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050 肝っ玉皇妃

あらすじ

魔王討伐の褒章受け取りの為にデスシール騎馬帝国の王城に来た長道たち。

しかしいきなり黒い騎士団に襲われる。

軽々撃退したが、その中に皇帝がいたため、慌てて逃げようとした。

― 050 肝っ玉皇妃 ―


逃げ出そうと身構えると、女性の声が僕らを止めた。


「お客人よ、逃げる必要はないよ!皇帝のバカなふるまいは私からお詫びさせていただく。それとデスケント!モノの道理を考えて口を開きな!皇帝のその哀れな姿は身から出た錆。責められるべきは皇帝の方だ。」


声の方向を見ると、何とも貫禄のある女性が立っていた。

よく言えば大仏のような立ち姿。

悪く言えば、超ぽっちゃり系。


とにかく迫力を感じた。


だが、上品でおしゃれな感じもする。

根っからの上流階級の人だ。


女性は倒れた皇帝に近づくと、鎧を着た皇帝を片手でひょいっと抱え込み、こちらににっこりと微笑んだ。

「では改めまして褒章のお話をしよう。こちらへどうぞ。」


そのまま有無を言わさず歩いていく。

さすがのマリアお母様も困り顔だ。

「付いていくしかなさそうですね。」


僕らは大仏婦人についていった。

すると玉座の間につく。


貴族っぽい人たちが並んでいるが、ボロボロの皇帝が片手で抱えられてきたのに思ったよりも冷静だ。

もしかしてこの光景は見慣れた光景?


大仏婦人は玉座に皇帝をポイっと放り込むと、その隣に座る。

「お客人よ、バカな皇帝の非礼をあらためてお詫びする。私はヘルデウス皇帝の妻、ヘブニアと申します。」


マリアお母様はスグに膝をつき礼をする。

みなも慌てて膝をつき礼をした。


全員が自己紹介を終えるころに、回復魔法の魔導士が皇帝の傍で回復を始めた。

皇帝…大丈夫だろうか。


皇帝が目を覚ましていないので褒章の授与は始まらない。

間が持たないなーと思っていると、ヘブニア皇妃は立ち上がり、ずんずん僕の前に来た。


なに?迫力が怖い。


僕のまえにズシンと腰を下ろす。

「君が長道だな。なんで君たちも呼ばれたか不思議だったのではないか?」

「はい、不思議でした。だって魔王討伐には関係ないですから。」


ヘブニア王妃の目がきらりと光った。

「表向きはそうだ。だが私が受けた報告では少し違うぞ。ヘルリユを助けるために魔王を倒したり、フィリアの領主に腹を立てて魔王の樹海にいた魔物を全滅させて浄化までしてしまった。違うか?」


なんで知ってるんだ…

どうしよう。嘘つくべきか?


慌てた僕を面白がるようにヘブニア皇妃は笑った。

「はっはっはっは、わたしは精霊使いなのさ。精霊たちから話を聞くから、人が見ていない場所の事もわかるんだよ。最近は人工精霊が流行りのようだが、本家精霊使いも捨てたものではないだろう。」


ニヒルに微笑んでくる。


本家の精霊魔法!

うわあ、教えてほしい。

いや、今はそれどころじゃない。


この皇妃は賢そうだ。

ならば、こちらの話に合わせてくれるのではないだろうか。

そっと人工精霊の高麗こまを呼び出す。

「高麗、周りの精霊にそっと説明できるか?」

『お任せください』


数秒沈黙が流れる。

するとヘブニア皇妃の顔が少し緩んだ。


「なるほど、面白いことをするな。わかった、わたしが長道たちを呼んだのは軍備に関する商談の為という事にしよう。長道のために金貨1000000枚(100億円)の予算を組むぞ。魔王討伐を成し遂げる支えになった武装を我が国に卸してもらうためにな。」


僕もニヤリとして頭を下げる。

「有り難き幸せにございます。」


ついでなので、僕は<空間収納>からハイポーションを120本ほど出す。

「ではお近づきのしるしに、このハイポーションを金貨120枚でお譲りいたします。なんと9割引きの大ご奉仕価格。本日限りです。これさえ飲めば皇帝陛下も10秒でリフレッシュです。」


「よし、あとで皇帝の財布から払わせよう。先に使わせてもらうぞ。」


一本取り出すと、治療中の皇帝に有無を言わさず飲ませてしまった。

毒だったらどうするつもりなんだろう…

いや、精霊が本物のハイポーションだと教えてくれたのかもしれない。


皇帝は一回ビクっと動くと、顔の傷もなくなり、ぼろぼろだった左の掌も回復。目を開いた。

「グハ!ひどいガキだ。話も聞かぬとは野蛮な奴め。」


そう言った直後、皇帝は皇妃に片手で持ち上げられ、勢いよく地面にたたきつけられた。


「ぐはああ!なにをするのだヘブニア!」


「あんたバカ言うんじゃないよ。何も聞かずに騎士で襲わせた奴が言うセリフじゃないだろ。まずは謝罪しな。話はそれからだよ。あんたと騎士のために一本金貨一枚という捨て値で100個以上のハイポーションを売ってくれたんだ。お礼も言うんだよ。」


