071 兄は無力感がつらいです
あらすじ
グロガゾウの街をフレンツ公国の侵攻から守るために、魔王と手を組んだ長道。
魔王と協力して足止めの谷を作るために出発した。
― 071 兄は無力感がつらいです ―
さーて、地形を変形しにレッツゴー。
あと5日でどこまでできるか分からないけど、一応大丈夫ではないかという楽観的な気分ではあるんだよね。
その理由はブレス。
紅竜王と戦った時、初めてブレスの威力を見た。
森を一直線に焼き払い、地面も軽くえぐりながら襲ってきた熱線は本当に恐ろしかったんだよね。
ブレスは、幅5メートルほどの広さで森を地面ごと500mほど撃ち抜いていた。
あの時僕らは紅竜王から300mくらいの離れていたのでどうにか避けられたけど、もう少し近かったらヤバかった。それくらい野太く凶暴な一撃。
だから魔王級がみんなブレスを使えるなら、谷を作るのも案外可能なんじゃないかと思うんだよね。
そんなわけで、僕らと蜘貴王サビアンさんはグロガゾウの街の西側に来た。
街から2kmほど離れた場所に陣取り、谷を作る計画を立てる。
「あっちの北の山岳地帯から山を割って谷を作ろう。南にはどのくらい伸ばせばいいかな。」
蜘貴王サビアンさんはサラリと答えてくれた。
「街の南に魔物の森を伸ばせませんか?ぞうすれば20kmほどの谷で済みますわ。」
20kmか、長いけどやっぱそのくらい必要だよな。
例えば深さ100mくらいにして、亀裂の幅を20mくらいにするとする。
それを20kmね。
大変そうだな。
まあ、どこまでできるか分からないけど、やれるところまでやってみるか。
「魔物の森を南に作ることに関しては僕の方でどうにかしましょう。谷つくりはお願いします。勇者組は北に向けて10km、魔王組は南に向けて10km地面を割ってね。先にノルマを果たしたらもう片方の組を手伝うという事で。もしも土の処理の困ったら、町側に集めて土壁にしてください。」
サビアンさんは、風に金色の髪をなびかせながら上品に一礼してくれた。
「この蜘貴王サビアン、かならずやご期待にお応えいたしましょう。」
サビアンさんは人化を解いて魔王の姿に戻る。
足があっという間に巨大な蜘蛛になった。
蜘貴王
下半身が巨大な蜘蛛なので全長は3メートルほどありそうだ。
変身を終えると叫ぶ。
「蜘糸ブレス!」
下半身の蜘蛛の方の口から、白い糸が大量に吐かれた。
糸…と呼ぶには野太い白い糸。直径1メートルくらいの糸が、ビームのように地面を撫でる。
すると、野太くは吐かれた糸は細かく分かれて、大地をえぐりながら大量に地面に突き刺さった。
距離にして200mくらいだろうか。
「おお、一撃で200mくらい溝が出来ましたよ!」
「ふふふ、長道さん。わたくしのブレスの本番はこの後ですわ。」
ずがああああん!
数秒後、糸が急に爆発した。
「うわああ!爆発した!」
轟音に驚いて身をかがめると、飛び散る土がすごい。
土煙が消えると、サビアンさんが薙いだ地面の200mほどの溝が、さらにエグレてるのが見えた。
幅は10メートルくらい。深さは5メートルくらいだろうか。
一撃でこのこの威力か…。
サビアンさんは身をかがめて、得意げに僕を覗きこんできた。
「これがわたくしのブレスですわ。捕らえて爆発させることもできますのよ。避けられてもさらに爆発で翻弄できますので、素早い敵も爆風で倒せましてよ。」
「これが蜘貴王の蜘糸ブレスですか。味方としては心強いですね。」
さすが蜘蛛、えげつない。
だが頼りになる。
さらにデルリカとビレーヌも、両手を合わせてブレスをぶちかました。
「紅竜王ブレス!」
「突猿王ブレス!」
ズガーーーーン
うわー、地面がさらに吹き飛んだ…
マジか、ヤバイだろコレ。
魔王ヤバすぎだろこれ。
さらに地面が横にも下にも10メートルほどえぐれた。
このペースなら5日で20kmって可能じゃね?
