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堕女神の願い 叶えなきゃダメですか?  作者: 基山 和裕
七章 聖教国からの使者
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五話 狂宴再び……


 俺は自分の執務室に帰り、溜まっていた書類、残務を片付ける。


「はぁ、もうちょい人事が固まれば、この仕事も少しは減るのかなぁ」


 と、ぼやきながら窓の外を見る。王城から見える王都の空は夕焼けに赤く染まっていた。


 まだ全然実感ないんだけど、俺この国のトップなんだよな。しかも女神の使徒であり、その女神の神託を受けて、王位に就いた身。よってその権力は絶対。

 さて、この国。どう俺色に染めてやろうか?

 まず手始めに、王都中の美女を集めてメイド部隊を結成し、あんなことやこんなことをしてもらおうか。

 サラメイド長に任せれば、趣向を凝らせたイベントを用意してくれそうだし。


《なんだかんだ言って、サラさんイベント期待してるんですね……》


「フェイト様。そろそろ移動致しましょう。祝宴の時間に遅れてしまいます」


 と、祝宴の時間が迫っていることを告げるアリスンさんの声で、ふと我に返る。


 いかんな。また妙な物思いにふけってしまっていた。顔には……出てなかったよね?


 それにしても、アリスンさん。もうすっかり秘書の仕事が板についてしまっているな。


「ああ、分かった。そろそろ行こうか。案内お願いするよ」

「畏まりました。既に他の方々は移動していると思いますので、このまま私がご案内致します」


 手回し、下準備、スケジュール管理、そのすべてを完ぺきにこなすアリスンさんには頭が上がらない。アリスンさんがいなかったら今の仕事は全然回っていないと思う。

 俺は席を立ち、部屋の隅に掛けていた上着を手に取り羽織る。もう10月も終わりに差し掛かっているので、夕方ともなると外は少し肌寒い。


《アストレイアそろそろ行くぞ。ちゃんと変装は出来てるか?》

《あ、はーい。私はバッチリですが、リディルちゃんとシグルーンちゃんがまだです》


《……仕方ないな、今からそっちに行くわ》


 変装するだけだろ? 一体何をもたついているのか……。


 とりあえず、俺とアリスンさんはアストレイアの部屋に行き、アストレイア達と合流する事にした。


 で、アストレイアの格好はというと……女神っぽい白いひらひらした服だったのが、緑を基調とした服装に変わり、頭にベレー帽のような帽子を乗せている。金の長いストレートの髪も手伝って、見た感じエルフの娘っ子な印象を受ける。見た目かわいいので目立つとは思うが、国民もまさかこれが女神だとは思わないだろう。


 国民の大多数が持つ女神のイメージは、まだあのグラマーな女神の像にあるわけだし。


 リディルはチャイナ風の服はこの世界で目立つので、侍女にお願いして子供用の服を用意してもらった。だが、それでもリディルは赤色は譲れないらしい。自分のカラーにはこだわりがあるのだろうか……。ちなみに髪型はそのままにしている。角を隠す必要があるからだ。


 シグルーンはそのままだと肌の露出が多すぎるんで、着替えろと言ったが、ひらひらした服は嫌だとゴネるので、アリスンさんに頼んでなんとか冒険者風の服装に落ち着いた。ヘソとか太ももとかバッチリ見えてるけど、元のおっぱいが今にもこぼれてしまいそうなきわどい格好よりはマシだ。


 ちなみにシグルーンの額についている角は、そんなに大きくないけど髪の毛とかで隠すのは無理だから、認識阻害の魔法をかけて誤魔化すことにした。


 ……うう。それにしても、かなりの時間を食ってしまった。皆待っているだろうか? 先に始めてくれて良いんだがそれを伝える暇が無かったし……。通信機も皆常に耳に付けているわけではない。携帯電話みたいな呼び出し機能を実装しないと不便だな。


 というわけで、俺達は急いで宴会場に向かった。シグルーンが「竜になるから乗ってく?」とか言ってたけど、そんな目立つことできるわけ無いだろう。アホか。

 ……しかし、バリエーション豊富な4人もの美女、美幼女を引き連れて歩く俺。もう既に十分すぎるくらい目立っているような気がしないでもない。


 そんなこんなでやっと宴会場到着。俺は中に入り、開口一番「皆、遅れてすまん!」と謝ったのだが……。


「おう、フェイト。遅かったな」

「やっと、主役が来たな。ほらほら、さっさとこっち来い」


「みんな揃ったから仕切り直しね~。それじゃ、フェイトとレティシアちゃんの婚約成立と、女神様のご加護、それから皆の再会を祝って、カンパーイ!」

「「「「「乾杯!」」」」」


 ……こいつら、もうすっかり出来上がっちゃってるじゃないか。エレノアさんも勝手に乾杯の音頭とってるし……なんか、急いできて損した気分だな。


「ふむ、これが宴会というものか。面白い。妾も混ざるぞ」

「美味しそうな匂いがするわねー」


 俺の後ろから二人の竜がひょっこりと顔を出し、実に興味津々に皆の様子を眺めている。こいつら、宴会とかそういう経験ないのかな? まあ、ドラゴン同士が宴会とかやってたらとんでもない事になりそうではあるけど。


「あああああ!!!」


 うわっ! びっくりした。何いきなり雄叫びあげてんだよフェリシアさん。


「そ、その子は、まさか……フェイト君とディアナの子供? 全然言ってくれないからびっくりしちゃった。でも、ちゃんとやることはやってたのね。ママ安心したわ」

「わっ、私とフェイトの子供……」


 その子ってもしや、このリディルのこと? 確かにディアナを小さくした様に見えなくもないが……時間軸考えろやこの酔っぱらい。それに、やることやってたって……そりゃまぁ、やってないことは無いんだけど、んな事この場で言うなや!


