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堕女神の願い 叶えなきゃダメですか?  作者: 基山 和裕
二章 レーニアの英雄
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五話 フェイト屋敷をもらう

評価ポイントが99ptと区切りの100ptまであと1ptとなりました。

過分な評価を誠にありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。



 朝が来た。柔らかい朝日が窓から部屋に差し込む、ここは辺境伯の屋敷の一室だ。昨晩祝勝パーティの後そのまま辺境伯の好意で泊めてもらったのだ。


 ちなみに隣のベッドで寝ているのは母さんだ。ディアナじゃないぞ。ディアナはレティシアの部屋に泊まったからな。

 多分夜遅くまでガールズトークトークで盛り上がっていたんじゃないかと思う。というか、どんだけ仲がいいんだよあの二人。


「フェイトおはよう。よく眠れた?」


 あ、母さんが目を覚ましたようだ。


「ああ、久々にフカフカのベッドで寝れて気分爽快だ」

「ふふ……そうね。あ、そうだわ、これからはエミリウス準男爵様って呼ばないとダメかしら?」


「いや、いいよ。これまで通りフェイトって呼んでもらえれば、母さんは母さんだし。というか親族なんだから母さんも貴族の一員になるんじゃないの?」

「そういえばそうね。なんだか実感湧かないわ。そうだわ! 今日はフェイトの屋敷に行くのよね? 母さんすごく楽しみだわ」


 ……屋敷か、これ以上ハルベルトに世話になるのは嫌なんだがな。後で物凄いツケを払う事になるような気がしてならない。


 レティシアとかレティシアとかレティシアとか……。


「案内してくれるみたいだから、後でみんなで見に行こうか。まあ、それはいいとしてとりあえず朝食食べに行こう。みんなもう起きてるかもしれないし」


「そうね。昨日の料理も美味しかったから、朝食も期待できそうね」


 俺は母さんの笑顔に和まされながら、部屋を出て屋敷の食堂に向かった。


 食堂に行くと、トリスタン以外は既に席に座っていた。

 ……あいつ、二日酔いかな? まあ、自業自得だ。同情はしない。


「あ、フェイトおはよう」

「おはようディアナ、よく眠れた?」

「んー、実はあれからレティシアと盛り上がっちゃって、あまり良く眠れてないかも」

「ふふ……そうね。昨夜は楽しかったですわ」


 あれ? レティシアのやつ、なんか妙にツヤツヤしているな。はっ! ま、まさか……百合? 昨夜二人は禁断の扉を開けてしまったのか? ディアナよ、俺はそんな子に育てた覚えはありませんよ!


「ん? そういえばエレーナはどこで寝てたんだ?」

「ボクもレティシアと一緒」


 なぜかVサインで応えるエレーナ。

 なんてこった。エレーナまで参戦してやがったのか……。


「さあ、若干一名来ていないようだが、まあいい。朝食を頂くとしよう」


 俺がアホな妄想を膨らませている間に食事が始まった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「さて、さっそくだがフェイト。屋敷に案内したいと思うが、構わないか?」

「ああ、大丈夫だいつでも来い」


「分かった。ではロイドよろしく頼む」

「かしこまりました」


 ロイドと呼ばれた執事服に身を包んだ40代くらいの男に案内され、俺たち一行は屋敷に案内された。と言っても同じ貴族街の中にあるのでそんなに距離はないんだけどね。あと、トリスタンはまだ復活していないみたいだが、まあいいか。一人で寝てろ。


 案内された屋敷はかなり大きかった。建屋は2階建てで、部屋数も多そうだし、庭も十分な広さがある。これって俺達だけで住むには手にあまるんじゃなかろうか? 


「これ広すぎないか?」


 とロイドに聞いてみたものの、


「いえいえ、レーニアの英雄様にはこれくらいの屋敷でなければ釣り合いません」


 と、返されるだけだった。とは言ってもな、これ管理するの大変だぞ? 執事やメイド、警備員も雇わなければならない。……警備員はトビーたち親衛隊にやらせるか?


「とりあえず中に入るか」

「おー、突撃ー」


 エレーナが門をくぐり庭に駆けていく。それにしてもこの庭、雑草一つ生えていないし、芝生もきれいに刈られている。石畳の道にもゴミが落ちていない。誰か手入れしたのだろうか?


 程なく玄関に着く。俺が玄関の扉を開けるとそこには……。


「おかえりなさいませ、ご主人様」


 と、優雅に一礼をするメイドさんの姿があった。ここはメイドカフェじゃないよね?


「え? あれ? メイドさん?」

「はい、本日よりフェイト様にお仕えさせて頂きます。メイドのサラと申します。執事のロイド共々よろしくお願いします」


 え!? ロイドも? 俺は思わずロイドの方を振り返る。


「はい、私もハルベルト様より、フェイト様の執事を務める様に仰せつかっております。」


 丁寧な礼を返すロイド。

 マジかー。

 屋敷に執事にメイドに至れり尽くせりじゃないっすか。一体どんだけ俺に恩を売れば気が済むんだハルベルトのやつ。これじゃレティシアの件断りきれなくなるじゃないか。


「わ、分かりました。これからよろしくお願いします」

「はい、フェイト様。こちらこそよろしくお願いします」


「フェイトすごい、本当に貴族なんだね」

「んー、まあ実感湧かないけどな」

「うん、玉の輿玉の輿」

「エレーナ、お前はもう少し言葉を選ぼうな」


 ちなみにサラさんの容姿はショートの青みがかったグレーの髪で、真面目そうな感じ。メガネをかけたら似合いそうだ。年は30代くらいで、ベテランっぽい雰囲気を醸し出している。まあ、ハルベルトが選んだメイドだ。まず間違いなく優秀な人物なのだろう。


