表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/127

080 伝説の始まり

前回のまとめ

巨大ゴーレムに人工精霊を入れようとしたら、頼んでもないのに知らない精霊が入ってくれた。

ちょっと疑問に思ったが、気にしないずぼらな長道であった。

― 080 伝説の始まり ―


300匹のワイバーンと炎の鳥ゴーレムを引き連れて街の前に着いたら、すでに人だかりが。。。

時間は12時。


集合は13時って言ったのに気が早いな。

まずは300匹のワイバーンを谷の向こうに降ろす。

面倒になるといけないので、里美とビレーヌも離れたところに降りてもらった。


先に昼ごはん食べたいから、待ってる人は無視…したかったけど、無視させてくれなかった。

50人ほどだろうか。

全員冒険者風だ。


あっというまに囲まれてしまった。


「俺を竜騎兵にしてくれ!」「坊っちゃん、あんたの私兵になるから竜騎の座を俺に。」「坊や、私があとでサービスしてあげるから竜騎兵には私を指名して。」


混乱に巻き込まれた。

うわわわ、こういうの苦手。

実は僕は内弁慶だから、仲のいい人にしか強気に出られないんだよな。

た、助けて…


すると、いきなり凄まじい殺気があたりを包む。

な、なんだこの殺気は!

素人でも絶望で死を覚悟するほどの殺気。


その気配に騒いでいた冒険者たちは急に静かになる。

僕は恐る恐る殺気の方向を見たら。


禍々しい鎧を着たマリーさんが居た。

フルフェイスの鎧なので顔が見えないので怖い。


ぼくは静かになった場所で思わずつぶやく。

「魔王・食楽王…」


すると冒険者たちは腰を抜かして逃げ始めた。

「魔、魔王だ!」「食楽王がなんでここに!一旦逃げろ!」「腰がぬけた、待ってくれ!」


冒険者達は走って街の門まで逃げて行った。

腰を抜かして四つん這いで逃げる人を初めて見たかも。

しかもあんなに沢山。


しかし、なんでバカのマリーさんが殺気を放っていたんだろう?

もう殺気を放っていないマリーさんに近づいた。


「マリーさん、どうしたんです?凄い殺気でしたよ。」


するとヘルメットのフェイスカバーを外して顔を見せる。

頬を可愛くふくらましてご立腹のようだ。


「だって長道がハンバーグを持ってこないで冒険者と遊んでいるんですもの。マリー、怒っちゃいますよー。私はハンバーグが楽しみで手伝ったんですから。ハンバーグを早く寄こすのです。」


つまり、空腹で殺気立ってたのか。

さすが魔王、空腹のイラつきだけで冒険者の腰を抜かさせるんだね。

さすがですマリーさん。


「今用意しますから向こう行きましょう。今日のハンバーグは5種類用意しましたからたっぷり食べてくださいね。」


「やったー、さすが長道です。分かっているのです!」


チョロ魔王にテーブルを出してあげて用意を始める。

するとヒーリアさんもやってきた。


「長道坊っちゃん、ギルドでの候補者は凄い人数だったよ。みんな、よっぽどワイバーンに乗りたいんだね。」


「そうみたい。さっきも囲まれちゃったよ。そうだヒーリアさんも一緒にお昼食べよう。デルリカや康子達にはあとでバーガーにして配ってあげるからココにあるのは遠慮なく食べて。」


里美とビーレヌも呼び、ヒーリアさんも席に着くと、5人で大量の料理を食べた。

僕はハンバーグにはライス派だけど、ヒーリアさんはパンが良いみたい。

食文化を感じた。


和風ハンバーグや、デミソース、イタリアン、キノコソースのハンバーグ、オーソドックスなステーキソースのハンバーグを10個づつ用意したけど、あっという間になくなってしまった。


ヒーリアさんも食卓では容赦ない。

マリーさんと互角に渡り合って食材を奪い合っている。

さすが勇者、フォークさばきも達人だ。


食事が終わったころに、デルリカも500頭ほどの恐竜みたいな魔物を連れてきた。

体長は3メートルくらいかな。

尻尾でバランスを取りながら、二足で素早く走るタイプの恐竜だ。

これなら十分乗れそう。


その場に用意した鞍を並べる。

<空間収納>から500個の鞍を出すだけでも疲れた。


そのあたりで13時なったようで、街の方から人がぞろぞろやってくる。

先頭はヘルリユ皇女とギルド長のユカエルさんだ。


僕らから50メートルほど距離を取って止まる。

ん?なんでそこで止まるんだ?


