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七話 初仕事

活動報告にも書きましたが、話のストックはあと20話程あります。

とりあえず、あと一ヶ月くらいは毎日投稿できるかなと思います。


「馬は使わず走って行こう」

「え? アリスンさんは馬で二時間の距離って言ってたし、走って行くと日帰りで戻ってこれないよ?」


 「え……二人っきりで野宿……?」と小声で呟いているのはスルーして、まあ、普通に考えればそうなるよね。


「言っただろ特訓するって。魔法で身体強化して走るぞ」

「【アクセラレート】使うの? 無詠唱で?」


「そそ、無詠唱だと魔力消費も少ないから余裕だ、幸いディアナは風魔法の適性もあるみたいだし。身体的な疲労は俺が魔法で回復する。な? いけそうだろ?」


 それを聞いたディアナは呆れた顔をする。


「前から聞こうと思ってたけど、フェイトはどこで無詠唱を覚えたの?」


 んー、女神に聞きましたとは言えないしな。


「詠唱邪魔くさいなと思っていろいろと試してたらできちゃいました」

「はー、ホント昔から何考えてるのか分からない所があったけど、まさかそんなこと考えてたなんてね」


 俺ってディアナにそんな風に思われてたのか。確かに妄想癖はあったかもしれないけど。


「役に立ってるんだからいいだろ?」

「そうね。フェイトがいなかったら、私あの時死んでたと思うし」


 と、頬を染めうつむくディアナ。こういうのを見ると庇護欲を掻き立てられますな。


「というわけで、城門抜けたらさっそくやってみようか」

「分かったわ」


 俺達は城門を抜け、街道に出る。滞在許可証みたいなものを渡されているので、帰りに城門に入る際に、最初来た時みたいに待たされることはない。


「周りの魔素を取り込み、自分の体全体に魔力を巡らせるようなイメージをするんだ」

「うん。分かった」


 城門からちょっと離れた人気のないところで魔法の特訓を開始する。


「体を活性化させて早く体を動かせるようなイメージだな」

「こんな感じかな? なんかすごく体が軽くなったような気がする」


 魔力操作の練習を毎日やっていただけのことはあるな。ディアナは俺の言ったことを直ぐにものにしている。


「お、うまいな。最初はちょっと効きが弱いかもしれないけど、慣れたらどんどん魔力を投入して早く動けるようになれると思う」

「うーん、これは反則ね。こんな便利な魔法の使い方があるのになんでみんなやらないんだろう。それに魔素って初めて聞いたわ」


 苦笑いするディアナ。

 その辺はアストレイアからの受け売りになるが。


「どうも、詠唱とか魔法陣は魔法を簡単に発動できるように開発されたものだったんだけど、それがいつの間にか魔法を発動するのに必須なものと勘違いされて伝わってしまったらしいんだ」

「へー、そうなんだ。それに気づいたフェイトって天才だね」


 きらきらとした羨望の眼差しを向けてくるディアナ。でも、なんかテストでカンニングしてるみたいな感じがして気が引けるな。


「あ、いや。それほどでもないけど」


《解せぬ! それは私が教えてあげたのにー》

《んなこと言っても、アストレイアの名前出すわけにはいかないだろ》


 アストレイアはまだ不機嫌そうにぶつくさ言っているが、放置しておくことにする。


「ほんじゃ、いっちょ走りますか。慣れないうちはゆっくり目で」

「了解」


 俺達は駆け出した。すごい速さで景色がどんどん後ろに流れていく。途中一回休憩をはさんだだけで、エ◯トマンのごとく疾走し、結局1時間くらいで目的の森に着いてしまった。


 ジャンプ力も上がっているので途中でちょこちょこショートカットしたしね。しかし、馬より早く移動する俺達は、傍から見たらさぞかしシュールだっただろうな。


「はー、なんだか自分の体じゃないみたい」

「まだ慣れないうちはフワフワするよね。そのうち違和感はなくなるから安心して」

「そっか、もっと練習する」


 期待に目を輝かせるディアナ。俺は付近に魔物がいないかどうかを探るため、オリジナル魔法の【サーチ】を展開する。これは音波、電磁波の反射波から生き物の大まかな位置を探ることができる魔法だ。有効範囲は半径五キロメートル。練習すればもっと範囲を広げられるかもしれない。


 んー。いるな。前方に五匹ほど。大きさと形からしてファングウルフだと思うけど、そこに行ってみるか。


「前方五百メートル先にファングウルフっぽいのが居る」

「……なんで分かるの? ……というかこれも魔法なのね? もうフェイトならなんでもできてしまいそうで怖いわね」


「何でもはできんぞ? 例えば今日のディアナのパンツの色までは分からないし」

「!? そんなことは知らなくていいの!」


 耳まで真っ赤になったディアナに思いっきりグーで殴られた。俺は吹っ飛び、後ろの木に激突して止まる。しまった、いつものアストレイアと同じ調子で返してしまったぞ。


 ……というか、ディアナさんや、これ【リーンフォース】かかってませんか?


