073 ラスボスは気楽にやってくる
あらすじ
魔族の美女。美少女共に森を作る長道であった。
― 073 ラスボスは気楽にやってくる ―
魔族の力を近くで見ると、やっぱり圧巻だ。
持ってきてくれた大木をヒョイヒョイ運んでくれる。
その大木も、よくみると根がついているので力づくで引っこ抜いて持ってきたのだろう。
可愛い顔して、かなりヤバイ。
うん、味方でよかった。
手伝ってくれている魔族は4人。
おかっぱ頭とメイド服が可愛い、カマキリ魔族のボレーヌとダレージュ。
ナチスドイツを彷彿させる軍服を着た、サソリ魔族のタリューシャとサチューシャ。
なぜか僕にとってこの4人の名前は覚えにくい。
なのでカマキリメイドはボレちゃん・ダレちゃんと呼び、サソリ軍人美女はタリュさん・サチェさんと呼ぶことににしよう。
4人が軽々と岩や樹木を配置してくれるので、夕方には大体準備が終わる。
ふう、指示するのに疲れた。
一日外にいるのって疲れるね。
「おーい、ダレちゃんボレちゃん。タリュさんサチェさん。お手伝いご苦労様ー。大体終わったんでお礼に夕ご飯もごちそうするよー。」
大声で叫ぶと、カマキリメイドのダレちゃんボレちゃんが凄い勢いで飛んできた。
比喩ではなく、本当に昆虫っぽい羽を羽ばたきながら飛んできたのでちょっとビビった。
「やったー!」
ズン!
嬉しそうに僕の目の前に着地する。
そっか、カマキリって飛べるんだね。忘れてた。
サソリ軍人のタリュさんサチェさんはさすがに落ち着いて歩いてくる。
「長道殿の食事は森の生活では味わえない美味い料理だからな、有り難くご馳走になるよ。」
戻て来た四人に椅子を出して座らせてから、保管してあった料理を出す。
エプロン子に作り貯めしてもらってあった料理だから、味は保証できる。
オーク肉を使ったトンカツと、キャベツのセット。
さらに我が家自慢の美味しい銀シャリ。
僕が趣味で作った白味噌で作った豚汁。
食後のデザートには、三色おはぎ(餡子、ずんだ、栗餡)に日本茶。
これを13人前ほど出した。
この魔族たちはたくさん食べるから…。
テーブルにそれを並べて、僕は手を組んだ。
「では食事の前に黙とうを」
魔族の4人も当然のように手を組んで黙とうをする。
たぶんサビアンさんは育ちが良いから、普段から魔族たちにも黙とうをさせていたんだろう。
何の疑問も持たずに、自然に黙とうする姿にちょっと感心してしまった。
さて、黙とうも終わったので目を開く。
「では、頂きましょう。」
すると魔族たちは目の色変えて食事を始める。
そんなに急いで食べなくても誰もとらないから、落ち着いて食べなさいな。
なんだろう、与えた食事を一生懸命食べてくれる姿は心が癒されるな。
あっというまに食事がなくなると、カマキリメイドのダレージュが満面の笑みで僕を見る。
「長道殿、美味しかった!このサクサク肉すごく好き!甘い餅もおいしかった。」
「お粗末様でした。」
これだけ喜んでくれると、こっちが嬉しくなる。
そういえば、いつもエプロン子が「あらあら、今日も何も残っていませんですのね。残っていたら無理やり坊っちゃんの口に押しこもうと思っていたに残念でございますわ。」などと毒を吐きながらも、嬉しそうに片づけをする姿を思いま出した。
次からはエプロン子に「おいしかった」って言ってあげよう。
エプロン子の事だから、きっと「あらあら、坊っちゃんもお世辞を覚えましたのね。純粋さが減ってしまい残念でございます。」みたいな皮肉を言うんだろうけど。
そう思っていると、軍人風サソリのタリュさんがお茶を飲みながら体をこちらに向けた。
「食事をありがとう、馳走になった。ところでこの後、どうやってここを魔物の森にするのだ?」
