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097 分岐点 デルリカ2

― 097 分岐点 デルリカ2 ―


夜中。

テントで寝ていた僕は目を覚ます。すごく寝苦しい。

そして暑い。

むちゃ暑苦しい。


寝袋のチャックを開けて理由が分かった。

デルリカ、なぜ僕の寝袋の中に居るのだ。


「デルリカ、ちょっと起きなさい。」

「むにゅむにゅ、なんですのお兄ちゃん。まだ夜中のようですけど?」

「そうだね。でも寝苦しくて起きちゃったよ。なんで僕の寝袋に入ってるの?」

「えへ、お兄ちゃんと一緒に寝たかったからですわ。」


デルリカ可愛いなー

なんだよその甘えん坊。

もう、可愛すぎだよデルリカー


でも、寝苦しいから。

「悪いんだけど、暑くて眠れないからこの寝袋は僕一人で使わせてくれないかな。」


するとムクれた。

「嫌ですわ。お兄ちゃんと一緒に寝たいんです。」

15歳の妹のセリフじゃないでしょ。

でも、きっとこれを無理やり引きはがしたら、また手の骨を砕こうとするんだろうな。

デルリカは魔王レベルが高くなりすぎて、メチャクチャ強いから人の骨を砕くなんて余裕っぽいし。

参った。


あきらめるか。

寝袋の入り口のチャックを開けていればギリギリ耐えられそうだし。

あれかな、こういう時も<温度変化耐性>とか<状態異常耐性>のレベルが高ければ暑くても平気なんだろうか。

少なくてもデルリカは平気そうだ。

さすが魔王。寝袋の入り口が開いて少し寒くても気になっていないようだ。

康子はゾンビの臭さも平気だったけど、デルリカも臭いの平気なのかな?


ぷー


えへ、オナラしちゃった。

そしておもむろに寝袋のチャックを閉める。


どうだ、臭いか?わっはっはっはっは。


う、自分のオナラながら我慢できない。

思わず寝袋のチャックを開けた。


でもデルリカは平気そうな顔をして目を瞑っている。

「デルリカ、今の僕のオナラ臭かった?」

「少しだけ臭かったですわね。でもお兄ちゃんのオナラには慣れていますのよ。」


なんだろう、妹の愛を感じる言葉だわ。

うん、意地悪するのやめよう。

そっとデルリカの頭を撫でてあげた。

「もう年頃なんだから、はやくお兄ちゃん離れしなさいね。」

甘えるように頭を擦り付けてくる。

「嫌ですわ。一生お兄ちゃんに寄生する予定ですわ。」


ま、嫌われるよりはいいか。

でも妹にこんなにべたべたされたら、彼女でき無さそうだな。

ま、そのときは魔族の女の子つくったり、人工精霊のはいったゴーレム作って彼女に任命すればいいか。


よし解決。

じゃあデルリカが年頃でも気にする必要ないや。

僕は自己解決して目を瞑った。

デルリカの体温が心地よいので、スグに眠りに落ちるだろう。








朝。

目を覚ますと不可解な状態だった。

テントの中にデルリカはいなかった。

そして外からの血の匂い。


嫌な予感がしつつも、もぞもぞテントの外に出た。

すると、そこには土竜王の死体が転がっていた。

土竜王の近くには、ねずみ男みたいな死体も三つ転がっている。

もしかして、あれが土竜王の魔族かな?

見事に引き裂かれている。


でかい土竜王の陰から、ひょこりとデルリカが顔を出した。

可愛く血まみれのスコップを抱えている。

「あ、お兄ちゃん起きましたの?そこで大きなモグラを狩りましたので、後でさばいて今晩のおかずにいたしますね。」


血みどろのスコップをもったデルリカは、ニコニコしながら出竜王の後ろ脚を掴むと、こちらにズルズル引っ張って歩き出す。

デルリカ、パワーあるなー。

土竜王は四つん這いの状態ですら5メートルはある巨体。

それを片手で掴んで、鼻歌交じりに引きずるって…


僕は恐る恐る近づいた。

「ねえデルリカ、どこで捕まえたの?」

「はい、横穴を掘ってワタクシの縄張りに侵入してきましたので、狩っておきましたわ。流れの魔物ですかね。」


僕は土竜王の死体を眺めつつ、あまりの哀れさに涙がはらりと落ちた。

魔王のはずなのに、この圧倒的ザコ感。

あまりに哀れ。

なんでデルリカの縄張りに出てくるかな。

うまく逃げれば長生きできたものを。


「せめて、迷わず成仏してくれよ。」


両手を合わせてセンチメンタルになってる僕を無視して、デルリカは土竜王を<空間収納>に格納してしまった。

「血抜きをしなくてはいけませんね。ステーキにしたら美味しそうですわ。」


土竜王もデルリカか見たらただのお肉か。

「デルリカ、そのモグラは魔王だよ。あとで素材として利用するかもしれないから大事に取っておいてね。」

「まあ、これでも魔王でしたのね。きっと南の魔王最弱でしたわね。」


死者に鞭打つようなこと言わないであげてー。

本来は<腐食ブレス>や<ミスリル毛皮><オリハルコン爪>とかで攻撃して来て凄い強いんだから。

僕が、その能力を奪ったから弱いだけだから!本当は強いから!


