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088 実はよく会議してます

― 088 実はよく会議してます ―


蜘貴王サビアンさんは、お茶を飲んで落ち着くと僕の方を向く。

「長道さん、わたくし達以外の魔王も徒党を組んでいるとなると面倒ごとも増えそうですわね。」


僕は腕を組んでうなずいた。

「厄介ですね。とはいえチャンスでもあると思うんです。」


「チャンス?ですか。」


「ええ、チャンスです。いずれ他の魔王を倒すかどうか調べないといけないと思っていました。もしも他の魔王が倒す必要があると判断出来たら、人の軍にまぎれて討てばこちらの被害も少なく済むはずです。ですから乗りましょう、このビッグウェーブに。」


サビアンさんは、20代の貴族のご婦人にしか見えない美しい顔で微笑む。

「流石は長道さんです。わたくしとしましてはそのご提案は悪くないと思いますわ。」


紅竜王ビレーヌが「はい、私も素晴らしいと思います」と言っているが、ビレーヌの意見は無視しよう。

この人は僕の意見に逆らうという事を知らないので参考にならない。


淑女王デルリカを見る。

デルリカはすまし顔で微笑んだ。

「ワタクシもお兄ちゃんの提案でしたら反対はございませんわ。もしも失敗したとしても力づくで皆殺しにすれば宜しいのですし。」


デルリカの意見も参考にならないな。

デルリカは何でも「殺しちゃえばいいじゃん」って考える人だから。


食楽王マリーさんには何も聞かない事にしている。

この人はバカだから。


周りを見渡すと、ビレーヌの後ろに控えている執事風の魔族『竜炎』が一礼してきた。

「恐れながら、我が意見を申しあげてもよろしいでしょうか?」


「むしろ意見をお願い。全面賛成ばかりでは不安だから。」


「ありがとうございます。こちらとしましては全く動かないのが得策かと存じあげます。もしも我らと他の魔王が争いを始めれば、おのずと人間の警戒心は我らにも向くことになるでしょう。それよりは他の魔王が人間と戦っている間も静観することにより、我々が人の国家に脅威が無いことを見せるのがよろしいかと。」


さすが竜から魔族になっただけはある。

他より賢い。


「なるほど、確かに。」


僕はユックリ思考を回す。

ビレーヌが苦々しく自分の執事を睨んでいるが気にしない。

僕の意見に逆らってもいいですよ、ビレーヌさん。むしろ意見ください。イエスだけでは不安なの。


で、今の意見で少し考えが整理された。

確かに、人間の国家に脅威を感じさせるのは得策ではない。


でも、僕としては人の脅威になる魔王をのさばらせたくない。

ではどうする?


そして今日集まっている魔王たちを見た。

美人しかいない。


そっか!

「竜炎の意見はもっともだし、それはとても大事な事だ。でも無法な魔王がいたら放置はできない。だからもしも他の魔王と戦う時は、人の冒険者として参加しよう。だってここに居る魔王は全員人型で行動できるんだもの。それなら冒険者としての名が売れることはあっても、魔王の悪名は高まらない。どうかな?」


難しい顔で話を聞いていた康子の表情がほころぶ。

「よいご提案だと思います。最悪でも勇者である我らを前面に出せば、魔王の力を全力で使っても誤魔化しは効くかと思います。」


里美が嬉しそうにうなずく。

「そうだよお兄ちゃん。最悪の時は全部私と康子お姉さまの功績って事にすればOKじゃん。貴公子女子の康子お姉さまと、スーパーアイドルの私が居れば、誤魔化すにしてもいろいろ幅が広がるんじゃない?」


「なるほど。確かにそうだね。よし、最悪の場合はそれでいこう。だとするとサビアンさんやマリーさんにも人としての身分があった方が良いよね。ユカエルさんに頼んで、うまく不正して冒険者にしてしまおう。」


