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058 いつから死んだと思っていた?

あらすじ

デスシール騎馬帝国の軍と共に行動していたら、フレンツ公国のゴーレム隊に襲われた。

第一陣は撃退したが、第二陣の襲来でマリアお母様の首が落とされた。

― 058 いつから死んだと思っていた? ―


僕の絶叫に皆がこちらを見る。


ヘルリユ皇女も絶叫する。

「ばかな!マリアリーゼ司教様!」


状況を理解して、パンツ子が慌てた。

「え?まさか私たちが着地した衝撃波で、残骸が司教様を殺した?え、え、え、ど、どうしよう。」


後ろに控えていたシルクレースも動揺しながらパンツ子にしがみつく。

「パンツ子姉さん!司教様を殺したら教皇様が報復に来るのではないか?ど、どうしたらいいのだ?」


大人しそうなリボンパン子もパンツ子にしがみつく。

「姉さん、急いで国に帰って対策を考えないと!教皇の究極聖狂様や大司教の賢者大魔導士様が報復に来たら国が滅んじゃうよ。はやく謝罪して報復を避けないと。」


最強と言われたパンツ型ゴーレムは、膝を震わせながら怯えていた。

状況を理解していない人が見れば、その姿は同情すらひくかもしれない。


だが、


僕にはそんなこと関係ない。


5メートルの大型メイドゴーレムから、マリアお母様の体と頭を抱えて魔法を使って飛び降りる。

マリアお母様の胴体をそっと地面に寝かせると、駆け寄ってきたヘルリユにマリアお母様の頭を渡した。


「お母様を預かってほしい。お顔を地面に置くのに抵抗があるんだ。」

「う、承知した。しかと預かる。しかし長道はどうする気なんだ?」


妹達も駆け寄ってきた。

デルリカと里美は血相を変えて走りこんできたのに、近くに来たら落ち着いてマリアお母様の手を取る。

康子もその手を見てデルリカと里美の肩に手を置いて、小声で何か言っていた。


妹達は落ち着いたものだ。

その落ち着きが少し寂しくもあるけど、今は騒がれるよりもありがたい。

マリアお母様の遺体は、妹達の任せることにする。


ならば僕は報復だ。


僕は<空間収納>から『黒竜王』『突猿王』『紅竜王』のスキルやステータスを取り出した。


あいつらは逃がさない。

だが最強といわれたゴーレムに僕が勝てるとは思えない。


ならば、

魔王の力をもって倒す。


能力の移植は凄い苦痛が伴うが、そんなの今は関係ない。

スキルやステータスを握る僕の右手を見て、ヘルリユがおびえた。


「長道落ち着け!その手に持った恐ろしい暗黒みたいなものはなんだ!どうするつもりだ。」


マリアお母様を殺した奴は許さない!

怒りで涙があふれてくる。

ヘルリユを無視して、僕は魔王のスキルとステータスを自分の胸に突き刺すために腕を振り上げた。


すると、

背後の5メートルメイドゴーレムの背中からマリアおお母様がヒョッコリ顔を出した。


「長道、落ち着きなさい。分身が1人死んだ程度では何も問題ありません。それはあなたが一番知っているでしょう。」


涙をボロボロこぼしながらマリアお母様に顔を向けると、困った表情で降りてくる。

その様子を見て、デルリカが僕の腕に抱き着いてきた。


「お兄ちゃん、首のなくなったお母様の手には分身の指輪がありませんわ。つまり指輪をしている体が別の場所にいるということですわね。食糧庫でお兄ちゃんが気絶した経験で、ワタクシたちはまず最初に分身の存在を確認しましたのよ。慌てるなんてお兄ちゃんはマダマダですわね。」


