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119 人類最強

― 119 人類最強 ―


作戦、頑張らないとな。

水路からギリニエールの王城に潜入する「蜘貴王」サビアンさんと、「水竜王」タツキさんが目立たないように、敵の目をこちらに向けておきたい。

僕は僕の配下の地竜たちも呼び寄せ、大軍団で行進を始めた。

これで目立つだろう。


デルリカも暴竜たちを呼び寄せる。


空にはビレーヌの飛竜たちが目だつように飛び回る。

この軍団で城に向けて行進を始めれば、敵はこっちに集中するはず。


そう思いながら、僕は配下の地竜変異種オニキスの上に乗って行進中だ。


20メートルはあるオニキスは、歩いているだけで結構早い。

時速20kmくらい出ているんじゃないだろうか。

その速度に小走りで突いてくるアンデット達。


連中は疲れないらしいので、いくらでも走り続けられる。


空を見上げる。

青い空を飛び回るたくさんの飛竜を見つめつつため息が出た。


(うん、日常の景色じゃないな)


しかし、まさか人類に対して魔王として戦う日が来るとはな…

僕は平々凡々な少年だったのに、魔王として動く日が来てしまうとは。


でも今は世界の為には頑張らなくちゃ。


正義のはずなのに、僕は魔王。なんとも複雑な気持ちになってしまった。

すると、僕の隣でおとなしく座っていた妹の里美が僕の腕を引っ張る。

長い黒髪の美少女に育った里美は、笑っていればアイドル級の美少女。だけど、今は不安そうに口を開いた。


「お兄ちゃん、あれから敵が来ないけどサビアンちゃんたちの方に敵が行っているって事はないよね。」


そういわれても、僕は困り顔しかできなかった。

「できれば、そうでないことを祈るよ。でも、こればっかりは相手の動き次第だから。」


僕は進行方向を見つめながら、少し焦り始めた。

確かに敵が出てこなさすぎる。


このまま進むと1時間もすれば王城につきそうだ。

それなのに、偵察の兵士すら出てこない。

まさか、敵の本隊がサビアンさんやタツキさんの方に行ってないよな。

不安になったけど、その気持ちは押し殺した。


ここまで来たら、作戦を押し通すしかない。

作戦が失敗したとしても力づくで押し通す。

今はそういう段階なんだと気持ちを切り替えた。


(いざとなったら、この戦力で敵を全滅させよう)


そう考えたら、少しだけ気持ちが軽くなる。

だが、この僕の気持ちの切り替えはすぐに無駄になった。

上空の飛竜に乗ったビレーヌが赤い髪をなびかせながら叫んだからだ。


「長道様!前方から敵が来ます!空飛ぶ箱です!20個ほど来ます」


ヘリか!

