二話 不意打ち
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「はぁ……なんか疲れた」
あいつら好き勝手言いやがって。もう少し神とその眷族としての自覚を持って欲しいものなんだが……。まあ、文句を言っても仕方ない。とりあえず人事の事を相談するために、レティシアのところに行くか。
俺はため息をつきながら、通路を歩いて行く。この城については俺が建て直したといっても、城郭のガワだけしかできていない。俺の錬金術では細かい内装まではできないので、通路や部屋にはまだ調度品や家具などがほとんど無い、殺風景な状況となっている。
ときおり、侍女や使用人などが慌ただしくタンスや机などの家具などを運び込んでいる姿が見える。
マイアが政権を握っていた時、王国の財政は火の車だったようだが、俺は財源の事は気にせずに城内の家財道具や調度品を一通り揃えろ、と指示を出しているのだ。
これも王都の経済政策の一部だ。国が金を使えば国民が潤う。
俺の経済政策は単純だ。
『宵越しの金は持たねぇ』
これに尽きる。
カネは使ってなんぼ、回ってなんぼだ。
と言っても、財源については何度も言っているがアテがあるんだよね。それこそ俺の魔法、錬金術を駆使したモノなんだが、まあ、詳細は後のお楽しみということで。人事が片付いたら早速それに取り掛かるつもりだ。
そうこう考えているうちに、レティシア達が待機している部屋の前に到着する。ドアをノックし、中に入る。
「お、フェイト……様。女神様との話は終わったのか?」
「ん、ああ、話は終わったけど、トリスタンその『様』付けで呼ぶのは止めてくれないか? 今まで通りで構わない」
気持ち悪いし。
「いや、でもなぁ。お前王様だしなぁ」
おい、お前呼ばわりはいいのかよ? 様さえ付ければいいってもんじゃねーぞ。
「うーん。私も正直戸惑ってるんだけど……」
「ディアナもか? でもディアナはあれだろ? 王妃になるわけだから俺に遠慮する事は全然ないんだが」
「わ、私が王妃……信じられない」
王妃という言葉に反応し、顔を赤めるディアナ。まあ、女の子としては王妃とかお姫様とか、そういうのに憧れとかあるんだろうな。
「まあ、とにかく今まで通りで構わない。少なくとも俺達だけの時ぐらいはな」
「うん、分かった」
ディアナの返事に皆も同様に頷く。
「それで、女神様はなんと?」
「そうだな。国の今後の大まかな方針について話した。まずは王国の経済を立て直す。次に財政、そして人事も早急に固めないと……。みたいな感じ」
「なるほど。そうですわね。具体的な案は?」
「経済、財政については、一応その辺の知識とアテもあるから任せてくれ。ただ、人事については……レティシアに相談したい」
「まあ……仕方ないですわね」
「すまんな。俺は国の制度とか、役職とかには疎いから」
「分かりましたわ。任せてくださいまし」
心なしかレティシアが嬉しそうにしている気がする。まあ、人に頼られるというのは悪い気はしないよな。
「財源のアテって、なんか怪しいな。変なこと企んでないよな?」
変なことって何だよトリスタン。多少反則的な方法かもしれんが、みんなに迷惑をかけるようなものでは無いぞ?
「お前の度肝を楽しみにしてろよ」
「フェイトがそれ言うと、なんかすげー怖いんだけど」
……こいつ、不敬罪でしょっ引いてやろうか?
「でも、人事ってどうやって決めるの?」
「会議を開かないといけないと思うが、その前にここで大まかな方針を決めておいた方がいいと思う。一応、人事の最終的な決定権は俺にあるんだろうが、貴族達にうまく丸め込まれる事が無いように事前に策を練っておきたい」
この国の貴族とか油断ならねーし。
「そうですわね。まず宰相ですが、わたくしはお父様を推薦しますわ」
うお、いきなりぶっ込んできましたねレティシアさん。
「まあ、ハルベルトなら信用できるし、能力も申し分ないと思うけど、それだとレーニアの統治の方はいいのか?」
レティシアもハルベルトも抜けてしまうとレーニアは立ち行かないと思うが……。
「それは問題ありませんわ。お父様には優秀な養子がおりますから、その方に任せておけば良いでしょう」
「え? ハルベルトに養子いたの?」
「ええ、正確にはつい最近養子になったと言った方が正しいですわね。幼少の頃からノイマン家で従士として仕えていたフィリップという者がそうですわ。お父様からかなり叩き込まれているはずですから、問題はないでしょう」
「俺会ったこと無いんだけど?」
「フェイト様がレーニアに滞在していた時は、ノイマン領の地方都市の統治を任されていたので不在だったのですわ」
なるほどな。一人娘のレティシアを俺に推してくるから、跡継ぎはどうするつもりなのかと疑問に思ってはいたのだが、養子がいるのなら納得だ。
だが、幼少の頃からノイマン家にいたということなら、レティシアと恋仲になっても不思議じゃないよな。それにフィリップを跡継ぎにと考えていたのなら、ハルベルトも養子じゃなくて、婿として迎える事も考えていたのではないだろうか。
そんな俺の疑念を察したのか、レティシアがふっと笑みを漏らし、話し始める。
「ご安心くださいフェイト様。フィリップとはそんな関係ではありませんわ。彼は確かに優秀な男ですけど、どこか機械的で面白みに欠けて、わたくしとはウマが合いませんもの」
「ふーん。そうなのか? でも、ご安心くださいって……」
「ええ、この際ですからはっきりを申し上げておきますわ」
レティシアが何時になく真剣な顔つきで俺を真っ直ぐに見据える。
「わたくしはフェイト様をお慕い申し上げております。わたくしを妻の一人として迎え入れて下さいませんか?」
いや、ちょっと待てレティシアさん。少々唐突過ぎやしませんかね?
