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055 愛情を感じる幸せ

前回までの展開。

デスシールの王城の中を、適当にフラフラしている。

― 055 愛情を感じる幸せ ―


お城の訓練場で、僕は康子と剣の練習をしていた。


「お兄様、相手の剣に集中しすぎてはいけません。全体の動きを把握してください。」

「わかった、努力する。」


カーン

 カーン


ヘトヘトになったところで休憩にする。

康子は、タオルと飲み物を差し出してくれた。


キャ、さり気ない親切がイケメン過ぎる。

ありがたく受け取る。


飲み物を飲んでいると、康子は朗らかな笑顔で僕を見た。

「お兄様、武道の練習はお嫌いでしたのに急にどうしたんですか?」


「康子よ、デルリカも里美も大きくなったら美人になるぞ。」


「?はい、そですね。」


「バカな貴族とかがデルリカに無理やり言い寄ってきたり、キモデブな男が里美をストーカーしたりしたら全部倒すぞ。だから今から多少は頑張らないとね。」


すこしポカンとしたあと、康子は上品にクスクス笑いだした。


「ふふふ、お兄様ったら気が早いですね。デルリカお姉さまにはタケシーさんが居ますし、里美なら自力で殴り倒しますから大丈夫だと思いますよ。」


言われてみればその通りかも。

「確かに。よく考えたら上位の魔物でも殴り殺す子たちだもんね。そっか、僕は頑張らなくてもいいんだ。なんか安心した。あ、でも康子を守らないと。」


「ふふふ、それこそ一番必要ありませんよ。私は女の子の方にモテますから。」

「確かに。っとなると、康子の傍をいつもウロウロしていれば僕にもハンターチャンスってことか。」


「それはおやめになった方がよろしいかと。ビレーヌちゃんが魔王になりそうですから。」


なんとなく空を見上げた。

「それは大丈夫でしょ。9歳くらいの恋慕なんて幻みたいなものだもの。すぐに僕より好きな相手を見つけて『もう長道様の従者やめます。退職金ください』とか言い出すと思うよ。」


康子は何とも言えない悟ったような目をした。

「ではビレーヌちゃんが何歳になったら本気で相手をします?」

「うーん、17歳くらいかな。JK年齢とか胸が熱くなるよね。」


康子は本当に楽しそうに微笑んだ。

「あと8年ですか。楽しみです。」

「ま、それはその時に考えるよ。よし、休憩もしたし、もう一本頼める?妹達を守らなくてよくても、マリアお母様は守らないけないしね。」

「そうですわね。では、マリアお母様の為に訓練いたしましょう。」


そしてまたしばらく剣の稽古をつづけた。


一時間後。


ボロボロに疲れた僕は、康子に抱えられて部屋に帰る。

「お兄様、本当に回復魔法を掛けなくていいのですか?」

「うん、魔物との戦いでは回復する暇もない事があった。だからたまには、こういう苦痛に慣れておこうかと思ってさ。黒竜王の戦いのときは、疲れて動きが鈍ったところで殺されまくった。あの時疲れても根性でソコソコ耐えられれば、もっと頑張れた気がする。だから今日は回復魔法無しでいたいんだ。」


「なるほど。お兄様、ご立派なお考えです。」

「ありがとう、康子。」


ソファーに座らせてもらってふと気になった。

「ねえ康子、そういえば妹達はみんな仲いいのかな?」

「どうしたんですか?とても仲はいいですよ。」


僕は腕を組む。

「そうだとは思ったけど…。なんか僕の記憶の中ではみんな僕に話しかけてくるけど、妹同士の会話ってあんまり聞いたことなんだよね。里美はうまくやれている?」


すると思い当たるフシがあるのか、康子は何か納得した表情になる。

「言われてみれば、お兄様がいる時はお兄様とばかりお話している気がいたします。ですがお兄様がいないときは、私も里美ちゃんもデルリカお姉さまに甘えていますよ。特に里美ちゃんは私にも甘えますので、比較的スキンシップはとっているかと。」


「つまり里美は、みんなに甘えてるわけか。甘えん坊め。」


康子は凄く優しい顔で僕を見ていた。

「お兄様は、いつも家族を心配していますね。気にかけていただきありがとうございます。」

「だって好きなことが気になるのは当然でしょ。」


そこで、デルリカと里美がやってきた。

「お兄ちゃん、稽古でお疲れでしょうから、甘いものを持て参りましたわ。」

「お兄ちゃん、これ食べたらお風呂入ろう。背中流してあげるよ。」


可愛いな、うちの妹達は。

気が利くじゃないか、こんちくしょう。


「二人ともありがとう、助かるよ。」


デルリカが持ってきてくれたのは茶饅頭。渋いチョイスが嬉しい。

お茶と一緒に食べる茶饅頭最高。


…でもこれ絶対、僕らの影響だよな。


つい忘れがちだけど、康子も里美も高齢者からの転生だし、その里美がお兄ちゃんと呼んでいた僕はさらに高齢だったはず。


その影響で、デルリカも高齢者の好みに近くなったのではと思うと怖い。

今度から、できるだけナウでヤングな食べものをチョイスして、デルリカにも年相応のお嬢さんになってもらわないとな。


甘いものを食べ終わったら、里美に手を引かれてお風呂場に。

僕ら家族にあてがわれたお風呂場は、結構広かった。

銭湯くらい。


里美に手を引かれてお風呂場に来たとき、僕だけお風呂に入るのかと思ったけど、みんな服を脱ぎだした。

まあ、ついでだしそうなるか。


お風呂に入ると、すでに誰か入っている。

あれ?


