023 イケメン剣豪
今までのあらすじ
転生したら奴隷だった。
マリアお母様に買われた。
妹が沢山出来た。
妹達と狩りに行ったら魔王にあった。
魔王を倒して能力を奪った。でも奪っただけでまだしまってある。
― 023 イケメン剣豪 ―
人工精霊の高麗とデーク南郷が魔物の皮と、その辺の植物で布団を作ってくれた。
錬成って凄いな。
僕はこれから錬成師を目指そうと心に誓ってしまうな。
<空間収納>に材料を沢山入れておけば、必要に応じて時間を止めて必要なモノを作るとかカッコいいじゃん。
戦闘力では妹達に及ばないのはなんとなくわかってきたから、いつでも「こんなこともあろうかと」とか言って、ぱっと必要なものを作る兄とか良いんじゃないかな。
うん、それがいい。
そう思いつつ、スマ子の結界の中で布団にもぐりこむ。
地面はスマ子がブルドーザーみたいに整地してくれているので寝やすい。
ほんと人工精霊って便利だな。
ありがたや。
みなと布団を並べて横になると、僕はすぐに夢の世界に落ちた。
夢の世界の中、細身でポニーテルをした女性が浮いている。
あ、この人見たことある。
たしか天界で水色髪の女神様の後ろに居た人の一人だ。
『長道氏、いきなり魔王と戦うとは無茶をしたでござるな。あのような場合は某達を呼んでほしいのでござる。』
侍か!てか誰だ?
そう思ったが声にはならなかった。
その女性は眉を寄せる。
『これはうっかりしたでござる。某は大空姫と申す。某が贈った<純化魔法>と<時間魔法>の使い心地はどうでござるか?多少は役に立ったと思うでござるが。』
時間魔法は貴女がくれたのんですか!
助かりました、あれがなかったらヤバかったです。
『役に立ったようで何よりでござる。<純化魔法>もぜひ役立てて下され。<純化魔法>は純粋なエネルギーを扱う魔法。それ自体では使い方が難しいやもしれぬが、他の魔法を強力にしてくれるでござる。<時間魔法:5>では時間停止は5分が限界でござるが、<純化魔法:5>を持っているだけで1時間くらい伸びるでござる。ゆえに使わなくても強化しておくことお勧めするでござる。』
なんと!それなら<純化魔法>にもメチャクチャ助けられたことになります。
ほんとありがとうございます!
『いやはや、長道氏にそこまで感謝されると照れくさいでござるな。<純化魔法>は地味でござるが応用は無限でござる。ぜひ使い方を研究されることをお勧めするでござる。』
わかりました!
いろいろ考えてみます。
『お、そろそろ刻限でござるな。では頑張ってくだされ。そしていつでも某を呼び出してくだされ。では失礼つかまつる。』
バチっと目が覚めた。
夢か…
いや違うな。
間違いなく本物だったと思える。
魔王と戦ったのを知って様子を見に来てくれたのか。一応心配してくれているんだな。
空は少し明るみだしている。
夜明けが近いか。
周りを見ると、結界の傍にトカゲの魔物が6匹ほどウロウロしていた。
1メートルくらいであまり大きくないけど、角が生えていて顔が怖い。
あれはなんだろう?
「高麗おはよう、まわりの魔物は何?」
『おはようございます長道様。あれはバジリスクです。目を合わせますと魔眼で麻痺や石化の呪いを受けてしまいますのでご注意ください。』
「動きはトロそうだね。」
『まだ日が出ておりませんので鈍いのでしょう。気温が低いうちは動きが鈍い魔物です。』
バジリスクと目が合った。
すると手先からジワジワト石化してくる。
「ちょ、結界越しでも呪いって効くの!」
『スマ子お姉さまは呪いの事は考慮していなかったようですね。今ポーションを用意しますのでお待ちを。』
すぐにポーションを取り出して僕に飲ませようとする。
頼りになるな、人工精霊。
でも僕は慌てず<純化魔法>を使った。
さっきの夢で、じつは少し閃くものがあったんだよね。
エネルギーに純化して再度元に戻る。
すると呪いは消えていて、石化していた手も元に戻った。
やっぱり。
エネルギーに純化することで不純物はなくなる。それから元に戻ったら、普通の状態になったって感じだな。
うん、予想通り。
「高麗、自力で治せたよ。あと皆が目を覚ました時に同じことにならないように、バジリスクを倒してくるね。」
『まあ<純化魔法>を使いこなされたのですね。お見事です、長道様。』
僕は時間を止めて外に出る。
バジリスクの特徴を<鑑定>してみた。
―――
スキル:<状態異常の魔眼:4><毒爪:2><毒針:3><毒牙:2>
―――
危ないから、全部引っこ抜いた。
さらに体力や魔力の数字も引っこ抜く。
それぞれ数値は30程度で大したことないけど、有り難く貰っておこう。
意外なのは引っこ抜いた寿命。
『寿命93年』
意外に長生きだ。
もちろん全部のバジリスクから引っこ抜く。
そして時間を動かす。
急に現れた僕に驚いて噛みつこうとするバジリスク。
でもノロイ。
筋力を極限まで奪ったので当然だ。
避ける必要もないほどノロイので、僕は余裕でバジリスクの頭を殴っていく。
一撃でバジリスクはお腹を見せるようにひっくり返り息絶えた。
HPも極限まで抜いていたので、軽い一撃で即死である。
そのあたりで、騒がしさで皆が目を覚ます。
ヒーリアさんが慌てた。
「そいつはバジリスク!危険だよ長道ぼっちゃん。」
「おーい、ヒーリアさーん。僕はレベル100越えの魔王ですよ。全然大丈夫ですから。ヒーリアさんだってレベル100超えの勇者でしょ。慌てないの。」
「はっ、…そうだったね。いやあ、まだ実感がわかなくて、あはははは。」
そうでしょうとも。
だって気持ちは僕も同じだから。
そのあと朝ごはんを食べて、僕らは森を抜けて村に帰った。
村の入り口に近づくと、やけに騒がしいようだ。
まだ早朝のはずだけど?