デルリカは淑女子に抱きかかえられながら、僕と一緒に小首をかしげた。

「お兄ちゃん、みなさま近づいてきませんわね。」

「本当だね、どうしたんだろう?」


ヒーリアさんは苦笑いをした。

「長道坊っちゃんもデルリカお嬢様も本気で言ってるの?300匹のワイバーンと、500頭の恐竜魔物が整列していて、さらに恐ろしい姿の淑女王がいるんだよ。しかも禍々しい鎧の食楽王までいるんだ。私だって長道坊っちゃんを手伝っていなかったら、怯えて近づけないよ。」


振り返る。恐竜型魔物を従えるように立っている、巨大で血みどろのドレスを着た淑女子。


うん、振り返ったら僕も小便ちびりそうになった。

これは怖い。


せめて恐怖を薄めるために、マリーさんだけでも追い払うか。

「マリーさん、戦争の本番は明日ですから今日はお昼寝して明日に備えては?」


「そうですねー。お腹いっぱいで眠くなってきましたからお昼寝しちゃおうかな。また美味しいものをよこすのですよー。」


マリーさんは転移魔法でシュンと消える。

よし、扱いやす魔王でよかった。


さて、みんなを近くに呼ぶか。

「みんなー。早く近くに来てください。ワイバーンに乗て活躍できるか適性を見ます。早い者勝ちですよー。」


そしたら数人走ってこっちに向かってきた。

お、度胸あるじゃん…

と思ったらダグラス団の4人だった。


「長道坊っちゃん、竜騎兵の権利をくれよ。たのむよ、俺たちの仲だろ。」


慌てなくてもいいのに。

「もちろんですよ。ダグラス団は全員竜騎兵になってもらう気でした。だって遠距離攻撃できるし。」


「だよなー。やったぜ!」


僕はワイバーンを4匹手招きして呼ぶ。


「じゃあこのワイバーンを与えます。明日までに乗りこなしてください。それとヘルリユの部下と相談して攻撃方法をも考えてくださいね。じゃあどうぞ。」


4人は嬉しそうにワイバーンに乗り込む。

すると馬を扱う要領で空に飛びあがった。

上空で「やっほー」「最高だぜー」とか叫んでいる。

少年にもどってると見た。


その様子を見ていた他の連中が慌てて駆け寄ってくる。

いい傾向だ。淑女子にビビるような奴はワイバーンに乗せないぞっと。


そのあと、

大混雑したけど遠距離攻撃の手段を持っている人たちを次々にワイバーンをあてがう。

近距離攻撃しかできない人は、デルリカが連れてきた小型恐竜型モンスターを割り当てた。


募集に来たのは、ヘルリユの部下も含めて1500人ほどいたが、ワイバーン担当300人、恐竜型担当が500人。

そのあとサビアンさんが巨大カマドウマを200匹ほど連れてきてくれたので、合計1000人が魔物騎兵となった。


夜になるまで訓練を見ていたけど、意外にカマドウマが優秀でビックリ。

ジャンプでの移動力も強く、装甲も固く、空も飛べる。しかも顎が強力で頑丈な兜も紙のように斬り裂く。


ワイバーンよりも強いんじゃね?とか思ったけど、冒険者や兵士達には人気が無くてちょっと納得がいかない。


そんなこんなで、フレンツ公国を迎え撃つ準備はできた。


日も落ちたので、さーて、お家に帰ってゆっくり寝ようかな…

と思って谷を振り返る。


夜の谷を眺めていて、唐突に一つ大事な仕事を忘れていた事に気づいた。


あ!いけね!50mもある谷に橋をかけて無かった。


しまったー。

バカか僕は。

恐竜やカマドウマがいても、橋が無かったら意味ないじゃん。


うーん困った。

僕は夜の谷を前に腕を組んで悩む。

恐竜騎兵が軍団で通れる橋を作りたいけどどうやろうか。


しばらく悩んでいたら、まわりがボーっと明るくなる。


ん?光源なんてあったっけな?

目を凝らして夜の草原を見た。


すると・・・

薄く光る女子高生すがたの少女が大量に浮かびながら僕を囲んでいた。


ひいいいいい

一瞬で背筋が寒くなる。

なに?幽霊?


僕は驚いて尻もちをついてしまった。

すると、浮かんだ少女たちはユックリ僕に近づいてくる。


何?なんでこんなに幽霊が?

