029 森の剣豪たち
あらすじ
剣聖がうざいので、長道は冒険者ダクラス達を上位職にして剣聖にぶつける作戦です。
そして、新入り達のパワーレベリングに来た。
― 029 森の剣豪たち ―
夕飯の後、マリアお母様に今日のことを話した。
正直、勝手にやりすぎたって怒られるかと思ったら、思ったよりも受けが良かったのでビビるす。
「なるほど、さすが長道は賢いですね。ではその4人を剣聖にぶつけて、細かいことはユカエルさんに任せるのですね。素晴らしいですよ長道。さすが長道です!」
そんな絶賛されて困惑してしまった。
でも怒られなくてよかった。ふう。
「ですので明日は朝から5人のパワーレベリングをしよと思います。そのための武器や防具も作成します。」
「でしたら、わたくしの作業場にある鉱物を好きに使ってください。9割が上位魔物の素材で作るとしても、鉱物は必要ですから。」
「ありがとうございます、たすかります。」
食後に、ぱぱっとあの5人の分の武具や魔道具を作りぐっすり眠る。
明日が楽しみだな…
次の日、エプロン子の小言を聞きながら目を覚まし、朝食を食べたらすぐに飛び出した。
目指すは冒険者ギルド。
ギルドに着くと、ユカエルさんが職員に職務の引継ぎをしていた。
「ユカエルさん、行けますか?」
「ああ、いけるよ。ダグラス達も向こうで朝飯を食べているから10分待っておくれ。」
「はーい」
心なしか、ユカエルさんは昨日よりも少し痩せている気がする。
<状態異常耐性>は肥満という状態異常も治してくれるのだろうか?
ぼーっと待っていると5人は準備を終えてやってきた。
「じゃあ行こうか。」
ダグラスさんはスッキリした顔をしていた。
昨日はかなり悩んだようだけど吹っ切れたんだろうか。いい傾向だね。
森の入り口に向かうと、そこには妹達と委員長とヒーリアさんが居た。
そしてデルリカが走り寄ってきて僕に抱き着く。
「お兄ちゃん、ワタクシ達をおいてくとか酷いですわ。」
そういえば忘れてた、てへ。
「ごめんごめん、今日の主役はこの5人だからデルリカ達が狩りをしたら駄目だと思ってさ。」
「ちゃんとお手伝いいたします。大丈夫です。」
むくれたデルリカも可愛い。
けっこう大所帯になっちゃったな。
みんなで狩りをしても意味がないから妹達には別の任務を与えよう。
「里美、康子、薬草とかを採取しておいてくれないかな。補給しておきたいんだ。」
「おっけー。まかせて。」
「わかりましたお兄様。出来るだけ採取しておきます。」
この5人のレベリングはヒーリアさんに任せればいいや。
僕はデルリカの手を引いた。
「デルリカ、僕らも採取をしよう。じゃあレベリングはヒーリアさんお願いします。」
「わかったよ長道坊っちゃん。この5人は今日中にレベル10以上にしておくよ。」
そして別行動になった。
採取楽しい。
デルリカも無邪気に薬草を見つけては僕に駆け寄ってくる。
可愛い!デルリカ可愛すぎる。
前回よりもはるかにたくさん採取できているな。
スキルを<鑑定探査>に進化させたのは正解だった。
薬草を探査して探せる。
もう便利過ぎ。
みんなの<探査>もあとで<鑑定探査>にしてあげようかな。
そうやって見ていると、マップに変な表示が出てきた。
敵性表示の赤色で表示された連中。『純潔騎士団・4剣豪』
4人の『剣豪』が森に入ってきた。
こいつら、剣聖の後ろに居た連中だよね。
何しに入ってきたんだろう?
まあ遭遇しないように気を付けよう。
マップに気を付けながら採取していたら、『剣豪』の一人がデルリカに真っすぐ接近しているのが表示される。
あれ?なに?
するとデルリカと接触したと思われる『剣豪』はスグに死体である灰色に表示なった。
なに!
しばらくすると、その灰色表示すら消える。
な、なにが起きた?
その後、デルリカは次々に『剣豪』に向かい灰色表示にしてしまう。
そしてしばらくすると表示が消える。
あっというまに4人の『剣豪』が消えた。
何がどうなった?