 あと、ディアナもいちいち妄想モードに入るな。


「あのな、フェリシアさん。2ヶ月かそこらでこんなでっかい子供ができるわけ無いだろ」

「ええー! じゃあこの子は一体誰なのよ!?」


 俺の胸ぐらをつかみ、リディルを指差しながら叫ぶフェリシアさん。


「順番に説明するから。フェリシアさん少し落ち着いて……」


 やっと落ち着きを取り戻したフェリシアさんに開放された俺は、炎竜リディル、嵐竜シグルーン、そして最後にアストレイアを紹介する。レーニア組のやつらは初対面だからな。

 一応レーニアを襲った時の炎竜は邪神に操られていて、今は暴れたりしないから大丈夫だと付け加えた。


「ホントにこの子があの炎竜なの? それにアストレイア様って……フェイト君が女神様の使徒だというのは本当の事だったのね」


「まあ、一応そういうことになってる。な? アストレイア」


「あ、はい。きょ……じゃなかったフェイトさんには大変お世話になってます。皆さんもよろしくお願いします」

 

 そう言って深々と頭を下げるアストレイア。その様子を見た皆は慌てて立ち上がり、礼を返す。まあ、創造神様にいきなりお辞儀されたらそうなるよな。というか不用意に頭下げるなよアストレイア。お前女神の自覚なさすぎだろ。ソフィさんなんか、さっきから涙流して祈りっぱなしだし。


 ……シスターには少々刺激が強すぎたみたいだ。


「しかし、フェイト。アストレイア様をこんな席に同席させていいのか?」

「それはいいと思うよオスカーさん。本人が参加したいって言ってるんだし。それに、そんなにかしこまる必要はないんで。かなり気さくな神様だからさ」


「いや、そうは言ってもなフェイト……」


 そう言いながら引きつった顔を見せるハルベルト。その顔久しぶりに見たな。レーニアでレティシアに叱られていた時以来だ。


「まあ、そんなに緊張するなよハルベルト。俺にとっては家族というか妹みたいなもんだし」


 俺は昼間の一件の趣旨返しとばかりに、ハルベルトの背中をバシバシ叩く。ハルベルトは心底嫌そうな目を俺に向けてくるが、その程度で怯む俺ではない。


「まあ、(あるじ)が良いと言っておるのだから構わぬではないか。それよりも、これが酒か、少し頂くぞ」

「あ! ちょっと」


 リディルはそう言いながら、トリスタンの持っていたジョッキ大の容器を奪い、中に入っていた麦酒(ビール)をぐいっと飲み干す。うーん。幼女が麦酒(ビール)を一気飲みする姿ってのはかなりの違和感があるよな。


「ぷはーっ! これはなかなかいけるな。代わりはまだあるか?」

「おいおい……いいのかこれ?」


 リディルのあまりの豪快な飲みっぷりに唖然とするトリスタン。


「大丈夫だトリスタン。そいつ見た目通りの年じゃないから。まあ、ドラゴンだし問題ないと思う」

「でも、いくらなんでもこれは……ってすげえな」


 リディルは「これもいける。あっちもなかなか」とブツブツ独り言を言いながら、その場にあった酒類を次々と飲み干していく。皆もその様子をあっけにとられて見守ることしかできない。


 こいつ……うわばみかよ。


 しかし、あの小柄な体のどこにあれだけの酒が入っていくのか……。もしかしリディルの体を調べれば無限収納、アイテムボックス開発のヒントが見つかるかもしれない。……って、そんなわけないか。


 一方でシグルーンはというと、


「あーん。この子かわいい! 響ちゃん、響ちゃん! この子貰ってもいい?」


 ケイティとアイリスの二人を抱きかかえて、頬ずりをしていた。


「だめだ。離してやれシグルーン。可哀想に……すっかり怯えてるじゃないか」


 こいつ幼女好きなのか、リディルは対象外みたいだけど……。ケイティとアイリスが涙目で俺に助けを求めているので、俺は仕方なくシグルーンにゲンコツを食らわし、二人から引き離す。やっとのことでシグルーンから開放された二人はサラメイド長に必死にしがみつき、ガタガタと震えていた。


 シグルーンは何か抗議めいた目を向けてくるが、無視だ無視。


「なあ、アストレイア。お前、眷族のしつけがなってないんじゃないか?」

「う……。彼女たちはずっと地脈を守護してもらってたので、俗世には疎いんですよ……」


「まあ、たまにハメを外すくらいはいいのかなぁ」


 この世界の常識とかマナーはおいおい覚えて行ってもらおう。

 それにしても、他の三竜もこんな調子だったらどうしようか。なんか想像したら頭が痛くなってきた……。


 まあ、そんなこんなで最初はアストレイアに恐縮していた皆も徐々に打ち解けてきて、宴も(たけなわ)となる。当初懸念していた狂宴化はなんとか抑えられている様だ。まあ、皆も神の御前で乱痴気騒ぎをしない程度の分別くらいは(わきま)えていたようだ。とりあえずは安心だ。



 だが、そんな宴会から抜けて、一人裏口から外に出ていく人物が目に入る。

 俺はその人物の後を追い、外に出た。


次回の更新は11/27(月)の予定です。

よろしくお願いします。

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