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八話 レティシアとシルヴィア


 油断しましたわ。まさか私を狙ってくるとは思いませんでした。これではフェイト様にご迷惑をかけてしまうことに……我ながら情けない状況ですわね。


 わたくしは地下牢の頑丈な鉄格子をひと睨みした後、隣りにいる同居人に視線を移す。その同居人はマイア女王の従者、シルヴィア。この方も捕まったのですね。という事は、昨日の密会は相手に筒抜けだったということに……。邪神の使徒とは一体どこまで見えているのでしょうか。


「……私達は恐らくフェイト様をおびき寄せるための餌なのでしょうね」

「人質ということか。こんなにもあっさり捕まってしまうとは。……情けない」


「それはわたくしも同じことですわ。ここは相手が一枚上手だったという事なのでしょう」


 相手は邪神とはいえ神なのですから。


「そうかもな……でも終わったことを悔いても仕方ない。ここから脱出する方法を考えなければ」


 脱出……とはいいますが。私にはフェイト様はもちろん、ディアナさんの様な力はありません。このシルヴィアさんも腕は立つ方なのでしょうが、あくまで普通の人間のレベル。この頑丈な牢を破る力など持ち合わせてはいないでしょう。


「無理に足掻いても、かえってフェイト様を不利な状況に追い込むことになりかねませんわ。ここは大人しくフェイト様を信じて、待ちましょう」

「……あなたはフェイト殿を信じているのだな」


 女神様の使徒という事もありますが、フェイト様はわたくし達を見捨てるようなお方ではありませんからね。


「そうですわね。フェイト様は必ず助けに来てくださいますわ」

「そうか……信じられる者があるというのは良いことだな……それに引き換え私は……もう何を信じたら良いのか分からなくなってしまった。これまでマイア様をお支えしていれば大丈夫だと思っていた。でも、そのマイア様にはとうとう見限られてしまった」


 シルヴィアは「これから私はどうしたら良いのだ」と言いながら頭を抱えている。


 信じてついてきた者に拒絶される。その悲しみ、絶望はどれほどのものなのでしょうか。わたくしにはその経験がありませんから、今のシルヴィアの気持ちを推し量る事などできません。ですが……


「自分の信じた方、ずっと仕えていた方にこのような仕打ちをされた事には同情致します。ですが、そこは最後の最後まで信じ抜いてみてはどうでしょうか」


 マイアは……お世辞にもできた人とは言えませんが、このような残酷な事を平気でできる人物ではないと思います。ただ、自分を誰かに認めて欲しいだけ。そんな彼女の心の隙間に使徒がつけ込んだ……ただそれだけだと思います。


 たとえそうだったとしても彼女の犯した罪、過ちが消えるわけではありません。ですが、彼女が自分の行いを悔い改めるのであれば、フェイト様も命までは取らないでしょう。まだ、更生の可能性はあると思いますわ。


「信じる……か。まだ希望は残されているのだろうか」


 いきなり使徒の話をしても信じてもらえないでしょう。ここは精神論で気持ちを繋いでもらうしかありませんわね。


「ここで諦めてしまっては、その僅かに残されているかもしれない可能性をも完全に消すことになりますわね。あなたの王女に対する忠誠心はこの程度だったのでしょうか? 一度信じた主を死ぬまで信じ抜く、そのくらいの覚悟は見せて欲しいものですわね」


 わたくしの叱咤の言葉に、驚いた表情を見せるシルヴィア。


「……そなたにそこまで言われてしまっては、私も諦めるわけにはいかないな。……その、すまんな」

「いえ、諦めなければ道は必ず開けるものですわ。わたくしもフェイト様を信じております。希望を捨てずに待ちましょう」


 私の問いかけに力強く頷くシルヴィア。もう大丈夫ですね。使徒を倒した後、マイアさんを支えられるのはあなたしかいないのですから、しっかりして頂きたいものです。


「それから、少し聞きたいことがあるのだが……良いか?」

「なんでしょう?」


 聞きたいこと……ですか。まあ、この様に狭い所に閉じ込められていると不安になるものです。話し相手になって気を紛らわすのも良いのかもしれませんね。


「いや、その。フェイト殿の事だが……あなたはフェイト殿を、一人の殿方として慕っているのだろうか」


 ……なんの話かと思えば、恋愛事ですか。まあ、シルヴィアさんはフェイト様とあんなことがありましたからね。少しくらいは意識なさっているのかもしれません。まったくフェイト様にも困ったものですね。一体妻は何人になってしまうのでしょうか。


