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056 マリアお母様は小林幸子さんクラス

あらすじ

記憶を奪われて異世界に放り込まれた長道。少しは思い出してきたけど、本人が思い出す気が無いので、深くは思い出せなかった。

― 056 マリアお母様は小林幸子さんクラス ―


結局城で3週間も過ごしてしまった。

豪傑皇妃ヘブニア様からは精霊魔法というモノをいろいろ教えてもらえた。

自然を愛し、自然と語らい、誠意と愛情の魔法。それが精霊魔法だった。

思った通り、康子が一番適性があり、精霊にモテモテらしい。

なんだかんだで有意義な滞在だったな。


デスシールからの支払いが終わり、僕らはグロガゾウに向かうために出発の準備をしている。

皇帝陛下とは意外に気が合ったので、今ではヘルデウスさんと名前で呼んでいる。


「長道、今度来るときは酒と女を用意してやる。面白いモノ開発しておくのだぞ。」

「ヘルデウスさん、ヘブニア皇妃に聞かれたら腹パンされますよ。」

「わっはっはっは、ちゃんと周りにいないことは確認したから大丈夫である。」


皇帝陛下、精霊魔術の恐ろしさをわかっていないようですね。

これ絶対、精霊がヘブニア王妃に告げ口しますよ。

僕はそっとゲロ袋を渡した。


「でも、まんがいち腹パンされたときのためにコレ持っていてください。タブン役に立つと思いますから。」

「がははは、だ、大丈夫である。わは、はは、は。」


ヘルデウスさん、だんだん顔が青くなってきていますよ。


「あと、そのゲロ袋は空間収納袋になっていて、少し試作品を入れてありますから後で遊んでください。空飛ぶマントとか、組み立て体験用のパーツ状態のゴレームとか、オリハルコン20%使用の

