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122 味方ではなかった

― 122 味方ではなかった ―


僕をかばうように立つヒーリアさん。

そのヒーリアさんを無視するように、ビレーヌ準大司教は僕を見る。


「大丈夫です。私は長道君を殺しません。むしろ殺したくないとすら思っているんですよ。」


相変わらずの困り顔のまま語られるその言葉は、妙に信じていい気がした。

多分この人が僕を殺す気ならば、ヒーリアさんなんて何の障害にも感じないはず。

僕がまだ生きているのだから、この言葉は真実なんだと思えた。


「ヒーリアさん、間に入ってくれてありがとう。でも今は確かに大丈夫だと思うから剣を退いてください。」

「でも坊っちゃん、今この人はビレーヌを殺したんだよ!」

「それでも今は剣を退いて。逃げるにしても剣を構えたままじゃ逃げきれないしね。」


ヒーリアさんは、納得いかない顔をしながらも剣を納めてくれた。


今何が起きているのか見当もつかない。

だからこそ、機動力を確保したい。

剣を抜いたままじゃ、いざって時に動きが遅れそうだ。


そしてビレーヌ。

本当に死んでしまったのだろうか・・・

あんまり大事してこなかった自覚があるけど、愛着はあった。

本当なら悲しいのかもしれないけど、突然すぎて悲しみがわいてこない。

すぐに悲しめないことが、ビーレヌに申し訳なく感じる。


いや、悲しみが襲ってくる前に解決しなくちゃ。

悲しむときは、しっかり悲しんであげたいから。


どうにか気を取り直し、周りを見た。


違和感がある。


なんだこの違和感?


も、もしかして・・・・

思わず叫んだ。


「デルリカ!教皇から離れろ!」


僕の言葉にはじかれるように、デルリカ(妹)は教皇から離れつつ愛用のスコップを構えた。

だが顔は困惑している。

「どういうことですの、お兄ちゃん?」


「デルリカ!僕の予想が正しければ次はデルリカが殺される。逃げられたら一気に逃げろ!」


僕の叫びと同時に、デルリカ教皇はデルリカ(妹)に踏み込み、斧を振り下ろした。


ガキイイイン


かろうじてデルリカ(妹)はその刃を受け止め、ギリギリと耐える。

その姿を見ながら、デルリカ教皇は余裕な声を発っした。


「さすがですわね。どこで気づきましたの?長道君」

「何も気づいてないですよ。。。ただデルリカは、ソックリさんがいて魔王ってことはビレーヌと共通です。だったら警戒しておいても損はないでしょ。」

「ふふふ、悪くない推理ですわね。さすが長道君といったところでしょうか。」


鍔迫り合いになっているデルリカ教皇に横からヒーリアさんが斬りこんだ。

だがさすが人類最強とうたわれた人だ。

ヒーリアさんの攻撃を後方にジャンプして軽々避ける。


デルリカ教皇は軽く斧をなめると、楽しそうに微笑んだ。


「ふふふ、では小さいデルリカちゃんには絶望を味合わせてあげますわね。」


そういうと、そっとデルリカ(妹)の横に視線を逸らす。

そこには、タケシ君が居た。


「タケシ君、その小さいデルリカちゃんをワタクシの代わりに斬ってくださいませ。」


デルリカ(妹)は鼻で笑う。

「ふっ、何をバカなことを。タケシ君はワタクシの味方ですわ。貴女の言葉などに従いません。」


だがその言葉に、デルリカ教皇はニーっと口角を挙げる。

「ふふふ、あなたは何を勘違いしておりますわね。タケシ君は元からワタクシの側に人間でしてよ。ねえ、タケシ君。」


するとタケシ君は背中から、すっと大きな剣を抜いて構える。

「すいませんデルリカさん。私は教皇の忠実な兵なんです。」


デルリカ(妹)は、見たこともない驚愕の表情でタケシ君に向く。

「う、嘘ですわ!そんな事ありえません。だって・・・だって・・・タケシ君はワタクシを愛しているって言っていたじゃないですか。」


「すいません・・・。愛しているのは本当です。ですが、教皇の部下なのも本当なんです。」


タケシ君が構えた剣先が、そっとデルリカ(妹)に向いた。

「嘘・・・。お兄ちゃんと同じくらい信じてましたのに・・・」


僕はデルリカの傍に駆け寄ろうとした。

しかし、その行く手をビレーヌ準大司教に阻まれる。

「手出ししてはいけません。」

「なんでですか!デルリカは僕の大事な妹なんだ、邪魔するならぶっ殺すぞ!」


その言葉にビレーヌ準大司教が明らかに「ガーン」って感じの顔をになる。

「で、でも、だ、駄目なんです。駄目なんですよー!」

そして顔が真っ青になり、目に涙が浮かぶ。


え?今の言葉でそこまでダメージ入るの?

この人、ほんと分からない。

でも推理しろ。

この現象の理由が分かれば、ビレーヌ準大司教を攻略できるかもしれない。


さっき僕の事を『私の子供と言えなくもない』と言っていた。

ならば、僕の記憶にないだけで母親同然だったのではないだろうか?(推理)

しかも態度から察するに、かなり盲目的な溺愛状態だったとお思われる。(推理)

その仮定で、揺さぶりをかけてみるか。


「ビレーヌ準大司教、大嫌い!」


「グハッ!」


なんといきなりビレーヌ準大司教が吐血した。

えええ、悪口のストレスだけで吐血とかする人を始めてみたぞ!

この人、ストレスに弱過ぎね?


だが・・・デルリカの為にこのまま押し切らせてもらう。

ついでにビレーヌの仇だ。


「ビレーヌ準大司教、生涯恨む!死ね!変態!ストーカー!腋臭ひどい!っていうか汚らしいから触らないで!。」

「うがあああああ!」


僕は初めて悪口の罪悪感を感じた。

なぜなら、ビレーヌ準大司教は吐血しながら目から血を流し、エビぞりつつ胸を押さえて倒れ、動かなくなってしまったから。

そ、そこまでダメージ受けなくてもいいじゃないの。


すべてが終わったら「あれは嘘だ」と言ってあげよう。まだ生きていたら。


自由になった僕は、急いでタケシ君を羽交い絞めにしようとした。

だが、その僕の行く手をふさいだ人がいた。


康子だった。


「康子・・・まさか・・・いや、そんな馬鹿な。康子・・・これは何かの間違いだよね。」


しかし康子は苦しそうな表情のまま剣を抜き僕に向く。

「いいえ間違いではありません。申し訳ありませんお兄様。康子はデルリカ教皇の味方なのです。」


目の前が真っ暗になった。


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