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三話 待望のチート能力ゲット?


「な! あれは俺の部屋!?」

「そうでーす。地球の響介さんの部屋ですね」


 アストレイアが出現させたスクリーンに映しだされたのは生前の俺の部屋。

 驚いたことに、俺が死ぬ直前のままの形で残されているのである。PCの電源も入ったままだ。


「これって、録画映像?」

「ブッブー! 違います。これは私の力で響介さんの部屋を状態保存しているんですよ。リアルタイムの映像です。この意味が分かりますか?」


「ちょっとまて、まさか……」

「にゅふ……そのまさかです。それにしても響介さん。あなたいい趣味していますね」

「やめろ……やめてくれ……」


 ヤバイ……。嫌な汗がでてきた。


「PCの中に保存されている響介さんのコレクション。これをネットにばらまいたら、さぞかしおもしろい事になると思いませんか?」


 やられた……。そうか、この堕女神はプライアスの権限は失っているが、まだ地球では権限を発揮できるんだった。あのPCの中には俺の黒歴史が入っているんだ。自分をモデルにした主人公が異世界で無双し、美少女のハーレムを築くという非常に痛い内容の小説を始めとして、俺の秘蔵のコレクションが満載である。アレをネット上に晒されたら悶え死ぬ自信がある。ヤバイ……。それにしても、これが女神のやることかよ。ここでこんな切り札を切ってくるとは。この腹黒女神め……。


「くっ……! PCデータを人質に強請ろうって魂胆か?」

「うふふ……響介さんは理解が早くて助かりますね」


 そう言って凶悪そうな笑みを浮かべるアストレイア。

 こいつ本当に女神かよ。なんかゴゴゴ……って後ろで黒いオーラが渦巻いてそうなんだけど。こいつの方がよっぽど邪神っぽいよ。第一印象は可愛らしい女神様ってイメージだったけど、なんだよこの豹変っぷりは。


 ん? でも待てよ……。既にこっちに転生してからもう10年経ってるよな。10年も時間が経過していればさすがに地球で俺のことを覚えているヤツはいないんじゃないか? それならば俺の黒歴史がバラ撒かれてもダメージは小さいかもしれない。既に俺は死んだ人間だからな。


「甘いですね響介さん。私は創造神ですよ? 女神さんなんですよ? 10年前……いえそれ以前に時間を遡ってネットにばらまく事なんてお茶の子さいさいなんですよ?」

「は? 何だよその無駄にハイスペックな能力……。って、あれ? というかその能力で邪神に管理権限を奪われる前に戻ればいいだけなんじゃないのか?」


 え? まさかの問題解決? って思ったのだが。


「いやー、それがですねー。私もそれを考えたんですけど、どうも現在の事象を大きく改変するような過去への干渉はできないみたいなんです。私の力も万能ではありません。できるのはちょっとしたいたずらや嫌がらせくらいでしょうか。えへへ」


 えへへ……じゃねーよ。もうすごいんだかすごくないんだか良く分かんねーなこいつ。

 他に打開策はないのだろうか……。そうだ! こいつの言う主神になんとかチクれないだろうか? そうすればこいつの失態が明るみになり、俺は晴れて自由の身になれるかもしれない。


「ふっふっふ……響介さんの企みなどお見通しですよ。単なる下賤な人間風情が主神にコンタクトをとれるわけが無いでしょう?」


 そう言って黒い笑みを浮かべるアストレイア。うへ……こいつもうキャラ変わってんぞ? 他に手はあるか……、う~んだめだ思いつかない。後はもう自殺するくらいしか……。


「自殺も許しませんよ。何回でも転生させてあげますから」


 なんか口角をつり上げ、不敵な笑みを浮かべるアストレイア。下からライトみたいなものが当たってて不気味さが増している。というかこれも女神様の力、演出なのかな。こいつ肝心なところは抜けているくせに、余計なところにこだわるというか力入れるんだよな。女神の力の無駄遣いも甚だしい。


 それにしても……自殺もダメなのか。はぁ、もうそろそろ俺も腹をくくるしか無いのか。

 不本意だけど。ものすご~く不本意だだけども……。


 堕女神の願い叶えなきゃダメなんですかね?


「仕方がない……分かった。取引に応じる。お前の指示に従うから人質(PCデータ)の安全は保証しろ」

「ありがとうございます。交渉成立ですね。いや~よかったよかった」


 全然よくねーよ! この堕女神が! これから一体俺はどうなってしまうんだろうか……。データを人質に一生こっちの世界で堕女神にこき使われるのか? こんなのってありかよ? 俺の異世界セカンドライフ計画が音をたてて崩れていく……。


 あ、そういえばこれから邪神と戦うにあたって、女神に聞いておかなければならないことがあった。


「で、俺が邪神を倒すとなれば、当然与えてくれるんだよな?」

「ほえ? 何をですか?」


 素っ頓狂な声を上げるアストレイア。

 何言っちゃってんのこいつ。普通の人間が邪神倒せるわけねーだろ?


