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067 グロガゾウの支配者

あらすじ

第4皇女ヘルリユの支配する街に来た長道たち。

門で商業ギルドと揉めたけど、なんとか街には入れた。

教会に着くと、この街の近くにいる魔王を戦争の防波堤にすることを思いつき、行動に移した。

― 067 グロガゾウの支配者―


さて、教会の目の前にある冒険者ギルドに向かうか。

颯爽と教会の外に出た僕。


そこで…

商業ギルドのギルドマスターであるゴワスとばったり出会った。

あっおー

そういえば商業ギルドも目の前だった。

ゴワスは五人ほど人を連れて建物から出てきたところだ。


だけど僕と目を合わせて硬直する。

僕らはしばらく無言で見つめあった。


先に動いたのはゴワスだった。

「貴様はさっきのガキ!殺してやる!」


杖を振り上げ僕に殴りかかってくる。


でもまあ、こんなヒキガエル顔で、ヒキガエル体形のおっさんの攻撃なんて軽々と避けた。

「おっと。あぶないじゃないかヒキガエル。っていうか、なんでもう釈放されてるんだ?」

「うるさい、だれがヒキガエルだ!お前たち、このガキを殺せ!」


ゴワスは自分が連れている連中に命令した。

男とたちは困惑しながらも剣を抜き僕に歩み寄ってきた。

うそでしょ…そんな簡単に殺しの命令を聞くの?これは驚いたな。


いや、門の目でも御者が迷わず馬で僕を攻撃してきた。

こういう集団なんだ。

だからこいつは横暴でいられるんだな。こんな奴に逆らおうと思う一般人はいないだろうから。


その僕の前にデルリカがスコップを構えて割り込んできた。

「あなた達、お兄ちゃんに襲い掛かるのでしたら容赦なく殺させていただきますわ。」


ヤバイ、止めようとした。

でも遅かった。


デルリカの姿が一瞬消えた。

それほど素早かったのだ。

ヤバすぎるでしょ!


<時間魔法>発動!時間停止!


雑踏の音が消える。

目に入るすべてが止まった。


この止まった時間の中。

まず周りを確認した。

次の瞬間、冗談みたいな光景が目に入ってくる。

剣を抜いた五人の男達の首が宙を舞っていた。


キャアーー

デルリカ殺すの速すぎ!

デルリカ!容赦なさすぎる!


