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083 そして日常へ

― 083 そして日常へ ―


妹達を連れて教会に帰ってくる。

すると、教会の中にはマリアお母様とジージョ準大司教様が居た。


「マリアお母様!帰ってたんですね。」


駆け寄ると、マリアお母様は申し訳なさそうな顔になった。

「1週間も留守にしてしまいましたね。ごめんなさい長道。しかもとても大変なことになっていたのですね。」


「大変な事って戦争の事ですか?それよりもマリアお母様が居なくて寂しかったです。もうどっか行かないでくださいね。」


「はいはい、長道は甘えん坊ですね。」


微笑みながら僕の頭を撫でてくれた。

ふー、癒される。


妹達もマリアお母様に群がっていったので、僕は一旦お母様から離れた。

そこでジージョ準大司教様と目が合う。


おかっぱ頭で、10~12才くらいの少女にしか見えないが、もう60歳以上のはず。

ジージョ準大司教様は僕の方に歩いてくると、微妙な表情になった。


「マリユカ聖教としては、フレンツ公国から教会をすべて撤退させることにしたんだよ。報復ってやつだね。」

「それって、報復になるんですか?痛くもかゆくもないように思えるんですけど。」


「いやいや、これが中々どうしてダメージが大きんだよね。教会を失った領地は神の加護が無くなると信じられているから、民衆が逃げ出したり暴れることも多いんだよ。支配の基盤が崩れるから貴族としては大損害なんだよ。」


なるほど。


その状況に乗じてデスシール騎馬帝国が攻め込めば、結構簡単に戦争に勝てるかもだな。


そんな事を考えていたら、ビレーヌがジージョ準大司教に駆け寄っていた。


「ジージョ準大司教様!スベルト伯爵家という名に心当たりはございませんか?神殿からスベルト伯爵家に養女に出された子供がいないか知っていたら教えて下さい。」


スベルト伯爵家というのは、ビレーヌの実家だ。

とり潰しになったけど。そのせいでビレーヌは幼くして開拓村で苦労していたんだよね。


懐かしい言葉だったけど、ジージョ準大司教様の顔が、あからさまに歪んだ。

「え、えっと…わたし帰らなくちゃ。じゃ、じゃあねえー。」


シュン!

もっそ動揺しながら目をグルグル泳がせつつ転移魔法で消えていった。


「チッ、逃げられた!」


ビレーヌの舌打ちとか初めて見たかも…

なんか怖い顔になっているビレーヌの肩をそっと抱いた。


「ま、まあ気にしちゃだめだよ。過去のことを知ったら困ることもあるかもしれないでしょ。だったら今の生活の事だけ考えよう。ね。」


ビレーヌは衝撃を受けたような表情になった。

ついで冷静に考える顔になる。


「確かに長道様の言う通りかもしれません。万が一兄妹だったら面倒ですわね。せめて子供ができるまでは過去は詮索しない方が良いかもしれませんね…。」


何言ってるんだ、この9歳児は?

怖いよ。

うん、僕がしっかりしよう。そして早くビレーヌに彼氏を作ろう。

それが一番の平和な結末な気がする。



僕がビレーヌを抱きしめて遠い目をしていたら、メイド姿のエプロン子が僕のお尻を勢い良く叩いた。


「まあ色男!従者の女の子の肩なんて抱いて、長道お坊ちゃまはカサノバ系男子でございますわね。そんな軟派な事をしている暇がございましたら、さっさとお湯に入って綺麗になってきてくださいませ。汚れたままではエプロン子の食事は食べさせるわけにはいきませんですよ。」


パンパン


さらに二回たたかれた。


「エプロン子めえ、お前の食事がめっちゃ美味しいから言うこと聞くけど覚えてろよ。」

「ええ、ええ、覚えておきますとも。このエプロン子、長道お坊っちゃまとの会話は一言一句たがわず覚えてございます。大きくなったら恥ずかしい話で長道お坊ちゃまを強請らないといけませんのですべて覚えておきますです。覚えていろと言われた事を、10年後に後悔させて差し上げます。」

