表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/127

074 長道の物はマリーの物

― 074 長道の物はマリーの物 ―


突然現れた食楽王・マリーさんに、魔族4人が食事の手を止めて警戒をする。

彼女たちにとっては昨日まで敵だった相手だ、臨戦体勢に入るのは当然だろう。


カマキリメイドは、背中に生えたカマキリの腕を広げて威嚇しているし、軍人美人のサソリの二人は身を低くして、針のついた黒い尻尾をマリーさんに向けて構えている。


僕はそっと4人に、手で「丈夫だから」という動きをしてなだめてからマリーさんを見た。


「おはようですマリーさん。まずは朝食でも一緒にどうですか?今用意しますから僕の隣に座ってください。」

「やった、さすが長道です。」


無邪気にニコニコしながら僕の隣に座るマリーさん。その呑気な姿を見て、魔族4人も一応は戦闘姿勢を解いた。


緊張感が漂っているので、まずは場を和ますか。

「マリーさん、こっちの4人は蜘貴王さん配下の魔族の4人です。僕らの友人なので危害を加えたらだめですよ。」


マリーさんは緊張する4人を軽く一瞥すると、スグに興味をなくしたように食事を見る。

「別にかまいませんよー。それより、食べ物をもう一品くらい増やしてほしいのです。」


図々しいな。まあいいけど。

さらに魚のフライとタルタルソースを大量に出す。

「これをサラダと一緒にパンにはさむと美味しいですよ。僕もこの魚フライのサンドは大好きなんです。」


見本を見せるように、パンにサラダ、ハム、魚のフライ、タルタルソースを挟みかぶりついた。


「うん、うまい!」


そこからは魔族とマリーさんの食べ物争奪戦となった。

争奪戦と言っても、それぞれが必死に手に持てるだけ食べ物をキープしながら食べるだけなんだけど。

なんか微笑ましい。


でも、

20人分くらいの食事が、あっという間になくなった。

美女に囲まれた食卓だけど、食事風景は肉食獣と食事している気分だったよ。


食事が終わり、紅茶にジャムを入れてロシアンティーを出して一息つく。

甘い、甘すぎる…


でも、マリーさんとカマキリメイドは大喜びだからいいか。

みんながお茶を飲んでるうちに先に一仕事終えてくるかな。


「じゃあ僕は魔物の泉を設置してきますんで。」


浮遊バイクを出してまたがる。

魔物の発生源は森の東端にでも作るか。


軽くスロットを回して森予定地の中央に向けて走り出す。

ここからだと5kmくらい先だ。


走っていると、後ろから浮遊バイクがついてきていることに気づいた。

『おや?』


振り返ると、マリーさんと魔族4人がみんな来ている。

そっか、見物したいって言ったから見に来たのか。

面白いものでもないのに…


目的地に来たところで、僕は浮遊バイクを止めてよさそうな場所を探した。

…ま、どこでも良いか。


場所を決め、自在杖を取り出すとガリガリと丸く円を描いた。


<鑑定>でみると『地面に書かれた落書き』となっている。

この概念を原始魔法で『魔物の湧き出る泉』と変える。

そして純化魔法で、地面の魔力脈を探して繋げた。


ボコッ


数分で、円を描いた場所が変質して液体になり、ボコボコと泡をふきだしはじめる。


後ろでサソリ魔族の二人が歓声を上げた。

「おお、すごい!本当に魔物の泉が出来上がったぞ。これはすごい!」


見ていると、泉の中からスライムみたいのが這い出てきた。

うわあ、魔物が生まれたところを始めてみた。

自分でも凄いと思う。


するとマリーさんが不満そうに僕に肩を組んできた。

「長道ー、この泉は小さいですよー。これでは最大でも2~3メートルくらいまでの魔物しか生まれません。泉の大きさを3倍くらいにしましょうよ。そうすればドラゴンとかマンティコアとか生まれて楽しいですよ。」


マリーさんはバカっぽいけど、意外にモノを知っているんでその発言は無視できない。


「マリーさん、もしかしてどんな魔物が生まれるかとか、泉の作り方でコントロールできるんですか?」

「できますよー。泉の大きさや形で生まれる魔物の種類は変わりますからねー。大きい泉ほど大きなものが生まれやすいです。穴が小さいのに濃度が濃い泉だと細長い魔物が生まれやすいです。あと、どこに泉があるかも関係ありますねー。湖の底とかに作ると水生の魔物が生まれますし、高い場所に作ると飛ぶ魔物が生まれます。」