「明日から2~3日かけて魔法で森にするよ。森にしたら魔物が生まれるように魔物を産む泉を設置する感じかな。いや、先に魔物を産む泉を設置して、それから森にするか。」
「そんなに簡単にできるものなら見物していても良いか?魔物の森が数日で生まれるところを見てみたい。」
「退屈だよ?それでいいなら好きに見ていていいよ。」
「うむ、そうさせてもらおう。」
退屈なだけだろうけど、まあ飽きたら勝手に帰るだろうからいいか。
僕は食器を片付けて歯を磨くとテントに向かう。
「じゃあ、回復のために僕はもう寝るから。明日8時ころから始めるのでー。」
まだ椅子に座っている魔族4人を放っておいて先に寝ちゃおう。
1日働いて今日は疲れた。
あと4日くらいでフレンツ公国が来るらしいけど、休息はしっかりとらないとね。
もぞもぞテントに入る。
すると、僕の後かろカマキリメイドの二人もテントに入ってきた。
「この布の家で私も寝るぅ。」
マジか。
まあ、ちょっと大きなテントだから大丈夫かな。
「テントで寝ても、そんなに楽しいモノじゃないよ。」
するとサソリ軍人の二人も入ってきた。
「布程度でも壁があるとずいぶん違うものだな。私たちも試しにここで寝かせてもらおう。」
グイグイ入ってきた。
「え?4人ともここで寝るの?本気で?寝袋の予備はないよ。」
僕の言葉を無視するように、4人はゴロンと横になる。
魔族とはいえ、美少女と美女が一緒のテントとか緊張するんだけど。
しばらく、どうやって追い出そうかと思ったけど、楽しそうにゴロゴロころがる4人を見ていたら、追い出すのが悪いような気になってくる。
あきらめて、毛布だけ出して渡してあげた。
さて寝袋に入って寝るかな。
僕の横で、4人はキャイキャイ騒いでいたけど、疲れがたまっている僕はスグに眠けで瞼が重くなった。
あ、これ我慢できない系の強力な眠気だ。
すいません、貧弱坊やなもので…。
おやすみ。
・・・・・・・・
ものすごい揺さぶられる衝撃で目が覚める。
あ、なんだ?
慌てて目を開いて現状を確認したら…
カマキリメイドの二人が、寝袋を掴んで僕をブランコみたいに揺すっていた。
「長道殿、おきろー、あさだぞー。」
「ちょ、おま、やめて!起きたからやめて!怖いから!」
そしたら笑いながらポイっと放された。
当然地面に背中から落下した。
「ぐえぇ、もっと優しく起こして…。」
「優しく起こしたよ。魔物を起こすときは殴ったりけったりするよ。」
彼女たち基準では、破格の優しい起こされ方だったらしい。
魔族舐めてた。
もぞもぞ寝袋とテントから抜け出すと、まずは朝食の用意だ。
人工精霊の高麗を呼び出す。
「高麗、朝食の準備を頼む。」
『承知いたしました、長道様』
ぱっぱと朝食の準備が済む。
大量のパンにコンソメのシチュー。
サラダとハムやベーコンが大量にテーブルに並んだ。
さすが人工精霊。デフォルトでメイドの能力が高い。
用意された朝食を魔族たちと一緒に食べる事にする。
みなを席につけて両手を組む。
「では黙とうを」
大人しく魔族たちも黙とうをする。
「では頂きましょう。サラダやハムをパンにはさんで食べてね。」
魔族たちはまた必死に食べだす。
この人たちの食に対する情熱は何なんだろうか?
まいっか。
僕もパンにサラダとハムを挟んでモグモグ食べる。
うん、美味しい。
すると、上空からいきなり声が聞こえた。
「長道!私にも食べ物をよこすのです!」
あ、とうとう来ちゃったか。
声の方向を見上げなくても誰が来たかはわかる。
面倒な人に見つかっちゃったな。
声の主は、僕の横に着地してきた。
食楽王・マリーさんだ。
お読みくださりありがとうごじあます。
次回、食楽王が長道に牙をむく。




