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120 僕たちの覚悟を返せ ―

― 120 僕たちの覚悟を返せ ―


しかし、妹のデルリカと教皇のデルリカ様はよく似ている。

親子とか姉妹とかでないと納得いかないレベルで似ているよ。


教皇デルリカ様は、デルリカ(妹)を後ろから抱きしめてニコニコしている。

妹デルリカは、困った顔でされるがままだ。

本能的に教皇デルリカ様に逆らってはいけないと思っているのかもしれない。


しかし・・・


「教皇様と妹の名前が同じだと、混乱してくるなあ」


今更だけど、なんで名前が同じなんだよ。

ちょっと困り気味の僕を気にせず、デルリカ教皇は、妹デルリカを手放して僕に背を向けた。


「この先にたくさん敵がいましたが、ワタクシが殲滅しておきましたわ。ですので安心して進みますね。」


言うと、ふわりと浮き上がり城に向けて飛び始めた。

おっと、置いていかれるわけにはいかない。

急いでオニキス竜の背に乗る。


地面に降りていた皆も、魔族の背に乗った。


「わかりました。では全軍前進。」


僕の合図で、みな進みを再開。


数分進むと、

なぜ囮であるはずの僕らに敵が襲ってこなかった理解した。

大量の敵軍が死屍累々に道に倒れていたからだ。

その死体や残骸は、直視するのもつらいレベルで引き裂かれている。


僕は目をそらしたが、僕の後ろに乗っている里美が興味深そうに観察していた。

「お兄ちゃん、これたぶん全部教皇様が引き裂いたんだよ。人間はもちろんだけど戦車や車両まで切り裂かれている。」


デルリカ教皇様は僕の横にふわふわ飛んできた。


「さすが里美は賢いですわね。確かにワタクシが皆殺しにしてやりましたのよ。特にあの大きな恐竜は殺し甲斐がありましたわ。」


そういってデルリカ教皇が指さすほうを見る。

ん?

丘?山?


