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051 皇妃も仲間に

あらすじ

魔王討伐の褒章をもあるために城に来て、ヘブニア皇妃に圧倒された長道。

しかし、気に入られてしまった。

― 051 皇妃も仲間に ―


褒章式の後、国家から出されていた魔王討伐クエストの完了を証明するため、魔王の死体が見分された。


紅竜王であることが確認されると、次は魔王の死体の買い取り交渉だ。


これほどの大物の竜の死体は、資材として価値がかなり高い。

でもダグラス団たちは、頑なに「これは長道坊っちゃんのモノなので」と売るのを拒否してくれた。

売るよりも僕の手元にある方が、役に立つし金になると知っているからかな。


そうしてひと段落すると、ダグラス団たちは皇帝のパーティーに呼ばれて別行動になる。

僕ら家族はヘブニア皇妃のお茶会に呼ばれた。


しばらく話をすると、当然というかなんというか…

ヘブニア皇妃は康子をめちゃくちゃ気に入ったようだ。


「康子、あんたは理想の皇妃だよ。どうか私のバカ息子の嫁に来てくれないかねえ。康子が嫁なら第1皇子デスケントを皇帝にしても安心だからさ。」

「もったいないお言葉です。ですが私はデルリカお姉さまと一生過ごすつもりでおりますので、そのお話はご容赦を。」


康子は危なげなく、婚約の話をサラサラと避けているな。

さすが、康子。何をやっても安定の康子だ。


デルリカはそんな康子の頭を撫でている。

小柄なデルリカが、大柄な康子の頭をなでる姿は姫と忠実な騎士のようだ。


意外にもそのあと、ヘブニア皇妃に懐いたのは里美だった。

「なんでヘブニア様みたいな豪傑の息子が、そんなに軟弱なんですか?」


懐くのはいいけど遠慮しようね。こっちの身がすくむから。

だが無礼な里美の言葉を気にしないでカラカラと笑う。


「あははは、そういってくれるのは里美くらいなものだよ。あれでも本人は強いつもりだから笑えるだろ。城内ではみなが遠慮して一本譲っていることにすら気づかないヤツだ。私も口を出したいんだけどね、あれの母が私に口を出させてくれないのさ。私の子は、第二皇女と第五皇子なんだ。面倒な事だよ。」


妾の子が第1皇子で、正妻の子が第2皇女と第5皇子か。確かに面倒くさい。


里美はさらに食って掛かる。

「だったらヘルリユちゃんが殺される理由はないんじゃないの?蚊帳の外でいいじゃん。」

ヘブニア皇妃は寂しそうな表情になる。


「そのとおりさ。それでも第一皇子デスケント派にとっては怖いんだろう。ヘルリユは軍部から絶大な支持があるからね。だからデスケント派は皇帝をうまく誘導して殺そうとしたのさ。それのせいで『魔王殺し』の箔をつけさせちまったんだから皮肉な話だよ。長道のせいでな。」


「たしかにお兄ちゃんのせいだね。だからお兄ちゃんに考えてもらえばいいよ。困った時はお兄ちゃんに頼れば大体なんでも、どうにかしてくれるんですよ。」


その場のみんなが僕を見た。

え?僕に何を期待しているの?

ぼくは13歳の小僧だよ?


デルリカが僕の腕に抱き着く。

「お兄ちゃん、ヘルリユさんの為に何か考えてください。」


里美も僕の腰に抱き着いてきた。

「お兄ちゃんならできるよ。大丈夫、お兄ちゃんは凄いから。私知ってるから。」


康子もそっと僕の前で膝をつく。

「お兄様、わたくしもお兄様が何でもできる人だと知っております。私の力でよければお手伝いもいたしますので。」


妹達よ!

いつのまに僕に対してそんなに過大評価するようになった!

無理でしょ。皇位争いに僕の力とか無意味でしょ。


でも妹達の信頼もうれしい。

でも無理だ…


へブニア皇妃は感心したような目で見てくる。

「ほー、やっぱり長道なら名案が出せそうなのかい?ならば是非お知恵を拝借したいねえ。」


おい皇妃!あんたまで何言い出すの!

