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027 僕が奴隷だった日の想い出

あらすじ

学校でデルリカの想い人発見。タケシ君。

2人を近づけようと努力する長道。


― 027 僕が奴隷だった日の想い出 ―


学校からの帰り道、デルリカは上機嫌だった。

小声で耳元でつぶやいてみる。

「デルリカ、タケシ君の事好きなんだろ。」


目を見開く。

「なんで…なんでわかったのですか?」

「お兄ちゃんだからさ。彼はいい人だよね。僕は好きだな。」

「さすがお兄ちゃんですわ。」


そう言いながら嬉しそうに僕の腕に抱き着いてくる。

まったく、可愛い奴だ。

そしてまだタケシ君が勇者だと気づいていなようだ。

気づいた時の反応が楽しみだ。


で、

学校からの帰宅中の僕らは、タケシ君も連れてきた。


理由はこれからステータスの隠蔽を実験するから。

どうやら高麗こまがステータス隠ぺいの魔法を完成させたようなので、これから試すというわけ。

なんせ、今一緒に帰宅している6人は、魔王と勇者しかいないという凄い集団だから。

これを一般人にしないといけない。


空き地にみんなで座り、ステータス隠ぺいをするにあたり希望の職種を募集した。

みな何でもいいというので、僕が適当に決める。


僕はもちろん錬成士。

デルリカは怖いから令嬢。

康子は貴公子

里美は歌い手

委員長は魔導士とした。


あ、忘れてた。

タケシ君は気配が薄いから狩人。


これで設定。

スキルや魔法も隠蔽される。


これで一安心かな。


終わると、デルリカが不思議そうに尋ねてくる。

「なんでタケシ君も職業隠ぺいが必要なのですか?」


ま、気になるよね。

「この隠蔽魔法はあくまで複数の職業を得ている人が、一つ分の職業を公開するだけの魔法なんだ。だからそのために複数の職業を設定するから。タケシ君もいくつか職業を持っていれば便利だと思ってついでにね。(あと彼勇者だから。)」


「なるほど!さすがお兄ちゃんですわ。では錬成士や農民もつけてあげてください。それがあれば生活に困りませんので。」


さすがデルリカ。僕が最後に小声で言った「彼勇者だから」は聞こえていなかったようだ。

人の話を最後まで聞く癖をつけようね。


高麗こま、タケシ君に職業を追加してあげて。あと皆にもおすすめのをお願い。」

『かしこまりました。私からみて才能のありそうなモノをいくつか追加いたしましょう』


そういうと、光となって皆の頭の上をスッと通り過ぎて消えた。

仕事が終わったってことか。


あとでみんながどんな職業に就いたか聞いてみよう。


普通、ステータス上の職業は簡単に変えられない。

充分な経験を積むか、教会で書き換えてもらわないといけないから。

だから、この隠蔽魔法みたいにぱたぱたと自分の意思でステータス上の職業を自由に入れ替えられるのは異常な事。

たぶん<鑑定>持ちに出会っても見破られないでしょう。

N魔法の使い手が相手だと微妙かもしれないけど。


タケシ君の肩を抱く。

「タケシ君、暇だったら何かと僕らと一緒に活動してレベル上げてね。」

「わかりました。頑張ります。」


素直な子だ。


さて、そういえば魔王討伐の報告をするためにギルドに行くといって、もう2日も行っていない。

魔王討伐のことを話さないといけないからギルドに行こうかな。


僕らはその足でギルドに向かう。

ギルドの建物に着くと、カランカランとドアを開けて中に入った。


そこにはいつものようにガラの悪い人たちが、マナー良く過ごしている。

見ると受付にユカエルさんが居ない。

困ったな。


すこし困っていると、ガラの悪そうな4人の男達が近づいてきた。


里美の目が輝く。

「テンプレ来たー!お兄ちゃん無双伝説が始まりそう。」

「始まらないから。お兄ちゃん土下座伝説ならすぐ始まるかもね。」


そんな馬鹿なこと言っていると、男たちは僕の前にしゃがんだ。

「いつもヒーリアと一緒に来ている子達だよな。いまユカエルさんはギルド長室にいるけどしばらく出てこないと思うぞ。もしも急ぎじゃなかったら今日は帰った方が良いかもしれないな。」


親切か!