突然のレティシアの告白に、俺は戸惑い言葉に詰まる。
しかし、レティシアは俺の動揺などお構いなしに、ただ俺を見つめ、答えを待っている。
まあ……以前からレティシアの気持ちは薄々気付いてはいたが、こうもストレートに想いをぶつけられるとちょっと恥ずかしいものがある。
それにしても、どうしてこのタイミングなのか? こんなみんなのいる前で?
疑問は尽きないが、ここはしっかりと受け止めて、男としての甲斐性を見せなければならない場面なのかもしれない。
……そもそも、女性の方から先にプロポーズさせておいて、すでに甲斐性もなにも無いような気もするが……。
「レティシアちゃん……」
「おお、ここでまさかのプロポーズ」
「むう、まあレティならいいか」
……ちょっと外野がうるさいが、まあいい。俺の気持ちは……答えはもう決まっている。
「レティシア……即位したばかりで、まだ全然至らない王だけど。これからもずっと俺を支えてくれるか? 頼りにしてるよ」
俺の言葉に少しはにかみ、困ったような表情を見せるレティシア。
「ふふ……プロポーズの受け答えとしては男女が逆ではなくて?」
「うるさいな。俺はこういうのが苦手なんだよ。それに頼りにしてるのは本当だから。というか、お前男らしすぎだよ。こんな皆の前でプロポーズするとかさぁ……よくできるよな」
「ひどい言い草ですわね。これでもずっとチャンスを伺っていたのですのよ? こういう事は本当に鈍感なのですから」
そう言いながらレティシアは俺に寄り添い、その身体を預けてくる。
「う……すまん。気付いていなかったわけじゃないんだが、俺も自信がなくてな。それにディアナやエレーナの事もあるし……」
「うーん。前にも言ったけど、レティシアちゃんなら全然OKだよ。私も正直一人でフェイトを支えきれる自信無いからね。おめでとうレティシアちゃん」
「これで一件落着?」
「ありがとうディアナさん、エレーナさん」
俺から離れたレティシアが目に涙を溜めながらそう答える。……俺は人事の事を相談しに来ただけだったんだが。……どうしてこうなった? まあ、いずれはっきりさせなければと思っていたから別にいいんだけど。
「ふむ。ようやく決心……いや、観念したか。お前の返答、しかと聞いた。もう取り消しは効かんぞ」
と、妙に威厳のある声と共に、隣の部屋の扉を開け、見覚えのある男がこちらに歩いてくる。
「お、おま……ハルベルト! 王都に来てたのか?」
レーニアから王都まで馬車で2~3週間はかかるはずなのに……なんで?
「ふ……俺だけではないぞ?」
ニヤリと笑うハルベルトの後ろから、よく見知った面々、オスカーさん、フェリシアさん。それにオーランドさんにエレノアさん。それとトビーに執事のロイドとメイド長のサラ。あとソフィさんとケイティ、アイリスのおチビの二人に母さんまで出てきた。なんだ、皆勢揃いじゃないか。
んー、しかし、みんなやたらとニヤニヤしているな……って、あああ!!!!
こいつらさっきのやり取り、聞いてやがったな。は、恥ずかしい……。
自分の置かれた状況に気付き、羞恥に悶える俺。
「どうせお前が王城の人事に困っているだろうと思ってな。こうして優秀な人材を連れてきてやったのだ」
と、イタズラが成功したガキの様なムカつく笑みを浮かべながらそう言い放つハルベルト。
「いや、俺が王位についたのは三日前だぞ? いくらなんでも早すぎだろ?」
「ハハハ……いや、冗談だ。そう怒るな。でも、ニ週間ほど前に、レティシアから早馬で全員で早急に王都まで来いと報せが来てな。こうして強行軍でやって来たというわけだ。……それにしても、レティシアはこうなる事を見越していた様だな。まったく我が娘ながら末恐ろしいぞ」
え? マジで? 俺はレティシアの方を振り向く。俺の視線に気がついたレティシアは、
「フェイト様のお役に立てて何よりですわ。タイミングが合ったのは単なる偶然ですわね」
「そ、そうか。いや、正直助かった。頼りになります」
ぶっちゃけ堕女神よりもすごいんじゃないだろうか……。でも、それでもハルベルトの行動は少々不自然な点がある。後でカマかけてみるか。
それにしてもレティシアのやつ、ハルベルトを奥の部屋に控えさせた上で告りやがったな。なんか話が強引すぎると思ったらそういうことか。
どうやら俺はまんまと嵌められてしまった様だ。もう逃げ場はない。まあ、元より逃げるつもりは無いんだけども。
ちらりと視線を送るとレティシアはその意図に気付いたのか、にっこり微笑み返してくる。
この策士父娘め。
「あらあら、今からそんなんじゃ尻に敷かれるわよフェイト」
「か、母さん、それ気にしてんだから言わないでくれるかな?」
頭を抱えてつぶやく俺の姿を見て、皆からどっと笑いが起こった。
次回の更新は11/20(月)を予定しています。
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