僕はマリアお母様に助けを求める視線を送ると…


「これも何かの縁です。長道、何とかしてください。」


「マリアお母様まで…。ぼくが13歳のガキだという事を忘れていませんか?無茶振りにもほどがありますよ。まあ、歴史で習った話をヒントにするのでしたら、50年前のグルニエール王国の英雄王の故事をまねるのがいいかと。」


ヘブニア皇妃の目がギラリとした。

「…続けてくれ。」


「英雄王は勇者と共に魔王を倒したことで絶大なカリスマを得たといいます。ヘルリユと第1皇子を組ませて魔王討伐させるのが楽ちんかな。ヘルリユと組ませるのは、軍を統括するためです。それで功績をすべて第1皇子のものすれば可能性はあるかもしれません。魔王討伐が成功すれば…、それ以後は軍部も第1皇子に従うでしょうし。そして殺し合いを避けるために、早くから第5皇子を公爵に落として宰相にする教育を行えばよいかと。」


「姫たちはどうする?」


「ヘルリユは第1皇子としか戦略について話をし無くさせて、第1皇子がすべての指揮を執っているように見せたいですね。そうしたら第1皇子の信頼が増してヘルリユは軍部の後ろ盾を失い王位争いから外れます。早々に王族や有力貴族以外の婚約者を決めてしまうと良いと思います。第2皇女、第3皇女も早々に婚約者を決めた方が良いですが、こちらは有力者と結ぶのが良いかと。」


「なんでヘルリユは有力者と結ばせてはダメなんだ?」


「軍部の支持というのは想像以上に厄介です。ですので一度でも軍部の支持を得た人物というのは、ライバルからしたら恐ろしいものです。軍事力というのは常に一発逆転の可能性を持っていますからね。他の皇帝候補が安心できるほど力を奪わないと、本人の意思と関係なく担ぎ上げられる可能性がでます。冒険者に落とすか教会に入れるかくらいの思いっきり良い判断が必要でしょう。」


ヘブニア皇妃は驚いた顔でマリアお母様を見る。


「マリアリーゼ司教よ、この子は賢すぎないかい?うちの宰相に招きたいくらいだよ。」

「ふふふ、自慢の息子でございます。」


ここでデルリカが不思議そうに尋ねた。

「そういえば魔王って、そんなに沢山いますの?ワタクシが知るだけで、もう3体死にましたわ。」


ヘブニア皇妃はデルリカを抱き上げて膝に乗せた。

「デルリカ、本来魔王は10年に1体くらいしか生まれないものなんだ。だが500年に一度、魔王が大量発生する時期がある。それが今なのさ。神殿の信託によると16体もの魔王が大陸を暴れていて、国々は再び疲弊しはじめているそうだ。だから最低でも我が国軍も2体くらいは倒さないと国としても示しがつかないところなんだ。」


ニッコリ人形のようにデルリカは微笑む。

「では倒すべき魔王はあと9体ですわね。」


その言葉にヘブニア皇妃がギョッとした。

「精霊と同じことを言うんだね。なんであと9体だと思うんだい?」


「はい、「黒竜王」「紅竜王」「突猿王」の3体は死にました。「二代目黒竜王」「小紅王」「淑女王」の3体は人間の味方の魔王です。「食楽王」は人の文化に依存しておりますので人を亡ぼしません。ですので残り9体ですわ。」


流石に豪傑のヘブニア皇妃も言葉を失う。

「なんでそんなことを知ってるんだい?デルリカは何者だい?」


すると、幼女とは思えない病んだ悪魔の微笑を見せた。

「秘密にしてくださいませね。ワタクシが『淑女王』、お兄ちゃんが『黒竜王』、従者のビレーヌが『小紅王』ですわ。」


言っちゃったよこの子!

今凄く油断していた!