「すいません、お互い不都合な事は忘れましょう。」

「よろしいですよお坊ちゃま。男は小さいことはすぐに忘れるのが素敵でございます。」


ぐぬぬ、エプロン子に勝てる気がしない。

ふう・・・諦めてお風呂に向かうか。はやくエプロン子の食事を食べたいし。


いつものように里美の手を引いてお風呂に向かう。

そういえば、この数日お風呂に入ってないな。

里美の頭をクンクン嗅いでみたら、なんか臭い。


しっかり洗ってあげないといけなさそうだ。

風呂場に着くと、里美は腕を伸ばしてこちらを向く。


「脱がせって事?」

「お兄ちゃんでしょ、そのくらい面倒見てよ。」


納得がいかん暴論だ。

まあ、脱がしてあげるんだけど。


里美の服を脱がしてから、自分も服を脱ぎ浴室に行く。

すぐに里美にお湯をかけて頭を洗ってあげると、里美は上機嫌で鼻歌を歌いだした。


久しぶりのお風呂で気分良くなったのかな。

僕も頭と体を洗う。

里美は楽しそうに僕の背中を流してくれた。

そしてゆっくり湯船につかる。


「里美、この一週間は大変だったね」

「うん、でも楽しかったよ。サビアンさんに再会できたし、ドラゴンに乗れたし、思いっきり勇者の力を試せたし。お兄ちゃんは楽しくなかったの?」

「僕?言われてみるとすごく楽しかったかな。サビアンさんのところの魔族とも仲良くなれたし。」


リラックスしながらお互いの出来事を話していたらエプロン子がズカズカ入ってきた。

「いつまで入ってる気でございますか?食事が覚めてしまいます。さあ、さっさとお風呂から出てくださいませ。遅い遅い、ウスノロお坊ちゃま、お早くお願いいたしますよ。」


すっごくせかされた。

そして、凌辱されるかのように無理やり体を拭かれて、無理やり服を着させれるのだった。

うぐぐ、なんか屈辱なのは何故だろう。


食堂に行くと、デルリカや康子も綺麗になっていた。

この教会には、お風呂が複数あるようだ。


食卓に着くと、家族全員がいる久しぶりに光景になんか嬉しくなる。


「では食事の前に黙とうを」


数日振りなのに、マリアお母様の掛け声が懐かしくてうれしい。

黙とうをしながら、久しぶりに最高神マリユカ様に祈りをささげた。


戦争でこの平和な日々が壊されませんように。


「では頂ましょう」


団らんで楽しく食事をした。


デルリカが挙動不審になりながらニンジンを僕の皿に入れる。

「お兄ちゃんはたくさん食べたいでしょうから、分けてあげますわ。」

「そうかい、ありがとうデルリカ。」


美味く誤魔化せたと思ったのか、満面の笑みを僕に向ける。

可愛いなデルリカ。

誤魔化せるわけないでしょ、騙されてあげてるんだよ。

ほんとデルリカ可愛いなー。


すると康子は僕の好物である、チーズかけポテトを皿に入れてくれた。

「お兄様、わたしのも差し上げます。わたしはダイエット中ですので。」

「康子…あいかわらず優しい子だ。ありがとう。」

康子、まじ素晴らしい。

巨体の厳つい顔で癒し系の笑顔を振りまく自慢の妹。

カッコよくて優しい、僕の可愛い妹だ。


マリアお母様は、そんば僕らを微笑ましそうに見つめている。


美味しい食事に、大好きな家族。

街の外は戦争中かもしれないけど、今はこの幸せをかみしめる。


妹達とマリアお母様。

ずっと仲良く暮らしたい。

この時の僕は、それだけを願っていた。

お読みくださりありがとうございます。

第2部終了。

次回第3部。ここから本編です(汗。

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