柄が悪いのに人が良い。

この村の冒険者は質が良いのかもしれない。


僕は少し考える。

「うーん、でもユカエルさんは早く話を聞きたいだろうから待つことにします。」


怖い顔でニコニコしてきた。

「そっか。じゃあ向こうのレストランで待つといい。」

「ありがとう。じゃあ向こうで待ちます。」


ぞろぞろレストランスペースに移動した。

コッチに入るのは初めてかも。

レストランていうより飲み屋だからな。


するとウェイトレスの女性が来た。

定番の犬耳娘だ。

肩までの髪の毛を揺らしながらやってくる。


おお、これは可愛い。こんなウェイトレスがいるならもっと早く利用していれば良かった。


「まあ可愛いお客さん。ご注文は何?」

「えっと、みんなにジュースを。何があるか分からないからオススメでお願いします。」


「ではオレンジジュースにしますね。銀貨18枚です。」

「はーい、それでお願いします。」


僕が銀貨を払うとウェイトレスの犬耳娘さんは厨房に消えた。


そこでさっきの4人組の男が椅子をもって近くに来た。

「なあ、ちょっと話をしないか?」

「はい、なんでしょう?」


妹達は、僕がおじさんと話し出したので女子同士で話し始める。

うわあ、僕もそっちに入りたかったな。

まあいいか。


すると男は真面目な顔になった。

「俺はE級のダグラスという。君は長道君だよね。」

「はい。僕の事を知ってるんですか?」

「ヒーリアが良く大声で叫んでるからな。」


言われてみれば…


ダグラスさんはさらに話を続ける。

「それでだな、ヒーリアが急に強くなっただろ。その秘密を知っていたら教えてほしいと思ってな。」

「秘密?魔法を使えるようになったことですか?」


ダグラスさんは頷く。

「急に魔法を使えるようになっただろ。もしも話せない事なら無理には聞かないが、できたら知りたいと思うのは当然だろ。」


なるほど。

そしてその秘密は僕らも知っていると踏んだわけか。

どうしようかな、嘘は後々厄介の元だから、いうなら本当のことを言う必要があるよね。

でも、どこまで言うか。


「そうですね。実は僕は大体の理由を知っています。ですがそれはマリアお母様に相談しないとどこまで言っていいか分からないです。」


ダグラスさんの顔色が変わった。

「マリア司教様か!なるほど、だったら納得がいくな。」


なんで納得がいくんだろう?

あれだな、困った時は大体マリアお母さまの名前出せば解決だなコレ。

何とも言えない気持ちになりながらダグラスさんを見ていたら、思いついたように僕に頭を下げてきた。

なんだ?!


「長道坊っちゃん!どうか俺たちも護衛役をやらせてください!」

「なんでそういう結論になったんですか!」


いやほんと、途中の思考経過が気になった。

なんとも必死な顔でダグラスさんが頭を上げる。


「俺はヒーリアが坊っちゃん達と一緒に抜けた商業キャラバンを護衛していたんだ。坊っちゃんたちが去ったあと、あそこは盗賊に襲われたから俺たちは必死にこの村まで逃げて来たんだ。そしたらヒーリアが急に強くなってるじゃないか。当然坊っちゃんたちが関係あると思うだろ。俺の予想ではヒーリアは護衛をやるために魔法の道具や武器をもらったんじゃないかと思ったんだ。違うか?」


僕たちが奴隷屋から買われた帰り道に居た人たちか。

あのとき僕らは、盗賊団が迫て来るのを知っていながらキャラバンから離れたんだよな。

そのときヒーリアさんと知り合ったんだっけ。数日前の話なのに懐かしささえ感じる。


いや思い出に浸るのは後回しだ。

いま、この人に言われて見て初めて気づいたけど、これってマズいよな。

元からヒーリアさんを知っている人にはそう思われていたんだもの。


放置したらいずれ面倒が起きそうだ。

…この問題は、早めに解決しないといけない事なのかもしれない。

他の人からみて納得のいく答えが無いと、勝手な推論で尾ひれがついた話になる可能性がある。

だったら、ここでケリがつけられるのは楽かも。


しばらく考える。

<時間魔法>で時間を止めた。

よし、これでゆっくり考えられる。


さてどうしよう。

じっくり30分ほど考えて時間を動かす。

言い訳が思いついたから。


「ココだけの話ですよ。もう面倒なんで本当のこと言いますと、この村に村人のフリをしたN魔法の魔導士がいるんです。マリアお母様からその人に頼んで僕らの護衛用にヒーリアさんはステータス画面が与えられたんですよ。これ内緒ですよ。」


すると、ダグラスさんは『本当に納得した人というのはこういう表情をするのか』というほどスッキリした顔をした。


「ステータス画面を得たのか。ならば魔物を倒せば倒すほど強くなり、レベルが上がって魔法も覚えるのは当然か。なるほどな。あの日の夜、ヒーリアの言葉を信じて坊っちゃんたちの護衛につけば人生変わったかもしれないんだな…。まったく俺たちはついてないぜ。」


