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076 紅竜王の縄張り

あらすじ

友人であるヘルリユ皇女が支配する街に、フレンツ公国が攻めてくるまであと3日。

長道はどうにか防衛線を完成させた。

さらにデルリカに支配地をプレゼントしてあげて、ちょっと満足をしてる長道であった。

― 076 紅竜王の縄張り ―


康子が谷の横に食卓を出して夕飯の準備をしてくれていたので、僕らは大人しく席に着いた。

今は蜘貴王サビアンさんがいるので、カマキリメイドたちは甲斐甲斐しくサビアンさんの世話をしている。


そいえば、里美やビレーヌ達はいつ頃こっちに来るんだろう?

携帯念話機を出して連絡してみる。


ぷるるる(呼び出し音)

ぷるるる


ぷちん


『もしもし、里美でーす。お兄ちゃん、元気ー?』

「あ、里美。こっちは元気に大体終わったよ。そっちは大丈夫?」

『うん、こっちも大体元気に終わったぁ。ちょっと手間取ったけど、この山はビレーヌちゃんの縄張りになったよ。支配地っていうんだっけ?ワイバーン達はみんな配下に収まったみたい。』

「凄いなそれ!そうだ、これから夕飯なんだけどどうする?こっち来る?」

『行く行くー。すぐに行くからちょっと待ってて。どのあたりに行けばいいの?』

「谷の南端と湖の間の場所。谷沿いに来れば見つかると思うよ。」

『わかったー。5分くらいで行くよー。』


ブチ


あの子、北の山脈の頂上に居るんだよね。

5分で来れるのか?

浮遊バイクを飛ばしても30分以上かかると思うんだけど。

まあいいや、そのくらいまでなら待っていてあげよう。


「サビアンさんすいません。里美も急いでこっちに来るらしいんで夕食を待ってもいいですか?本人は5分で来ると言っているんですが、もしかすると30~40分くらいかかるかもしれません。」


上品な笑顔でうなずいてくれた。

「構いませんわ。わたくしも里美様とお食事をしたいので待たせていただきます。」

「ありがとうございます。じゃあお茶でも飲んで時間を潰しましょうか。」


人工精霊の高麗こまに頼んで全員にお茶を出す。

サビアンさんはすかさず「まあ、素敵な香りのお茶ですね」とお茶を褒める。

さすが元上流階級、そうやって会話を途切れさせないのですね。勉強になります。


高麗がお茶の説明をしていると、サソリ軍人美女の二人が急に立ち上がった。

「蜘貴王様、すごい勢いで大きな魔物がこちらに飛来してきています。警戒を!」


2人はまだ見ぬ魔物に向けて手を突き出し、魔法で迎撃する体制に入る。


僕も左右の妹を見る。

「デルリカ、康子。一応迎撃準備だけをお願い。まさかとは思うけど味方かもしれないから攻撃は慎重にね。」


僕の言葉にサソリ美女のタリュさん(タリューシャ)が不思議そうにこちらに首を向けた。

「長道殿、飛来する魔物がなぜ味方だと思うのだ?」


「え?だって里美とビレーヌが奪いに行った地域って、ワイバーンとかがいる地域でしょ。だったら里美なら絶対『異世界に来たら竜に乗らなきゃ』とか言って面白がって乗ってくると思うだよね。里美はそういう子だから。」


いうと、サビアンさんもなんか気の抜けたような顔で空を見つめるとクスリと笑いを漏らした。

「たしかにそうですわね。わたくしの知るサトミー様もそういう無邪気さというか、イタズラっぽさのあるお人でした。おそらく…いえ、絶対乗ってまいりますわね。」


言っていると、空に大きな影が三つ現れる。

ワイバーン?

いや、もう一回り大きい。


その上から人が手を振っている。

無邪気な笑顔の里美だった。

楽しそうだな。そうだよねファンタジー世界に来たら竜に乗らないとね。


「やっぱりな。里美ならそう来ると思ったよ。」

僕も手を振り返す。


しかし、サビアンさん達は口をぽかんと開けて見上げている。

どうしたんだろう?