しかも20機?ヤバイな。


戦闘ヘリの機動力と火力はホントにヤバい。

僕はすぐに指示を出す。


「邪精霊に人工精霊。物理攻撃無効な君たちに頼みたい。あのヘリに乗ってる連中を無効化させてきてくれ。」


僕の周りに、幻想的な半透明の存在が大量に集まってきた。

その中で代表して、人工精霊の一人が僕の前に浮く。


『お任せください。』


言うなり一斉に飛び上がっていった。

全部で1000近い精霊たち(邪精霊と人工精霊だけど)は、半透明の体を輝かせながら、数キロ先のヘリに向かっていった。


ヘリが一斉攻撃を介したのが見えた。

しかしすべての攻撃は素通り。まあ幽霊に攻撃しているようなものだからな。

連中には、物理攻撃は効かない。


そして、ヘリがどんなに強力な兵器であったとしても、中の人間が駄目になれば関係ない。

精霊なら人の生命力を奪うのはお得意だ。


精霊たちがヘリに群がると、ヘリはあっけなくキリモミしながら落下を始めた。


「お兄ちゃん!ヘリが落ち始めたよ!」

里美はヘリを指さして嬉しそうだ。


そこに、暴竜(肉食恐竜みたいな形の竜)に乗ったデルリカが駆け寄ってくる。

「お兄ちゃん、ワタクシがとどめをさに行ってまいりますわ」

「え?トドメはビレーヌの飛竜達に頼もうと・・・って、行っちゃった。」


僕の返事を聞かずにデルリカは、暴竜を疾走させて走り去ってしまった。

スコップを片手に。


美しいウェーブのかかった金髪をたなびかせて走る姿は、芸術的ですらある。

でも僕は知っている。あの子の本質はバーサーカーだということを。


かわいそうだが、ヘリに乗っていた連中は一人も助かるまい。

ウチのスッコロ(すぐ殺す)さんが向かってしまったのだから。


デルリカ、スコップさえ持たなければ可愛いのにな…

走り去るデルリカの背中を見つめながら、小さくため息が出てしまった。

ため息が出ると同時に、いくつもの爆発音が響いた。



数分後

僕らが墜落したヘリのそばに到着すると、そこにはクレーターしかなかった。

デルリカ、強すぎでしょ。


ほっぺたに、少しだけ血が付いたデルリカが可愛らしく微笑みながら上品に歩いてくる。

「見てくださいお兄ちゃん。敵は全部吹き飛ばして差し上げましたのよ。」

無邪気かつ上品に微笑むデルリカ。

うん、怖いから細かいことを聞くのはやめておこう。


そっとハンカチでデルリカのほっぺの血をふき取ってあげた。


デルリカはニコニコ上機嫌だ。


その時、唐突に上空から女性の声がした。


「まあ、兄に優しくしてもらえるなんて、なんて羨ましいのでしょう。ワタクシのお兄ちゃんは、ワタクシにだけは優しくしてくださらないのですよ。」


驚いて全員顔を上げた。

そして息をのんだ。


斜め上空に大人の女性が浮いていた。

その女性はウェーブのかかった輝くような長い金髪を揺らしている。

白いロリータの服を着ていて、顔には帰り血の付いた仮面をしていた。

手には、血で黒くなったような斧を持っている。


異様な姿だ。

だが目が離せなかった。

その宙に浮いた女性は、そっと血みどろの仮面を外す。


その時衝撃が走る。

彼女の顔を見た全員が、驚いて固まってしまった。

その理由は二つ。


一つは、その素顔が驚くほど美しかったからだ。

正直言うと、僕はこれほど美しい女性は見たことが無い。

まるで女神のような白い顔は、人の限界を超えた美しさだ。


そして理由の二つ目。

その素顔は・・・まるでデルリカそっくりだったのだ。

デルリカが、あと10年もすればこういう顔になるだろうという顔。

そんな顔が仮面の下から出てきたのだ。


僕は、本能的にその人が誰だかわかった気がした。


「貴女はもしかして、、、マリユカ聖教の教皇様?」


すると女性は妖しく微笑むと、静かに地に降りた。


「ふふふ、ワタクシの事が分かりますの?そうです、ワタクシはマリユカ聖教の教皇。デルリカ・ユリスクでしてよ。」


フフフと妖しく微笑む姿はエロ美しい。

笑顔だけでここまでエロイとか、聖職者としてどうなのさ。


いや、今はそこはどうでもいい。

気配だけでわかる。この人はバケモノみたいに強いと。

美しいのに強い。

怖いのに目が離せない。

これが人類最強とうたわれた、デルリカ・ユリスク教皇か。


恐怖で背中に汗が流れる。


その僕の前に誰かが立つ。

ダークエルフのヒーリアさんだった。

震えながら教皇に剣を向けている。


「な、長道坊っちゃん。万が一の時はアタシが時間を稼いでいる間に逃げるんだよ。もしも教皇が魔王を殺しに来たのなら、長道坊っちゃんも危ないから。」


あ、


言われて気づいた。


そういえば僕は魔王だった。

その僕を守るために、今ヒーリアさんは僕の前に立ってくれている。

震えるその背中を見ていたら、僕はなんだか落ち着いてきた。

いつもありがとう、ヒーリアさん。


今度は僕がヒーリアさんの前に行く。

「長道坊っちゃん、あたしの前に出てきちゃだめだよ。」

でも僕はそっと首を振る。

「僕より先に死ぬのは許さないよ。そのくらいにはヒーリアさんの事は大事な仲間だと思っているからね。」

「な、長道坊っちゃん…」


僕は教皇に顔を向けた。

よく考えたら、そこまで深刻になるのは早い。

なんせ、向こうの目的を聞いていないんだから。


「教皇様。ところでここにはどんなご用事で来たんですか?」


すると微笑んでいたデルリカ教皇は、近くにい居たデルリカ(妹)を優しく抱き上げた。

「目的は二つですのよ。一つは世界が割れそうになっているので、その解決です。マリアリーゼ枢機卿より、長道君たちを助けてほしいと頼まれましたし。」


それを聞き、みな少し緊張がゆるむ。

なんせ人類最強が、僕らの協力者になったようなものなのだから。

さすがマリアお母様。教皇すら動かしてくれたんですね。


「それは心強いです。で、もう一つの理由は?」


デルリカ教皇の口元がニーっと吊り上がった。

「二つ目の理由は、この戦いが終わったら教えて差し上げますわね。」


そう言いながら、抱き上げたデルリカ(妹)を優しくなでるのだった。

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