みるとマリアお母様だった。

「あら、みんなで来たのですね。大きなお風呂は久しぶりですからゆっくり入りましょう。」


ちなみに、マリアお母様は長湯だ。

そのマリアお母様がゆっくりお風呂に入ろうとか言うと、すこし危機を感じる。

時々一緒に入ると、マジでのぼせるから。

でもいいか、マリアお母様だし。


ぎゃあぎゃあ騒ぎながら体を洗ってから湯船につかる。

マリアお母様は楽しそうに僕らを見ていた。


「グロガゾウではお風呂の大きなお屋敷を購入したいですね。長道が沢山稼いでくれたおかげで贅沢が出来そうです。お風呂が大きなお屋敷が無ければ、改装して大きなお風呂を作るのもよいかもしれませんね。」


僕はガッツポーズで気合アピール。

「まかせてください。マリアお母様はお風呂が好きですから、すっごっくいいお風呂に改装します。」


「ありがとう長道。楽しみです。貴方には助けてもらってばかりで申し訳ないですね。」


「何言ってるんですか!マリアお母様に贅沢をしてもらうために錬成を始めたですから、これで良いんですよ。」


「ほんとうに嬉しいです。グロガゾウに着いたら、またみんなでお風呂に入りたいですね。」


「はい。」


みんなでお風呂に入るとか、そういつまでもできる事じゃないから、グロガゾウに着いたらかならずやろうとおもう。

僕が男の子だから、そういつまでも一緒に入ることはできないから。

やれてあと1年くらいだろうか。


寂しさを感じた。


そんな僕の肩を誰かが叩く。


「寂しそうな顔していますよー。家族団らんではもっと楽しそうに笑うものですよー。」


振り返ったら、

子供『食楽王』マリーさんがいた。

タオルを頭に乗せて。


「なんでここに居るのマリーさん。帰ったんでは?」


すると腕をバタバタさせて怒り出した。

「なんで長道は私を追い出したがるんですかー!マリアにご一緒にどうぞって言われてお風呂に入ってたんです。先に入ってたのはマリーの方ですよー!しかも気づいていないとかどういう事ですか!」


あれ?いたっけ?

「どこにたんですか?」

「お湯に潜って遊んでいましたよー!」


パン!

「わかるかーーーい!」


思わずツッコミを入れてしまった。

おそるべし魔王『食楽王』。魔王なのにツッコミを誘うとか高度すぎるだろ。


しかし、ツッコミを入れらたことをまったく気にしていないのか、先ほどと同じように腕をバシャバシャ振り回して騒ぐ。

「私に気づかなかった失礼な奴に謝罪を要求するのです。賠償としてフルーツ牛乳を要求するのです!」

安い賠償だな。

まあいいけど。


「分かりました、マリーさんの分も用意するように頼んでおきます。」

「やったー。許す。」


そのあとお風呂から出たら、『食楽王』マリーは服も着ないで腰に手を当ててフルーツ牛乳を一気飲みしていた。

できたら大人の体の時にやってもらいたいな。


そのあとも、いつまでも裸でウロウロしていたので、体を拭いてあげて服を着せる。

なんで僕が、魔王の面倒を見ないといけないのだろうか。

本当に無意識に面倒を見てしまう。自然に人を従わせるとか、覇王の威厳という奴か?

…、いや違うな。妹達と同じに見えてしまうだけだな。恐るべし『食楽王』。


里美もタオルをもって近づいてくるので髪の毛を拭いてあげる。

さらに、熱風の魔法で髪の毛を乾かす。

サラサラだ。里美の髪の毛はサラサラ。

アイドルの髪の毛だね。


さて。

服も着たし行きますか。

僕はマリーさんと手をつないで城門に向かう。

これ以上ウロウロされたはたまらないから、見失わないように手をつないだ。


逃がさんぞ。

確実に城の外に追い出すのだ。


妹達も倒しそうにワイワイついてきた。

デルリカも無駄に手をつないでくる。


可愛いなデルリカ。


城門に着くとマリーさんは楽しそうに手を振りながら去っていった。

「長道ー。また遊びましょー。」


不吉な言葉を残して去らないでほしい。

関わりあいたくないんだけど。


マリーさんを離したので、空いた手で里美と手をつなぎ部屋に帰った。


その夜、

何故かすっごい甘えたい気分になったので、マリアお母様のベッドにもぐりこむ。

マリアお母様の隣で寝るのって童心に帰るんだよね。

こういうの良いなあ、甘えたいと思ったとき甘えさせてくれる人が居るって、忘れていた幸せだ。

子供の幸せをかみしめて眠りについた。


ベタ甘えんぼう、それが僕の正体さ。わっはっはっは。

お読みくださりありがとうございます。

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