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086 妹達始動

あらすじ

グロガゾウに移住して4年。長道は学校に通っていた。

そのクラスに妹である「スーパーアイドル里美」が編入してくる。

― 086 妹達始動 ―


そのあと先生により、みな席につかされて授業が始まった。

それから休み時間ごとに里美の周りに人だかりができる。

里美はスーパーアイドルだから人気は抜群だ。


フレンツ公国との戦争の時、火竜を乗りこなして活躍しつつ、夜は歌と踊りで軍を慰問したことで軍部や冒険者には絶大な人気があった。

戦争終結後は、教会のためにアイドル家業を始めたら、国の式典の時に皇帝に『そうだ長道、お前の妹はアイドルっぽい事しているんだろ。ちょっと式典を盛り上げるために歌ってもらえないか?』と誘われたのが切っ掛けでデスシール騎馬帝国中で話題になりつつある。

60年前、この世界で初めてアイドルという職業をつくったサトミー・マシリト公爵令嬢と名前が似ていることもあり、スーパーアイドルと呼ばれている。まあサトミー本人の生まれ変わりなのは一部の人しか知らないけど。


お昼になると、里美は嬉しそうにお弁当をもって僕の席に来た。

「お兄ちゃん、一緒に食べよう。」

かわいく小首をかしげるところがあざとい。


里美は、あざと可愛いなー。

僕は、あざとい里美好きだぞー。


だが断る!


「僕は小説読むのが忙しいから、向こうの連中と一緒に食べなよ。そうやって友達の輪を広げなさいな。」


だが里美は僕の言葉を無視してお弁当を二つ出した。

「ビレーヌちゃんから聞いてるよ。お弁当持ってこないんだってね。エプロン子にお兄ちゃんも分も作ってもらったから一緒に食べようね。」


有無を言わさずお弁当を広げて箸を渡してくる。

うん、あいかわらず里美は図々しいというか、やりたいようにやる子だな。


あきらめて箸を受け取ると、弁当に手を出す。


パクリ


「うん美味しい。やっぱりエプロン子の料理が一番おいしいな。幼いころか食べているから、お袋の味なだけかもしれないけど。」

「そんなことないよ。私もアイドルになっていろいろな所で食事したけど、エプロン子の料理は別格だもの。」


ふと、ビレーヌを拾ったばっかりのころを思い出した。ビレーヌがエプロン子の料理を泣きながら「おいひい、おいひい」って言いながら食べていたっけ。


「もしかして、庶民にとっては泣くほどおいしい料理なのかな?」


里美はしばらく考えて微笑んだ。

「そうなんじゃない?すくなくても魔王を買収できる程度には美味しいのは間違いないし。」


食楽王マリーさんと蜘貴王サビアンさんの顔が頭に浮かぶ。

たしかに、あの二人を買収したのはエプロン子の料理だった。

「そういえばヘルリユ皇女も、城の料理よりおいしいって言いながら食べていたな。もしかして僕たちって、かなり贅沢な食環境だったのか?」


するとバカにするような目をされた。

「今更気づいたのー?だいたい毎日お肉とデザートが出る時点で庶民の食卓じゃないでしょ。工房で暮らしてるんだから、庶民の生活を知ったのか思ってたよ。」


「ビレーヌや高麗(人工精霊メイド)が面倒見てくれるから、外で食事とかしないから…。」

「ほんと、お兄ちゃんはいつまでたってもお坊ちゃまだよね。」


すいません、お坊ちゃまで。

しかしエプロン子のお弁当はおいしいな。

箸が止まらないよ。

中毒症状を引き起こすヤバイ薬でも入ってるんじゃないだろか。


食べ終わったら、いつの間にか里美の後ろに現れていたメイド・スマ子がお茶を入れていくれた。

「長道坊っちゃんは、ちょー恵まれ過ぎなの、自覚しなきゃダメっしょ。」

「はい、今自覚したよ。」


そしてスマ子のお茶も美味しい。

ふと気づくと、クラスの連中がみんなこっちを見ていた。

なんだ?


近くにいるジョニーに声かけてみる。

「なあジョニー、なんか注目されている気がするんだけどなんでだろう?」


「おいおいおい、本気で聞いてるのか?スパーアイドル里美ちゃんがそこに居るんだぞ。注目されて当然だろう。しかも流石スーパーアイドルだけあってメイドまで連れているんだぞ。誰だって注目するって。」