ロケットパンチとか。試作品なんで感想もメールしてもらえると嬉しいです。」


ヘルデウス皇帝の顔に、子供のような笑顔が戻った。

「ほお、それは面白そうだ。あとで楽しませてもらおう。」


いひひひと笑いあっていると、馬車からヘブニア皇妃と話をしていたマリアお母様の呼ぶ声がした。


「長道、そろそろ出発しますよ。馬車に乗りなさい。」

「はーい。じゃあヘルデウスさん、また新商品が出来たら行商に来ますね。」

「うむ、社交辞令ではなく、本当に楽しみに待っているぞ。必ず来るのだぞ。」

「はーい、それではー。」


馬車に乗ろうとすると、ヘブニア皇妃が僕に肩を組んできた。

「長道、こまったらいつでも訪ねてくるんだよ。いつでも力になるからな。」

「はい、良くしてくださりありがとうございました。開発希望の物がありましたらメールしてくださいね。向こうで作れたら持ってきますので。」

「ははは、楽しみにしているぞ。マリアリーゼ司教や妹達と仲良くして、次もみんなで来るんだぞ。」

「はい、ありがとうございます!」


そして馬車に乗り、出発をした。

最初は最悪の印象だったけど、すごく気が合ったな。


手を振って別れを惜しんだ。


陛下や王妃が見えなくなると、馬車の外にヘルリユ皇女と第4皇女親衛隊と、第1皇子親衛隊が護衛についてくれる。

護衛とか大げさな気がするけど、帰る方向が一緒だからついでだね。


馬車の窓の外から金髪のイケメンが声をかけてきた。

馬に乗る姿はまさに皇子。第1皇子のデスケント皇子だ。


「長道、今後は軍備に関しては世話になるぞ。これからもよろしく頼む。」

「はい、お金さえいただければ、お金の分だけ全力でお手伝いいたします。」


デスケント第1皇子は他の兄弟を押しのけるために、魔王討伐の武者修行に出てきたのだ。

皇家の安定のためにも、ぜひ頑張ってほしいと思う。


なんとも物々しい行進になってしまったが、たまにはこういう賑やかなのもいいでしょう。

グロガゾウまで4日の旅だ。


僕の浮遊バイクなら半日なんだけどだな。

まあ、旅を楽しむか。


パカポ

 パカポ


馬車というのは、本来それほどスピードが出ない。

なので、外の景色はゆっくりだ。


のどかだな。

マリアお母様が僕の隣で外の景色を眺めている。

どこか楽しそうなお母様を見ると、僕もうれしい。


「マリアお母様、グロガゾウに着いたらお屋敷を選んですぐにお風呂を改修しましょう。エプロン子もいますし、僕も錬金錬成ですごくいいお風呂作りますから。」


こちらを見ると、本当に美しく笑った。

聖母のような微笑だった。


「そうれは楽しみです。ではわたしくしは湯船を作りましょう。形や深さには拘りがありますので、これだけは譲れませんよ。」

「じゃあ僕はお湯を作って貯める装置を作ります。シャワーもできるようにしますね。あと壁にはデルリカが好きな毒の花を描いてあげるんです。」

「ふふふ、本当に楽しみですね。早くみんなで楽しいお屋敷を作りたいです。」


楽しそうに微笑むマリアお母様は本当に楽しみそうだ。

よし、頑張るぞ。マリアお母様が望むお風呂を作っちゃるけん。


馬車の外からヘルリユ皇女の声がした。

「マリアリーゼ司教、少しお話宜しいでしょうか。」


マリアお母様は窓を開けて顔出す。

「なんでしょう?休憩ですか?」


外からなのでヘルリユ皇女は叫ぶように会話をする。

「いいえ、先ほどヘブニア妃様から通信がありまして、精霊たちが泣いて、怖い敵が来ると言っていいるそうです。警戒態勢をお願いいたします。」

「承知いたしました。戦闘に入る際は多少はお手伝いいたしますので知らせてください。」

「わかりました。ではよろしくお願いします。」


ヘルリユ皇女は配置に戻っていく。

デルリカは幼女とは思えない戦士の顔をしていた。

「お母様、敵ですのね。ですがこんな王都の傍に何が襲ってくるのでしょうか?」


エプロン子とバケツヘッド子を<空間収納>から出しながら、マリアお母様はデルリカの頭を撫でた。

「フレンツ公国でしょう。あそこはデスシールにはない航空戦力を有していますので、時々王都まで直に攻め込んでくるそうです。このタイミングで第1皇子と第4皇女がここに居すのですから、もしも発見されれば襲って来られるのは当然でしょう。」


僕はぐっと拳を握る。

「なんか護衛してもらったせいで、かえって厄介なことになりそうですね。」

マリアお母様は僕の頭を抱きしめた。


「運が悪いとしか言いようがありません。向こうは極力無関係な教会の人間は襲わないでしょうから、戦闘が激しくなったら離れてしまいましょう。」


僕は眉を寄せる。

「でも、ヘルリユは助けたいです。」

「そうですか。では多少助勢をいたしましょう。我らが本気で攻勢に出れば退いてくれるかもしれませんしね。」


まだフレンツ公国が攻めてきたという保証はないけど、他に候補がいないのでそれで確定っぽい。

そっか、そういえば学校で習ったっけ、デスシール騎馬帝国とフレンツ公国は戦争中だったと。


だからデスシール内では軍部の力が強いんだな。

いやだなー。何で戦争なんてするんだろう。こんなことで命を落としても意味ないだろうに。

嫌だなー。


怯えた僕の顔を見て、ヒーリアさんが拳を握る。

ダークエルフのヒーリアさんが拳を握っても、アイドルのあざといポーズにしか見えない。

「大丈夫だよ長道坊っちゃん。いざとなったら私たちもいるよ。」


「ありがとう、ヒーリアさん。」

あんまり期待していないけど、それは内緒にしておこう。


念のため戦闘用の体勢になっておくか。

<空間収納>から装甲を取り出して服に装着した。

いくつか武器も手元に出しておく。


妹達も戦闘準備を始めた。

今度の敵は国軍かもしれないなら、襲ってくるのは人なんだろうか?