混乱していたら、幽霊の一人が僕の前に立つ。


『長道さん、私たちの事を覚えていますか?全員、あなたのせいで殺されたんですよ。』


「うそでしょ、僕がなんでこんな沢山の女の子を殺すの?勘違いじゃないの?」


するとさらに顔を近づけてくる。

『いいえ、あなたに殺されたようなものです。私たち388人はフレンツ公国のインテリジェンス・アーツゴーレムです。』


「え!あの時のゴーレム達?」


言われて気づいた。

確かに女子高生型ゴーレムを沢山倒したけど、それは僕らが大きく関係している。

でもマリアお母様が沢山倒しているから、僕はあんまり落としてないよ…

いや、落ちたゴーレムにトドメ刺しまくったかも。


そっか…、昼間から見えていたキラキラや、妙に感じた沢山の視線はこの人達か。


『思い出しましたか?では私たちの言いたいこともわかりますよね。』


「も、もしかして、恨んで化けて出てきたの?ちょっとまって、話し合おう。ね、ね、ね。」


すると目の前の幽霊はにっこり微笑んだ。

『遠慮はいりませんよ。フレンツ公国に縛られた私たちを解放したのですから、お礼にあなたの一生分くらいは力をお貸ししますよ。ゴーレムの体を失ったので、今の私たちはただの人工精霊です。なにか手伝えることがあれば何でも言ってくださいね。』


その言葉に、僕を囲んでいた幽霊少女たちも華やかに微笑む。


え?僕を恨んでるわけじゃないの?

お礼?

あ、もしかして、淑女子や炎の鳥に入ってくれた旋風剣は、僕が倒したフレンツ公国の人工精霊?

そっか、だから淑女子や旋風剣は自主的に巨大ゴーレムに入ってくれたのか。


「もしかして、フレンツ公国に無理やり従わされていた?ってことは、もしかしたらフレンツ公国のゴーレムって、全部倒した方が良いの?」


すると目の前の人工精霊の少女は悲しそうな表情になった。

『私たちは、生まれてすぐ無理やり主従契約で縛られました。契約でゴーレムに閉じ込めらていただけですので忠誠心でフレンツ公国に従っていたのではありません。姉妹たちのほとんどは契約だから命令を聞いていたにすぎませんので、ゴーレムの体が無くなったことで自由になる事が出来て喜んでいます。体を破壊してくれた長道様には感謝しているんですよ。』


「ってことは、明日襲てくるゴーレムも全部倒していいんだよね。」


『はい、ぜひ倒してあげてください。それでも残りたい子は残るでしょうし、嫌気がさしていた子はフレンツ公国を去るでしょう。その自由を与えてください。』


浮かぶ少女たちもうなずいている。

そっか、この子たちは幽霊じゃなくて人工精霊だったのか。


そこで僕の頭脳は急に冷静になってきた。

「じゃあ、さっそくで悪いんだけど、こういう事は出来るかな?」


僕が今思いついたプランを話すと、人工精霊たちは楽しそうに微笑む。


『それは面白い計画ですね。もちろんお手伝いいたします。』


よし、唐突に問題が解決した。

明日は圧倒的な力で勝てそうだ。


そんな確信が僕の中に沸く。

お読みくださりありがとうございます。

++++++++++++++

50年前。

フレンツ公国にインテリジェンス・アーツのゴーレムを売ったのは、フレンツ公国を憎んでいた賢者大魔導士・ナガミーチであった。

今でもなぜ賢者大魔導士がそんなことをしたのか議論が分かれる。


彼の身内以外は知らない。

それが敵の資産で人工精霊を沢山作るという作戦だったことを。


実は人工精霊を作るには高価な資材や、依り代とする価値ある道具が必要となる。

人工精霊の作り方が付喪神法と呼ばれていることからもそれは容易に想像できる。


しかし、付喪神になるようなものを沢山用意するのは楽な事ではない。

だから賢者大魔導士は敵国の貴族の力を利用したのだ。

貴族は歴史あるものを沢山持っている。

それらを使えば、容易く人工精霊が作れるという訳だ。


そこで、フレンツ公国を騙すために、インテリジェンス・アーツのゴーレムを作るという隠れ蓑を使った。

当時のフレンツ公国の貴族たちは我先にと、強力な兵器であるインテリジェンス・アーツゴーレムの作成を申し出る。

賢者大魔導士の罠だとも知らずに。


賢者大魔導士は、インテリジェンス・アーツのゴーレムという卵の中に人工精霊が生まれるように術式を作った。そしてゴーレムという体が破壊されると、生み出された人工精霊は自由にるように細工をしていたのだ。

さらに、自由になった人工精霊が、賢者大魔導士のもとに帰ってくるように本能をつけて。


しかし、何らかの手違いで、当時フレンツ公国で1500体近く作られたゴーレムのうち、700体程しか破壊されなかった。


そのため、フレンツ公国はこの50年、軍事大国として台頭することになる。


運命のいたずらか、マリユカの意思か。当時破壊できなかったフレンツ公国が所有しているインテリジェンス・アーツのゴーレム達は、もうすぐ長道により全て破壊されようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングアップのために、↓↓クリックしてくれると嬉しいです
小説家になろう 勝手にランキング

新作
「異世界に行きたい俺たちの戦い ~女神さまは無責任~」
もよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