「そうなんだー。里美って思ったよりも注目集めるタイプなんだな。」


里美はケラケラ笑う。

「あははは、注目してくれないのはお兄ちゃんくらいだよ。私は自分で言うのもなんだけど、かなりの美少女なんだから。」

「いや可愛いと思ってるよ。妹はみんな可愛いよ。ほんと目に入れても痛みに我慢できるくらいには可愛がってるつもりなんだけどな。」


「ふふふ、知ってる。」


「じゃあ良いじゃん。」


「まあ良いけどね。」


食事が終わったんで、ラノベを取り出して続きを読もうとしたら里美がラノベを取り上げる。

「ほら、お兄ちゃんは私に注目していないでしょ。私が一緒に居るのに小説読みだすのなんてお兄ちゃんくらいなんだからね。」


「ぐぬぬ、里美は構ってちゃんだな。」


「わかったら構ってちょうだいね。」


里美は我侭かわいいなー。

里美は構ってちゃんで可愛いなー。


そのあとお昼休み中、ずっと頭を撫でておいた。

昔と違って、摩擦で髪が焦げるほど高速で撫でなくなった僕は成長しているとおもう。


頭を撫で続けるだけで満足する里美も大概だと思ったのは秘密だが。



そして放課後。

クラスのみんなに囲まれていた里美は、見事な愛想笑いでスルスルと人をかき分け僕の所に来る。


「ねえ、今日はお兄ちゃんのところに遊びに行きたいけど良い?」


「別に構わないよ。でも仕事が忙しいからあんまり構えないよ。」


「別にいいよ、お兄ちゃんが何か作ってるところ見るの好きだから。」


里美は言うことが可愛いなー。

普通の妹は13歳になたら兄を虐げるものだぞ。

うちの妹可愛すぎ。


帰ろうと歩き出すと、なんか後ろから人がゾロゾロついてくる。

なんだあの連中は?


「里美、なんか人がたくさんついてくるけど気のせいかな?」

「あのね…、私くらいの美少女アイドルになると、民衆はついてきてしまう物なの。これは普通の現象なんだよ、お兄ちゃん。」

「まじか。美少女も大変だな。僕なんて転んでひざから血を流していても誰にも気にされないのに。」

「お兄ちゃん…」


途中で隠遁の魔法を使い、みんなから見えなくなって工房に帰った。

実は僕は、結構魔法得意なんだ。

この世界でも少数の人しか知らない「N魔法」という魔法を習得しているので、密かに魔法の能力は超一流なのさ。


で、

工房に着くと里美に椅子を出してあげて、いつもの作業場所に座る。

さて仕事を再開するか。

僕は作りかけだった超高性能望遠鏡の作成を再開した。


里美は楽しそうに、すでに完成させた望遠鏡を弄って遊んでいる。

ちなみに、望遠鏡と言っても僕が作っているのは双眼鏡だ。

でも、驚いたことにこの世界に双眼鏡という概念が無かったので、サンプルを持っていったら「珍しい形の望遠鏡だな」と言われ、そのまま望遠鏡と呼ぶことにした。


この世界では高価なレンズを両目分作るメリットが無いと判断されているようだ。

当たり前と思っていることが、時々地味に異世界知識チートになるんだよな。


双眼鏡の方が長時間使うとき楽なのにね。

そう思いながら、次々に作っていく。

慣れてきたので、作業速度がだんだん上がってきた。


一気に作業したら、220個完成。

凄いな僕。

この超高性能望遠鏡200個を2日で作るとか超人的でしょ。


一息ついて周りを見たら里美がニコニコしながら隣に座っていた。

「相変わらずお兄ちゃんの作業姿は飽きないよ。」


時間を見ると3時間ほど過ぎていた。

「それならよかったけど、随分待たせちゃってごめんね。そうだ、夕飯はどうなったかな?」


「あはは、ビレーヌちゃんが帰ってきたの気づいてなかったの?スマ子と一緒に夕飯を作ってたから、もう終わると思うよ。食べに行こう。」


「そっか。じゃあ部屋に行こうか。」


作った超高性能望遠鏡を<空間収納>に仕舞うと部屋に向かう。

里美が超高性能望遠鏡を1個自分の<空間収納>に入れていたけど、まあいつものことだから気にしないでおこう。


食事が用意してある部屋に行くと…

そこにはデルリカと康子も待っていた。


「あれ?いつの間に来たの?」


フランス人形のようなデルリカが頬を膨らませた。

「気づいていないなんてひどいですわ!ちゃんとご挨拶しましたのに。お兄ちゃんはワタクシにだけ優しくありませんわ。」


「ごめんごめん、作業していて気付かなかったよ。」


デルリカ可愛いなー

むくれた顔も可愛いなー


そしてデルリカは衝撃的な事を言い出した。

「そうそう、ワタクシたちもお兄ちゃんと同じ学校に通う事になりましたわ。明日から宜しくお願いいたしますね。」


口には運んだお茶を拭きだしそうになった。

「ちょ、まじ?」

「マジですわ。」


あかん、静かな学校生活に嵐が吹き荒れる未来しか見えない。


およみくださりありがとうございます。

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