033 僕たちの戦いはこれからだ
あらすじ
女神のチートをもらって異世界に放り込まれた長道。
奴隷として買われた後沢山妹ができた。
そのあと魔王を倒して魔王になったがそれは小さい事。
ホモの騎士にお尻を狙われたが、辛くも妹に助けられて一安心した。
― 033 僕たちの戦いはこれからだ ―
ふと気づいた。
僕は魔王としてレベル200を越えているんだから、実はとっくに武道的なスキルもたくさんあったのではと。
自分のステータスを見てみる。
<恐怖の波動>だとか<爆裂拳>とか凄そうなのが沢山あったよ…。
うぬぬ、なんちゃって剣聖に襲われたとき、一生懸命お尻を振って抵抗する暇があったら、これにポイント振ればよかった。
まあ過ぎたことはどうでもいい。
僕はボケーっと庭で空を見上げる。
魔法<日本ライブラリー>で音楽を流しているので心が落ち着くなー。
数日前、僕はお尻を守り切った。
お尻が無事だったというだけで、こんなにも平和が素晴らしいと思い知るとは思わなかった。
そんな情けないことを考えている僕の傍では、康子が花の面倒を見ている。
近くに康子しかいないので、今まで当たり前だと思っていながら確認していなかったことを聞いてみることにした。
「ねえ康子。」
「なんですか、お兄様。」
一息入れてから。
「康子は日本で何歳まで生きたの?」
すると驚いた顔をされてから微笑まれた。
「92歳です。」
「長生きだったんだね。」
「タブン、<状態異常抵抗>を持っていたからではと。」
「なるほどねー。」
やっぱり康子も日本人なんだ。
名前が日本人だから、当然日本人だとは思っていたけど、やっぱり日本人か。
92歳だったんだ。どうりで大人びていると思った。
ボーっと康子を見ていて急に気づいた。
「ねえ、もしかして康子って勇者になる前から<状態異常耐性>を持っていなかった?」
「そうですねえ、<状態異常耐性>まではいかなくても<状態異常抵抗>なら持っていました。毒蛇に噛まれても大丈夫だったことがありますし。」
やっぱり。
「もしかして康子の体が大きいのは<状態異常抵抗>のせいかもね。」
「え?どういう意味ですか?」
<状態異常耐性:10>は老いという異常すらしりぞける。
ならば子供に高い<状態異常抵抗>が与えらどうなるだろうか?
もっともベストな状態に近づくのではないだろうか?
18歳から20代前半くらいに。
そのことを説明すると康子は妙に納得していた。
「なるほど、その説はかなり納得がいきます。私は自分が頑丈だから何を食べても大丈夫だし、寒くても風邪もひかないのだと思っていましたが、<状態異常抵抗>が高かったといえば、確かにそうかもしれません。」
うん、やっぱりそうなんだ。
僕もなんか納得いった。
そんな話をしていると、マリアお母様が庭に顔を出した。
「長道、今日はゆっくりしているのですね。」
「はい、一応部屋では分身がN魔法の研究をしていますが。」
マリアお母様は笑顔でうなづく。
「よろしいです。ところで長道は2年後にどこの土地に行きたいか希望はありますか?」
「2年後ですか?なんで?」
するとマリアお母様は「あっ」と言って少し考える。
「そういえば長道に言っていませんでしたね。2年後にこの村は免税期間が終わり街になりますので、わたくしはココでの任期を終えます。ですので今のうちに候補地を決めて希望を出しておこうかと思いまして。」
「ここを離れるんですか…、なんか寂しいです。」
そっと撫でてくれた。
「あなたは特にイロイロ見た方が良い子です。寂しくても新しい世界に行くチャンスは逃してはいけませんよ。」
「・・・はい。」
この地を離れるとか考えてもいなかった。
「そうですね、どうせ行くのでしたら強い魔物が近くに居て、純潔騎士団が居ないところが良いです。」
マリアお母様は嬉しそうにうなずいた。
「それを聞いて安心しました。じつは内々に打診が来ていまして、デスシール騎馬帝国のソフィアという街に行かないかという話があるのです。そこは近くに魔王の根城がある関係上魔物も強く、危険な地域なのでわたくしに白羽の矢が立ったというわけなのです。長道はどう思いますか?」
どう思うか聞かれてもなー
「マリアお母様と一緒でしたらどこでも構いません。お家の外が怖かったらずっとマリアお母様に甘えていればいいし。」
すると嬉しそうに抱きしめられた。
はうう、マリアお母様の抱きしめは童心に帰ってしまう。
「長道がそう言ってくれて安心しました。では2年後にはソフィアに行くと返事をしますね。」
抱きしめられて批判力を失った僕は。
「はい、おっけーです。」
と答えていた。
二時間後、お昼を食べた後に兄妹会議を開く。
「では、第3回兄妹会議を始めます。」
妹達と委員長は無意識にパチパチパチと、無気力に拍手する。
椅子に座って参加しているのは5名。
僕と、妹三人と、委員長。
僕は、2年後にデスシール騎馬帝国のソフィアという街に引っ越すことになる事を説明し、そこが危険な魔物地帯だという事も話した。
そして壁に張った紙に問題点を書きだす。
・ヒーリアさんをどうするか?