そういえば、僕らが奴隷から買われた夜に出会った商人のキャラバン。彼らがどうなったか聞いてなかったな。

ついでに教えてもらおう。

「あのキャラバンはどうなったんですか?」


暗い顔になる。

「壊滅したさ。たった12人の護衛で30人以上の奇襲に耐えられるわけがない。最初の不意打ちで半分以上死んだ。そのあとは自分と雇い主の1人を助けるので精いっぱいだった。」


そう言った後に「もっとも雇い主も途中で死んだがな」と力なく笑う。

「じゃあ、あの時の生き残りは?」


「この4人だけさ。それで意気投合して今はパーティーを組んでいる。」

そっか。

あのときの生き残りか。


僕らは彼らを見捨てたようなものだから罪悪感を感じるな…


そんな僕らの話を、まわりで何人かの冒険者が静かに聞き耳を立てているようだ。

今の話はダグラスさん達が話さなくても、彼らが徐々に広めてくれるだろう。


「ダグラスさん、これも何かの縁ですから今度一緒に狩りに行きませんか?運が良ければ強敵と戦ってスキルとか手に入るかもしれませんから。」


「おお、それはうれしいな。坊っちゃんたちはいつも大物を狩って来るから分け前も大きそうだ。ぜひ頼むよ。」


僕は小声で詠唱する。

「<空間ファクトリー>起動。

なんか通信できる魔道道具とかできないかな。<携帯念話>の魔法を付加したようなヤツ。

二つ折りができて、目的の相手に念話を飛ばすときは念話番号を押して話す感じで。あんまり多機能にしたくないからスマホっぽいのよりガラケーっぽい奴が良いかな。設計図はなんとなくあるけど、詳細任せられる?」


『まかせな、いくつ欲しい?』

「30個」

『80秒だ』


すげえー

携帯電話30個作るのに80秒って事でしょ。

すげーーー。

もう僕は錬成信者だよ。錬成最強伝説。

<空間ファクトリー>すげー。


そこでオレンジジュースが運ばれてきた。

犬耳娘さん、尻尾がピコピコしてて可愛いな。

去り際に「ダグラスさん、子供に絡んじゃダメですよ」といって去っていった。


ウェイトレスさんが気軽に声を掛けられる程度には、ダグラスさん達は良い人のようだ。

こんな子供に真っすぐに話をしてくるあたり、真面目な人柄を感じる。

顔怖いけど。


そしてオレンジジュースを飲んでいる間に、携帯念話機は完成したらしい。

『できたぞ』

「ありがとう、あいかわらすデークは凄いね」

『こんなの普通だ。礼はいらん』


ツンデレめ。


<空間収納>から携帯念話を取り出す。

いきなり<空間収納>からモノを出したので驚かれてしまったがまあいいや。


「ダグラスさん達にこれを渡しておきますね。これは離れた相手と話せる魔道具です。名前の登録をしますから盗難されないように気を付けてくださいね。」


まんまガラケーの姿をした携帯念話機をわたし、連絡先の登録作業をした。

渡されたダグラスさん達、目が点である。


「こんな高価な魔道具を渡してくれるのか?坊っちゃん凄いな。」

「お母様は司教ですから。」


それで納得してくれた。司教って想像以上に反則的な肩書なんだな。

ほんと、マリアお母さま万能説浮上。


うしろからガシリとデルリカが肩を掴んできた。

「お兄ちゃん、ワタクシたちにはくださらないのですか?」


魔法の<スマホ念話>でいいじゃんとか思うけど、それは口にしない。

なぜなら子供はおもちゃを欲しがる生き物だから。


「もちろんデルリカ達の分もあるよ。好きなの選びな。」

全部バラバラだしたら、意外にそれぞれデザインが違ったから、選ばせることにした。


デーク、あの短時間で芸が細かすぎる。

頭の中に高麗こまの声で『私も手伝っていますので』と響いてきた。

ごめん、知らなかったからデークだけ褒めちゃった。


そうやってキャイキャイ携帯念話機をいじっていたら、奥の部屋からユカエルさんが出てきた。

その後ろに、ヒーリアさんと剣聖もいる。


剣聖と目が合った。

アカン、これ面倒になる予感だ。


僕は慌てて散らばった携帯念話機をしまうと席を立つ。

でも遅かった。


剣聖が僕のいく手を阻んだから。

「私は剣聖アキリス・オプテアである。小僧、今朝の恨みを晴らしてやる。」


うわあ、面倒になった。

お読みくださりありがとうございます。

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