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015 学校で運命の出会い

登場人物

長道:主人公。11歳。元日本人だが記憶を奪われている。チート能力を持つ。

デルリカ:9歳。ブロンドの美少女。すっごい子供らしい子供。

康子:8歳。170cmはある体に隆々の筋肉妹。しかし中身はイケメンであり乙女。

里美:7歳。日本の記憶を持って居る。もしかすると一番ブラコン。

ビレーヌ:7歳。長い赤毛を左肩にまとめている。学校の委員長。

― 015 学校で運命の出会い ―


数日平和な日々が続いた。

だから僕は、妹達が学校に行くというので一緒に村に出てみた。


村というけど、もう街に昇格してもよさそうな活気だ。

ただ、開拓村は5年間税が免除される都合上、まだ税免除期間である開拓村のヘルウェイは村なのだ。

3年でここまで大きくなること自体が異例だから、領主も困惑しているんじゃないかと思う。


そして妹達が通う学校は、村の仮学校で週に3日だけ開かれる。

開拓村なので、それでも授業日数は多い方らしい。


普通の開拓村の学校は、週に1日授業くらいが普通だというのだから酷い話だ。

子供は勉強すべきだ、絶対。

だって、大人になってから文字を覚えろとか、計算を身につけろとか、地獄でしかないから。


だから、僕も学校に来てみた。

念のため、自分の学力の確認もかねて。

うっかり基礎教養を持っていなかったら、子供のうちに必死に勉強しないといけないし。

やっぱ、最低限の読み書きはできないとね。


で、ここの学校、授業料とかはとられない。

街が冒険者ギルドに依頼して薄給で先生を呼んでくれているので、習いたい人が勝手に通うスタイルだ。授業を受けたいという人なら、ふらりと行けば授業が受けられる。

ちなみに、狩りとかに行く体力のない元冒険者にとって、学校の先生というのは人気の仕事らしい。


ま、学校の性質についてはどうでもいいか。

デルリカに手を引かれて学校に入ると、何とも懐かしい気持ちになる。

うん、建物は木造でぼろいけど、学校っていう雰囲気がするねえ。

大人も結構混じっているけど、学校雰囲気はたしかしにする。


にしても、まさか自分がもう一回小学生をやることになるとはなあ。


教室のドアを開けて中に入る。

すると、直後に騒がしかった教室が静かになった。


え?なに?どうした?


教室内の子供たちが全員緊張した顔でこっちを見ている。

デルリカは平然と微笑んだ。


「みなさま、ごきげんよう」


その声に、教室中の人間が一斉に返事をしてくる。

「おはようございます!」


なに、今の大合唱。

びびっている僕の手を引いてデルリカは教室に入った。

「お兄ちゃん、ワタクシの隣の席に座ってください。」


その言葉に教室中がどよめく。


小声でコソコソ話をしているのが見える。

ああ、なんか理解しちゃった。


デルリカは、ことあるごとに「お兄ちゃんが居る」と教室で言い張って暴れたのだろう。

でも誰も実物を見たことがなかったから、「デルリカのお兄ちゃん」は都市伝説級の扱いなんでしょ。


で、ついにお兄ちゃんが登場したからみんなびびったと。

なるほどなるほど。


みなが遠巻きに様子をうかがっている中、赤い髪の毛の少女がズンズン歩いてきた。

長い赤髪を左肩にまとめている可愛い少女だ。

でも、気が強そうなの表情をしている。


「デルリカさん、しばらく学校に来ていなかったようですが何かありましたの?」


デルリカは余裕の微笑を返す。

「お兄ちゃんと過ごすのが楽しくて、学校のことなどつい忘れておりましたわ。」


赤髪の少女はキっとこっちを睨んだ。

いや、僕を睨んでも困りますよ。


目線をそらした。

なのに、まだすっごい睨まれている。


なに?すっごい怖いんだけど、この小学生。


なんか、沈黙に耐えられないから自己紹介でもしようかな。

小学生女児の睨みに屈する僕。

笑うなら笑え。


「あ、僕はデルリカの兄の長道です。11歳です。よろしくおねがいします。」


睨んだまま赤髪の少女は返事をくれた。

「わたくしは7歳ですが、学級委員長をしておりますビレーヌと申します。学校の事で分からないことがありましたら、デルリカさんにではなく、わたくしにお聞きください。」


ビレーヌは、言い終わっても僕を睨み続ける。

こまった。


適当なことを言って場を和ますか。

「ありがとう。ビレーヌの赤髪、素敵だね。」


するとビレーヌは顔を真っ赤にさせて仰け反った。

「いきなり何を…いえ、お褒めいただきありがとうございます…。」

そしてスタスタ自分の席に戻っていった。


ふう、なんとか追い払えた。

気が強いけど、意外に打たれ弱かったな。

照れちゃって可愛いい。

褒められ慣れていないのかな。


安心して横を向いたらデルリカと目が合う。

うん、デルリカの扱いには慣れてきたから、何をすればいいか分かってるよ。

小声でデルリカの耳元でつぶやいた。


「デルリカのブロンド、今日も輝いていて可愛いよ。」

「ふふふ、お兄ちゃんたら」


上機嫌になった。

根っこが単純な子で扱いやすいな。


ついでに、少しからかってみようかな。


「ねえねえ、デルリカの好きな子はこの教室に居るの?いたら教えてよ。」


怒るかな?