「そうなんだー。マリーさんはバカっぽいのに博識ですよねー。いつも感心してしまいます。」

「あははは、もっと褒めても良いんですよー。」


そうなると、ちょっと欲が出てくるな。

つまりあれでしょ。

僕が欲しい魔物が生まれやすい泉を作っても良いんでしょ。


「じゃあマリーさん。美味しい魔物を生み出しやすい泉のアドバイスしてくれませんか?」


マリーさんの目が少し光る。

「ふっふっふ、そうきましたかー。ふーん、長道はそう来ますかー。でも悪くないですよー。じゃあ長辺2.5メートル、短辺1.5メートルほどの楕円形の泉にしてください。長辺の片方には大きな木を生やして、もう片方には池を隣接してください。そして石の壁と花壇で泉を挟むんです。これでバリエーションのある魔物が生まれますよ。うまくいけばオークやコウベ牛鬼も生まれるはずです。」


「オークはおいしいですよね。コウベ牛鬼というのも聞いただけで美味しそう。了解です、そういう風に作りましょう。」


マリーさんの指示通りに魔物の泉を改造した。


よし、これでこの森は僕の食糧庫だ。


「じゃあ、今から森を本格的に作るんで一旦移動しましょう。」


僕が浮遊バイクですぐに移動すると、5人もついてきた。

テントのある場所まで戻ってくると、僕はスグに純化魔法で森予定地をエネルギーに近い物質に変える。


それから魔力を流して原始魔法の進行を早めた。

視界を確保するため、遠い場所から森になるようにコントロールしているから近くは中々変化しない。

でも魔族たちは5km先の変化が見えるようで、口々に「すごい」「森が生まれている」とか言っている。

魔族、視力高すぎ。


するとマリーさんが僕の横で魔法を使う。

「純化魔法なら私も使えますんで手伝いますよー。あと時間魔法で変化の進行速度が速くなるようにしますねー。」


マリーさんが手伝ってくれると、びっくりするほど早い勢いで変化を始めた。

おおおお、あと3日はかかると思った森作成が、今日中に終わりそうだ。


そうして一日かけて二人で魔法をかけ続けた結果、夕方には見事な魔物の森が出来た。


夕日に照らされた目の前の森を感無量の気持ちで見上げる。

すげー、僕は本当はやればできる子だって信じてた。


思わず独り言が漏れる。

「これが僕の支配地の森か…。」


するとマリーさんが無邪気に僕を後ろから抱きしめる。腕ごと抱き着かれたので身動きができない状態になった。

マリーさんは僕よりも背が高いので、僕の足が地面から離れてしまう。


えっと、僕を抱きあがて何がしたいんだろう?


「長道!この森を私によこすのです。私の支配地にします。この森はいい森です。」

「ええええ!そーりゃなーいよー、マリーさーん。」


「もう決めました、長道の意見は聞きませーん。ここは私の支配地しまーす。」


「くそー、この魔王めー。渡さないぞー。」


じたばたしてみたけど、マリーさんにガッシリ後ろからホールドされていて、まさに手も足も出ない。

「さあ、この森の支配権をよこすのです。よこさないと離しませんよー。」


おのれ。


…ま、諦めて渡すか…


よく考えたら、フレンツ公国の進撃を止めるために森を作ったんだから、マリーさんがこの地を守るなら鉄壁だしな。

なんか悔しいけど諦めるか。


普通だったら殺し合いで縄張りを奪い合うんだろうけど、かなり平和的に奪いに来てくれたし。

殺さないでくれているマリーさんの恩情に従おう。

でも素直に渡すのは癪だな。なんか一矢報いないと。


「わ、わかりました。じゃあこの地はマリーさんに渡します。でも、だったら約束していたハンバーグとピザとパフェ100個はなしですからね。これだけのものを奪っておいて、食べ物までもらえると思ってないですよね。」


「えええ、それは困りますよー。もう美味しいものをたくさん食べるお腹になっているんです。もらえないとマリー悲しいなー。」


「森をとられて、長道も悲しいなー。」


どうだ、これが僕に出来る精一杯の仕返しだ。

お読みくださりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングアップのために、↓↓クリックしてくれると嬉しいです
小説家になろう 勝手にランキング

新作
「異世界に行きたい俺たちの戦い ~女神さまは無責任~」
もよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