「見事なパンチだディアナ。だいぶ自然に無詠唱を使いこなせるようになってきな」


 俺は立ち上がり、鼻血を流しながらサムズアップをする。


「そんなカッコつけてもこんな状況じゃ締まらないから……」

 呆れて盛大にため息をつくディアナだった。


 さて、とりあえずさっさと終わらせましょうかね。俺は回復魔法で鼻血を止め、森の中を歩き始めた。程なくして目的地の近くに到着。ファングウルフはさすがに気づいた様だ。匂いで分かるのだろう。こちらを警戒している。


「やはり五匹か。とりあえず魔法で先制攻撃してみる?」

「うん。分かった。やってみる」


「火魔法は森の中じゃさすがにまずいから、風魔法でいってみようか」

「じゃあ、とりあえず【エアカッター】」


 ディアナが放つ風の刃がファングウルフを襲う。警戒していたとはいえ不意に飛んできた不可視の風の刃にはさすがに対応できなかったようだ。一匹が切り刻まれ血を撒き散らし倒れる。


 それを見た残りの四匹が吠えながらこちらに向かって突進してきた。それを確認したディアナは剣を抜き構える。


「【アクセラレート】と【リーンフォース】同時にかけられる?」

「やってみる」


 ディアナは牙を剥き飛びかかってくるファングウルフを躱しざまに剣を一閃、ファングウルフの首を跳ね飛ばした。後に続く二匹も同様に切り伏せる。【リーンフォース】で強化されたディアナの力の前では紙を切るようなものだろうな。


 一匹だけ俺の方に向かってきたが、俺はその攻撃を躱してファングウルフの横っ腹に風の中級魔法【エアハンマー】をぶつける。ファングウルフの腹がボゴォっと音を立て大きく陥没し、ファングウルフは血を吐きながら絶命した。正面からぶつけると討伐証明部位の牙が回収できなくなるかもしれないからな。


 それにしても全然危なげ無かったな。ちょっと拙いところがあるけどディアナもこの短期間でよく無詠唱を使えるようになったと感心する。


 俺はふぅと一息つき。


「おつかれ。感触は掴めた?」


 と、ディアナに問いかける。


「んーまだまだかな。まだちょっと発動に時間がかかるみたい」

「まあ、その辺は経験だな。依頼をこなしていればそのうち身につくよ」


 と、その時俺は妙な気配を感じ、とっさに【サーチ】をかけてみる。

 なんだこれ? 形はファングウルフっぽいのだが、大きさが一回り大きい。それが二匹いる。


「あ、ちょっと待て。まだ警戒は解くな。普通のファングウルフより大きいやつが二匹いる」

「え? なんだろう亜種かな?」


 亜種、たまに特殊な能力を持った魔物が突然変異の様に発生することがあるそうだ。そしてその戦闘能力は、元の種とは比べ物にならない程高いと聞いたことがある。


 すると、程なくして森の奥から青と赤色の二匹のファングウルフが現れた。一般のファングウルフは体長一・二メートルくらいなのだが、こいつらは二メートル以上ある。


「あんなファングウルフ見たことない。どうするフェイト?」

「どうするも何も倒すしかないだろ。見逃してくれるとは思えないし」


「そうよね……私は青い方を相手するから、フェイトは赤い方をお願い」

「……分かった。気をつけろよ」

「うん」


 二人は頷き合い、それぞれの相手を見据える。すると青いファングウルフの回りにいくつかの氷の固まりが浮く。赤い方は炎の玉が浮かんだ。


「お、こいつら魔法使えるのか」

「珍しいわね」


 ディアナを青いファングウルフが放った【アイスニードル】が襲う。【アイスニードル】は水の初級魔法だ。ディアナはそれを躱し、また打ち払いながらファングウルフ(青)との間合いを詰める。そして間合いに入り剣を振るったのだが、ジャンプして躱されてしまった。体が大きい割に結構素早い。


(うーん。これはちょっと身体強化のギアを上げないとダメかも)


 ディアナは込める魔力量を増やす。ファングウルフ(青)は【アイスニードル】を牽制として放ちながら突進。ディアナに向けて右前足を振るう。ディアナはそれを剣で受けた。


 ガキン! 鋭い爪と剣がぶつかる音が響く。


「グルルルゥゥ?」


 ファングウルフ(青)は、こんなか細い小娘のどこにこんな力が? とでも思っているかのような、訝しげな目でディアナを睨む。


「捉えた」


 ディアナはそうつぶやき、ファングウルフ(青)の右足を横にいなして、軸となっている反対の左足を切り飛ばした。


「グギャァァァァ!」


 ファングウルフ(青)は鋭い痛みに仰け反る。そのすきにディアナは間合いを詰め。


「これで終わり」


 剣を振り下ろし、ファングウルフ(青)の頭を切り落とした。



 一方で俺の方はというと、


「おいこら、森のど真ん中で火魔法使うとか非常識も程があるだろう?」


 とつぶやきながら、ファングウルフ(赤)が放つ【ファイヤーボール】を窒素100%の気体をぶつけ消火しつつ、風の中級魔法【ソニックブレード】を放ってファングウルフ(赤)を両断した。うん、瞬殺瞬殺。

 窒素のやつは二酸化炭素消火器と同じ原理だな。


 それにしても、こいつらは一体何だったんだ。ギルドに報告しておいた方がいいかもな。


 俺らは残り五頭のファングウルフを狩った後レーニアに帰った。


長さの単位に普通にメートルを使っていますが、これはアストレイアが地球の単位をそのまんまこの世界にコピーしたということでお願いします。(時間も)

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