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061 魔王と大天使のなぜなにコーナー

あらすじ

魔王が来たので大天使を呼んだら、大天使は魔王に一撃で失神させられた。

しょうがないので長道は魔王をハグして投げたら、投げ返された。

― 061 魔王と大天使のなぜなにコーナー ―


僕がマリーさんとハグという名の激闘を続けていたら、デルリカや里美もやってきてハグ(相撲)大会になった。


そして最も弱かったのが僕。

納得いかん。いずれリベンジしなくてはいけないな。


大豊姫さんがお風呂から出てきたので、『食楽王』マリーさんの手を引いて大豊姫さんの所に行った。

まあ当然だけど、目が合った瞬間怯えられてしまったけど。


「ひっ!」


マリーさんは怯えた大豊姫さんを素早く捕まえると、無邪気な笑顔のまま肩を抱く。

「さあ大豊姫、私がさっき殴ったことを許すのです!」

「は、はい。許します。」


マリーさんはドヤ顔でこっちを向く。

「許されましたー!じゃあ遊びますよ長道。」


恐喝的に無理やり許させた気がしなくはないけど、これ以上は何も言うまい。

下手なこと言うと、かえって大豊姫さん迷惑かけそうだから。


マリーさんが手を離したので大豊姫さんは僕に歩いてくる。

「長道さん、気持ちの方はもう大丈夫ですか?」


そして気づいた。

「言われてみれば、、、もう大丈夫です。大豊姫さんがマリーさんに殴り飛ばされたのが衝撃的過ぎて、正気に戻ったみたい。」


大豊姫さんは、本当に優しい微笑を浮かべる。

「そうですか。それでしたら私も殴られた甲斐がありました。」

「す、すいません。」

「良いのですよ、長道さんに幸あるのでしたら。」


まるで天使だ。

いや天使だけど。


里美が人懐っこく大豊姫さんの手を取る。

「そういえば、大豊姫さんって大天使なのにか弱いですね。戦闘向けでない天使さんてこと?」


相変わらず失礼になりそうな事をいうんだね。

兄は胃がキュっとしちゃったぞ。


しかし大豊姫さんは苦笑いをした。

「これでも一応、竜の魔王がブレスを撃ってきても『フー』って息を吹きかけるだけで消し飛ばすくらいは強いんですよ。『食楽王』マリーさんが強すぎるんです。あの一撃はこの大陸がクレーターになるくらいの威力がありましたから。」


里美はおもむろに<空間収納>から2メートルはある大型ライフルを取り出した。

「試してもいいですか?」


おい!

里美!

調子に乗らないで!


止めようとしたら、大豊姫さんは笑顔でうなずいた。

「いいですよ、好きに試して見てください。」


その言葉が終わる瞬間、里美は躊躇なくライフル構える。


ドゴン!

里美は迷わず引き金を引いた。


里美いいいいいい!

遠慮しろおおおおおおお!


キン!

しかし、至近距離から発射された弾丸は、大豊姫さんが可愛く立てた小指に当たり潰れて張り付ていた。

大豊姫さん、まったく影響なし。

そよ風が指に当たった程度の表情だ。


うお、すごい。

一応そのライフルは、黒竜王や紅竜王にも致命傷を与えた武器なのに。

たしかにブレスとかも跳ね返しそうな強さだ。


里美はライフルを放り出して、大豊姫さんの小指をまじまじと見る。

「うわー、すごい!本当に大天使さんて凄いんですね!」


そこでマリーさんはニコニコ僕の肩を抱く。

「ですが大豊姫は、四大天使のなかでも最弱ですよー。」


マリーさん…、これ以上大豊姫さんをいじめないで…。


だが今回の事でよくわかった。

やっぱり『食楽王』マリーさんとは絶対戦わない。

絶対絶対戦わない。

もうズッ友だ。だから敵対しないでね。


そうだ、丁度いいからいろいろ教えてもらおう。

「マリーさん、遊びとは言えないかもしれないですが、いろいろ質問していいですか。」


するとマリーさんは大豊姫さんを無理やり自分の隣に座らせると、エアDJみたいな動きを始める。


「はい、今夜も始まりました、魔王と大天使のなぜなにコーナーのお時間ですよー。今夜も質問にお答えするのは、魔王『食楽王』マリーと、」

「大天使、大豊姫でお送りいたします。では最初の質問を受け付けちゃうましょうね。」


なんか唐突に小芝居が始まった。

そして巻き込まれたのに、大豊姫さんも迷わずノリノリに芝居に乗っかってるのが驚く。


っていうか、マリーさんがDJを知っていることが驚きです。

それにラジオ番組風?

完全に日本の文化を知っている?


でもラジオでDJをするというよくわからない組み合わせなのが、詳しくは知らなそうだと推理できる。

その流れを瞬時に理解して、ラジオによくあるサポートのお姉さんポジションをこなす大豊姫さん。


どうしてそんなことを知っているのか問い詰めたいと思っていたら…


マリーさんと大豊姫さんは黙って僕をじっと見る。

あれ?もしかして僕もこの小芝居に参加しないといけないのかな?