僕らが入り口に近づくと、人混みの中にギルドの受付、ユカエルさんが指示を飛ばしていた。
ぽっちゃり系の体で檄を飛ばす姿は迫力を感じるねえ。
「ユカエルさん、朝からどうしたんですか?」
声をかけた僕らを見て、ユカエルさんは驚く表情をすると、半泣きで嬉しそうに僕の手をとる。
「よかった、生きていたんだね。教会の未来予知部から、今日魔王が攻めてくるっていう通告があったんだよ。それであんた達が帰ってこないから、もしかすると魔王と鉢合わせになったんじゃないかって心配していたんだよ。無事に魔王に会わずに済んでよかったよ。」
「未来予知部?そんな便利な部署があるんですね。でしたらみんな逃げないとダメなのでは?」
すると、5人のイケメンが近づいてきた。
「その心配はないさ。我らが来たからな。」
ファサリと髪の毛を手で払うしぐさがキザ。
「ユカエルさん、このバカっぽいイケメンは誰です?」
なんかイケメンが驚いた顔で僕を睨む。
ユカエルさんは困った顔で僕の口を手で押さえた。
「この人たちは、剣豪のみなさんさ。とくに一番前のアキリル様は剣聖と呼ばれるほどのお人なんだよ。わざわざ魔王討伐に来てくださったんだから無礼なことを言ってはダメさね。」
<鑑定>してみる。
鑑定で見れる数字から戦闘力を把握するのは難しいな。
そうだ、簡単な戦闘力を表示できるようにならないかな。
<原始魔法>で鑑定に『戦闘力』という概念を入れてみた。
―――
アキリス・オプテア
職業:聖剣士
称号:剣聖
戦闘力:1500
―――
これ強いんだろうか?
よく考えたら比較対照が無い。
すると、脳内にデーク南郷の声が響く。
『魔王・槍の最初の強さは戦闘力換算すると5000000000くらいだったな。』
5000000000?
五十億?
うわぁぁ、僕たちはよく生き残れたな。
もう一度剣聖アキリルをみる。
こいつ、運は良いよな。
だって、このまま魔王と戦ったら即死だったろうに。
僕は、そっとユカエルさんに小声で耳打ちする。
「ユカエルさん、実は魔王は倒しちゃいました、死体もあるんで後で見せますね。」
ユカエルさんはギョッとして僕を見る。
何か言おうとしたけど、僕が無理やり言葉をつづけた。
「それでですね、居ない魔王を探してもこの村の人たちが大変でしょ。ですからあいつらだけ森に入れればいいと思うんです。あいつらが居なくなったら魔王の死体を出しますので。」
今度はユカエルさんが僕の耳元で囁く。
「それは知られちゃまずい事なのかい?」
「知られてまずいかどうか分からないので隠したいんです。マリアお母様に相談する前に誰かに知られたくありません。もしも隠した方が良いのに先に言ってしまったら取り返しがつきませんから。」
ユカエルさんは感心した顔で僕の頭を撫でた。
「確かに事がことだからね、良い判断だよ。ほんと賢いね。」
振り返るとデルリカが、剣聖に自慢げに何か言おうとしていたので、慌てて飛びつく。
「デルリカさんや!僕が良いっていうまで口を開いてはダメだからね。」
「なんですのお兄ちゃん?もしかしてヤキモチ?」
ちがうよバカ!
他の連中が何か言う前に離れなくちゃ。
「みんなも森の事は何も言わないでね。まずはギルドに報告とマリアお母様に報告が先だ。その前に勝手に情報を流して混乱が起きたら大変だから、絶対なにも言わないでね。」
言いながら妹達の手を引いてお屋敷に向かう。
デルリカはイケメン剣聖に「お兄ちゃんがヤキモチをやきましたので失礼いたしますわ」とか言ってる。
もう、違うって!あとで説教だな。
結論から言うと、この時の僕の判断は大正解だった。
お読みくださりありがとうございます。