まさか言うとは思わなかったもん。


あうあう。


すると涼しい顔でマリアお母様は話を引き取る。

「わたくしが責任をもって手元に置きますのでご心配なく。さらに言いますとヒーリア、タケシ、康子、里美は勇者です。我が手元には魔王よりも勇者の方が多いのですから、いざという時もご安心ください。」


マリアお母様まで…

国家権力者に秘密を打ち明けるとか、怖いんですけど。


だがヘブニア皇妃は楽しそうに笑いだす。

「あははははは、こりゃ傑作だ。ヘルリユの縁がとんでもない相手を呼び込んだよ。良いねえ、そのメチャクチャさは最高だ。だったらウチの子達が万が一の時は、あんたらの所に逃げ込めばいいねえ。こりゃ心強いや。」


<鑑定探査>で見ると、ヘブニア皇妃には<精霊探査>という技能がある。

マリアお母様が言った言葉が真実だと理解したのだろう。


里美がヘブニア皇妃の袖を引っ張る。

「ヘブニア様、絶対に秘密にしてくださいね。国家に利用されそうになったら、お兄ちゃんは別の大陸に逃げる気なんです。」


皇妃は男前な笑みを浮かべる。

「もちろん秘密にするさ。国なんて頼りにならないが友人は心強い。城の影響の外にアンタらみたいな友人がいてくれれば、いざって時に安心だ。誰にも言わないさ、私の最後の命綱になりそうだしね。」


なんとなく信じていい気がした。

僕は携帯念話機を一個出す。

「ヘブニア皇妃様、これは<念話>通信ができる機械です。ヘルリユにも100個ほどあげたのですが、これは皇妃様用にあげます。」


「ほー、面白そうだね。ありがとうよ長道。」


珍しそうに携帯念話機をいじるヘブニア皇妃に、里美とデルリカが使い方を説明し始める。


ひとしきり携帯念話機で遊んだあと、ヘブニア皇妃は唐突にどさりと金貨の入った袋を僕に渡す。

「これは?」

「金貨5000枚ある。これで能力を売ってほしい。」

「唐突ですね。」

「精霊が今急いで買えと言ってきた。意味が分からないが精霊の言葉だ、従ってみた。」


精霊使いか。精霊との信頼関係の深さを感じた。

ここまできたら、最後まで付き合うか。


「どんな能力が欲しいんですか?僕は魔王なので与えられますけど、能力を与えられる事は絶対に秘密でお願いしますね。自由を失いたくないので。」


「できるのかい?だったら子供たちを権力争いから守れる力が欲しい。ついでにバカ皇帝も少し守れればいいかね。」


「構いませんが、刃物で胸を貫かれるような痛みと苦痛を伴います。大丈夫ですか?」

「それだけで手に入るなら安いもんだね。子供と亭主を守れるなら一万回の稲妻に貫かれても耐えて見せるさ。」


さすがビッグマム。言う事が違う。


僕は<空間収納>から、切り出しておいたスキルや魔法を取り出す。


<空間収納><状態異常耐性:10><回復魔法:10><支配の咆哮:10><スキル抵抗:10><魔法抵抗:10><転移:2><浮遊:3><変身:3><剛力><鉄身><快速><思考加速><オリハルコン爪:1>


実験したい能力もサービスで付けちゃう。

まとめて投げつけるぜ。


「いきます!」


セイヤ!


「ぐはああああああ!」


ヘブニア皇妃は胸をおさえて仰け反る。

しかし倒れなかった。

苦しそうに胸をおさえながら、踏ん張ってこらえる。


「ぐぐぐ、本当に槍が刺さったみたいだね。でもこれは凄い。金貨5000枚じゃ安すぎるんじゃないか。」


「いくつかは実験で入れた分もありますので、そのあたりの使い方とかを研究してもらいたいというのもあります。ですので実験分はサービスです。とくに<転移>とか<変身>とか便利そうですけど試すのが怖ったので。」


「ははは、こりゃいいや。これなら、馬鹿どもの陰謀もすぐに潰せるし、いつでも城を抜け出して子供たちを助けにも行けるねえ。ありがとうよ長道。」


「喜んでいただけたようで何よりです。」


これで世紀末豪傑皇妃伝説が始まる予感がする。

無責任に楽しみだな、ホント。

お読みくださりありがとうございます。

マリアお母様活躍回が終わったら、やっとタイトルを回収するように、妹達が活躍する予定。

康子の活躍に泣き、デルリカの暴走に戦慄し、里美の想いに胸を熱くする予定。

ついでにタケシ君が男前。ビレーヌは怖い。

ダグラス団やヒーリアはヤムチャポジション。

食楽王マリーは自由過ぎて苦笑いが出る。

そんな予定です。

誰かが死んでシリアス展開になるように見えても、シリアス展開にはなりません。

スーパーご都合主義展開です。

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