「アレだよアレ。アレをくれよ」

「アレじゃ分からないですよ~。ちゃんと言ってください」


 は? 異世界転生と女神だぞ、ここで出てくるものって言ったらアレしかないだろうが。こいつ本当に日本でラノベやアニメ見てたのか?


「女神の加護とかチート能力だよ。異世界転生モノのラノベじゃ定番、テンプレ、鉄板だろ? 女神が転生者にチート能力を与えて異世界無双して、邪神を倒す。ありがちなストーリーじゃないか」

「え……チート、チートですか? そ、そうですねぇ……」


 なぜか汗をダラダラ流しながら、オタオタし始めるアストレイア。ん? なんか様子がおかしいぞ?


「そうそう。そのチート能力でちゃちゃっと邪神倒したいんだよ。早くしてくれよ。今は『どのチート能力にしますか? 選んでくださいね~』って話の流れだろ?」

「えっと、そうしたいのはやまやまなんですが……」


「ん? どうした? なにか問題でもあるのか?」

「私がプライアスの権限を失っていることはお話しましたよね?」

「ああ、したな。それがなにか?」

「だから、プライアス側にいる響介さんに私の神通力は通らないんですよ」


 え? それってまさか……。


「そのまさかです。チート能力無しで、ガチで邪神を倒していただけたらなぁと……」

「…………」

「…………」


 固まる俺。大量の冷や汗を流すアストレイア。

 数分の沈黙のあとやっと俺は再起動した。


「マジで?」

「その……はい、マジです……」

「ふっざけんなぁぁぁ!!」


 俺はアストレイアの両肩を掴みガクガク揺さぶりながら叫ぶ。


 切れた。俺は切れた。

 俺の人生の中で一番の切れっぷりだったかもしれない。あ、一回転生しているから人生二回分な。


「ひぃぃぃ! ごめんなさい! ごめんなさい!」

「ていうかお前。それじゃ俺をプライアスに送ったところでどうしようもないじゃないか! 生身の人間送ってどうすんだよ?」

「そこはアレですよアレ。愛と勇気でなんとかしていただいて……」

「俺はア◯◯ンマンじゃねぇぇぇぇ!」

「響介さん落ち着いてください! その伏字だとアイア◯マンと勘違いされます!」

「そっちの方がよかったわ! この状況で落ち着いてられるわけないだろうが!」


 俺はアストレイアのこめかみに両手のげんこつを押し当てグリグリやる。


「痛い、痛いです! やめてください! 大丈夫です。私に考えがありますから! 邪神なんか恐れることはないです」


 その言葉を聞き、俺はアストレイアへのグリグリをやめる。

 えーそんなこというけどさぁ。こいつの考えってこれまで碌なことがあったか? なんか嫌な予感しかしない。


「むぅ……失礼なこと考えてますね」


 頭を擦りながらジト目でこちらを睨むアストレイア。


「当たり前だ。この堕女神! ……まあでもこのままギャアギャアやってても埒が明かん、ひとまずそのお前の考えとやらを聞かせてもらおうか」


 おれは腕組みをしてアストレイアをひと睨みする。

 まだ痛いのか頭を擦りながら、渋々といった感じで話し始めるアストレイア。


「うう……分かりました。でもそんなに難しい話じゃありません。響介さんにはこれから15歳まで私の魔法のレッスンを受けてもらいます。女神による特別個人レッスンですよ? 普通の人は受けられないんですからね?」


 えへんと胸を張るアストレイア。しかし、俺は無言のまま目線だけで話を促す。

 こいつを調子づかせると碌なことにならない。


「うぅ……プライアスでは魔法が一般化していますが、どうもその使い方が間違って解釈されているんですよね。だから正しい魔法の使い方を響介さんに伝授すればプライアスで無双することも夢ではないかもしれません」

