025 剣聖vsメイド
あらすじ
魔王を倒して家に帰ってきた。
そしたらスキルや魔法が沢山ありすぎて困ったので大炎姫さんを呼ぶ。
スキルの合併を行うことにした。
― 025 剣聖vsメイド ―
その日は一日中、妹達や委員長やヒーリアさんのスキルや魔法をチェック。
そして、人工精霊の高麗、デーク南郷、スマ子と相談をして方針を決めていく。
様々な角度から検証し、なおかつ小まめに高麗が人工精霊ネットワークで確認しながらスキルや魔法のまとめ方を決めてた。
下手な纏め方をしたら、効果が減るので慎重に決めないといけないらしい。
でも、思ったよりもまとめられそう。
人工精霊たちのお陰もあり、大量に有ったスキルや魔法を6割以上は統合削減できそうだった。
すごいぞ。
たとえば勇者の
<光の剣><光の盾><光魔法付与><光の衣>
をまとめて
<光魔法武具>
としたり。
そんな感じに便利にまとめてしまう。
皆のスキルも結構シンプル化できたんじゃないかな。
これで扱いやすくなる。
ついでに黒竜王から奪ったスキルとかも、纏められるものはまとめてみた。
<鱗増殖><ローリング><オリハルコン爪><鱗刃><飛鱗><ボディーソニック>
を合わせて
<竜技>
<状態異常の魔眼:><透視の魔眼><即死の魔眼><支配の魔眼>
を合体させて
<竜魔眼>
ヤバイ、僕は纏める才能があるかも
興奮しつつも、作ったまとめスキルを慎重に切り分けて複数つくり<空間収納>に仕舞う。
そしてその日は疲れ果てて、倒れるようにねむった。
次の日
朝から何か騒がしかった。
眠いのにうるさいなあ…
目を覚ますと、どうやら玄関でエプロン子と誰かが揉めているようだ。
なんか面白いことが起きてる?
急いで服を着替えて玄関に降りると、半分キレたエプロン子が箒を構えたところだった。
「いい加減になさいませお馬鹿様。奥様方が朝ごはんを食べ終わりましたら、バカなお方がご訪問されたことをお伝えいたします!先触れも出さずに朝から来て家に入れろなどとフザケタ事をぬかしやがらないでくださいませ。さあお帰りなさりやがりませ。」
エプロン子、キレてるな…
そっと見ると、街に来ていた剣聖だった。名前なんだっけなアホデスさんだっけな?思い出せないからいいや。
「メイド風情がふざけるな!この剣聖アキリス・オプテアがわざわざ来たのだ。無礼であろう。」
金髪のイケメン、バカじゃないの?
お前が無礼だろ。
頭がおかしいんじゃないの?
さてどうしよう。
そう思ってたら、白く長い髪の毛をしたメイドが歩いてきた。
初めて見るメイドだなあ。
そのメイドは剣を抜く。
「お前のせいで坊っちゃんがいつもより一時間も早く起きてしまったではないか。罰として斬る。」
そういうと、ちらりとドアの陰に隠れていた僕を見た。
あ、バレていたのね。
当然か、中身は人工精霊だ。<探査>で人の動きくらい把握しているか。
いつも気にかけてくれてありがとう。
でも、僕が一時間早く起こされたからって、犯人を斬るのはやりすぎですよ。
そして思った。
初めて見たけど、この屋敷の自律型メイドゴーレムは二人しかいない。
彼女がバケツヘッド子か。
剣聖は急に大人しくなり、嫌な笑顔になる。
「おいおい、私に剣で挑む気か?私は剣聖アキリス・オプテアだぞ。」
だけどバケツヘッド子は鼻で笑う。
「ふっ、剣聖は剣で脅して女性ばかりの家に上がり込んでも良いのか?殺すぞ。」
「ふざけるな!」
剣聖は剣を抜くと居合いでバケツヘッド子に斬りつける。
いきなりメイドを斬るのか?なんだあいつ!