すると意外なことに、デルリカが顔を赤くしたのだ。

え?好きな男子とかいるの?


デルリカのお眼鏡にかなうなら、相当なイケメンだろうな。

もちろん顔だけでなく、心もイケメンにちがいない。

なんせ、普段から康子のイケメン言動を目の当たりにしているんだ。

デルリカが男性に求めるハードルは高いはず。


「どの子?ねえ、どの子なのさ。」


もじもじしはじめた。


「ダメです。お兄ちゃんはきっと笑いますもの。」

「…お笑い芸人なの?」


「ちがいます。何と言いますか、とっても地味な人でして。」

「デルリカ、地味な人に好意を抱くとか上級者だな。でも見た目に惑わされたのではないというのは良いと思うよ。」


「そうですか?そう言って貰えますと安心しました。あとでご紹介しますね。」

「うん、楽しみにしているよ。」


そっか。ブラコンだけど恋愛対象は普通に家族以外なんだな。

ちょっと安心したけど、ちょっと寂しいこの気持ちは何だろう。


人の心は複雑だな。


そう思っていたら、僕の後ろの席に康子と里美が座った。

ここの机は二入で一つを使う形状。


こういう時、4人兄妹は丁度いいと思う。

3人兄妹だったら一人余るから悲惨なことになる。


そして、覚えていないはずの前世の事を少し思い出した。

日本の高校生の時、クラスメイトと5人で遊園地に行ってしまったときのことを。


遊園地の乗り物は2人で乗るのが基本だから、つねに1人余る。

なんか気を使ってしまった僕が1人余り、寂しかった。

人混みの中の孤独は、、牢屋の中の孤独よりも辛い。


遊園地に5人でいったら悲劇しか生まないのだ。

セットで動くなら偶数であることは大事。超大事。


ほんと僕ら兄妹は偶数でよかった。喜びで少し半泣きになりそうになった。

奇数になったら、ぜったいお兄ちゃんが仲間外れだもの。

そうなったら、寂しくて死ぬところだった。


「お兄ちゃん、どうしましたの?なにか辛いのですか?」

デルリカが僕の雰囲気を察して心配してくれた。

頭がおかしい子だけど、優しいよな。良い子だ。

頭を撫でてみる。


「大丈夫だよ、ありがとう。そうだ教科書は一緒に見せてもらっていい。」

「はい、もちろんです。一緒に見ましょう。」


嬉しそうに教科書を出して僕に見せてくれた。

どれどれ。


見ると、基本的な文字の読み書きが書いてあるだけの教科書だ。

さすがに読み書き程度は僕でも余裕ですよ。


日本語と違うけど、余裕で読み書きができるところを見ると、僕がこの世界に長く暮らしたという話も納得できる。


教科書の内容をチェックしていたら先生が入ってきた。


「みんなさん、席について下さいね。授業を始めますよ。」


入ってきた先生は、ロマンスグレーなお爺ちゃんだった。

ここまでは楽しかった。

だが、

そのあと、僕にとっては拷問だった。


知ってることを延々説明されることが、これほどの苦痛だとは思わなかった。

どうやら、記憶を失う前の僕は、この程度の教養は余裕で身に着けていたらしい。


苦痛をこらえてやっと昼休みになると、ぐったり疲れ果ててしまったね。

真面目に小学生の授業を受けるとか辛かった。


さて、ご飯は食べてリフレッシュだ。


「よし、ご飯にしようか。」

<空間収納>から、妹達のお弁当も取り出す。


この行為はうかつだった。

委員長のビレーヌにみられていたから。


ビレーヌは凄い形相で詰め寄ってきた。


「長道様、あなたどこからお弁当を出されましたの?もしかして魔法を使えるのでして?」


うわあ、なんか面倒なのに見られちゃったな。


どうしよう。誤魔化そうか?