人と戦うの嫌だな。


でも


マリアお母様や妹達を危険にさらすわけにはいかない。

目を瞑り覚悟を決めた。

必要ならば人でも殺す、と。


馬車の外を見ると、兵士たちは馬の上で器用に戦闘準備をしていた。

騎馬戦主体のデスシール軍にとっては、服に装甲をつける自在装甲の戦闘服や、タスキ型の空間収納バッグは思った以上に相性が良いようだ。


いざという時ように、僕は<空間収納>から出した浮遊バイクで馬車から飛び出す。


戦闘準備完了だ。


すぐに人工精霊の高麗こまが叫んだ。

『長道様!敵が空から来ます。数は50。インテリジェンス・アーツ・ゴレーム隊です!』

「わかった、ヘルケント第1皇子とヘルリユ皇女にも伝えてあげて。」

『承知いたしました。』


インテリジェンス・アーツ

それは、意思を持った兵器。

50年前まではインテリジェンス・アーツの製作法は、ロストテクノロジーだった。

だが、天才・賢者大魔導士が再び開発したため世界中に急増したのだ。


って、また賢者大魔導士ですよ。

ほんとこの人、めちゃくちゃだなあ。


で、その代表格がインテリジェンス・アーツのゴーレム。

この世界で人が扱う事が出来る三大最強兵器の一角だ。


そしてフレンツ公国は、インテリジェンス・アーツのゴーレムを最も保持する軍事大国。

832体も保有している。

圧倒的な戦力で、この大陸ではデスシール騎馬帝国とはライバル関係。


5体いれば魔王も倒すと言われたインテリジェンス・アーツのゴーレム。

それが50体もくるのか。


過去に、自力でインテリジェンス・アーツのゴーレムを破壊することができた人間は8人だけ。

それ以外の人間が剣や魔法でインテリジェンス・アーツのゴーレムを倒した記録は無い。


通常、インテリジェンス・アーツのゴーレムを倒すには、インテリジェンス・アーツ・ゴーレムか、大型ゴーレム、もしくは上級召還で迎え撃つしかないと言われている。


その最強兵器の一角が50体も向かってきているのか。

これは危険かも。


「全体止まれ!ここで迎え撃つぞ!」


ヘルリユ王女の声が響いた。

軍はスグに前進を止めて陣形を作る。


すると、里美からスマ子が飛び出した。

いつもの半透明な体じゃない。

実体がある。


「この旧式の体でどこまで出来るかわからないけど、里美ちゃんはウチが守るしかないっしょ!ウチは世界で3番目に作られたインテリジェンス・アーツのゴーレム。ベテランだからね!」


スマ子の周りに銃器が大量に浮かんで追従してくる。

うわ、スマ子って本当は凄いんだ。


親衛隊がざわめいた。

まるで他人事のように僕もざわめきに参加してしまった。

スマ子って、インテリジェンス・アーツのゴーレムだったのか。


デスケント第1皇子は僕に詰め寄る。

「長道!なんでこっちにもインテリジェンス・アーツゴーレムがいるのだ?」


溜息が出た。

「僕が聞きたいです。まさか妹がそんな良いものを持っていたとは。」


「長道、これはありがたい。少し希望が出てきたぞ。」


そこにエプロン子が、大量のメイドゴーレムを率いて現れる。

「あらあら長道ぼっちゃん、このエプロン子もゴーレムだということをお忘れでございますか?そのお年でボケてしまわれたとはお可哀想に。オシメのお世話はこのエプロン子にお任せくださいませね。」


聖騎士人形をを率いたバケツヘッド子もやってきた。

「私の剣に掛けて皆様をお守りします。私もインテリジェンスゴーレムの端くれ。遅れは取りません。」


なんか、うちの戦力がやる気満々なんですけど。


マリアお母様が馬車の上に立ち上がった。

「ふふふ、ではわたくしも頑張ってしまいましょう。時々本気を出さないと勘が鈍りますしね。」


マリアお母様は空に手を突き上げる。

すると空中に大量の魔法陣が現れた。


100?いや1000くらいありそうだ。

尋常ではない魔法制御能力。


空中の魔法陣から、人と同じくらいの大きさのパペット風のメイドが現れる。

全ての魔法陣から一体出てくる。


空に浮かぶゴーレムで地面が暗くなるほどの量。


顔が無くて関節もパペットみたいなゴーレムだけど、この数には圧倒される。

そして何故か全部メイド型。


最後に5メートルくらいのメイド型ゴーレムが現れて、そのゴーレムがマリアお母様を肩に乗せて空中に浮かんだ。


「わたくしのゴーレムは、性能面でインテリジェンス・アーツゴーレムには劣りますが、この数でしたら多少は対抗できるかと。わたくしが敵ゴーレムの進行方向を限定いたします。他の皆さんはバケツ子達が止めを刺すまでの時間稼ぎをお願いいたします。」


デスケント第1皇子は、そんなマリアお母様を見上げてゴクリと唾をのむ。

「これが、命無きメイド軍を操る『人形司教』マリアリーゼ司教様か。噂で聞くよりもはるかに凄まじいな。」


僕も唾をのんだ。


大量に宙に浮くメイドゴーレムを背景に、微笑みながら空に浮かぶマリアお母様をみて納得がいく。

自分の子供が魔王や勇者になっても動じない訳だ。圧倒的過ぎる。

確かに魔王の母として相応しい女性だったのだ。


なんてこった。

マリアお母様のラスボス感がマジ半端ない。

お読みくださりありがとうございます。

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