表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/127

115 水竜王

― 115 水竜王 ―


転移の扉と呼ばれる魔法陣を抜けると、そこは水晶のように輝く城の中だった。


「まあ、なんと素敵なお城でしょう。」

サビアンさんは上機嫌に周りをきょろきょろ見渡す。


もちろん僕らも物珍しさでキョロキョロしているけど。

カッコいいーなー。


魔王の城というよりも、神や精霊が居そうな感じ。

こういう拠点もありだな。


これ、僕らでも作れるかな?

材質や強度確保の魔法をどうすればいいかな。

城を見つめながらイロイロ考えてしまう。


「・・いちゃん。お兄ちゃん」


は!

時間を忘れて思考の海に落ちてしまっていた。

気が付くと、里美が僕の肩をゆすっている。


「里美、どうしたの?」

「どうしたのじゃないよー。水竜王さんが来たから挨拶しようっていってるのに、お兄ちゃんたら考え事して無視するんだもの。怒っちゃうからね。」

「え!水流王さんが来たの?ごめんごめん、気づかなかった。」


里美の後ろから、優しい女性の声がした。

「気にしないでください。わが城に夢中になっていただいたのですから、むしろ嬉しく思います。」


とっさに声のほうを見た。

優しく美しい声の主を目で探すと・・・


尾びれで立った、4~5メートルはありそうな巨大な白いサメが居た。

え?あの美しく優しげな女性の声がこのサメから?


軽い混乱をしていると、白いサメがぺこりと頭を下げてくる。

「お初にお目にかかります。この城の主『水竜王』タツキと申します。遠路はるばるご加勢に来ていただき、感謝申し上げます。」


この巨大な白いサメから、確かにあの女性の声がした。

うん、少なくてもメスだってことはわかった。

落ち着け!そして無礼な感情を顔に出すなよ僕。


口元を引き締めて真面目な表情になる。

表情に悩んだ時は、この顔一択だ。


「はじめまして。僕は『黒竜王』長道といいます。あの敵は必ず我らにも襲い掛かってくる類です。むしろ僕らと共闘してくださることに感謝いたします。」


「魔王はバカで乱暴モノで利己主義の塊ばかりだと思っておりましたが、皆様のような魔王もいらっしゃったのですね。話の通じる魔王と出会えたことをうれしく思います。」


手(?)を差し出されたので、僕もを手を差し出し握手をする。

よかった。

水竜王さんの口ぶりからすると、すでに倒された3人の魔王達は僕らとは相いれないタイプだったようだ。

生き残ったのが水竜王さんで本当に良かった。


「あ、でもうちの魔王でも冷静に話が通じるのは蜘貴王サビアンさんくらいです。あまり過大な評価をいただくと恐縮してしまいます。」

「ご謙遜を。みなさん、まるで貴族のようにキチンとした方々で驚きました。中央部の魔王連が羨ましいです。南の魔王連はどうなのでしょうか?」


僕は軽く目をそらした。

「えっと・・・先週僕らに攻め込んできたので全滅させました。」

「まあ!それではまだ戦力が整っていないのではないですか?大変なところ加勢に来ていただき申し訳ありません。」


「いえ、大丈夫です。むしろこちらは戦力が上がってますので。連中の魔物を奪って魔族もたくさんできました。ですので戦う前よりも強くなっていますのでお気になさらないでください。」


「なるほど。経験を積めば魔族化する魔物も増えますものね。羨ましい限りです。魔族が増えたというお話ですが、黒竜王さんはどのくらい魔族を持っておられますの?10体以上いきましたか?」


僕は思わず目だけでなく、顔ごとそらしてしまった。

「すいません・・・1200体ほど。」


「現在の残りの魔物が1200体ですか?」

「いいえ・・・魔族化したのが1200体です。僕らの中で一番魔族が少ないデルリカで100体です。」


水竜王さんは驚いたんだろう。

ガバリとデカい口を開けた。

サメの口ってデカい。

こっちがかなり驚いた。

視界全体がサメの口にに覆われるとか怖いからやめてほしい。


「そ、それはまた強烈ですね。。。。。」


そして絶句された。

う、気まずい。無理やり話題を変えよう。


「そ、そうだ、滝つぼの後ろにある転移扉は敵に見つかるのも時間の問題ですので、急いで廃棄したほうがいいと思います。多分、僕らが居合わせなければ敵がここに侵入していたと思います。そのくらいバレています。」


「まあ!それは大変ですね。私は急いで転移扉を廃棄してきますので、しばし失礼いたします。みなさまご自由に体をお休めしててくださいね。」


慌てたようすで白く巨大なサメ『水竜王』は立ち去って行った。


後姿を見つめ、デルリカは嬉しそうに僕に寄り添う。

「思ったよりも知的な魔王さんで助かりましたわね。サビアンさんくらい理性的な感じがしましたわ。」

「だね。こういっては何だけど、たまたま生き残っていた魔王が『水竜王』さんで本当によかったよ。『突猿王』や『巨人王』みたいな魔王さんだったら絶望していたところだもん。」


その言葉に、仲間の皆も苦笑いが出ていた。

運がいい。それは間違えない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングアップのために、↓↓クリックしてくれると嬉しいです
小説家になろう 勝手にランキング

新作
「異世界に行きたい俺たちの戦い ~女神さまは無責任~」
もよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