だがバケツヘッド子は、その剣を軽々指でつまんで止めた。
「剣聖?神殿の聖騎士の前では赤子だな。」
「バカな!」
そこで急いで<時間魔法>で時間を止めた。
嫌な予感がしたから。
僕が時間を止めたのは、バケツヘッド子が剣を抜く前だったはず。
でも見ると、すでにバケツヘッド子の剣はアキリスの首元3センチまで迫っていた。
バケツヘッド子!剣速が鋭すぎるだろ!
あっぶねー。
僕は急いでアキリスを剣が届かない位置まで運び、その胸に手加減した衝撃波を撃ちこむ。
そして時間を動かした。
ヒュン!
バケツヘッド子の剣が空を切る。
同時にアキリスは胸に受けた衝撃波で後方に吹っ飛んだ。
「ぐはああああああああ」
瞬時に何が起きたか予想できたようで、バケツヘッド子は恨めしそうな顔でこっちを見てくる。
いや、朝から首が飛ぶところとか見たくないから。
「坊っちゃん、起きている時にご挨拶をするのは初めてですね。おはようございます。いつもは坊っちゃんが眠ってからお屋敷に帰ってきますので。」
「おはようバケツヘッド子。話には聞いていたからすぐわかったよ。でも首をはねちゃ駄目でしょ。」
「やはりこやつを助けたのは坊っちゃんでしたか。このような不届きモノは殺すに限ります。お屋敷で狼藉を働いたものを生かして帰せば舐められますゆえ。」
けっこう過激だな。
「でも僕は、朝から人の首が飛ぶのを見たくなんだ。今日の所はボロボロにする程度で命は許してやってよ。」
深々と礼を返してきた。
「お優しい坊っちゃんに免じ、命ばかりは助けましょう。」
そして倒れたアキリスはサッカーのように蹴りとばされながら門まで転がされ、最後に勢いよく蹴りだされた。
完全に手足が折れまくってるな。
戻ってくるとバケツヘッド子は、きれいな白く長い髪をきゅっとポニーテールに結び、再度一礼してきた。
「では市中の警備に向かいますゆえ、これにて失礼いたします。」
「大変だね、頑張って。」
颯爽と歩き去るバケツヘッド子の背中を眺めた後、僕は空寒くなった。
『剣聖よりも強いメイドとか、ふつうは有りえないよな。』
振り返るとエプロン子がプリプリ怒っていた。
「あのおバカ様のせいで、坊っちゃんが起きる前に朝食の用意が出来ませんでした。まあ腹立たしいでございます。毎朝坊っちゃんのお寝坊に小言を言うのを楽しみにしておりますのに。」
言うだけ言って、パタパタとエプロン子は仕事に戻っていった。
あいかわらず忙しないな。
それにしてもエプロン子。いつも楽しそうに小言を言うと思っていたら楽しみにしていたのか。
あしたは寝坊してあげるか。ほんとエプロン子のためにね。うん、そうそう、エプロン子のためにね。
ふっ、僕はなに自分に言い訳しているんだ。
言い訳なんていらないだろ!眠たいんだから寝ればいいじゃん!
さて、自己弁護が終わったところで部屋に戻るか。
二度寝もありだな。
そう思って部屋に戻ったら掛け布団が無かった。
あれ?僕の心の要塞『掛け布団』がない。
なぜ・・・
そして気づいた。
おのれエプロン子!汚い手を!
グーを握って悔しさでベッドの前で膝をつく。
すると背後から楽しそうなクスクス笑いが聞こえてきたので振り返る。
ドアの隙間から覗いているエプロン子と目があった。
「あらあら坊っちゃんお可哀想に。これでは二度寝が出来なそうでございますね。ほんとにアキリス・オプテアなるお馬鹿は許せないヤツでございます。」
クスクス笑いながら、パタパタとエプロン子は去っていった。
ちくしょおおおおお。
アキリス・オプテア、ちくしょおおおおお。
エプロン子、ちくしょおおおおおおおお。
だが諦めない僕。
里美の部屋に行き、そっとベッドにもぐりこんだ。
ふう、ベッド最高。
「もう、お兄ちゃんは甘えん坊だな。」
里美は僕の腕を抱いて再び眠りにつく。
そっちのほうが甘えん坊じゃん。
でもいいか。
僕ももう少しだけ寝ることにした。