デルリカがあまりに素早すぎたので、男達の首が飛んだことは本人たちすら気づいていないようだ。


僕は急いで宙に舞った首を本人たちの胴体に乗せて能力の移植を行う。

コレクションしてあった<アンデット>の能力だ。5人に叩きつけた。


そして首をくっつける。

死体は物だから錬金練成の能力で修復できる。


五人の首を一応くっつけたけど、首を飛ばした直後だから生きている部分も沢山あってうまくくっつかなかった。


まあいいや、今だけくっついてくれればいい。

あとからボロリと落ちるかもだけど、それはもう知らない。

僕の目の前でさえ死ななければいいから。


止まった時間の中で僕のやることを見ていたデルリカを抱きしめて元の場所に戻ってきた。

「デルリカ、軽々しく人を殺さないで。お願いね。」

デルリカからスコップを奪い取り。むりやり<空間収納>に突っ込んだ。


よし、もういいだろ。

時間を動かした。


雑踏の音が戻り、まわりの人たちも動き出す。

「みんな!教会に戻るぞ!走れ。」


急いでデルリカを抱えて教会に戻る。

みんなも僕について教会に飛び込んだ。


ゴワスたちも追ってきたけど、急いで教会の扉を閉める。

ふう、これで一安心。


ゴワスが外から扉をドンドン叩くが気にしない。

「開けろガキ!殺してやる!扉を開けろ!」


教会の中の人たちが騒ぎ出し、ジャンヌ司祭がやってきた。


「どうしたのですか?」


僕は手早くゴワスとの因縁を話した。

するとジャンヌ司祭は上品な顔に怒りあらわにする。


「あの男はまたそのような非道な!本当に許せません。」

「今、冒険者ギルドに居る仲間を呼びますので、それまで騒がしいのをお許しください。」

「許すも何もありません!私からも文句を言わなければ気がすみません。」


扉を追開けて外に出ようとしている。ジャンヌ司祭は老体なのに無茶するタイプらしい。

いそいで携帯念話機を出してユカエルさんの念話した。


ぷるる、ぷるる、ぷるる


『あ、長道坊っちゃん。どうしたんだい?』

「ユカエルさん、いまゴワスがアンデットを連れて教会を襲ってきているんです。急いで教会警護の依頼を作成してください。あとから商業ギルドと揉めたときのために正式な依頼で助けに来てほしんです。出来そうですか?」


『なんだって!あの野郎!待ってな、40秒で依頼を発行するから。1分だけ堪えておくれ。』

「何分でも大丈夫ですので、正式な依頼でお願いします。」


ぶち

携帯念話を切った。

そのやりとりを見ていたジャンヌ司祭が少し落ち着いている。


「それは魔道具ですか?今ので冒険者委ギルドに依頼ができたのでしょうか?」

「ええ、今日からギルドに来たユカエルさんという人に連絡しましたので、数分で助けが来るはずです。ですのでもう少しだけお騒がせしますが許してください。」


「アンデットを連れていると言っていましたが本当ですか?」

「ええ、間違いなくアンデットでした。フィリアの街に居たときに見慣れているので間違いないです。」


適当なこと言ってしまったが、ある意味嘘じゃない。

フィリアではたくさんアンデットを倒したし。フィリアで殺された司祭もアンデット化させたし。その時、僕の職業にネクロマンサーが増えたし。


すると、ジャンヌ司祭の表情が険しくなる。

「では教会の中に入れてしまいましょう。教会には有事の時に備えて記録用の魔道具が動いています。ですのでアンデットを連れていた証拠を残せます。」


いうなり扉を開いてしまった。

あ!


扉を開けると同時に、隙間から剣が突き込まれてきた。

ジャンヌ司祭、危ない!<時間魔法>で時間停止!

