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085 実は有名人と知り合いです

あらすじ

グロガゾウの街に来てから4年が過ぎた。

呑気に学校生活を送る長道はビレーヌとの関係を秘密にしている。


― 085 実は有名人と知り合いです ―


「ジョニーは家族が夕飯を作って待ってくれている家だっけ?」

「両親が居る時はな。今は二人とも警護の依頼で出ているから、適当に外で食べてるよ。」


そういえがジョニーの両親は両方とも、腕のいい冒険者だったっけな。

「じゃあ、ついでだからウチで食べていきなよ。ビレーヌの食事は普通に食べられるから。」


ジョニーはあわててビレーヌをチラチラみながら慌てる。

「おいおいおいおいおい、作ってくれた本人の前で『普通に食べられる』はないだろ。『美味しい』くらいは言った方が良いぞ。」


「じゃあ普通においしい」

「長道・・・」


ジョニーがちょっとあきれ顔で僕をジト見した。

でも横でビレーヌは「普通の美味しいのですね、嬉しいです」とか言ってるので良いだろう。


テーブルに着くとジョニーは不思議そうにビレーヌを見てから僕を見た。

「なんで委員長が長道の所に?仲悪いんだと思ってたから意外だよ。」


まあ学校での姿を見ていたら普通そうだよね。

ビレーヌはスープを配膳し終わると席についてジョニーを見た。

「わたくしは親の罪状のせいで、一人で開拓村送りになりましたの。そこで生活に困っているわたくしを拾ってくださったのが長道様なのです。ですので誠心誠意全身全霊をもってお仕えしたのですが、学校に入った頃から、それがカッコ悪くて嫌だといわれるようなったため、校内では他人行儀にしておりますのよ。」


ジョニーは驚いているんで少し補足するか。

「それに、証拠はないけど、どうやら兄妹らしいし。」

ビレーヌは目を吊り上げる。

「それに関しては証拠がございまっせんわ!とある夫婦にわたくしたち二人が生き写しのようにそっくりというだけですもの。おそらく他人の空似ですわ。だいたい開拓村でばったり出会うなんて偶然すぎます。絶対他人の空似ですわ!」


キレられた。

この話をするとビレーヌはいつもキレる。

面白いから、こうやって時々話題にしてからかうんだけど。


「ま、先に食事しよう。では黙とうを。」


手を組んで目を瞑る。

今日はだれにお祈りしようかな。

そうだ、性愛の女神・エリーヌさんにお祈りしちゃおう。

どうかエロエロハプニングにまみれたイベントが起きますように。

そして僕が性獣になれますように。


「では頂こう。」


スープをすくって飲む。

うん、普通だ。


でもジョニーは大喜びでがっつきだした。

「おいおいおい、なんだよ『普通に食べられる』とか言ってたけど、めちゃくちゃ美味しいじゃないか。」


ビレーヌも僕も困惑顔になる。


「いや普通でしょ。うちのお母様のメイドが作る料理は凄くおしいけど、ビレーヌのは普通だと思うよ。」

「そうですわね。わたくしもエプロン子が作る料理に比べたら、まったく普通の料理だと思いますわ。」


ジョニーは手を止めて僕を睨む。

「おいおいおい、嘘だろ。長道はどこのお大臣のお坊っちゃんだよ。こんな美味しい料理を普通とかいうなんて、贅沢すぎるだろ。」


その言葉に、おもわずビレーヌと『そうなの?』『よその食事のことは知りませんので?』みたいなアイコンタクトを取ってしまった。


「でも、王城で食べた料理はソコソコ美味しかったよ。うちのエプロン子の料理の80%くらいの美味しさだった。」

「王城の料理を基準にするな!しかもそれでもメイドの料理より下なのかよ!どんだけ料理上手なメイドだよ!」


うちの自慢のエプロン子は、毒舌と悪戯好きな事を除けば完璧なのです。

そんな話をしながら、その日は遅くまで雑談をして過ごした。



次の日。

学校で適当にラノベを読んでいると、ジョニーがコソコソ近づいてくる。

「おはよう長道。あのさ、昨日のアレはやっぱり秘密なんだよな。」


一応気を使ってくれ気はあるらしい。

「おはよう。絶対に秘密ってわけじゃないけど、ビレーヌの事がばれると彼女とか作りにくくなるかもしれないから内緒にしたいな。女子の従者を持ってる男に、彼女になってくれる人なんていないだろうから。証拠はないけど妹かもしれないって言っても信じてもらえないだろうし。」


目からうろこが落ちたような顔をされた。

「た、確かに。俺は羨ましいと思ったけど、たしかに彼女を作るには不利だな。家で雇ったメイドとはわけが違うもんな。なるほどわかった。秘密にしておくよ。」


意外にいいやつなんだよね、ジョニーって。

すると周りにクラスの男子がゾロゾロ集まってきた。

もちろん僕に集まってきたんじゃない。

ジョニーに集まってきたのだ。

ジョニーはクラスカースト上位者のくせに気さくないいやつなので、いつも友人が周りにいる。

しかし女子には人気がない。気さくなのが馴れ馴れしいと映るらしく、軽薄な奴と思われている(ビレーヌ情報)。


集まってきた男子が興奮気味にジョニーの肩を揺らす。

「おい聞いたかよ!いま学校に冒険者の『トップアイドル里美』ちゃんが来ていたぞ!遠目で見たけどめちゃくちゃ美人だったぞ!」


ジョニーが目の色を変える。

「おいおいおい、嘘だろ!美人冒険者四天王の一人が来てるのかよ。おい長道、見に行こうぜ!」


いきなり僕に話振るなよ。

「僕は良いよ、里美なら見飽きてるし。行ってきなよ。」


男子たちの目がギロリと僕を睨んできた。

あれ、なんか変な事いったかな?