近くにいたカマキリメイドのボレちゃんの肩を揺する。

「どうしたの、呆けちゃって?」


「え?長道殿は驚かないの?火竜種だよ!」

「火竜種?それはすごいの?」

「すごいよ!ワイバーンと火竜種はライオンと子猫くらいの差があるんだから。攻めに行って、ものの数時間で下せる相手じゃないよ。」


たしかに上空のシルエットはいかにもドラゴンという感じで、ワイバーンとは程遠い姿だ。

全長20~30メートルくらいありそう。


でも紅竜王戦で火竜種攻略法をレクチャーしてあったから、あの子達なら抵抗されても勝てるんじゃないかな。


巨大な三頭の竜が湖のほとりに着地すると、その背から4人が飛び降りてきた。

里美、ビレーヌ、ヒーリアさん、タケシ君。

あ、タケシ君?いけね、存在忘れてた。

ごめんタケシ君。頼りになるのに存在が薄い不思議な人だ。


4人は嬉しそうのこっちに駆け寄ってきた。

里美が僕に飛びつく。

「お兄ちゃん、ビレーヌちゃんに縄張り作ったよ。これで北の山脈は私たちの物だね。」


ビレーヌも僕の腰にヒシっと抱き着いた。

「手勢が必要な時はいつでもお声がけしてください。わたくしの魔物はいつでも長道様のものです。」


2人の頭をなでる。

可愛い奴らよ。


「ヒーリアさんとタケシ君もありがとう。暴れてお腹空いたでしょ、夕飯にしよ。」


そして夕食を始めた。

食事をしながら里美は楽しそうに北の山脈攻略の戦いを話してくれた。


まず、ビレーヌが山頂で支配地の宣言をしたら、たくさんのワイバーンが襲ってきたそうだ。

でもビレーヌが空に一発、紅竜王ブレスをぶっぱなしたらワイバーンは一斉にちにひれ伏した。

すると次は4頭の火竜が出てきたけど、全員で一頭ずつ相手取って気絶させたので支配完了したそうだ。


あっけない。

魔王と勇者だけのパーティーの恐ろしさを垣間見た気がした。

あの山脈、軍でも通り抜けられない場所らしいのに、このあっけなさは申し訳ない気さえする。


これで、グロガゾウの街は魔王の支配地に囲まれた街になったな。


北の山脈は紅竜王ビレーヌの支配地。

東の森は蜘貴王サビアンさんの支配地。

南の森は食楽王マリーさんお支配地。

西の谷は淑女王デルリカの支配地。


四方を魔王に支配されているとか、普通に考えたら絶望的な状況の街だよね…あははは。


まいっか。

ある意味面白い街になったし。


夕食の後、デルリカはタケシ君と康子を連れて谷の下に去っていった。

自分好みの帝国を作るためにやりたいことがあるようだ。


ビレーヌと里美も火竜に乗って北の山脈に戻っていく。

ファンタジー何だからワイバーンで竜騎兵部隊を作ると息巻いていた。里美め、欲望に忠実な奴よ。


妹達を見送たあと周りを見渡す。

あら?


ぽつーん。

よく見たら、妹が誰も居なくなっていた。

うーん、なんかアレだなー。久しぶりに妹達と遊ぼうと思ったのに。

チクショー。さ、寂しくなんて、ないんだからね。


さらにサビアンさん達と別れると、もっと寂しくなる。

…街に向かうか。

とぼとぼ歩きだしたら、僕の後ろをダークエルフのヒーリアさんがついてきた。

「長道坊っちゃん、街に戻るのかい?」


「うん、いま街で僕の分身が軍備拡大をしているから合流して作業しようかと思ってます。」


「じゃあ私は長道坊っちゃんのお供をするよ。ぼっちゃんは寂しがり屋だからね。」


あざっす。

ヒーリアさん、わかっていますね。

そっと手をつないでもらって街に向かった。


妹達の陰に隠れて最近は地味なヒーリアさんだけど、いつも一緒に居てくれている人である。

お読みくださりありがとうございます。


次回、ヒーリアの過保護が長道を襲う。

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