・タケシ君をどうするか?
・委員長はどうしよう?
・ダグラス団をどうするか?
・ユカエルさんをどうするか?
意外と問題点は少なかった。
康子が手をあげて発言する。
「まずヒーリアさんにはスグに電話で確認してみては?」
「ナイスアイディアだ康子君。」
僕は<スマホ念話>でヒーリアさんを呼び出した。
「あ、ヒーリアさん、今お話し大丈夫ですか?」
『大丈夫だよ、今周りに人もいないし。』
そこで2年後にソフィアに移動する旨を伝えた。
「…っというわけなんですが、一緒に来てもらえますか?」
『私を誘ってくれるのかい?…ううう、涙が出てきちゃったよ。それは本当にうれしい。絶対連れてってよね。私は冒険者だから移住なんて慣れっこだから問題ないよ。絶対連れてってよね。』
「はーい、ではヒーリアさん問題は解決で安心しました。詳細は後日相談しましょう。」
『ああ、よろしく頼むね。』
よしあっけなく解決。
「ヒーリアさんは絶対いくって。これで一つ解決。次はタケシ君問題か。デルリカ的にはなにか案はある?」
デルリカは真面目な顔で椅子から立ち上がった。
「雇います。ワタクシもお金を稼いで警備として雇おうと思っております。タケシ君は何故か両親から嫌われていますので、雇えば問題ないと思います。」
なるほど。
「わかった、次に委員長だけどどうする?一緒に来てくれる?」
次は委員長が勢い良く立ち上がる。
「はい!断られても一緒に行きます!」
「そっか、それを聞いて安心した。これからもよろしくね委員長。」
「はい!頑張ります!」
デルリカと委員長を座らせて、壁の紙を見る。
「次はダグラス団問題か。まあ冒険者だし大丈夫でしょう。この人たちは意思確認なしでいいでしょう。」
だってダグラスさん達だもん。
僕の希望に無条件で従ってもらう。
最後が問題か。
「じゃあ唯一の問題点、ユカエルさん問題だね。ギルドの支長だし、簡単にはついてきてもらえないよね。この村に置いてっちゃおうか?」
里美が手を挙げた。
「はい、里美君。」
「ユカエルさんはお兄ちゃん信者なのに置いていったら可哀想だよ。電話で聞くから少し待ってて。」
そして里美は携帯念話機でユカエルさんに連絡をする。
数分後、里美は電話を切った。
「ユカエルさん、ソフィアに異動するって。そこは危険で支長が辞めたがっているから、きっと一発で希望が通るだろうってさ。」
そっか、じゃあ問題なしか。
「ありがとう里美。っというわけで、全ての問題が解決しました。ではこれから2年間はタケシ君の買収を頑張りましょう。」
こうして僕らは2年後に向けて動き出す。
次の街で僕らを何が待ち受けているのか?
小心者の僕には不安しかなかった。
お読みくださりありがとうございます。
※注:この回は最終回ではありません。
次回より第2部。