何か言いたげな皇帝だったが、腕組みしながら睨むヘブニア皇妃に何も言えずこちらを見た。

「試すためとはいえ、いきなりの攻撃に対した謝罪しよう。それと回復のためにポーションを格安で提供をしてくれたことに感謝を。」


完全に尻にしかれてるな。

まあ、この皇帝はバカっぽいからこの方が国の為だろう。


そして僕の勘が叫ぶ。

ここのリーダーはヘブニア皇妃だ。

だったら皇妃と話をしよう。


「ヘブニア皇妃、質問してもいいですか?」

「なんだい長道、あんたの質問ならいつでも受け付けるよ。」


「さっきの黒い騎士たちはなんですか?」

「あれかい?あれでもこの国一の精鋭、黒地獄騎士団の連中さ。王の親衛隊だな。それをあそこまで雑魚のように倒したアンタらには驚きだよ。」

「弱かったです。」

「はっはっはっは、耳が痛いな。あんなんでも、人間相手なら聖教国の聖騎士の次ぎくらいに強いんだがな。」


これを言ったら怒りだすかもしれないと思ったけど、言わずにはいられなかった。

「いいえ、第4皇女親衛隊はもっと精鋭でした。黒地獄騎士団が倍の数で襲ってきても、第4皇女親衛隊なら勝てると思います。聖騎士のバケツヘッド子がスカウトしたいというほどの精鋭でした。」


その言葉にヘブニア皇妃の顔が急に固くなる。

あ、地雷ふんじゃったかな。


「長道、そういえばまだお礼を言ってなかったな。ヘルリユを助けてくれてありがとう。」

深々と頭を下げてきた。

僕は慌てて肩を押して止める。


「やめてください。僕は友達だから助けたんです。お礼なんていりません。」


「それでもだ。バカ皇帝がバカな命令を出したせいであの子が死ぬところだった。気づいて援軍を出そうとしたら、精霊がもう終わったといった時は世界が真っ暗になったよ。もっとも、良い意味で終わったと後から知って安堵したけどな。たとえ妾腹でも皇女なら私の子だ。私の子が親の命令で死んでいいはずがない。本当に感謝している。」


立派な女性だと思った。

国の頂点に立って、その役割を強要されて、なお流されないなんて超人的だ。

皇妃としてこの人は、国の意思より自分の正義を貫いている。

傑物だと思う。好きかも。


「ヘブニア皇妃陛下は、うちのマリアお母様と並ぶ立派な女性だと思います。もしも叶うなら、貴女のような女性を伴侶に見つけたいと思います。」


その言葉に、すこしきょとんとした皇妃は、僕の肩を叩いて爆笑。

「あははははは、そりゃいいな。最高の誉め言葉だよ。長道は見る目がある、気に入ったよ。わはははは。」


ひとしきり笑うと、笑いすぎて出た涙を拭きながら、再度僕の肩を掴む。

「ほんと、長道みたいな息子が欲しかったよ。どうだい、うちの婿養子にこないか?姫は3人いるから好きなの選んでいいぞ。婿に来たらたら必ず次の皇帝にしてやるがどうだ?」


酔っ払いみたいな事言い出す人だな。

豪快な人特有の思いきりのいいセリフだけど、僕に向けて言われると困るな。


「僕などにはもったいないお言葉です。姫様方に求婚する人が、世界中どこを探してもいなくなったら考えさせていただきます。」


「ははは、いい切り返し方だ。ほんと婿に欲しいな。」


バンバン肩を叩かれた。

顔には出さないけど、メチャクチャ痛い。すごい力なんですけど…


叩かれながら助けを求めるように周りを見たら、皇帝と目があった。


あ、


「ヘブニア皇妃様、そろそろ魔王討伐の褒章に戻りませんか。皇帝陛下も元気にになられたようですので。」


「おっと忘れていた。じゃあ後は皇帝陛下に任せるかな。長道、また話そうな。」


自分の席に皇妃が戻ったあと、皇帝陛下が褒章を行ってくれた。

しかしあの情けない姿を見た後だと、なんとも威厳が無かった。


お読みくださりありがとうございます。


この話の中で、僕はマリアお母様が一番好きです。

はやくマリアお母様活躍回まで進みたいです。

番外で書く事じゃないですが、家族最強はマリアお母様。

だって「ふふふ、ダメですよ。」とか言われたら絶対逆らえないから。

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