いや、横を見るとデルリカが誇らしげに自分の空間収納から何か出そうとしている。

こら、見せびらかすんじゃありません。

急いでその腕を掴んで蛮行を止めた。


とはいえ、ここで誤魔化しても、いずれデルリカの行動で嘘がすぐにばれそうだ。

この子、誤魔化すとか苦手なんだよな。


なら、当たり障りが無いように、サラっと語って終わりにするか。

嘘を言って後からバレるよりも良いだろう。


「まあ、少し使える程度だよ。じゃあ、お弁当食べようか。今日のお弁当はおいしそうだな。」


さらに何か言いたそうな委員長を押しのけるように、妹達にお弁当を配って食べだした。

強引に委員長を蚊帳の外に追い出す作戦さ。

ごめんね可愛い委員長、面倒なのは嫌いなの。


これで諦めてくれないかな…

そう思いながら委員長に振り返ると、手にお弁当を持っていた。

そして平然と僕の隣に無理やり座り、お弁当を食べだす。


「で、長道様。先ほどのお話の続きなのですが、どのくらい魔法を使えるのでしょうか?」


委員長を甘く見ていた。

この人、空気を読まない系の人だったか。

読めないのではない。自分に都合が悪い時にあえて読まないタイプだ。

7歳にして空気を読まないテクを持つとは、ビレーヌ恐ろしい子。


うーん、これは誤魔化そうとすると面倒になるな。

とはいえ説明はしたくない。

可哀想だけど、はっきり拒否するか。


「ごめんね、マリアお母様から魔法に関しては軽々しく話してはダメって言われてるんだ。」


まずは柔らかく拒否。

これでわかってくれ。強く拒否するのは辛いから、これでわかってくれ。

そうだ賄賂を贈ろう。


こっちを見つめる委員長のお弁当箱に、僕のおかずの唐揚げをつっこむ。

その行動に、思ったよりも驚かれてしまった。


「え!お肉を分けてくださるのですか?」

「この程度でよければどうぞ。最近は狩りでお肉をたくさん手に入れるから気にしないでいいよ。」


委員長は、子供らしい無邪気な表情で唐揚げを口に入れると、恍惚として嬉しそうだ。

「おいひー。」


飲み込んでからしゃべろうね。

でも喜んでくれたみたいで良かった。


あんまり喜ぶから、もう2つほど突っ込んであげた。

また喜ばれた。


「長道様、ありがとうございます。お肉を食べるのは1か月ぶりです。」

マジか。

育ちざかりなのに。


そういえば、村ではお肉が足りないからヒーリアさんみたいな狩人は大歓迎っていってたな。

うちのお屋敷ではお肉が沢山出てくるから、すっかり忘れていた。


そうだ、マリアお母様に頼んで給食を手配してもらおうかな。

そうそうれば、週に3回はお肉が食べられる。

子供には栄養が大事だから。


嬉しそうにお肉を食べた委員長は、どうやってお肉を手に入れたか聞いてきた。

魔法よりもお肉の方が優先順位が高いらしい。


その後は狩りの話になって、魔法に関しては触れられなかった。

よし、作戦成功。


そのあと、

午後は生活技能の授業があった。

これは前世の僕には無縁だったらしく、新鮮でなおかつ四苦八苦させられてしまったよ。

建物の床の直し方なんて僕には必要ないもん。人工精霊に頼めばいいから。


でも楽しかった。

なんだろう、工具を持つと心が躍るのは何故だろう。

男子の本能だとしか思えない。


で、14時ころ学校終了。


帰宅しようと歩き出すと…

校門に委員長が立っていた。


あー、やっぱり諦めていないよな。


そう思っていたら、委員長は意外なことを言い出した。


「長道様、お待ちしておりましたわ。その、あの、わたくしも狩りに連れて行って下さいませんか?わたくしも少し魔法が使えますので、多少はお手伝いができると思いますの。」


「い、いーよー。」


僕は思わず返事をしてしまった。


・・・


でもこの返事のせいで、あとからあんな地獄を見ることになるとは、この時は知る由もなかった。

もしも未来を知っていたら、僕はここで全力で拒否しただろう。

あの地獄を見ると知っていたら。


およみくださりありがとうございます。


補助知識

開拓村は、届け出が出てから5年間、税が免除される。ふつうはそれでも10年は苦しい生活になる。

3年で街並みに十分な収益が出るのは異常。

開拓村ヘルウェイは、大魔導士級の司教がいたために、あっという間に発達した。

作物はあっというまに実り、狩りで素材が出るので商人が集まり、建物は木材調達も含めてゴーレムが行ってくれる。

しかも、飢饉で逃げてきた人が流れてきて、教会があり、軍も持っているので安心して入植者が集まった。

この時はとても特殊なパターンだったが、このあと新しく作られる開拓村には司教級が最初の5年赴任する慣例のきっかけになった。

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