これなら任せても良いか。
次は勇者組を見た。
いつも地味なダークエルフのヒーリアさんが巨大な光の剣を構えていた。
「大地閃光斬!」
ズビャアアア
大地が裂けた。100mほど。
え?魔王のブレス並みに大地が裂けたよ?
ヒーリアさんだよね。なんでそんなに凄いの?レベル300超えの勇者ってここまで凄いのか。
つぎにタケシ君がどこから出してきた巨大な剣を構えて光を振り撃つ。
「ダーと剣子のラブラブアタック!」
ズビャアアア!
うわ、光が撃ちだされて同じくらい大地が裂けた!
っていうか、今の掛け声は何だ?
地味な二人がこの威力なら、康子や里美ならもっと凄いんでは?
康子が剣を振り下ろす。
「火炎閃光斬り!」
里美も光る扇子を振り下ろしている。
「衝撃水よ光り砕け!」
スゴオオオオン
二人の攻撃により、地面が裂けて壁のように土が舞い上がった。
一撃で200mくらいの長さをえぐったぞ。
なんだありゃ。
うん、5日どころか2~3日で20kmくらいできそうだな。
うぐぐ、なんでみんな凄いパワーアップしてるの。
僕なんて、貧弱坊やのままのに…
「じゃあ僕は街の南に森を作りに行くんで、なんかあったら呼んでね。」
僕は逃げるように浮遊バイクで南に走った。
くそ、みんな凄すぎるよ。
お兄ちゃん、無力すぎてちょっと切ない。
くそー、僕だって本当はもっとすごいんだぞ。
浮遊バイクで街の南側に行く。
走りながら考えを整理してみた。
グロガゾウの西から敵が来るので谷を作っている。
東側には蜘貴王が縄張りにしている森がある。
北側には山脈があり、この山脈の上はワイバーンの縄張りなので山越えは不可能。
で、南に魔物の森を作れば、防波堤は完璧になる。
どうやって森を作るか?
それはアテがあるので、まずは現地に行かなくては。
30分ほど走って町の南に着いた。
街の南にある湖だ。
この湖の外側に魔物の森を作れば完璧だろう。
さて、ここで登場するのが久しぶりの四大魔法。
まずは森にする場所を決めるために、自在棒を伸ばして地面に突き刺し、ガリガリと線を引く。
地面に横10km、縦5kmの長方形を描くぞ。
ガリガリガリ
ガリガリガリ
ガリガリガリ
あ、もう疲れてきた。
あかん、もう無理。
僕は貧弱坊やなんだ!無理だよこんなの。
地面に線を描きながら合計30kmも歩くとか無理だと今気づいた。
まいったな。
よし、こうなったらアレだな。
携帯念話機を出す。
「…もしもし、ダグラスさん。今余裕あります?凄く重要な仕事があるんでダグラス団で街の南にある湖まで来てくれます?体力がいる仕事なんで。5分で来てください。じゃ。」
『ちょ、坊っちゃん。それって何を…』
ッブツ。
言う事言ったから通信を切った。
ダグラスさん達の意見は聞いていないから。てへ。
僕は座って待つことにした。
まっていると、スグに退屈してしまった。
まだかなー、つまんないなー
まだかなー、退屈だなー
長道、待ちくたびれちゃったなー
はっ!
今、マリーさんみたいな思考をしてしまった。
危ない危ない、マリーさんみたいな思考をするなんて、自分はバカですって言っているようなものだ。
こわい、マリーさんの影響が怖い。
僕はマリーさんに影響されてバカになってるのだろうか?
これからは友達を選ぼう。
お読みくださりありがとうございます。