嬉しそうにユカエルさんが「まかせな長道坊っちゃん!」とガッツポーズをとる。

それでいいのか?ギルドマスター。


このあと、魔王達は自分の眷属である魔族を全員呼び集めて、冒険者に登録した。

多分みんなすぐにランク上がるだろうな。

だって魔物を狩るにしても、貴重な素材を採取するにしても、自分の縄張りから持ってくればいいだけなんだから。




そして次の日。

ユカエルさんの無駄に有能な能力を恨めしく思った。

学校に着くと、男子たちのうわさが耳に入ってくる。

下の学年に、おかっぱ頭の可愛い双子が編入してきたというのだ。


嫌な予感で背中に冷たい汗が流れる。

僕の勘違いであってくれ、ユカエルさんが僕が思うほど有能でないことを祈った。


しかし、休み時間


「長道殿!私たちも今日から生徒だぞ!」「長道殿!何かちょうだい!」


飛びこんできたのは、サビアンさんのところのカマキリメイドの二人だった。

「やっぱりボリーヌとダレージュだったんだね。ユカエルさんに手続してもっらたの?」


「そうだぞ、あのギルマスは仕事が速いね。サビアン様もお喜びだよ。」


僕の手下の仕事で、喜んでもらえて何よりです。

僕は胃が痛いけど。

こんな人の常識を知らない魔族を、いきなり学校に放り込むとか勘弁してほしい。

いや、ユカエルさんの思惑は分かる。

僕らが居れば、魔族が問題起こしても何んとなかる。

そうかもしれないけど…、そうかもしれないけど…


もういいや、考えるのはやめよう。

いつもみたいに僕に飛びついてよじ登ろうとする2人を引きはがす。

しかし、この二人はなんでいつもよじ登ろうとするんだろうか?

虫の本能だろうか。


すこし雑談をして教室を追い出して振り返ると、ジョニーが恨めしそうに僕を見ていた。


「長道…、なんでお前ばっかり可愛い子に囲まれているんだよ!おかしいだろ!」


「まてジョニー。可愛いいったてデルリカや里美は妹だし、さっきのオカッパメイドからみたら僕は、お小遣いくれる近所の兄ちゃんでしかないんだ。これはモテるとは言わないんだぞ。」


ジョニーは恨めしそうに近寄ってくる。

「で、これ以上美人や可愛い知り合いは居ないんだな?」


頭の中に、サビアンさん、マリーさん、ヘルリユ、ユカエルさん、マリアお母様、さらに大量の人工精霊たちや、魔族女子の顔が思い浮かぶ。


あれ?いつのまに僕の周りは美人だらけに?

言葉を濁すか。


「家族と家族同然の人しかいないよ。」


そのあとメチャクチャ腹パンされた。

しかし甘んじて受けよう。

可愛い妹に美人のママンが居る時点で僕は勝ち組。

だから気が済むまで殴り給え、それで負け組君の気が晴れるならな。はっはっはっは。


グフッ!

みぞおちに入った・・・・。




放課後。

僕はさっさと教室を出る。

妹達が人に囲まれて動けなくなっているが気にしない。


なぜなら、今日も僕は大事な会合があるから。


学校を出ると、まっすぐ街の役場に向かった。

今日は街の有力者会議。


町内会や商店街の代表とかが集まっている。

その会議室に僕も入る。


年配の人が沢山居た。

その人たちに挨拶しながら、僕は奥の方の席に行く。

大きな長方形のテーブルの一番奥。

そこは4人分の席が並んでいる。


すでにそのうちの3つは先客が座っている。


1人はうちのママンであるマリアお母様。

この街の教会のボスであり司教だから偉い。


その隣にヘルリユ第4皇女が居た。

この街の領主で王族だから偉い。


その横には冒険者ギルドのギルドマスター、ユカエルさんが座っている。

いつも僕の前では、孫を甘やかすお婆ちゃんみたいにヘラヘラしているけど、実はけっこう偉い。

商業ギルドのギルドマスターも兼ねているので、発言力がマジ半端ない。


で、その隣に僕。

ハッキリ言って、居心地悪い。

末席に座りたい。


すでに参加者は全員いるみたい。

30人ほど集まっていたが、僕の登場を待っていたらしく、僕が席に着くと同時に会議が始まった。


ヘルリユ皇女が凛とした声を発する。

「では今月の会議を始める。」


そのあと、各代表から報告と陳情を聞いた。

参加している人たちの報告や陳情が一通り終わると、ヘルリユ皇女は僕を見る。

「では最後に、長道から魔王報告をしてもらう。」


そう、僕だけが魔王とコンタクトをとれると思われているので、必然的に魔王の監視役は僕だ。

無役の僕が、このお誕生席にいるのもそれが理由。街にとっては魔王情報は死活問題だから。

僕は静かに口を開いた。


「今回も魔王達は呑気なものでしたよ。縄張りを拡張する意思はなく、むしろ面倒を持ち込むなという態度でした。ただ他国の魔王の動きが気になっているようで、他の魔王がこちらにとって見過ごせないほどの動きを見せたら攻撃をする気はあるそうです。」


すると商店街代表のおじさんが嬉しそうに笑いだす。


「魔王が守ってくれていると思えば心強いな。しかもこの街の魔王は4人だ。安心安心。わはははは。」

その言葉で、この場の皆の顔がほころぶ。


僕はあんまり嘘は言ってない。

多分他の魔王を「見過ごせない」って事になる可能性が高いけど、それは言う必要はないだろう。


お読みくださりありがとうございます。

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