そのまま近づいて行って、その全貌が分かっり僕は戦慄した。


「うそ、なにこの大きな怪獣!」


丘だと思ったものは、怪獣の死体だった。

おいおいデカすぎるだろう。

どんなバカだってわかるぞ、こんなデカいやつに勝てるわけないって。


おそらく立ち上がっていた時は300mはあっただろう。

常識を超えたデカさだ。


しばらく進んでこの怪獣の死因が分かった。

首が跳飛ばされていたのだ。


ちょっと遠い場所に、デカい怪獣の頭が転がっている。


怪獣の横を通るとき、その死体に目が釘付けになった。

体に傷らしいものはない。

おそらく、一撃で首を飛ばされている。


「・・・バケモノ。」


恐怖を感じつつ、ふわふわ飛ぶデルリカ教皇に目が行ってしまった。

僕は、心底恐怖を感じた。

魔王が一番不条理な存在だと思ってた自分が甘かった。


見つめていると、ふいにデルリカ教皇と目が合う。


「どうしましたの長道君?ワタクシに見惚れまして?」


ぬかしよる。


「いいえ、恐怖していました。魔王が世界で一番不条理だと思っていましたが、デルリカ教皇様が一番の不条理だったみたいですね。」


すると、妖しく微笑み返してきた。

「いえいえ、ワタクシの不条理さなんて大したことありませんわ。まだまだナガミーチ大司教の不条理さにかないませんもの。」


少し話すだけでわかったが、おそらくこのデルリカ教皇は謙遜するタイプじゃない。

だから、『かなわない』というのなら、本気でそう思っているのだろう。

このバケモノよりもさらに上がいる。

不思議な感じがした。

世界は広い。

それを感じてしまった。


巨大な怪獣の死体の横を通って進みつつ、ちょっと気づいてしまった。


「あの、デルリカ教皇様・・・ちょっと聞いていいですか?」


「ふふ、何かしら?」


フワフワ飛びながら妖しく微笑む教皇に、僕は素直に聞いてしまった。


「もしかして、今回の問題ってもう解決してます?」


「まあ、さすが長道君ですわ。もう気づいてしまいましたのね。」


「あの・・・じゃあもう僕らが王城まで行く意味はないのでは?」


「ふふふ、それは違いますよ。ワタクシがここに来た理由は二つあると言いましたよね。そのもう一つの理由の為にも王城まで行きますよ。」


微笑むデルリカ教皇の目は笑っていなかった。

ヤバイ。

うまく言えないけど、ヤバい予感がする。

これ、適当な言い訳して逃げないといけないんじゃないだろうか。


そんな僕の気持ちを見透かしたように、デルリカ教皇は僕の肩を叩いた。

微笑んだまま。

「お城には、長道君のお仲間のも魔王もいるのですよね。無事に返してほしかったら、お城までご一緒してくださった方がよろしくてよ。」


あ、これ逃げられない系のアレだ。


諦めて僕らは敵の死体が転がる道を城に向かうのだった。





2時間後






グルニエール王都に到着してしまった。

ドラゴンたちの歩く速度が思ったよりも早かった。


到着すると同時に騒ぎが起きるのはと心配したけど、そんなことはなかった。

なぜなら、


王都の入り口に人影が全くなかったから。

門番も見張りすらいない。


ないこれ怖い。


王都なのに、入口に誰もいないとか信じられないんだけど。

誰に止められることなく門を通る。


王都に入ると、この異常さがまだ序の口だと知った。


王城の城下町に人はいなかった。

みな逃げたのだろうか。


無人の王都を真っすぐに王城へ進んだ。

後ろに乗る里美は、ぎゅっと僕の腕をつかむ。


「お兄ちゃん、無人の王都って怖いね・・・」

「そうだね。本来人がいるはずの場所に人が居ないって、思ったよりも不気味だね。」


王都にアンデットやドラゴンの軍団がスムーズに入れた時点で異常に気付いたけど、こうやって目で見て実感すると怖さを感じる。

いった王都に何が起きたんだろう?


そのまま、何の抵抗もなく王城についた。

やはり王城の入り口が解放されている。


僕らは魔族の軍団はそのまま王城に入った。

ヤバいくらい人がいない。


もうすごく怖くなってきた。

なんで王城にも人がいないの?

何が起きたの?


異常過ぎる。


僕の疑問を察知したのか、デルリカ教皇は嬉しそうに教えてくれた。

「人がいないのが不思議ですか?王都にい居た関係ない人たちは、ナガミーチ大司教が強制的に近くの街に転移しましたの。ですので安心してくださいね。」


賢者大魔導士のナガミーチ大司教、ちょっと非常識過ぎる!


こんなことできるって事は、戦争のときとか敵軍を空のかなたに転移するとかもできるんじゃないの?

純粋な強さはデルリカ教皇が上らしいけど、非常さで言えば確かにナガミーチ大司教は別格かもしれない。

お陰で漠然とした恐怖が一段と高まった。


デルリカ教皇に先導されながら進むと、床の大きな穴が開いている場所についた。


「ふふふ、この穴の下が例の異世界人召喚の魔法陣ですのよ。面倒なので床を壊して突入しましたの。」


そう言い、デルリカ教皇は僕を見たまま微笑み続ける。

なんか返事しないといけない雰囲気。


「えっと、この穴はデルリカ教皇が空けたんですか?」


「いいえ、これはナガミーチ大司教がやりましたのよ。あの人、結構面倒くさがりですから、こうやって最短距離を行きたがりますの。」


「一つ確認したいのですが・・・。もう魔法陣は壊されているんですよね。」


良い笑顔で返された。


「もちろんですわ。珍しくナガミーチ大司教が激怒して飛んで行ってきましたから、とっくに無効化されておりますわ。」


やっぱり恐れていたことが起きているようだ。


僕はその言葉にがっくり力が抜けた。

そう、問題は解決している。

あかん、僕ら無駄足だ。


「この戦いに向けた、僕らの覚悟を返してください!」


デルリカ教皇は、そんなうなだれる僕の姿を本当に嬉しそうに眺めて微笑むのだった。

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