031 禁断の入り口
あらすじ
剣聖をやっつけて、手下達の忠誠も上がって喜んだ長道だった。
― 031 禁断の入り口 ―
さて、今日は新しい商売を思いついたのでギルドに来た。
受付で、さりげないセクシーなポーズで座るユカエルさん。
数人の男が群がっている。
もう完全に30才前半のセクシー女性になっているとは…。
あと2~3日でグラビアアイドル級になるなこりゃ。
僕が受付に行くとユカエルさんは嬉しそうに手招く。
「長道坊っちゃんじゃないかい。1人で来るとか珍しいねえ。今日はどうしたんだい?ここじゃなんだから奥においでよ、お茶くらいだすよ。」
ギルド支長室に招き入れてくれた。
初めて気づいたけど、ユカエルさんがギルド支長なのか。
「長道ぼっちゃん、今日はどうしたんだい?」
僕は唐突に状態異常回復に特化したハイポーションを105本ほど入れた袋を出す。
その意味にユカエルさんは気づかず、不思議そうに見ている。
「それは・・・何だい?」
僕はユカエルさんから少し離れてそれをテーブルに置いた。
「これは状態異常用ハイポーションです。石化してても数秒で復活できます。もしもユカエルさんの若返りダイエットの事を聞かれたら、これで若返ったといってもらえますか。一日3本。一週間飲めば、かなり若返るはずです。病気も治り、肥満は痩せて、やせ過ぎは肉が付くはずです。で、これを独占的に売るために、これが状態異常用のハイポーションだという事は秘密にして、若返り美容ポーションとして売ろうと思います。」
ユカエルさんは興味深そうにのぞき込んでくる。
「ほー、なるほど。ポーションで<状態異常耐性:10>の代わりにするわけかい。考えたねえ。」
さらに僕はセールストークを続ける。
イメージはテレビ通販の社長。
「ふつうは一本金貨5枚のところ、一週間セットご購入の方に限り、なんと21本で金貨100枚でご販売いたします。しかも、ななんとなんと、一週間セットご購入のみなさまには、この美肌用コロコロロールに、ツボ押し健康法という本もお付けしちゃいましょう。。。。これ、売ってくれたら利益を1割あげますよ。どうですかユカエルさん。」
ユカエルさんはこの提案を聞いて大爆笑した。
「あはははは、長道坊っちゃんは根が商人だな。私に与えた若さを利用して商売とはねえ。一石二鳥とはこのことだ。こりゃ賢いじゃないの。数日前の私を知っていたら、このダイエットポーションは説得力があるから売れるよね。いやあ、すばらしい作戦だ。見事だよ。」
そのあと。
ユカエルさんはその日のうちに、街でうわさを流してくれた。
驚いたことに、次の日には5セット全て完売したそうだ。
ちなみに誰が買ったかはすぐわかった。
だって、買った人はみんな若返っているんだもん。
少なくても、見た目でわかるほど効果があったことには安心した。
だって、思ったよりも効果が無かったらお金返さないといけないから。
僕は急いで追加を作るはめになる。
さらに次の日、
追加納品しようと思ってギルドに行ったら、ユカエルさんが「追加仕入れはいつ?」と女性たちに詰め寄られていた。
知り合いが、明らかに変化したらそりゃ目の色も変わるよな。
金貨100枚。
日本の感覚では100万円。
女性は凄いと思うよ、ほんと。
僕が近づくとユカエルさんの目が『奥で待ってて』と言っている気がしたので、先にギルド支長室に入る。
数分後ユカエルさんが入ってきた。
「待たせて悪いわね。若返り美容薬の追加納品はいつだって詰め寄られちゃってさ。そりゃ60歳の私がこんな見た目になったら目の色が変わる気持ちもわかるけどね。」
みると、すでに20代後半くらいの見た目になっている。
ユカエルさん、思った通り若いころは美人だったんだ。
最初は白い髪だったけど、今は金髪になっている。
僕は袋を<空間収納>からだした。