「ん? どういうことだ?」

「例えば詠唱です。本来魔法に詠唱は必要ないんですけどね。イメージ次第でどうとでもなるので」

「え? マジで詠唱いらないの? そうか、それは助かるな」


 あの痛い詠唱をしなくてすむ。これは朗報だな。


「あれ? 響介さんって詠唱苦手だったんですか? あんなにノリノリに詠唱していたのに?」

「へ? それはどゆこと?」

「例えば、ほら、これですね」


 アストレイアは右手の指を鳴らすと先ほどと同じスクリーンが現れて……。


『ぐっ……くぅ。もう後戻りはできんぞ。巻き方を忘れちまったからな。それに、手加減もできん、気の毒だが―― 』

「う、うわぁぁぁぁ! お前あれ見てやがったのかぁぁ!」


 そう、スクリーンに映し出されたのは、俺の記憶の中に封印しようとしていた黒歴史、中二全開で呪文詠唱していた俺の姿だった……。そう大惨事は回避できていなかったのだ。

 俺は羞恥に悶え、頭を抱えてゴロゴロと床の上を転がり回る。


「うわわぁぁぁぁぁ……」

「なんだか知りませんが、どうやら私は響介さんの古傷を抉ったみたいですねぇ。これはのちのち切り札(カード)として有効活用できそうです。保存保存っと♪」


 アストレイアはニヤリと悪魔の様な笑みを浮かべながらスクリーンを閉じる。これから俺はアレをネタに堕女神に弄られ続けるんだろうか……もうやめてくれ、俺のライフはもうゼロよ……。


「とまあ、詠唱は一つの例ですが、正しい魔法の使い方、知識を響介さんが身につければ、邪神側を出し抜くことはできると思いますよ」

「先生! 質問があります!」


 なんだかんだ言って結構立ち直り早いよな俺……。ブラック企業で鍛えたメンタル舐めんなよ?

 まぁ……半ばヤケになって開き直ったという表現の方が正しいかもしれないけど。トホホ……。


「はい、何でしょう響介くん」

「魔法の正しい知識で無双ってのはなんとなく理解できるんですが、それって一応神である邪神側も条件は同じなんじゃないでしょうか?」

「いい質問ですね響介くん。ナデナデしてあげます」


 頭ナデナデされてしまった……。うぜぇ。やっぱこいつ調子に乗せるとあかんヤツだ。

 ちなみに今俺は正座している状態である。


「実は私達には邪神側にはないアドバンテージがあるんですよ。私の推論が正しければいけるはず……それについては、あ……残念です。もう時間が無くなってしまったようですね」

「ん? 時間? もう夢から覚めるってこと?」

「はい、そうです。でも今後も夢の中でしか会話ができないのは効率が悪いですし、不便ですよね……。では響介さんにこのマジックアイテムを授けましょう」


 お? マジックアイテム? チートは無かったけどラノベのテンプレっぽいの来たよ? でもこの堕女神に過度な期待はしない方がいいかもな。


「また、失礼なこと考えてますね。でもいいです。では響介さん、左手を出して下さい」


 俺は反射的に左手を出した。出してしまった。するとアストレイアは俺の左手をとり、その薬指に指輪をすっとはめた。指輪は宝石などの過度な装飾はなく、単なる銀色のリングだ。

 するとアストレイアは若干頬を赤く染め、うっとりとした目で俺を見つめながら。


「はぁ、これで私と響介さんは運命共同体。共犯者です。共に主神に追われる身。このまま二人で愛の逃避行に旅立ちましょう!」

「な! まさかこれ拘束アイテム!? しかもはずれねぇ! なんだよこれ?」


 しまった、自分の迂闊な行動に腹が立つ。


「というのは冗談でして、その指輪は夢以外でも私と念話ができるようになるアイテムです」

「冗談でも言って良いことと悪いことがあるだろうが! というか、なんで左手の薬指?」

「勢いでやっちゃいました。後悔はしていません……テヘっ」


 と、頬を両手で押さえ、くねくねするアストレイア。うぜぇぇぇぇ。


 ああ……悪夢だ。どうしてこうなった……。俺の平穏な異世界セカンドライフが音を立てて崩れていく……。これが夢なら、夢なら早く覚めてくれぇぇぇ!


「……フェ‥ト」


 ん? なんだ? 誰かの声が聞こえる。


「フェイト! フェイト大丈夫?」


 気がつくと自分の部屋のベッドの上だった。母さんが心配そうな顔して俺を覗き込んでいる。


「随分うなされていたわよ。大丈夫? 悪い夢でも見た?」

「うん。ちょっと悪夢を見ていたみたいだ。でももう大丈夫だよ」

「良かった。でも、だいぶ汗をかいているみたいだから、井戸で軽く流して、着替えてきたらどう? 朝ごはんできているから待ってるわよ」

「うん、分かったよ母さん」


 母さんはそう言って部屋から出ていった。

 ああ……それにしてもひどい目にあった。でもあれは結局ただの夢だったのかな。そうだよな、あんなのが女神だったら洒落にならないや。


 俺はそう考えながら頭をポリポリと掻いた。すると、左手に妙な違和感を感じる。まさかという思いを振り払いながら、左の手のひらを見てみると……。


「……指輪あるじゃねーか」


 夢だけど夢じゃなかった……。直後、俺は強烈な目眩に襲われ、再び意識を失うのであった。




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