僕とデルリカが話をしている間に、マリアお母様は自分の死んだ分身を吸収してこちらに来た。


「ごめんなさい長道。驚かせてしまいましたね。大量のゴーレムを操るために分身していたのです。わたくしは無事ですから安心なさい。」


優しく抱きしめられた。


数秒放心して、マリアお母様を抱きしめた。


「おがあざまーーーーー。」


涙が止まらなかったが気にしない。

必死に抱きしめた。


「まあ、困った子ですね。人前で泣いて母親に抱き着くなんておやめなさいな。」

そういいながらも、マリアお母様の声と笑顔は優しかった。


ヘルリユも僕の肩を叩く。

「よかったな長道。」


後ろで里美が僕の服を引っ張る。

「お兄ちゃん!パンツ達が逃げちゃったよ!どうする?」


里美の頭を抱きしめた。

「今は良いよ。今はさ。」


「そっか…。そうだね、今は良いよね。」

里美も僕とマリアお母様を抱きしめた。

デルリカも抱きしめてくる。


康子も僕らをまとめて抱きしめた。


その姿を見て、親衛隊のみなさんも涙ぐんでいるようだ。


ヘルリユは後ろから小声でつぶやく。

「家族の絆か。羨ましいな。」


ひとしきり抱き合った後、僕らは戦場跡を見回す。

親衛隊の死者は無いようだ。


みんな良かった。


マリアお母様のパペットみたいなメイド型ゴーレムのお陰で、女子高生型ゴーレムからの攻撃はほとんど防がれていたようだ。


吹っ飛ばされて、一番死にそうな重症だったデスケント第1皇子がタンカで運ばれてきた。

流石に哀れになり、僕のハイポーションですぐに復帰させる。


それ以外の人も、マリアお母様の回復魔法で次々に傷を癒してもらいだした。


全員の怪我が回復すると、デスケント第1皇子が号令をかけたる。

「このように身を守ることができない場所で再度襲われてはたまらない。まずは無理をしてでもグロガゾウに到着しよう。」


確かにそれはそうだ。

僕らは馬車に乗り込む。


疲れているけど、休んでいい状況じゃないってことは分かる。

僕らはとにかく出発した。


馬車に乗り移動しながら外を見ると、浮遊バイクに乗ったダグラス団の装備がボロボロだな。

結構頑張って居たっぽい。


馬車の中には、ユカエルさんとヒーリアさんもいる。

二人の装備もボロボロだ。

かなり良い丈夫な素材で作ったはずなのにボロボロの装備。安物だったらヤバかったんじゃないだろうか。

良い素材の装甲を与えておいてよかったと心底思った。

装甲が鉄とか安い魔物の素材だったら絶対死んでたな、この人たち。


よかった、生きていてくれて。

この人たちが死んでも、僕は悲しいから。


装甲を見ていたら、ヒーリアさんが僕の前に来た。


あ、胸のあたりを凝視していたから苦情でも言われるのかな?


ヒーリアさんは急に僕の手を取ると涙目で頭を下げてくる。

「長道坊っちゃん、申し訳ない。私は自分を守ることで手いっぱいでマリア奥様を守り切れなかった。本当にすまなかった。」


初めから期待していなかったから…

いや、今それを言うのは酷だな。

困ったけど、なにか言わないといけないのは分かる。


「そう思ってくれるなら、ヒーリアさんも無理はしないでくださいね。僕はヒーリアさんが死んでも怒りと悲しみで絶叫します。マリアお母様を守り切れなかったのは僕のせいだから。だからヒーリアさんは気にしないでください。みんなが無事でいてくれることが一番大事ですから。」


「な、長道坊っちゃん…。」


頭を抱きしめられた。

ヒーリアさんのお胸は大きすぎず小さすぎずなベストバランス。

本当ならとても心地よいはず。

ただ、今は装甲に顔が当たり痛い。


「ヒーリアさん、ハグはいつでも大歓迎だけど、装甲が顔にあったって痛いです。」

「あ、ごめんよ長道坊っちゃん。」


パチっと胸の装甲を外すと、あらためて僕を抱きしめた。

とてもいい感触です。あざーっす。


そんなことが馬車の中であったので、さっきマリアお母様が死んだ衝撃はずいぶん和らいだ。


夕方、


野営の準備をして夕食の準備をしていると、デスケント第1皇子とヘルリユ第4王女がやってきた。

デスケント第1皇子はマリアお母様の前で膝をつき頭を下げる。


「このたびは、我らの巻き添えを食う形であのような事になり、大変申し訳ありませんでした。」


デスケント第1皇子。最初は印象があまり良くなかったけど、節度のある人らしい。

ケジメをつけに頭を下げてきたのだから。


その横で無言でヘルリユも膝をつき頭を下げる。


マリアお母様は二人の肩に手を置いた。

「頭を上げてください。このたびの参戦はこちらの勝手。幸い実質的には人的被害はありませんのでお気になさらないでください。」


神妙な顔でデスケント第1皇子は顔を上げる。

「寛大なお言葉、感謝いたします。ですが、せめて何かお礼とお詫びをさせてください。」


マリアお母様は僕を見た。

「それは長道に任せましょう。ヘルリユ皇女を助けたいと言い出したのも長道です。長道がお考えなさい。」


ヘルリユは半泣きの目で僕を見る。

「長道…、また私を助けてくれたのだな。これで3度目だ。本当にどう恩を返せばいいのか分からぬほど感謝しているぞ。」

「友達でしょ。友達は恩の数は数えないもんだよ。気にしないで。」


デスケント第1皇子は僕の言葉に目を瞑り感慨深そうにする。

「友達は恩の数を数えないか。さすが司教様の子は俗物どもと違い、気持ちのよいことを言う。だが、それと皇家としての礼と詫びは別物だ。長道、今回は私の顔を立ててくれぬか。」


僕はしばらく考える。

「うーん、でしたら兵たちの装備の修理をしますよ。金貨1000枚ほどで。僕が儲かるのでこれで貸し借りなしです。」


デスケント第1皇子は目を潤ませる。

「長道、お前という奴は・・・。むしろ格安での修理ではないか。感謝するぞ長道。」


格安なの?

適当に言ったから考えて無かった。

えっと2000人分の装備でしょ。

あ、たしかに格安だわ。

金貨1枚で2人分の修理って、一人当たり銀貨50枚じゃん。

日本円にしたら5000円。


格安すぎ!

しまった、大失敗。


でもいまさら撤回はできない。

うぐぐ、まじ大失敗。


そう思いながらマリアお母様をみたらニコニコしていた。


ま、いっか。



マリアお母様が無事で、みんなが無事で。それでいいじゃん。

一時はどうなる事かと思ったけど、このまま無事に進めるといいな。


みなが生きて傍に居る。

それだけで幸せだと思い出せた。


それなのに…

次の日、まあ世の中上手く居ないと、また思い知らされるのだった。

お読みくださりありがとうございます。


次回ネタバレ:ハグの嵐。

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