…しようと思ったら、康子がその剣を掴んで止める。


さすが康子さん。さすがです。


「ジャンヌ司祭様、お怪我はありませんか?」

「は、はい。助かりました、ありがとうございます。しかしここまで傍若無人だとは。」


呆然としているジャンヌ司祭を押しのけるように、ゴワスと5人の男たちが教会の中に押し込んでくる。


さすがに、教会の中に居た信者の人達が応戦体勢に入ろうとしていた。

おお、ここの街の人たちはしっかりした人もいるんだな。


ゴワスが僕を見つけて叫んぶ。

「そこにいたなガキ!このまま殺してやる!」


その声を打ち消すように、はるかに澄んだ声でジャンヌ司祭も叫んだ。

「商業ギルドのゴワス!教会への暴挙は許しません!神よ、我が祈りの声に応え給え。死者は死者の国へ!<ターンアンデット>!」


ジャンヌ司祭が手から輝く光を放つ。

その光を浴びたゴワスの部下の5人は、力が抜けたようにその場に急に倒れた。

倒れた衝撃で首が胴から離れて転がる。

う、グロい。


僕はびびって目をそらした。

うん、人間の死体はまだキツイかも。


教会に居た人たちは、その光景にどよめく。

そりゃ驚くよ。

商業ギルドのギルドマスターがアンデットで教会に襲ってきたのだ。これは信仰への冒涜である。


ゴワスはいきなり起きたことに目を見張って驚いているね。

うん、だってゴワスはもちろん、この5人だって自分たちがアンデットになっている事はしらなかったんだから、そりゃ驚くよね。


デルリカの早業と僕の<時間魔法>のコンボは一瞬だったから。


「ど、どういうことだ!なぜこいつらが死体になっているんだ!」


そこにユカエルさんと数人の冒険者が飛びこんできた。

「長道坊っちゃん、大丈夫かい!」


入ってくるなりゴワスを捕らえてくれた。

取り押さえている冒険者は、床に転がる死体を見てギョッとしている。


ユカエルさんへの質問にジャンヌ司祭が穏やかに答えてくれた。

「私は司祭の職を預かるジャンヌと申します。このゴワスがアンデットを連れて教会を襲ってきましたので、私が<ターンアンデット>を使いました。詳細は魔道具で記録してありますので必要でしたらお見せいたします。」


「アンデットで教会に殴り込み?!こいつは正気じゃないね。支部のギルドマスターがそんなことをしたら商業ギルド全体が教会に敵視されても文句は言えないだろうに。とにかくゴワスの身柄はあたし達が責任をもって領主様に届けておくよ。念のためここが商業ギルドから攻撃されないように護衛を置いておくから、やばくなっら遠慮なく増援を要請しておくれよ。」


「冒険者ギルドの友好的な姿勢に感謝申し上げます。」


僕は再び携帯念話機をだす。


ぷるる ぷるる ぷるる 


「あ、ヘルリユ。長道だけどー。ちょっと文句があって電話かけたんだよねー。」

『ど、どうしたんだ。なにか不備があったのか?』


「うん、なんかもう商業ギルドのギルマスのゴワスが釈放されててさ、アンデット連れて教会に僕を殺しに来たんだ。ヘルリユはここの領主だよね。一応撃退したけどさ、これどういう事よ。」


『なんだって!牢に収監されたはずなのになんで…、いや、私の指示が無視されたことは事実か。クッ、すまなかった。私が長道たちをこの街に誘ったのに迷惑をかけてしまい、申し開きの言葉もない。』


「いまからユカエルさん達がゴワスをヘルリユの所に連れて行くらしいから、あとはお願いね。これ以上ゴワスがバカやったら、マリユカ聖教と商業ギルドの全面抗争の可能性もあるらしいからよろしく。」


『わかった、責任をもって厳命することにする。迷惑をかけてすまなかった。』


「まあ、小娘のヘルリユが舐められるのはしょがないよ。年齢的な事だけはどうにもならないからね。あ、そうそう、ついででアレだけど戦争に関してだけどさ・・・」


『うむ、そうだった。急ぎで装備の強化を頼みたいが大丈夫か?』


「大丈夫だよ。ついでにフレンツ公国の部隊を追い返す方法を思いついたから、ヘルリユ達は防戦だけしてくれるかな。」


『長道!また何かしでかすつもりか!お前はどれだけ非常識なんだ。…で、何をする気だ。』


「簡単だよ。この街の東に居る魔王に頼んで、西側に縄張りを移動してもらうんだ。ちょっと説得してみるから、そのつもりで作戦を組んでおいてくれる?」


『え?魔王を説得?おいおい、それは無理じゃないか?』


「大丈夫だよ。言うこと聞いてくれなかったら力づくの説得するから。OHANASHI(物理)ってやつだね。まあ、まかせてよ。だから短気を起こして攻勢に出ないでね。」


『ふぅ…、まったく信じられないやつだな。わかった、長道を信じよう。ありがとう長道。』


「気にしなくていいよ。この街は僕の住む場所でもあるからね。魔王説得の依頼を冒険者ギルドに出してもらっていいかな。デスケント皇子の名前で依頼を出せば実績になると思うよ。」


