感じる。というかレイモンド、アリスンさんをきちんと抑えろよ。お前の部下だろ? なんかギルドにない規定を勝手に作っちゃってるよ?


「フェイト様を舐めたような指名依頼については、私の方できちんと精査致しますのでご安心下さい」

「う、うん……ありがとう。アリスンさん」


 アリスンさんの鋭い眼がキラリと光る。その迫力に押され、タジタジになる俺。レイモンドもこんな風に押し込まれたのかもしれん。哀れレイモンド。


「あ、そうだ。ギルドに俺達のパーティ名の申請ってできますか?」

「パーティ名ですか? 畏まりました。どのような名前でしょう?」


「えっと、エレメンタラーでお願いします」

「なるほど、いい名前ですね。ギルドに申請しておきます。それからフェイト様、私に敬語などお使いにならなくても結構ですよ」


「え? あ、うん。分かった。じゃあよろしく頼む」

「畏まりました。では、失礼します」


 そう言って、嵐のように去っていくアリスンさん。あれって完全に俺の部下というか配下って感じじゃねーか。いいのかこれで?




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