 とりあえず俺たちはリビングに案内され、ソファーに腰かけ紅茶をご馳走になる。俺は紅茶は良く分からないが、なんか高そうな茶葉を使っている気がする。


「んー、この銘柄はヴィミーね。いい茶葉使ってるじゃない」

「レナ様、お褒めに預かり光栄です」


 母さん今まで紅茶を嗜むようなセレブな生活してなかっただろう。なんで銘柄知ってんだよ。相変わらず謎な人だよな。


 この後、ロイドさんとサラさんに屋敷について説明してもらった。一階はこのリビングルームと応接室、そしてキッチンとダイニングルーム、さらにバスルームまであるそうだ。


 風呂は火で沸かすのではなく、魔道具を使ってお湯を張るらしい。その魔道具はかなり高価で、一般人には手が出せないのだそうだ。


 二階は個人の私室兼寝室となる。部屋数は8部屋もあるので十分足りるだろう。ちなみにロイドさん達使用人は離れの住居があるようだ。


「部屋割りってどうする? 俺と母さんとディアナで一部屋ずつ。あとディアナの両親で一部屋か?」

「え? パパとママもいいの?」


 ディアナの両親は今ここにいないが、村ではずっと家族同然の付き合いをしていたからな。仮設住宅や宿屋暮らしを続けさせるのも忍びないので屋敷に招こうと思う。


「ああ、オスカーさんもフェリシアさんも俺の家族みたいなもんだ。当然だろ」

「か、家族……、うん。そうね」


 家族という部分に反応するディアナ。


「えー、母さんとは一緒の部屋じゃないの?」

「何言ってんだよ母さん。俺はもう子供じゃないんだからな。というか、一応俺がこの家の当主だぞ?」

「そうだ、夜に忍び込めばいいのね」

「いや、鍵かけとくんで」


 親にとって子供はいくら大きくなっても子供なんだろうか。というか、母さんの方が子供っぽいんだけど。

 俺がディアナと母さんと話をしていると、クイックイッっと俺の服の裾を引っ張るやつがいる……。


 エレーナだ。ボクは? ボクは? みたいな顔でアピールしている。


「お前は孤児院どうするんだよ? いつもあそこで寝泊まりしてるんだろ?」

「むー、ボクはフェイトのお嫁さんになるからフェイトの部屋がいい」


 さらっととんでもないことを言い放つエレーナ。


「はいはい、部屋は余ってるから別に好きな所使っていいよ」


 その爆弾をさらっと躱した俺に不満げな顔をするエレーナ。いちいち相手にしてたら全然話が進まねーからな。でも、これでうちのパーティ3人がここに住むことになるんだが、トリスタンはどうしようか。まあ、あとで考えよう。


「あ、それからロイドさん。この屋敷って結構広いんですが、門や周辺の警備って考えていますか?」

「いえ、申し訳ありませんが警備に割く人員は確保できておりません。私が見回っても良いのですが、屋敷全体に目を配ることは難しいと思います」


 俺が屋敷の警備について質問すると、ロイドさんは申し訳なさそうに答えた。


「ああ、大丈夫ですよ。警備員のアテはあるので」

「本当ですか? それは助かります」


「確か門の近くに警備員用の詰め所みたいな建物が有りましたよね? あそこって4人ほどの人が住むことできます?」

「はい、一通りの生活用具や部屋は揃っていますので大丈夫です」


「じゃあ、後日4人程引っ張ってくるからよろしく頼むよ」

「かしこまりました。ご配慮ありがとうございます」


 警備員はトビーとドミニクたち親衛隊に任せよう。同じ屋敷に住むのはちょっと抵抗があるけど、詰め所に突っ込んどけば問題ないと思う。それにこいつらを野に放っておくのは危険な気がするんだよな。またマフィアがどうとか変な噂を流されてはたまったもんじゃない。俺の目の届く場所に囲っておく方が安全だと思う。


「なにか生活用品とか買う必要があるかなと思ってたけど、もうほとんど必要なもの揃ってるよねこれ?」

「そうね。もう今日から住めそうね。ロイドさん、サラさんありがとう」


「いえいえ、滅相もございません。当然の勤めを果たしただけにございます」


 さて、皆の部屋も決まったし、もう午前中で今日の用事終わった感がするな。夜はやっぱり引越し祝いとかやった方がいいかな? 


「ロイドさん、今日の夜ちょっとした引っ越しのお祝いみたいなことをやりたいんだけど頼めるかな?」

「もちろんですとも! 今日はご主人様がこの屋敷にいらした記念すべき日。盛大にお祝い致します!」


 いや、盛大にやるとこの間みたいな狂宴になっちゃうので勘弁して欲しいんですが……。


 この後、オスカーさんとフェリシアさん、トビー、ドミニク達を呼び夜のパーティに備えた。オスカー夫婦は最初屋敷に住まうことを拒否したがディアナの説得で了承。

 ちなみにトビーとドミニク達は喜んで警備を引き受けてくれた。


 こうして夕刻になり、引っ越しパーティが始まったところで、トリスタンが乱入。自分を除け者にした事を怒っていたが、んなことしらねーよ。勝手に酔いつぶれて二日酔いになってる方が悪い。




レティシアとディアナは別に何もなかったです。はい。

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