『なるほど。長道は本当に知恵者だな。うむ、承知した』


「まあ、思い付きだけどな。じゃ、ゴワスの事はお願いね。」


『そちらも承知した。』


携帯念話を切る。

振り返ったら、ユカエルさんや冒険者たちが僕を凝視していた。


「長道坊っちゃん?いま魔王を戦争の防波堤に利用するって聞こえたけど、本気かい?」


「うん、本気ですよ。ユカエルさんにもお願いがあるんですよ。今から魔王の森に関するすべての依頼を停止してください。魔王の説得の邪魔になるので。デスケント皇子から魔王説得の依頼が来たらヒーリアさんに受けてもらってください。ヒーリアさんは強制参加です。ダグラス団にはヘルリユ軍から依頼を取り付けて装備整備に行くように指示してください。」


「あたしは何をしたらいい?」


「冒険者ギルドを完全に掌握してください。とくに東の森に勝手に行く冒険者が出ないようにお願いします。それと、この街の商業ギルドを乗っ取るための準備として、人材を探しておいてください。」


「商業ギルドの人材?潰すんじゃなくて乗っ取るのかい?」


「ええ、そうです。商業ギルドが潰れて困るのは街の人ですから潰すのは気が引けます。とはいえ急ぎます。戦争でお金が沢山動くと商業ギルドの力が増す可能性があります。その前に乗っ取りたいので、二日で支部内の各種役職に適した人を見つけてください。全部追い出して乗っ取ります。」


「人は探せるが…乗っ取れるのかい?」


「手は考えてありますが・・・・それが失敗しても、最悪ヘルリユやマリアお母様の力を借りれば、どうとでもなると思うんです。方法はいくらでもありますので、人材を確実に確保してください。それが一番重要です。」


ユカエルさんの顔が悪い笑顔を作る。

「流石は坊っちゃんだ、やることがブッ飛んでるね。わかった、他の業務を放り出してでも人材はこちらで探しておくよ。これでこの街は長道ぼっちゃの物だね。愉快でしょうがないや。」


そういってゴワスと死体を引きづって出て行ってしまった。

え?街が僕の物?なんで?


僕の頭に?が沢山出ていたのが見えたのだろうか、里美があきれ顔で口を開く。


「お兄ちゃん、なんで困惑顔なの。教会はマリアお母様がリーダーで、冒険者ギルドはユカエルさんがギルマス、役所はヘルリユちゃんが頂点で、街の流通を牛耳る扱う商業ギルドはユカエルさんの息のかかった人間で占めるでしょ。お兄ちゃんはそのすべてにわがままが言えるんだから、この街はお兄ちゃんに逆らえる人が居なくなるんじゃないの?」


ビレーヌが目を輝かせる。

「さすが長道様です!この街は長道様のモノなのですね!」


否定しようと思ったけど、考えたら否定する部分が無い。

うん、たしかに僕の発言力強すぎる。


ビレーヌの頭を撫でて落ちつかせる。

「自分の我侭が言いやすくなるとか思っちゃだめだよ。グロガゾウはヘルリユとここに住む人たちの街だ。みんなを助けることはあっても、僕達がわがままを言ったりしてはダメだよ。そんなことしたらマリアお母様のお顔に泥を塗るようなものだし。だから僕の発言力なんて使う事がないように暮らそうね。」


ジャンヌ司祭が優しい笑顔で僕を見つめる。

「マリアリーゼ司教様のお子様だけありますね。知恵と徳を持っていらっしゃいます。しかも魔王に挑む勇気まで持っているのですから、素晴らしいとしか言いようがありません。長道お坊っちゃんにマリユカ様の祝福がありますように。」


デルリカが嬉しそうにジャンヌ司祭に駆け寄った。

「はい、お兄ちゃんは凄いんです。なんでも困ったことはお兄ちゃんなら軽々解決ですの。ワタクシのお兄ちゃんは世界で最高のお兄ちゃんですわ。お兄ちゃんは良い魔王なのです!」


デルリカ可愛いなー

お兄ちゃんが大好きなんだなー、可愛すぎるぞちくしょう。


でもうっかり、僕の事を魔王とか言うのはやめようね。

お読みくださりありがとうございます。

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