なんとも微妙な気持ちで朝ごはんを迎えた。

食事をしていると、ワイバーンに乗って空から周りを偵察していたヒーリアさんから連絡が入ってきた。

『長道坊っちゃん、街の東側に大規模な魔物の軍勢が向かって来るよ。<探査>でチェックしたら、魔物の数は約20万。これはスタンピード以上のヤバさだよ。』


努めて冷静に返事をした。

「心配ないよ。連中はグロガゾウの街には近づけない。なんせ魔王の縄張りに入ったら、こっちの配下になるんだからさ。魔物の数に惑わされずに魔族と魔王だけを探しておいて。」


『わかったよ。魔王と魔物だけ探し出すからもう少し待ってておくれ。』


なんて余裕な事を言った僕だけど、内心焦ってはいる。

このグロガゾウは四方を魔王に囲まれた都合上、たしかに他の魔王の魔物は入ってきにくい。

だがひとたび押し込まれたら、街が近い分押し返すのは難しいだろう。


なにか考えないと。

でも、ふと気づいた。


なぜこのタイミングで魔物の大軍が来るんだ?


土竜王の話では、すでに美蛾王はこの街の近くに居る。

だってダンジョンで捕まえた冒険者を奪っているのだし。


ならば、他の魔王ももう来ているのでは?

しかも土竜王に街の西から攻めさせたのは、グロガゾウの魔王を出来る限りダンジョンに閉じ込めるためだろうと思われる。

なら、まさかと思うけどすでに魔王によって進行は始まっていて、あの大量の魔物は囮なのでは?


北の魔王連まで攻めあがるとすれば、ここで戦力の消耗は避けたいはず・・。


となれば、あの20万の魔物を本当に消耗するような動きをするだろうか?

これには罠があるのではないだろうか?

サビアンさんが迎撃のために魔物を送りだしたら、その魔物を殲滅できるような罠とか。


そこまで考えて敵の動きが読めた。


「デルリカ!僕らは東に行こう。サビアンさんの森を守るよ。」


決戦地は間違えなく東の森だ。

走る僕にデルリカがついてくる。


「どういうことですの?」

「簡単だよ。サビアンさんが東の地から迎撃に魔物を出したら、その隙に敵の魔王と魔族だけで森を奪いに来る気だ。おそらく20万の魔物とこちらの中間点に、敵の魔王の簡易的な縄張りがあるはずだ。僕らは簡易縄張りを奪い取って形勢を逆転させるよ。」


デルリカは悩んでいた。

「なんで簡易の縄張りがあると分かるのですか?」


「魔王の縄張りに入ったら魔物は魔王に従う。だから魔王同士の戦いは膠着するんだ。でもお互いの縄張りではない場所でなら魔物同士をぶつけられる。でももしも、誰の縄張りでもないと思っていた場所が敵の魔王の縄張りだったらどうなると思う?」


そこでデルリカも気付いたようだ。

「なるほど、まるごと魔物を奪われてしまいますわね。すでにこの街に敵魔王が来ているとしたら、罠を用意する時間が有ったとしても不思議ではありませんわ。そしてこちらからの魔物の移動予定の地面が敵魔王の縄張りにしてあれば、20万の魔物を迎え撃つために移動した魔物たちがそのまま、敵の魔王のものになりますわね。」


「そのとおり。だから先手を打って潰そうと思うんだ。でも敵の魔王達に気づかれたくない。タケシ君の<石ころモブ結界>(他人から意識されなくなる結界)で移動しよう。」


「わかりましたわ。」


僕はゴーレム板(ただ浮いて飛ぶだけの頑丈な板)を出して三人で乗る。

すると、タケシ君は黙って<石ころモブ結界>を発動させた。

姿は見えるけど、誰も気を止めることはない。

これはそういう結界。


「よし、これで安心だ。じゃあ出発するよ!」


僕らは宙に浮く板に乗って、地上50mを移動して東から来る20万の魔物の群れに向かった。


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