「そうですわね。将来的にはわたくしの夫になる存在……と考えていますわ」

「……でもそれはあなたのお父上が決めた話であろう」


「それは違いますわ。お父様に言われなくても遅かれ早かれ、こうなっていたと思いますわ。フェイト様は特別な御方ですから」

「まあ、何かと話題に事欠かない人物ではあるのは確かだが……」


 やはり、フェイト様の事が気になっているみたいですわね。ここでフェイト様が颯爽とダンテを倒し、シルヴィアさんだけではなく、マイアさんまで救ってしまったら……シルヴィアさんの心は一気にフェイト様に傾いてしまうかもしれませんわね。


「はぁ……」

「どうしたのだレティシア殿。ため息などついて」


「……いえ、なんでもありませんわ」


 問題は解決して欲しいのですが、少々複雑です。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



――アリスン視点――



「ドミニク。状況は理解しましたね。これより王城に忍び込み、レティシア様を救出致します」

「はっ。姐御。了解しました!」


 私達はフェイト様より頂いた装備を身に着け、王城に向かい走っています。


 今身につけている装備については、屋敷の地下の訓練場で一通り教えて頂き、演習も行いましたが、素晴らしいの一言ですね。まず、この身体にフィットするボディースーツですが、このスーツには音を消す消音効果に、光の屈折を利用し、敵からの認識を阻害する迷彩効果、刃物を通さない防刃効果まで付与されています。さらに多少の身体能力を強化する効果もあるとか……。確かに普段より動きが軽く感じます。


 また、武器として、レールガンを小型化した銃を頂いています。威力はかなり抑えられていますが、人一人殺傷するには十分な威力を備えています。これならドミニク達も十分戦えますね。訓練して片手でも撃てる様になりました。


 そして、先程魔法を付与して頂いたこのナイフ……。必ずやフェイト様の期待に応えてみせます。



「フェイト様。王城近くの予定のポイントに到着しました」

『アリスンさんご苦労様。とりあえず【サーチ】で探ってみたけど、レティシアはどうやら城の地下牢に囚えられている様だ。このまま王城に潜入し地下牢を目指してくれ。俺はなるべく目立つように正面から突撃する』


「了解しました。フェイト様」


 レティシア様は地下牢ですか。早くお助けしなければなりませんね。


「ドミニク。レティシア様は地下牢にいるらしい。王城に潜入して地下を目指します」

「「「分かりました姐御!」」」



 裏口を警護していた守備兵を昏倒させて、城壁内に潜入。王城にはもうこれまで何度も潜入していましたので、細部まで把握しています。潜入などお手の物。このまま地下牢まで最短距離で行きましょう。


 地下に降り、地下牢に続く廊下を進んでいくと、角の先に警備兵の気配を感じます。数は三人。こちらにはまだ気づいていないようです。


 私は後ろに続くドミニク達三人にハンドサインで敵兵が居ることを伝えます。このハンドサインもフェイト様より教わりました。言葉を発することなく仲間に状況や指示を伝えることができて非常に便利ですね。この装備といい、ハンドサインといい、フェイト様はやはり偉大なお方です。


 私は三人に自分が出ることを伝え、討ち漏らしがあった場合のバックアップを指示します。そして、タイミングを見計らって……


「ん? あ、あれ?」


 近くにいた二人の警備兵の首が私のナイフによる一撃で切り裂かれます。あまりの突然の出来事に、自分に何が起こったのかも分からない様子で、血を吹きながら倒れる二人。


「な!? お前達ど……」


 少し離れた位置に居た残りの一人は、フェイト様より頂いた銃により眉間を貫かれ、その場に崩れ落ちます。ただでさえ薄暗い地下通路に認識阻害の魔法が付与されたスーツを着込んだ私の姿を、一般の兵士が捉えることはできないでしょう。


「姐御、さすがです。これなら俺達要らなかったかもですね」

「いえ、そんな事はありません。レティシア様を安全に地上へとお救いするためには、この地下フロアの兵士を沈黙させる必要があります。ドミニク達は手分けして兵士を殲滅させなさい。私はこのままレティシア様の元に向かいます。退路の確保は任せましたよ」


「イエス! マム!」


 どうかご無事でいて下さい。レティシア様。


次回は10/30更新予定です。

よろしくお願いします。

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