ボーっとしていると薬草を持ったデルリカがやってきた。
「お兄ちゃん、薬草を持ってきましたわ。」
「あ、ありがとう。」
みるとデルリカのスコップには血と泥が付着していた。
殺して埋めたのか…
でもなんで?
聞こうと思ったけど、平然と微笑むデルリカに怖くて聞けなかった。
よし忘れよう。
今なにも見なかった。
わーい、沢山薬草が取れたぞ。これでポーションもたくさん作れそうだ。
わーい、楽しみだなー。
現実なんて逃避すればいいんですよ。
逃避しながら採取を1日したら凄い量を採れた。
精製が楽しみだ。
夕方になり帰りにみんなと合流する。
例の5人は全員レベル10に。
いったいどんなレベリングをしたんだろうか。
全員ボロボロなんだけど。
「ヒーリアさん、随分レベルが上がってますけど何をしたんですか?」
「オーガとゴブリンの群れを見つけたんで突っ込んだのさ。100匹以上いたからきつかったけど。」
それを聞いて再度5人を見る。
ダグラスさんが良い笑顔を返してくれた。
「レベル2になったら、いきなり下位職のスキルや魔法を大量に習得して驚いたぜ。これは単純なレベルアップ以上の価値があったよ。なんせ俺の『魔法剣豪』は5つの下位職をレベル30以上にしないとなれない上位職。今日のレベル10は実質的には5つの職のレベル30プラスレベル10だ。長道坊っちゃんには感謝しかないぜ。」
そうなのかー。
「剣聖倒せそうですか?」
にやりと返してきた。
「行けると思うぞ。この上位職のお陰で<自動回復><快速><思考加速>が付いたのはデカいな。タブンだがギリギリいけるとおもう。」
ユカエルさんも微笑む。
また若返った?
「長道坊っちゃんのお陰で私も満足だよ。まさか空を走れるとは思わなかった。上位職っていうのは凄いもんだね。職業「アイドルダンサー」のおかげで<魅惑><魅了><幻惑>みたいな小技も手に入れたし。これなら私ですら剣聖に勝てそうだよ。」
「それは心強い。ぜひ剣聖の排除をお願いします。なんかウチにつっかかってくるんです。」
すると「錬金錬成師」のクロードさんが苦笑いしながら僕を見た。
「それは3つの理由だろうね。まずは剣聖はステータス画面を持っていないから司教にステータスを与えてほしんだろう。教会には国の威光が効かないから、今回の魔王討伐で恩を売ってステータスをもらうのが目的だったとギルドで言ってるのを聞いた。」
「なるほど。ならばウチにつっかかてくるのも当然か。残りの2つは?」
「あとは、この街には貴族の威光が効かないからイラついたんだろう。純潔騎士団は貴族だけの騎士団だから、普通は平民はみんなひれ伏す。でもこの村はギルドと教会に寄り添ってできた村だ。だから我侭が効かなくてイラついたんだろ。」
「貴族は嫌ですねー。で、最後の理由は?」
「それは…、聞いたらびびるかもしれないぞ。純潔騎士団は女性を排した集団。つまりホモ集団だって噂だ。女性に頭を下げるのが屈辱なんだろうよ。それと奴らが来てから何人か少年の貞操が奪われたって話だ。長道坊っちゃんも気を付けないと、人質ついでにお尻に怪我するかもしれないぞ。」
そこでダグラスさん達は大笑いしたけど、ちょっと洒落にならないよ。
僕はお尻をおさえて、内股になってしまった。
するとデルリカが良い笑顔で僕にサムズアップする。
「大丈夫ですわお兄ちゃん。お兄ちゃんの貞操を狙う輩は排除いたしましたわ。ワタクシのお兄ちゃんの貞操はワタクシが守りましてよ。」
デルリカ!
今日ほど君のヤンデレ具合が心強いと思ったことはない!
「頼りにしているよデルリカ!」
「お任せくださいお兄ちゃん。」
でも里美は微妙な顔をしている。
「イケメン×お兄ちゃんか。絵面は見てみたいけどお兄ちゃんは守りたいし。困ったなー。いっそお兄ちゃんが攻めればいいんじゃないかな。それでお尻も守られて解決でしょ。」
おい7歳児!
中身は80歳でしょ!あんた80歳すぎてまだそんな事言うのか!
ほんと、ホモ好きは業が深いわ。
何んともビミュウな気持ちで帰宅することとなった。
お読みくださりありがとうございます。