睨んでいる1人が僕をいきなり突き飛ばす。

ガタリ!

椅子から突き飛ばされて尻もち着いた。

「あぶないな、何するんだよ。」


周りの男子たちが、尻もち着いた僕を囲む。

「おい長道、嘘つくのも大概にしろよ!我らのトップアイドル里美ちゃんを見飽きただと!ファンですら話しかける事も滅多に出来ないんだぞ!お前みたいな地味な奴が見飽きるほど見る事なんてありえないだろ!何様だ!」


あ、なるほど。はいはい、いま理解しました。

こういのってあるよね、ホントの事の方が嘘っぽい事。

うっかりしたわー。


意地はって「本当だもん」とかいっても面倒だから、適当な事言ってごまかすかな。

そう思っていたら、僕を突き飛ばした奴の後ろに、赤い髪をした般若が見えた。


あれ?

次の瞬間、僕を突き飛ばした奴が勢いよく天井に突き刺さった!

「長道様に何をする!あなたたち、長道様に喧嘩を売るならわたくしが皆殺しにしてやりますわ!」


「ビ、ビレーヌ!おちけつ!いや、おちつけ!」


僕が落ち着けだな。

慌てて起き上がってビレーヌを押さえつける。

落ち着け、君は魔王なんだから暴れたら学校が消え去るだろうが!


とりあえずビレーヌを羽交い絞めにして捕まえた。

事態を察したジョニーも慌てて男子とビレーヌの間に割って入った。


「おいおいおいおい、委員長!クラス内で暴力が振るわれて怒るのはわかるけど、あんたもやりすぎだぞ。」


ジョニーはホントいいやつだよ。

さりげなくビレーヌが僕のために怒ったんではなく、クラスの秩序のために怒ったようにフォローしてくれた。

結構頭が切れるんだな。


そこに先生が入ってきた。

いかつい体育教師みたいなおっさん。元冒険者らしい。服はジャージにしか見えないものを着ている。


「おい!教室で何を騒いでいる!みな席につけ。今日から来る編入生がおびえるだろ!」


皆の視線が先生に集まった。

その直後に、先生の隣にいる編入生に注がれる。


長いストレートの黒髪の美少女。

その少女は僕を見つけると慌てた風に走り寄ってきた。

「お兄ちゃん、またビレーヌちゃんを怒らせたの?すこしはデリカシーを覚えなよ。」


僕の妹、里美だった。


ジョニーは壊れたロボットのように首をこちらに向ける。

「な、な、な、長道?お前をお兄ちゃんって呼んだ編入生は、スーパーアイドル里美ちゃんに見えるんだけど気のせいだよな。」


落ち着いたビレーヌを解放しながら、そっとジョニーの肩に手を置く。

「うちの妹、世界一可愛いので有名なんだ。」


そうだ天井に刺さってるやつ、えっと名前忘れたけど、彼を降ろしてやろう。

里美のファンらしいから。

ブランとぶら下がっている両足に抱き着いてズボリと抜いてあげる。

気を失っている。しかし生きているな。


「里美、ちょっと回復魔法使ってくれない?」

「いいよー。」


無詠唱でぱっと回復させてしまう。

さすが勇者。ベホイミ程度一瞬だ。


気絶してたやつは目を覚ますと、いきなり目に入ってきた里美を数秒凝視する。

そしていきなり正座した。


「さ、里美ちゃん。握手してください。」


手を差し出したが、その手をビレーヌが横からバシリと叩き落とした。

「里美様、この男に握手してあげる必要なんてありませんわ。いま長道様を突き飛ばしていじめていたんですから。」


すると里美の表情が曇る。

「お兄ちゃんを突き飛ばしていじめた?」

スーと目を細める里美から、寒々した殺気があふれ出した。


兄がちょっと突き飛ばされたくらいで殺気立つとか、里美も大概に過保護だな。

「里美、突き飛ばしたり口論したりは男子のコミュニケーションの一つなんだからマジにならないの。過保護にされると恥ずかしいから、お前も学校では僕と必要以上の会話禁止ね。」


「ちょ、それはあんまりだよ。お兄ちゃんと一緒に学校に通うの楽しみにしていたのに。」


情けない顔で手を伸ばしてくる里美を無視して、僕は自分の席に座った。

すると、正座しているさっき僕を突き飛ばした奴(名前忘れた)が、正座したままこちっちに向きを変えて土下座してきた。


「さっきは俺が悪かった。だが里美ちゃんに罪はない!どうか学校でも仲良くしてあげてくれ。里美ちゃんの楽しみを奪わないで上げてくれ、お兄さん。」


…こいつ。僕をお兄さんと呼ぶな。

だが、そのファンとしての捨て身の懇願、心に届いたぜ。


下げた頭を上げさせた。

「わかったよ。君のそのファンとしての献身的な姿に心を打たれた。だから僕の今の言葉は取り消すよ。里美の為にありがとう。」

「…お兄さん。」

「お兄さんて呼ぶのは禁止でね。」


里美は嬉しそうに土下座君の手を取って立ち上がらせた。

「ありがとう!お兄ちゃんは一度へそを曲げるとずっと意地はるからどうなるかと思ったよ。君のお陰だね、土下座君。」


「さ、里美ちゃん!そ、そんなもったいない。そうだ、握手してください!」

「うんいいよ。これからも同じクラスだからよろしくね。」


里美に握手してもらって、土下座君は幸せな顔になった。

よかったね土下座君。名前忘れたから、君の呼び名はこれからずっと土下座君で良いよね。

お読みくださりありがとうざいます。

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