もしかして、日本人にしかわからない小芝居だから僕も乗らないとダメなのかな。


うん、空気読んで小芝居に参加しよう。電話を掛けるようなしぐさをしてみた。


「もしもし。ペンネーム黒竜王です。質問していいですか?」


「「どうぞ!」」


この二人ノリノリだ。

マリーさんは意味もなく「ドゥッドゥドゥ」とか言いながらエアDJしているし。

でもちょうどいい、気になっていたことを聞こう。


「魔法とかスキルって、レベルがあがるとポイントでレベルアップできますよね。あれってなんでなんでしょうか?」


マリーさんが無邪気にサムズアップしてきた。

「良い質問ですねー。魔法やスキルはですねー、天使や過去の達人の能力をコピーしたものなのですよ。これを手にいれるという事は回路を脳に無理やり追加するようなものです。でもより高次の回路に接続するためにはより大きなエネルギーが必要になります。ですのでポイントという形で最高神マリユカから純粋な力が贈られるのです。ポイントをスキルや魔法といった枠に放り込むことにより、より高次元な回路への接続を可能にしているのです。」


大豊姫さんが見えないマイクを奪い取るしぐさをする。

「補足をしますと、このシステムを作ったのは賢者大魔導士さんですね。設計図を考えて最高神マリユカ様にお願いしてこの世界に設定してもらったんです。そのため魔法やスキルの取得は世界の法則として定着しました。これは人間が高い能力を手に入れるための近道ではありますが、達人の能力をコピーしてスキル化していますので、あらゆるスキルは努力次第で自力で身に着ける事もできます。」


そうなんだー。

っていうか、また賢者大魔導士が登場したよ。

すごいな、賢者大魔導士。


デルリカが僕からエア電話を奪う。

「ペンネーム、淑女王ですわ。魔王とか勇者という職業って、どのようなキャリアをたどればなれるものなのでしょうか?ワタクシは一気になってしまいましたので興味がありますの。」


確かに。

さらっと魔王にされてしまったから気になってはいただよね。


マリーさんがエアマイクを奪う。

「勇者はキャリアアップではなれませーん。勇者は天界からの指名でなりまーす。人間の意思で勇者は作れませーん。魔王も同じですねー。魔王とは理不尽を許された断罪者です。魔王本人が気づかなくても、全ての魔王は断罪と世界のバランサーとしての使命を持つのです。その使命を果たさない魔王は勇者に討伐されまーす。」


康子がエアマイクを奪う。

「わたくしたちは、あっけなく魔王や勇者になりましたが、これは意味があると考えてよいのでしょうか?」


大豊姫さんがエアマイクを奪った。

「実は意味はありません。勇者や魔王は天界から許可がでればなれますが、実は初めからその許可を持っている人もいるんです。その人たちが望めば魔王や勇者になれます。なぜ初めから許可を持っている人が居るかと言いますと、魔王や勇者になる資格を保留したまま転生した人がいるからなんです。魂に出された許可はそのまま持ち越せますので生まれたときから資格があるんですね。貴方たちはこの先天的な資格持ちです。」


エアマイクを奪い取り、僕は一番知りたいことを聞いた。


「最高神マリユカ様は、僕から記憶を奪い子供として地上に送ったのは、どんな意味があるのでしょうか?」


すると、困った顔で大豊姫さんがエアマイクをマリーさんにわたす。

マリーさんは無邪気な笑顔のまま答えた。


「最高神マリユカの考えることはいつも一つです。この世界が面白くあれ。長道が最高神マリユカに干渉されたのでしたら、役目は一つです。予想外の方向にこの世界を面白くしてほしいんでしょうねー。」


なんか、あっけなく答えが返ってきて、ちょっと驚いた。

そして納得がいく答えだった。


記憶を奪うのは意外性を引き出すためかな。

魔王にしたのは、世界のバランスを面白い方向に整えるため。


そう考えると納得できた。

意外性を産むために、僕は好きに生きていいのだと思えた。


満足いったっところで、大豊姫さんがホタルノヒカリみたいな音楽を歌いだす。

その歌に合わせて、マリーさんがエアDJをしながら手を振りだした。


「今週もみんな楽しんでくれたかな?わからないことがあったらドシドシ質問してくださいねー。お手紙お待ちしていますよ。ではそろそろお別れのお時間です。ではでは、次回の魔王と、」

「大天使の、」

「「なぜなにコーナーをお楽しみに!」」


提供は長道でお送りいたしました。

というわけで、ここからはスポンサーとしてのお仕事。


「じゃあ、夕飯の準備をしましょうか。何が食べたいですか?」


マリーさんが飛び上がってはしゃぐ。


「ハンバーグ!ハンバーグ!しかもチーズインハンバーグをよこすのです!」

「分かりました。じゃあ一緒にエプロン子にメニューをリクエストしに行きましょう。」


「やったー!」


こうして僕らは、今日も魔王を餌付けする。

ハンバーグ程度で喜ぶとは、安い魔王だ。

ほんと、変な魔王だな。

でも見ていると、自然に顔がほころんでしまう。


ほんと、変な魔王だよ。

お読みくださりありがとうございます。

次回予告

「ぼくがかんがえた、さいきょうのまおう」

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