「これ、10セット作ってきました。でもまさかココまで飛ぶように売れるとは思いませんでした。あんな高いモノ。」
袋を受け取りながら、ユカエルさんは色っぽく微笑んだ。
「絶対手に入らないはずだったものがお金で手に入るなら、みんな無理もするさ。」
そして、窓の外を眺めながら言葉をつづける。
「でも見た目が若返っても寿命は延びないんだろうねえ。私はあと10年くらいなんてケチクサイこと言わないで、何十年でも長道坊っちゃんのために働きたいんだけどねえ。」
チラ
ちょっとこっちを見て、演技がかった感じでまた窓の外を見る。
「ほんと、私は長道坊っちゃんが大人になるまで役に立てるかなあ。いま60歳だから、いつまで長道坊っちゃんのお役に立てるかねえ。」
チラ
またこっちをチラ見してくる。
はいはい、わかりましたよ。
「言いたいことは分かりました。悪の組織の女幹部に寿命を追加すれば良いんですか?良いですよ。」
嬉しそうに身を乗り出してきた。
「できるのかい?どのくらい足せるの?」
<空間収納>からバジリスクから奪った寿命を出す。
「バジリスクから奪った寿命があります。97年分。でもストレスで寿命は縮むので実質60年くらいの延長になると思います。」
ユカエルさんは足を踏ん張り構える。
「バジリスクがそんなに長生きなのは驚いたけど、、、それで頼むよ。さあ、覚悟はできているよ。」
悲壮な表情をしている。
<原始魔法>で概念を放り込まれるのって、かなり苦しいっぽい。
だから覚悟を決めた顔になっている。
でも寿命が延びるなら良いよね。
バジリスクの寿命97年を、槍を突き刺すようなイメージでユカエルさんの胸に投げ入れた。
えい!
「ぐはああああ!」
胸をおさえて、苦しそうに倒れこんだ。
「大丈夫ですか!スイマセン手加減できなくて!」
でもユカエルさんは苦痛で汗を流しながらも笑っていた。
「はあ、はあ、これで寿命が延びたんだね。ははは、もう本当に長道坊っちゃんに魂を売った気分だよ。」
喜んでくれているようだ。
何よりです。
「まあ、沢山お願い事すると思いますのでよろしくです。」
「ええ、まかせて。たっぷり役に立つよ。」
よろよろ立ち上がったユカエルさんは、ガッシリ僕の肩を抱いてサムズアップした。
ほんと喜んでいただけたようで何よりです。
悪の女幹部の忠誠心を高めたことだし、僕はギルドを出た。
美容薬、またたくさん売れるといいなあー。
テクテク歩いていると、誰かが後ろからついてきている気がする。
振り返る。
往来の中で、人が行きかっていた。
気のせいか。
僕はまた歩き出し、街から少し離れた。
森で薬草の調達しなくちゃ。
もっと沢山美容薬を作ってお金稼ぎたいから。
村を出て森に向かっていると、いきなり誰かが僕の後ろから頭に袋をかぶせてきた。
え?何。
「なんだ!だれだ!」
袋で前が見えない。
暴れたら、殴り倒された。
「ぐああ!」
「大人しくしろ小僧!」
その声に聞き覚えがある。
そして背筋が寒くなった。
剣聖アキリス・オプテアの声だった。
<時間魔法>で逃げようとしてみた。
しかし魔法が発動しない。
まさか!
確認すると僕の魔力が空になっていた。
しまった、まさかこの袋が…
剣聖アキリス・オプテアが楽しそうに僕を殴りながら叫ぶ。
「お前が魔法を使えることは知っているぞ。どうだ魔力吸収の袋で魔法が使えまい。お前にはこれから復讐をしてやる。」
僕は何かで縛られると、担がれてしまった。
袋の上から無理やり猿ぐつわをつけられたので声も出せない。
「うぐうぐうぐ」
「情けないな小僧。これから少し面白い遊びを教えてやろう。純潔の契りだ。」
ノオオオオオ!
それは衆道か!男色か!ソドムとゴモラか!
やめろぉぉぉぉぉぉぉ!
しかし、僕は虚しくバタバタすることしかできず、担がれたまま連れ去られてしまった。
お読みくださりありがとうございます。




